外国人雇用に利用できる助成金は?受給条件や注意点を解説!
外国人労働者を雇用すると、教育や社内制度の整備などで助成金を受けられます。しかし、助成金制度を活用したくても制度がわからなくて動きにくい方も多いのではないでしょうか。
本記事では外国人雇用に関する助成金の悩みにお答えします。どの助成金制度を利用できるのか検討する際にぜひご活用ください。
外国人雇用助成金とは?
外国人を雇用する際に利用できる助成金制度がいくつかあります。一部例を挙げます。
- トライアル雇用助成金
- 人材確保等支援助成金
- キャリアアップ助成金
上記の制度は外国人を正社員として雇用する際に利用可能。では、なぜ外国人労働者向けの制度がこんなに充実しているのでしょうか。
外国人労働者が日本で働くとき、以下のような問題が発生しやすくなります。
- 言語の違いから意思疎通が難しい
- 日本独自の慣習や労働条件が原因で解雇されてしまう
- 企業に外国人労働者の一時帰国などの制度が整っていない
労働力不足が課題の日本では、外国人労働者を積極的に受け入れたいと考えています。しかし、言語や文化の違う外国人労働者が日本で働くのは容易ではありません。外国人労働者が働きやすい就労環境を整備し、優秀な外国人労働者を呼び込むことが外国人雇用助成金の目的です。
外国人雇用助成金の補助対象
補助対象となる事業は上記のような事業です。助成金は外国人が働きやすい環境を整えるだけでなく、正社員として雇用する、スキルアップ教育などにも活用可能。外国人労働者の就労を幅広くカバーしてくれるため、これからグローバル化させたい企業や労働力不足で外国人労働者の雇用を検討している企業にとって有効といえます。
外国人雇用助成金の審査基準
審査基準は制度によって様々ですが、最低限抑えるべきポイントは上記のとおり。
助成金の審査には「資格審査」と「書面審査」があります。
資格審査では、各種補助対象条件に合致しているかをチェックし、書面審査では、第三者の専門家がチェックし、審査ポイントに沿って加点していきます。点数が一定ラインを超えると晴れて「審査通過」です。
外国人雇用助成金でもらえる金額
制度にもよりますが、20万~90万円を受け取れます。ただし、支給対象が従業員の場合は1人につき数万円支給される制度もあり、従業員の人数によっては数百万円単位になることもあるでしょう。
たとえば「雇用調整助成金」の場合、1人あたり1日最大8,355円が支給されます。支給対象の従業員が100人いた場合、1日で約83万円もの金額が支給されるのです。1ヶ月に換算すると相当な金額になることがわかると思います。ただし、不正受給は罪に問われますのでくれぐれも、助成金は正当な理由で申請してください。
外国人雇用助成金交付までの流れ
使う制度によって微妙に異なりますが、たとえば、人材確保等支援助成金を例に見てみましょう。注意すべきは、基本的に助成金が交付されるタイミングが「事業が完了したあと」ということ。事業計画を実施してもその後1年は支給申請ができません。
事業の実施期間は3ヶ月~1年のため事業を実施から支給申請ができるまで、1年3ヶ月~2年が必要ということになります。
外国人を雇用するメリット
外国人を雇用するメリットは以下のとおり。
- 組織に異なる文化や考え方をもたらしてくれ、多様性が生まれる
- 労働力不足を補う手段として海外から若い人材を雇用できる
- 日本の人材が持っていない特殊な技能やスキルを持っていて、企業にとって貴重な人材になりえる
- グローバル化が進む現代で、外国人を雇うことはグローバル市場への参入を容易にする
- 助成金による支援が豊富で上手く活用すれば資金面で有利
外国人を雇用するデメリット
外国人を雇用するデメリットは以下のとおり。
- 日本人従業員と外国人従業員の間でコミュニケーションに問題が生じやすい
- 外国人従業員によって企業内の文化や運用を変更せざるをえない可能性がある
- 外国人従業員がビザの問題や法的なトラブルを抱えた場合、雇用主は対応する必要がある
- 外国人を雇用するには「外国人雇用状況届出書」を提出するなど様々な義務があり、ルールを把握しなくてはいけない
- 雇用することになっても「ビザの発給」や「在留資格の確認」など手続きが多くあり、すぐに働けるわけではない
外国人雇用に活用できる助成金
制度 |
補助対象 |
補助額 |
若年技能者人材育成支援等事業 (ものづくりマイスター制度) |
・中小企業 ・学校 |
「ものづくりマイスター」の 派遣費用や実技指導費用の 一部を補助 |
トライアル雇用助成金 (一般トライアルコース) |
若者雇用促進法に基づく 認定事業主 |
対象者1人につき 月額最大4万円 |
人材確保等支援助成金 (外国人労働者就労環境 整備助成コース) |
外国人労働者を雇用する事業主 |
57万円 (生産性要件を 達成した場合72万円) |
キャリアアップ助成金 (正社員化支援・処遇改善支援) |
事業主 |
3.3万〜90万円 |
雇用調整助成金 |
売上が減少し、計画的に従業員を 休ませて休業手当を支給する事業主 |
従業員1人につき 1日あたり8,355円 |
若年技能者人材育成支援等事業(ものづくりマイスター制度)
概要
これからの日本を支えるIT分野や建設・製造分野などの実技指導を受けることを支援する制度。職人の技術を継承し、後継者を育成することが目的です。
対象者
・中小企業
・学校
補助額
本制度では、ものづくりにおいて優れた技能や経験を持つ人を「ものづくりマイスター」として、中小企業や学校へ派遣します。その派遣費用や技能検定や競技大会の課題を通した実技指導費用を規定の範囲内で知識技能振興コーナーに負担してもらえます。
条件
とくになし
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
概要
就職が困難な人や出産育児で復職が難しい人などの雇用を促進する制度です。原則3ヶ月の試用期間で、求職者の適性・能力を見極められるのが特徴。試用期間に対しては助成金が支給されるため、リスクを抑えながら無期限雇用にシフトできます。
※2020年2月以降「55歳未満のニート・フリーター」も対象者に追加されています。
対象者
若者雇用促進法に基づく認定事業主
補助額
試用期間で雇用している対象者1人につき月額最大4万円
(母子家庭または父子家庭の場合は最大5万円)
※最長3ヶ月まで支給
条件
ハローワーク・紹介事業者から紹介を受けた人材を一定期間試行雇用すること
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
概要
外国人労働者とのコミュニケーション問題やトラブルを防ぐための環境整備を支援する制度です。
対象者
外国人労働者を雇用する事業主
補助額
57万円(生産性要件を達成した場合72万円)
条件
・以下項目の実施
- 雇用労務責任者の選任
- 就業規則等の社内規程の多言語化
- 以下の中から1つを実施
a.苦情・相談体制の整備
b.一時帰国に利用できる休暇制度の整備
c.社内マニュアル・標識類等の多言語化
・事業実施した一定期間後の外国人労働者の離職率が10%以下であること
キャリアアップ助成金(正社員化支援・処遇改善支援)
概要
非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するために、正社員化や処遇改善の取り組みを支援する制度です。
対象者
事業主
補助額
3.3万〜90万円
※コースと対象者、企業規模によって異なる
※生産性要件達成による加算は2023年3月で廃止
注意点
正社員化コースで対象となるのは永住権を取得した人のみです。
条件
- 各雇用保険適用事業所にキャリアアップ管理者を配置し、キャリアアップ計画(3年~5年)を作成すること
- 管轄労働局長の受給資格の認定を受けること
雇用調整助成金
概要
業績の悪化により事業主が労働者に雇用調整(休業、教育訓練、出向)を実施する際に、その1部を助成する制度です。
※コロナ特例は2023年3月を持って終了となり、以降は通常制度となります。
対象者
売上が減少し、計画的に従業員を休ませて休業手当を支給する事業主
補助額
従業員1人、1日あたり8,355円
外国人労働者における注意点
技能実習生は休業・教育・出向のうち休業のみが支給対象になります。
条件
- 雇用保険の適用事業主であること
- 直近3ヶ月間の月平均売り上げが前年同期に比べて10%以上減少していること
- 直近3ヶ月の雇用者数が一定基準を超えて増加していないこと
- 計画にもとづいて雇用調整(休業、教育訓練、出向)を実施すること
その他の支援制度
助成金のほかにも、外国人労働者の支援制度がいくつかあります。
ここでは以下の2つを紹介します。
- 外国人雇用管理アドバイザー制度
- 国際研修協力機構(JITCO)
外国人雇用管理アドバイザー制度
外国人労働者の雇用時に発生する問題や疑問について「外国人雇用管理アドバイザー」に無料相談できる制度。アドバイザーが問題点を把握・分析して的確な改善策を提案してくれます。
アドバイザーに相談したいときは、まず近くのハローワークへ連絡してみてください。日程の調整をした上で、事業所にアドバイザーを派遣してくれます。また、定期的にハローワークで外国人雇用管理アドバイザーによる相談会を開催しています。気になる場合は1度相談してみてください。
国際研修協力機構(JITCO)
国際研修協力機構(JITCO)は、外国人労働者の受け入れに関する総合支援機関。1991年に設立し、2012年4月に内閣府所管の公益財団法人に移行しました。技能実習生や特定技能外国人などに関する相談や教材開発などを行っており、技能実習や養成講習を開催しています。
技能実習制度の申請手続きや取り次ぎも行っているので、外国人労働者の育成で悩んでいる場合は1度チェックしてみることをおすすめします。
外国人を雇用する注意点
不正受給の対応が厳格化されている
外国人を雇って不正に助成金を受給すると「刑法第246条の詐欺罪」に問われる可能性があります。都道府県労働局は、定期的に抜き打ち検査をしており、不正が判明すると事業者の名前を積極的に公表すると発表しています。
また、不正受給が発覚すると
- 受給した全額とペナルティとして受給額の2割を返還請求
- 5年間の不支給措置
- 悪質な場合は刑事告発
といった罰を受ける為、くれぐれも不正受給になるような行動は取らないようお気をつけください。
外国人労働者が働きやすい環境を用意する
外国人労働者が働きやすい環境をつくり、長期的に働いてもらうことを目指しましょう。外国人労働者は言語や文化の違いでトラブルが起きやすく、すぐに離職してしまう可能性があるため。また助成金を受給したとしても、対象者が休業・離職してしまうと、助成金を受け取れない可能性があります。
そうならないためにも、外国人労働者にとって働きやすい制度、社内インフラの整備が重要です。
不法就労は絶対に避ける
不法就労は絶対に避けましょう。仮に不法就労が発覚すると、雇用主が知らなかったとしても罪に問われます。そのため、以下の点はかならず確認しましょう。
上記のケースに該当すると、3年以下の懲役または300万円以下の罰金を科されます。また、外国人が日本で不正に働くために在留カードを偽装するケースがあります。在留カードの偽造を見抜く方法は「こちら」を参考にしてください。
外国人雇用の助成金について紹介しました
本記事では、外国人雇用の助成金について解説しました。
外国人を雇用すると、言語や文化の違いから様々なトラブルが発生します。せっかく日本で働こうと思っている外国人労働者を雇用しても、すぐに辞めてしまうのはもったいないことです。社内の制度を整備すれば、外国人労働者が快適に働ける環境がつくれます。ぜひ、本記事を参考にして外国人の雇用制度を整えてみてください。