SHIFT事業とは|環境省の目的や補助金について徹底解説
近年、政府から脱炭素に向けた取り組みが推奨されています。しかし、SHIFT事業による支援を活用したいものの、概要がわからないことから、自社に合うか判断できない企業の担当者もいるでしょう。
本記事では、SHIFT事業について環境省の目的や補助金などの概要を解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
SHIFT事業とは
SHIFT事業(工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業)は、工場や事業所の脱炭素化のロールモデルになる取り組みを支援する制度です。
ここからは、SHIFT事業の概要を紹介していきます。
目的
SHIFT事業は、意欲的なCO2削減の目標・計画を策定し、設備更新、電化・燃料転換、運用改善を実施し、CO2排出を削減する取り組みを支援しています。そして、脱炭素化のロールモデルとして、知見を公表し横展開することを目的にした事業です。
さらに、個社単位での取り組みだけでなく、企業間の連携を行いサプライチェーン(商品や製品が消費者の手元に届くまでの一連の流れを表した用語)の脱炭素化の先進的なモデルを創出することも目的の1つです。
内容
SHIFT事業の主な内容は、以下になります。
概要 |
補助上限額 |
補助率 |
|
CO2削減計画策定支援 |
中小企業などによる工場・ 事業場でCO2削減目標・ 計画の作成を支援 |
100万円 ※CO2排出量を クラウド上で リアルタイム可視化し、 運用改善を行う DX型計画は200万円 |
3/4 |
省CO2型設備更新支援 |
CO2削減計画に基づく、 設備更新や電化・ 燃料転換、 運用改善を支援 |
標準事業:1億円 大規模電化・ 燃料転換事業: 補助上限5億円 中小企業事業:0.5億円 |
標準事業:1/3 大規模電化・ 燃料転換事業:1/3 中小企業事業 企業間連携先進モデル支援: 以下のうち低い額を補助 ・年間CO2削減量× 法定耐用年数× 7,700円/t-CO2(円) ・補助対象経費の1/2(円) |
企業間連携先進モデル支援 |
CO2削減目標を 有する企業が主導になり、 複数サプライヤーの工場・ 事業場を対象に計画策定・ 設備更新・ 実績評価を2カ年以内で 行う取り組みを支援 |
5億円 |
1/3、1/2 |
参考:環境省 工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業)
スケジュール
SHIFT事業の公募期間は、対象事業によって異なります。
- CO2削減計画策定支援:令和5年5月15日(月)~7月14日(金)12時必着
- 省CO2型設備更新支援:令和5年5月15日(月)~6月15日(木)12時必着
- 企業間連携先進モデル支援:準備中(2023年5月12日時点)
支援を受けるには期間内に申請をする必要があるので、余裕を持ったスケジュールで手続きを行いましょう。
令和5年度から追加になる項目
令和5年度のSHIFT事業は、令和4年度から以下の項目が追加されます。
- CO2削減計画策定支援にDX型計画が追加
- 省CO2型設備更新支援に大規模電化・燃料転換事業が追加
- 企業間連携先進モデル支援が追加
申請する際は事業内容を確認の上、手続きを行ってみてください。
SHIFT事業による支援の種類
SHIFT事業の支援を受けられる事業の詳細を紹介します。
CO2削減計画策定支援
SHIFT事業のCO2削減計画策定支援は、意欲的なCO2排出削減目標を盛り込んだ「脱炭素化促進計画」の策定に取り組む企業等を支援する事業です。ここからは、応募者や対象事業者の条件などを紹介していきます。
応募者の要件
CO2削減計画策定支援の応募者の要件は、以下のとおりです。
- 中小企業者(個人、個人事業主を除く)
- 独立行政法人
- 地方独立行政法人
- 国立大学法人、公立大学法人および学校法人
- 社会福祉法人
- 医療法人
- 協同組合
- 一般社団法人・一般財団法人および公益社団法人・公益財団法人
- その他環境大臣の承認を得て執行団体が適当と認めた者
- 地方公共団体
中小企業の定義は、以下になります。
業種 |
資本金 |
常用従業員数 |
1.製造業、その他(2~4以外) |
3億円以下 |
300人以下 |
2.卸売業 |
1億円以下 |
100人以下 |
3.サービス業 |
5千万円以下 |
100人以下 |
4.小売業 |
5千万円以下 |
50人以下 |
※資本金と常用従業員数のいずれかを満たすことが要件
引用:令和4年度(第2次補正予算) 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 公募要領
対象事業の要件
CO2削減計画策定支援の対象事業の要件は、以下の全てを満たすことです。
- 年間CO2排出量が50トン以上3,000トン未満の日本国内にある工場・事業場である
- 過去に脱炭素化に関する補助事業の採択を受けていない工場・事業場である
- 自主的対策(運用改善等)を少なくとも1つ以上実施計画に含める
- 事業完了後、実施計画で策定したCO2削減対策を事業報告対象期間中に少なくとも1つ以上実施する
引用:令和4年度(第2次補正予算) 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 公募要領
1つでも要件を満たさないと、採択されないので注意しましょう。
補助対象の経費
CO2削減計画策定支援の補助対象経費には、以下のようなものがあります。
人件費 |
支援を行う支援期間の人件費 |
通信交通費 |
旅費交通費や通信費用 |
消耗品費 |
支援の実施に必要な資材、 機材、ソフトウェアなど ※当該事業のみで使用されるもの かつ取得価格が税込5万円未満のもの |
印刷製本費 |
会議資料や報告書などの印刷製本費用 |
運搬費 |
支援に必要な物品の運搬費 |
光熱水費 |
支援に直接必要と証明できる電気代、 水道代など |
借料及び損料 |
支援に必要となるリース・ レンタルの調達費用 |
会議費 |
支援に必要な会議の開催に伴う、 会場借料、機材借料、飲料、弁当などの費用 |
賃金 |
業務補助を行う補助員の賃金 |
雑役務費 |
業務に必要な機器のメンテナンスや 新たに開発するソフトウェア費用など |
外注費 |
当該事業の一部を外部に委託した場合の費用 |
共同実施費 |
共同で事業を実施する場合の共同支援機関の経費 |
一般管理費 |
業務費から外注費及び共同実施費を除いた額に 一般管理費率を乗じた額 |
引用:令和4年度(第2次補正予算) 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 公募要領
CO2削減計画策定支援の補助対象となる経費は、一般社団法人温室効果ガス審査協会が承認したものに限ります。対象経費でも、協会で認められなければ経費に含められません。
補助対象外の経費
補助対象外の経費は、以下のとおりです。
- 交付の決定日前に発生した経費
- 支援に直接関連のない経費
- 事務所の家賃など事業実施主体の経常的な運営経費
- 支援の実施期間中に発生した事故・災害処理のための経費
- 補助事業への交付申請手続きに係る経費
- 振込手数料
引用:令和4年度(第2次補正予算) 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 公募要領
SHIFT事業の公募要領には、対象と対象外の経費が明記されているので、申請前に確認してください。
補助額・補助率
CO2削減計画策定支援の補助上限額と補助率は、以下になります。
- 補助率:3/4
- 補助上限:100万円
DX型計画を行う際は、補助上限が200万円になります。
省CO2型設備更新支援
SHIFT事業の省CO2型設備更新支援は「脱炭素化促進計画」に基づく設備更新に取り組む企業等を支援する事業です。
応募者の要件
省CO2型設備更新支援の応募者の要件は、以下のとおりです。
- 民間企業(個人、個人事業主を除く)
- 独立行政法人
- 地方独立行政法人
- 国立大学法人、公立大学法人及び学校法人
- 社会福祉法人
- 医療法人
- 特別法の規定に基づき設立された協同組合等
- 一般社団法人・一般財団法人及び公益社団法人・公益財団法人
- その他環境大臣の承認を得て協会が適当と認める者
- 地方公共団体
上記に加えて、以下の要件を全て満たす者が対象です。
- 補助事業を的確に遂行するのに必要な費用の経理的基礎を有する
- 直近2期の決算において連続の債務超過がなく適切な管理体制及び経理処理能力を有する
- 暴力団排除に関する誓約事項に誓約できる
引用:令和4年度(第2次補正予算) 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 公募要領
対象事業の要件
省CO2型設備更新支援の対象事業の要件は、以下のとおりです。
- 事業要件を満たすこと
- CO2削減計画(実施計画書)を策定し応募時に提出すること
- 基準年度排出量をSHIFT事業モニタリング報告ガイドラインに定める算定方法で算定できること
- 自主的対策によるCO2排出削減目標量を少なくとも1つ設定し、各対策について定量的な根拠を明示すること
- 高効率設備導入、電化・燃料転換によるCO2削減効果およびランニングコスト削減効果が定量的に把握可能であること
- 補助事業の投資回収年数が3年以上であること
- 令和4年度に二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金、令和3年度(第1次補正予算)二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金の採択がされていないこと
- 過去に同事業の採択を受けた工場・事業場でないこと
上記の全ての要件を満たさないと申請が採択されません。事業要件を確認の上、手続きを進めましょう。
引用:令和4年度(第2次補正予算) 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 公募要領
補助対象の設備機器
省CO2型設備更新支援では、工場や事業者に設備を導入することになります。
補助対象になる設備機器には、以下のようなものがあります。
- エネルギー使用設備機器
- 低炭素燃料供給設備および受変電設備
- 再生可能エネルギー発電設備
- コジェネレーション発電設備
- 太陽熱供給設備
引用:令和4年度(第2次補正予算) 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 公募要領
上記に該当しない設備機器は導入しても補助対象にならないため注意が必要です。
補助対象の経費
省CO2型設備更新支援では設備機器だけでなく、工事費や設備費などを経費として計上できます。
- 本工事費(材料費・労務費・直接経費・共通仮設費・現場管理費・一般管理費)
- 付帯工事費
- 機械器具費
- 測量及試験費
- 設備費
引用:令和4年度(第2次補正予算) 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 公募要領
補助対象外の経費
省CO2型設備更新支援の補助対象外の経費は、以下のとおりです。
- 本補助事業に使用されない機器・設備等
- 交付の決定日前に発生した経費
- 事業実施に直接関連のない経費
- 事務所の家賃など事業実施主体の経常的な運営経費
- 事業実施期間中に発生した事故・災害処理のための経費
- CO2排出削減に寄与しない機器・設備や、周辺機器 (見える化機器、フェンス・保安用品、法定必需品など)
- 既存設備の更新により機能を新設時の状態に戻すような「単なる機能回復」に係る費用
- 少量排出源になるような機器(非常用発電機等)
- 照明(LED等)
- 既存設備の撤去・移設・廃棄費(当該撤去・移設・廃棄に係る諸経費も含む)
- 数年で定期的に更新する消耗品
- 産業・業務用以外の低炭素機器
- 予備品、予備機
- 官公庁等への申請、届出等に係る費用
- 本補助金への応募・申請手続に係る経費
引用:令和4年度(第2次補正予算) 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金 公募要領
申請する際は、対象経費も確認した上で手続きを進めてみてください。
補助額・補助率
省CO2型設備更新支援の補助額と補助率は、事業によって異なります。
標準事業 |
補助率:1/3 補助上限:1億円 |
大規模電化・燃料転換事業 |
補助率:1/3 補助上限:5億円 |
中小企業事業 |
補助上限:0.5億円 下記いずれかの低い額を補助
|
参考:環境省 工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業)
SHIFT事業【まとめ】
SHIFT事業は、工場や事業所などで脱炭素化に取り組む際に支援してもらえる制度です。CO2削減計画策定支援は補助上限100万円、省CO2型設備更新支援は対象事業によりますが、補助上限5億円まで支援してもらえます。
国内では地球温暖化対策として、CO2削減が注目されています。脱炭素化に取り組む際は、SHIFT事業を活用してみてください。