事業承継・引継ぎ補助金のスケジュールは?3つの申請枠と採択率を高めるポイントも解説

スケジュール

中小企業における事業承継の支援をしてくれる「事業承継・引継ぎ補助金」。本補助金には、3つの申請枠があり、いずれも同じスケジュール(日程)で期間が設定されています。

本記事では、事業承継・引継ぎ補助金のスケジュールが気になる方に向けて、申請から交付までのスケジュールと具体的な流れ、申請枠の基本的な概要について解説します。

目次
  1. 1. 事業承継・引継ぎ補助金とは
  2. 2. 事業承継・引継ぎ補助金の申請から交付までのスケジュール
  3. 3. 事業承継・引継ぎ補助金の流れ
  4. 4. 事業承継・引継ぎ補助金の3つの申請枠
    1. 4-1. 経営革新枠
    2. 4-2. 専門家活用枠
    3. 4-3. 廃業・再チャレンジ枠
  5. 5. 事業承継・引継ぎ補助金の採択率を高めるためのポイント
  6. 6. 事業承継・引継ぎ補助金を活用するメリット・注意点
    1. 6-1. 事業承継・引継ぎ補助金を活用するメリット
    2. 6-2. 事業承継・引継ぎ補助金を活用する注意点
  7. 7. 【まとめ】事業承継・引継ぎ補助金の活用時はまずスケジュールを把握しよう

事業承継・引継ぎ補助金とは

事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継をきっかけに、新しい取り組みをおこなう中小企業を支援するための制度です。事業再編や事業統合(M&A)に必要な経費が対象となり、発生した費用の一部に対して補助金が給付されます。

事業承継・引継ぎ補助金はこれまでにも公募がおこなわれており、3月に「9次公募」の公募要領が公表されました。9次公募では、「経営革新枠、専門家活用枠、廃業・再チャレンジ枠」と3つの申請枠が設けられており、最大800万円の補助金が交付されます。事業継承の方法によって申請枠が異なるため、はじめにそれぞれの概要を把握しておきましょう。

事業承継・引継ぎ補助金の申請から交付までのスケジュール

9次公募の詳細なスケジュールについては、公式サイトで適時公開されるので、定期的にチェックが必要です。ただし、具体的なスケジュールについては、申請枠ごとにスキーム(手順)が設定されているため、公開されている公募要領にて、自社が利用する申請枠を確認する必要があります。

なお、詳細な手順は申請枠ごとに異なりますが、申請から交付までは基本的に以下のような流れで進んでいきます。

申請受付期間

2024.4.1(月)~2024.4.30(火)17:00まで

交付決定日

6月上旬(予定)

事業実施期間

交付決定日~2024.11.22(金)

実績報告期間

~2024.12.2(月)

補助金交付手続き

2024.12月中旬以降(予定)

(参照:事業承継・引継ぎ補助金|経営革新 スケジュール)2024年3月時点
(参照:事業承継・引継ぎ補助金|専門家活用 スケジュール)2024年3月時点
(参照:事業承継・引継ぎ補助金|廃業・再チャレンジ スケジュール)2024年3月時点

2024年の9次公募では、申請の受付期限が4/1から4/30までと1ヶ月間しかないので、まずは自社に適した申請枠を選定しましょう。

事業承継・引継ぎ補助金の流れ

  1. 申請予定の申請枠と応募要項を確認する
  2. 「gBizIDプライム」を取得する
  3. 提出書類の策定と準備
  4. 申請は電子システム「jGrants」を利用して申請をおこなう
  5. 事業の実施と実績報告
  6. 補助金の交付
  7. 事業化状況報告の提出など

事業承継・引継ぎ補助金の申請から交付までは、大まかに上記のように進みます。事業承継・引継ぎ補助金には、「申請枠」と「類型」が設定されており、自社が該当するものに応募する必要があります。第9次公募で設定されている申請枠と類型は、以下のとおりです。

申請枠

類型

経営革新枠

創業支援類型

経営者交代類型

M&A類型

経営活用枠

買い手支援類型

売り手支援類型

廃業・再チャレンジ枠

創業支援類型

補助金の申請時には、まず申請枠と類型を確認しましょう。自社が該当する申請枠と類型が見つかったあとは、応募要項を確認します。

申請は電子システム「jGrants」を利用するため、事前のアカウント取得が必要です。アカウントの取得には1~2週間ほどかかるため、早めに対応しておきましょう。

なお、具体的なスケジュールについては、申請枠ごとに異なる場合があります。申請枠ごとの申請スキーム(手順)については、以下の記事をご参照ください。

関連記事:事業承継・引継ぎ補助金を利用する流れは?申請枠も分かりやすく解説

事業承継・引継ぎ補助金の3つの申請枠

事業承継・引継ぎ補助金のスケジュールは?3つの申請枠と採択率を高めるポイントも解説_2

経営革新枠

経営革新枠は、事業の承継をきっかけに、設備投資・店舗借入・販路開拓などに取り組む事業者を支援するためのものです。

経営革新枠には、「創業支援類型・経営者交代類型・M&A類型」の3種類の類型があります。それぞれ詳しくみていきましょう。

創業支援類型

創業支援型は、法人の設立や個人の開業・創業をきっかけに、他事業者から経営資源の引き継ぎをおこなう事業者を対象とするものです。設備費や原材料費にて発生した経費に対して、補助金が給付されます。

補助率

対象経費の2/3 or 1/2以内

補助下限額

100万円

補助上限額

600万円 or 800万円以内

上乗せ金額

150万円以内

要件

  • 事業承継対象期間内に法人を設立する(または、個人事業主として開業する)
  • 創業時に廃業の予定者から、株式譲渡や事業譲渡などにより、
  • 有機的一体としての、設備や従業員といった経営資源を引き継ぐこと。

(参照:事業承継・引継ぎ補助金事務局|経営革新枠 公募要領 9次公募

経営者交代類型

経営者交代型は、事業承継をきっかけとして、経営革新などに取り組む事業者が対象となるものです。後継者候補者による、事業承継前の取り組みも対象となります。

補助率

対象経費の2/3 or 1/2以内

補助下限額

100万円

補助上限額

600万円 or 800万円以内

上乗せ金額

150万円以内

要件

  • 親族内承継や従業員承継等の事業承継(事業再生を伴うのも可)。
  • 経営に関して一定の実績や知識等を有している者であること。

(参照:事業承継・引継ぎ補助金事務局|経営革新枠 公募要領 9次公募

M&A類型

M&A類型は、株式譲渡や事業の譲渡といったM&Aによる経営資源の引き継ぎを実施し、経営革新に取り組む事業者が対象となるものです。同業他社や取引先との事業統合、事業再編などのケースで活用できます。

補助率

対象経費の2/3 or 1/2以内

補助下限額

100万円

補助上限額

600万円 or 800万円以内

上乗せ金額

150万円以内

要件

  • 事業再編や事業統合の M&A。
  • 経営に関して一定の実績や知識等を有している者であること。

(参照:事業承継・引継ぎ補助金事務局|経営革新枠 公募要領 9次公募

専門家活用枠

専門家活用枠は、事業再編・事業統合などの支援を目的とした申請枠です。M&Aに関わる買手と売手のそれぞれで、補助金の申請ができます。

専門家活用枠には、「買い手支援類型」と「売り手支援類型」があり、概要が異なります。

買い手支援類型

買い手支援類型は、事業の再編や事業統合にともなう、株式・経営資源を譲り受ける予定の中小企業を支援するための補助金です。M&Aにて、経営資源を引継ぐ側の企業が利用できます。

補助率

補助対象経費の2/3

補助下限額

50万円

補助上限額

600万円以内

上乗せ金額

150万円以内

要件

  • 事業再編や事業統合で経営資源を承継したあと、
  • シナジーを活かした経営革新の取り組みが見込める
  •  
  • 事業再編や事業統合で経営資源を承継したあと、
  • 地域における経済全体を牽引できる事業の取り組みが見込める

(参照:事業承継・引継ぎ補助金事務局|専門家活用枠 公募要領 9次公募

売り手支援類型

売り手支援類型は、事業の再編や事業統合にともなう、株式・経営資源を譲り渡す予定の中小企業を支援するための補助金です。M&Aにて、自社が保有する経営資源を譲る側の企業が利用できます。

補助率

補助対象経費の1/2、2/3

補助下限額

50万円

補助上限額

600万円以内

上乗せ金額

150万円以内

要件

  • 地域における経済全体を牽引できる事業をおこなっており、
  • 事業再編や事業統合されたあともこれらの事業が
  • 第三者を通じて継続されていくことが見込める

(参照:事業承継・引継ぎ補助金事務局|専門家活用枠 公募要領 9次公募

廃業・再チャレンジ枠

廃業・再チャレンジ枠は、M&Aにともなう廃業や再チャレンジを支援するための申請枠です。M&Aを実施する場合、売り手側企業においてはさまざまな事情により、既存事業の廃業を選択するケースがあるでしょう。この申請枠では、廃業にかかる費用の一部に対して補助金が給付されます。

廃業・再チャレンジ枠には、「再チャレンジ申請」と「併用申請」という、2種類の申請方法が設けられています。

再チャレンジ申請

再チャレンジ申請は、M&Aの契約が成立しなかった事業者が、新たな事業に挑戦することを支援するものです。地域の雇用創出や経済活性化を目的とした新たな事業を創業するにあたり、既存事業の廃業を選択するケースで利用できます。既存事業の廃業をおこなう際に発生した経費の一部に対して、補助金が給付されます。

補助率

補助対象経費の2/3

補助下限額

50万円

補助上限額

150万円以内

要件

補助事業の期間が終了する日までに廃業が完了していること。

また廃業にともなって以下をおこなった、またはおこなう予定である。

 

  • 2020年以降に売り手としてM&Aに着手し、
  • 取り組み期間が6ヶ月以上ある+廃業後に再チャレンジ

(参照:事業承継・引継ぎ補助金事務局|廃業・再チャレンジ 公募要領 9次公募

併用申請

併用申請は、経営革新枠や専門家活用枠を活用したM&Aにおいて、譲り受けた事業の一部、または既存事業の廃業を支援するためのものです。廃業にかかった費用の一部に対して、補助金が給付されます。

なお、併用申請は、専門家活用枠の売り手支援類型を活用する企業も利用可能です。売り手側企業がM&Aで事業を譲り渡した際、残った事業を廃業するときに申請できます。

補助率

併用する申請枠にて、各事業に定められた事業費の補助率に従う

補助下限額

補助上限額

要件

補助事業の期間が終了する日までにM&Aや廃業が完了していること。

また廃業に伴って以下の1〜3をおこなった、またはおこなう予定である。

 

  1. 1.事業承継後M&A後の新たな取り組み
  2. 2.M&Aによって他者から事業を譲り受ける。(全部譲渡・一部譲渡含む。)
  3. 3.M&Aによって他者に事業を譲り渡す。(全部譲渡・一部譲渡含む)

(参照:事業承継・引継ぎ補助金事務局|廃業・再チャレンジ 公募要領 9次公募

事業承継・引継ぎ補助金の採択率を高めるためのポイント

【採択率を高めるためのポイント】

  • ・ゆとりをもったスケジュールを立てる
  • ・自社の事業に適した申請類型を選ぶ審査ポイントを意識した事業計画を策定する
  • ・専門家からのサポートを受ける

事業承継・引継ぎ補助金を申請する際は、ゆとりをもったスケジュールを立てましょう。申請には事業計画書の策定をはじめ、事業を実施するための準備などが必要です。しかしながら、申請の受付期間は1ヶ月ほどと短めなため、申請をしながら考えるのでは適切に準備できない可能性があります。

また、申請では自社の事業に適した申請類型を選ぶことが大切です。事業と合わない申請枠だと対象外と判断される場合があります。加えて事業と申請枠がマッチしていないと、審査で不利にはたらく可能性も考えられます。

審査で重要となる事業計画書は、審査ポイントを意識して策定しましょう。たとえば廃業・再チャレンジ枠の場合、公募要領によると9次公募の審査では、以下のような点を見られるとされています。

【9次公募審査のポイント】

  • ・再チャレンジでの取組を実現するにあたり、事業を廃業する必要性
  • ・廃業に向けた準備
  • ・再チャレンジに係る取組の実現性

(参照:事業承継・引継ぎ補助金事務局|廃業・再チャレンジ 公募要領 9次公募

なお、自社のみでの対応が難しいと感じるときは、認定支援機関をはじめとする専門家へ相談するのもおすすめです。補助金申請のノウハウを活かしたサポートが受けられるため、自社のみで対応するよりも申請手続きをスムーズに進められる可能性があります。

事業承継・引継ぎ補助金を活用するメリット・注意点

事業承継・引継ぎ補助金のスケジュールは?3つの申請枠と採択率を高めるポイントも解説_1

事業承継・引継ぎ補助金を活用するメリット

事業承継・引継ぎ補助金を活用するメリット

  • ・補助金なので返済する必要がない
  • ・加点事由を利用することで審査にプラスの影響を与えられる
  • ・事業計画書の策定が必要な補助金と比べて、書類作成負担が少なめ

事業承継・引継ぎ補助金は、補助金であるため返済が不要です。融資の場合には元金と利息をあわせた返済が必要となり、返済の負担を踏まえたうえで計画しなければなりません。一方で補助金は返済がないので、事業承継後の資金繰りの負担を軽減できるでしょう。

また、事業承継・引継ぎ補助金は、加点事由を利用できることも特徴です。該当する加点事由が多いほど審査にプラスの影響を与えるため、可能な限り活用しましょう。そのほか、書類作成の負担が少なめなのもメリットです。

たとえば「ものづくり補助金」では、審査で事業計画書が重視され、現実的かつ革新的な事業計画を立てる必要があります。対して事業承継・引継ぎ補助金は、オンライン上にある入力フォームに沿って必要事項を入力する方式となっており、事業計画書の策定が必要な補助金と比べると、書類策定の手間が少なく済みます。

事業承継・引継ぎ補助金を活用する注意点

事業承継・引継ぎ補助金の注意点

  • ・申請の受付期間が約1ヶ月しかない
  • ・補助金の交付は原則として対象事業を実施したあとになる

事業承継・引継ぎ補助金の申請受付期間は、1ヶ月ほどと短めです。2024年の9次公募の場合、4/1〜4/30までに申請をする必要があります。公募要領や申請枠は、公式サイトから確認できるので、なるべく早めに準備に取り掛かりましょう。

また、補助金の交付は、対象事業を実施したあとになる点にも注意です。補助金の対象となる経費については、一旦自社で全額負担する必要があるため、後払いを前提とした計画を立てましょう。

【まとめ】事業承継・引継ぎ補助金の活用時はまずスケジュールを把握しよう

事業承継・引継ぎ補助金は、申請枠ごとにスケジュールが設定されています。申請期間は1ヶ月ほどしかないため、申請準備をスピーディーに進めましょう。ただし、申請時には審査が実施されるので、審査の着眼点にもとづいた事業計画の立案が必要です。加点事由を利用できれば、審査にプラスの影響を与えられるため、できる限り活用しましょう。

 なお、補助金の交付は、事業が完了したあとです。経費は一旦自社で負担しなければならないため、資金面でもゆとりをもった計画を立てましょう。