【2023年(令和5年)】健康診断で活用できる助成金を徹底解説
毎年の健康診断にかかる経費を削減したいと考える方も多いと思います。実は「健康診断に関する助成金」があり、利用してもらうことで経費削減が可能です。
しかし、助成金は調べても分かりにくく。
- どういう制度があるの?
- 受給条件は?
- 申請って難しそう
と頭を悩ませる担当者も多いのではないでしょうか。本記事では健康診断に使える助成金の種類や条件、申請方法について詳しく解説します。ぜひ検討にお役立てください。
助成金が活用できる健康診断の条件
助成金を活用する上で知っておきたいのが「助成対象となる健康診断」です。現行の助成金の対象となるのは、以下のいずれかである必要があります。
- 法定外健康診断
- 非正規雇用者に対して実施する健康診断
つまり、正規従業員に対する法定内健康診断では助成金の対象にならない事を把握しておきましょう。
条件1.法定外健康診断であること
健康診断には「法定内健康診断」と「法定外健康診断(労働安全衛生法で定められていないもの)」の2種類にわかれています。
法定内健康診断は企業が実施する「定期健康診断」「雇入れ時健康診断」で、法定外健康診断は「生活習慣病予防検診」や「人間ドック」に代表される検査のことです。企業は、従業員に対して法定内健康診断の実施義務がありますが、法定外健康診断は実施義務がないという点で大きく異なります。
条件2.非正規雇用者に対して実施する健康診断であること
従業員が正規雇用か非正規雇用(パート・アルバイト)であるかも重要です。正規雇用者に対しては健康診断の実施が義務づけられています。一方でパート・アルバイトであっても、一定の労働時間を超える場合は健康診断の実施対象となるため注意が必要です。
健康診断で活用できる助成金
健康診断で活用できる助成金は2種類あります。
- キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)【令和4年に廃止】
- 人材確保等支援助成金
キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)【令和4年に廃止】
「キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)」は2022年(令和4年)に廃止となっています。現時点で再開の目処は経っていません。
人材確保等支援助成金
※人材確保等支援助成金は2022年(令和4年)4月1日以降、整備計画の新規受付を休止中です。今後再開の可能性があるため、定期的に厚生労働省の助成金情報をチェックしてください。
参考:「事業主の方のための雇用関係助成金」厚生労働省
従業員にとって魅力的な職場環境を整え、離職率の低下、人材の確保・定着を目的とした助成金です。人材確保等支援助成金は、特定の社内制度を導入することで助成対象となり、以下の5つです。
- 諸手当等制度
- 研修制度
- 健康づくり制度
- メンター制度
- 短時間正社員制度(保育事業主のみ)
健康診断の助成を受ける場合は従業員が健康的に長く働けるようにすることを目的としてされている「健康づくり制度」が利用可能です。
助成対象の条件
健康づくり制度では、以下の検診制度の導入によって助成対象となります。
- 人間ドック(胃がん検診、肺がん検診、子宮がん検診、乳がん検診、大腸がん検診、歯周疾患検診、骨粗鬆(そ)症検診)
- 生活習慣病予防検診
- 腰痛健康診断
特に人間ドックは通常の健康診断では発見できない(癌がん)を早期発見できます。一定の年齢を超えると受診を希望する従業員が多いため、健康づくり制度を導入する大きなメリットとなるでしょう。
人材確保等支援助成金の対象となるには、健康づくり制度の導入に加え、以下の条件があります。
- 正社員であること
- 雇⽤保険の被保険者であること
- 社会保険の適用事業所に雇用されている場合、社会保険の被保険者であること
- 実施する健康診断費用の半額以上を事業主が負担すること
- 健康づくり制度について、その費用負担が労働協約または就業規則に明示すされていること
- 制度計画期間内に退職が予定されている者のみを対象としていないこと
特に、対象従業員は「正社員のみ」になっている点に注意しましょう。
受給額
人材確保等支援助成金の受給額は以下のとおりです。
制度の導入 |
10万円 |
目標の達成 |
57万円 |
生産性要件を満たす |
72万円 |
制度の導入・実施だけでは10万円ですが、一定目標を達成すると最大で72万円を受け取れます。
目標の種類
以下が目標として定められています。
対象事業所の雇用保険被保険者 |
1 ~9人 |
10~29人 |
30~99人 |
100~299人 |
300人以上 |
低下させる離職率(目標値) |
15% |
10% |
7% |
5% |
3% |
生産性要件とは
従業員の生産性を向上させる取り組みを評価するための指標のことです。生産性の算出は以下の式でおこないます。
具体的な生産性要件は下記です。
※直近の会計年度もその3年度前もプラスであることが必要
人材確保等支援助成金の受給までの流れ
人材確保等支援助成金の申請から受給までの流れは以下のとおりです。
※計画書提出と支給申請は本社の所在地を管轄する都道府県労働局へ行く必要があります。
注意が必要なのは、制度の導入・実施後に離職率の低下を算定する期間が12ヶ月あるという点です。
人材確保等支援助成金の申請に必要な書類
人材確保等支援助成金に申請するには以下の書類が必要です。すべてが揃っていないと審査を受けられないため、しっかりと準備しましょう。
必要書類 |
書類ダウンロードURL |
人材確保等支援助成金 (雇用管理制度助成コース) 雇用管理制度整備計画書 |
|
導入する健康づくり制度の概要票 |
|
雇用管理制度対象労働者名簿 |
|
事業所確認票 |
|
労働協約または就業規則 |
事業主が準備 |
健康診断を実施したことを 証明する書類の写し |
事業主が準備 |
対象労働者の労働条件通知書 または雇用契約書 |
事業主が準備 |
申請する事業所が社会保険の 適用事業所であることが分かる書類 |
事業主が準備 |
雇用保険一般被保険者の 離職理由等がわかる書類 |
事業主が準備 |
書類はダウンロードして記入するものと、事業主が準備するものにわかれます。とくに「導入する健康づくり制度の概要票」では以下のことを明記する必要があります。
- 現在の主な離職の原因
- 健康づくり制度の導入による効果
また「労働協約または就業規則」は現行のものだけでなく、変更予定案も提出が必要です。
提出書類を作り込むことは、採択率を上げるポイントにもなるため入念な準備が求められます。
人材確保等支援助成金の3つの注意点
申請期限は計画開始日の1~6ヶ月前の前日まで
人材確保等支援助成金の申請は計画開始の1〜6ヶ月前までにする必要があります。
たとえば、8月1日から計画開始する場合は、最低でも6月30日までに計画書を作成して申請しなくてはいけません。これが守られないと、いくら計画書を頑張って作成しても審査してもらえないため、計画的に申請手続きを進めるようにしましょう。
また、複数の計画を同時に申請できません。複数の計画を申請したい場合は、1つの計画の採択結果が出た翌日に再度申請してください。
すべての計画が実施されないと支給対象にならない
健康づくり制度の計画は、認定された内容すべてが実行されなくてはいけません。たとえば、以下のケースでは支給対象とならない可能性があります。
- 計画にある雇用管理制度の一部またはすべてが導入・実施されなかった
- 計画された対象労働者の一部または全員に実施されなかった
- 計画された対象事業所の一部または全部で導入・実施されなかった
確実に助成金を受け取るためにも、従業員に対して制度の周知と厳守を徹底しましょう。
過去に受給している場合は制限がある
過去に以下の助成金を受給した事がある場合、支給日決定から3年が経過している必要があります。
- 人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース/目標達成助成)
- 人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース/制度導入助成又は目標達成助成)
- 中小企業労働環境向上助成金(雇用管理制度助成)
- 建設労働者確保育成助成金(雇用管理制度助成コース/制度導入助成)
外部に委託する方法も
健康診断で助成金を受けるには、細かな条件、提出ルールを厳守する必要があります。書類の作成や制度の策定などをしていると、通常業務を圧迫してしまうかもしれません。
そのため、適切な人員がいない場合は外部の専門家に委託するという手もあります。
助成金の申請代行には以下のような候補があります。
- 中小企業診断士
- 社会保険労務士
- 行政書士
ただし、事務所によって助成金申請は得意ではないことがあります。検討の際には、助成金申請の実績が十分にあるのかを確認することをおすすめします。
健康診断の助成金について紹介しました
本記事では、健康診断で活用できる助成金について、条件や助成額、申請方法について解説しました。
助成金は条件やルールなどが複雑な印象を持たれることがありますが、クリアできれば相応の金額を受けられます。本記事の内容をお役立てください。