助成金申請代行にかかる費用|依頼先・選定ポイント・メリットを紹介
助成金を利用したいが、なかなか申請準備を進められていないため、申請代行の活用を検討している方もいるのではないでしょうか。
本記事では、助成金申請代行にかかる費用、依頼先、選定ポイントなどを紹介します。自社にあう申請代行業者を選定する際に本記事をお役立てください。
助成金申請代行は違法?
助成金の申請代行自体は違法ではありません。ただし、「厚生労働省が管轄する助成金」は、社会保険労務士の独占業務にあたります。社労士は厚生労働省が管轄する国家資格であり、社労士以外に申請代行を依頼すると違法になります。厚生労働省ではなく、地方自治体が提供する助成金の申請代行は、社労士以外に依頼しても違法になりません。
助成金申請代行にかかる費用
助成金申請代行を依頼する際は、費用がかかります。依頼先によって詳細な費用は異なりますが、目安となる費用を把握しておきましょう。
着手金:2〜10万円
着手金は、申請代行を依頼すると、助成金の受給の有無に関係なく発生する費用です。費用目安は2〜10万円です。基本的には、業務を依頼してから1週間後までに支払いを行います。
成功報酬:受給額の10〜30%
成果報酬は、助成金を受給した場合に限り発生する費用です。費用の目安は、支給額の10〜30%が目安です。受給する助成金が高額なほど、成果報酬は高くなるので、複数社から見積もりを取得して安いところに依頼しましょう。
種類ごとの相場
助成金ではありませんが、補助金ごとの申請代行の相場を紹介します。
補助金 |
費用相場 |
ものづくり補助金 |
着手金:5〜10万円 成果報酬:受給額の10〜20% |
事業再構築補助金 |
着手金:10万~20万円 成果報酬:受給額の10%~20% |
IT導入補助金 |
着手金:5万~10万円 成果報酬:受給額の10〜15% |
小規模事業者持続化補助金 |
着手金:5万円 成果報酬:受給額の5〜15% |
コンテンツ海外展開促進・ 基盤強化事業費補助金(J-LOD) |
着手金:5〜15万円 成果報酬:10〜20% |
助成金申請代行の依頼先
助成金申請代行の依頼先は、助成金の種類によって異なります。厚生労働省が管轄する助成金申請代行は、社労士に依頼することになります。地方自治体が管轄する助成金は、社労士を含めた中小企業診断士、行政書士、民間コンサルタントなどに申請代行の依頼が可能です。
依頼先 |
依頼できる主な業務 |
社会保険労務士 |
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中小企業診断士 |
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行政書士 |
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民間コンサルタント |
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また、助成金の多くを厚生労働省が管轄しています。スムーズに社労士へ申請代行を依頼できるように、社労士の探し方を把握しましょう。
- ビジネスマッチングサイト(仕事を依頼したい企業と仕事を受注したい企業をつなぐサービス)
- よろず支援拠点(全国に支援拠点がある中小企業や小規模事業者向けの経営相談所)
- 全国社会保険労務士会連合会
- 検索サイト(GoogleやYahoo!でキーワード検索する)
助成金の申請代行業者を選ぶポイント
国内には数多くの助成金の申請代行業者がいるので、選ぶポイントを把握して自社にあう業者に依頼しましょう。
申請実績が豊富にあるか
自社で活用したい助成金の申請実績があるか確認しましょう。実績が豊富であれば、過去の経験からスムーズな手続きを行ってもらえたり、的確なアドバイスを受けられたりします。
申請代行業者の実績は、業者のWebサイトを確認してみてください。もしWebサイトに実績が掲載されていない場合は、電話やメールなどで問い合わせをすると回答してもらえる可能性があります。
信頼できるか
助成金の申請代行業者を選定する際は、信頼性も大切なポイントです。助成金は申請してから支給されるまでに半年以上かかることもあります。申請代行業者とは長期的にやり取りすることになるので、信頼できる依頼先を見つけましょう。
信頼性については、申請代行業者の公式サイト、検索サイト・SNSなどの口コミ、問い合わせ対応の丁寧さなどをもとに信頼できるか判断してみてください。
また、中小企業に対して専門性の高い支援を行う「認定支援機関」を利用するのも1つの方法です。認定支援機関は、税務・金融・企業財務に関する専門知識や支援に係る実務経験が一定レベル以上だと国に認定されています。助成金申請代行のサービス品質が保証されているので、安心して業務を任せられるでしょう。
サービス内容を詳しく説明してくれるか
助成金の申請代行を選ぶ際は、サービス説明時の業者の対応も確認しましょう。サービス内容を詳細に説明したり、依頼者の質問に対して丁寧に説明したりする業者を選定すると、依頼後も依頼者に寄り添ったサポートをしてもらえる可能性があります。
適切な費用になっているか
助成金の申請代行は、依頼する業者によって費用が異なります。申請代行を依頼する前に、適切な費用になっているか確認しましょう。見積もりをみて気になる点があれば、不明点がなくなるまで質問してください。自社の予算にあう費用で依頼できる申請代行業者を選定しましょう。
申請代行以外のサービスを受けられるか
助成金の申請代行業者の中には、申請以外の業務もサポートしてもらえるケースもあります。例えば、助成金選びからサポートしてもらえると、自社の課題に適した助成金を選定してもらえます。
また、融資・クラウドファンディングなど、助成金に縛られないサポートを提供しているかも確認しましょう。企業の課題によっては、助成金を利用できないケースがあります。幅広いサービスに対応している業者なら、助成金に縛られず様々な角度からサポートしてもらえます。
助成金申請代行を利用するメリット
スムーズに申請できる
助成金を申請する際は、提出する書類が多岐にわたるので準備に時間がかかります。企業によっては助成金の申請以外も業務を行っており、なかなか申請準備に取り掛かれないケースがあるでしょう。
申請代行を利用すると、申請書類の準備や提出を任せられます。助成金に関する知識が豊富なので、スムーズに申請を完了してもらえるでしょう。
受給確率が高まる
助成金は書類に不備があると採択されません。特に専門知識がない状態で、助成金の申請をすると、書類に不備が発生する可能性があります。
助成金の申請代行を利用すると、専門知識を活用して正確に申請を行ってもらえます。書類の不備・ミスを減らせるため、自社で対応するよりも受給できる可能性が高まるでしょう。
自社に適した助成金を活用できる
国内には3,000種類以上の助成金と補助金があります。しかし、数多くの制度の中から、自社の課題に適したものを選定するのは容易ではありません。
助成金の申請代行以外にも対応している業者を選ぶと、自社に適した助成金を提案してもらえます。自社では把握していなかった制度を活用できるため、助成金の効果を引き出しやすくなるでしょう。
資金繰りの相談ができる
助成金は採択されてもすぐに支払われません。申請した取り組みを行った後にお金が支給されるため、自社で経費を立て替える必要があります。
助成金に縛られないサポートをしている申請代行業者を利用すると、お金が支給されるまでの資金繰りを相談できます。助成金が支給されるまでの間、資金に悩まずに経費を立て替えられるでしょう。
助成金申請代行を利用する際の注意点
助成金の申請代行はメリットだけでなく注意点もあります。注意点も把握した上で、申請代行の利用を検討しましょう。
費用がかかる
助成金の申請代行を依頼する際は、受給の有無にかかわらず着手金が発生します。さらに、成果報酬をあわせるとさらなるコストがかかります。見積もりの段階でどのくらいの費用がかかるか把握しておきましょう。
業務量に応じて費用が高額になる
当たり前ですが、申請代行業者に依頼する業務量が多いほど費用が高くなります。申請代行を利用する際は、依頼する業務内容を明確にすることが重要です。必要最低限の業務のみを依頼できれば、コストの削減につながります。
依頼先は慎重に判断する
助成金の申請代行を利用するなら、多くありませんが、違法業者が存在することに注意が必要です。違法業者に依頼してしまうと、費用を払ったにもかかわらず、満足のいくサービスを受けられない可能性があります。
申請代行を利用する際は、社労士資格の有無、申請代行業者の公式サイトなどを確認して信頼できるところに依頼しましょう。
助成金申請代行を利用できる代表的な助成金の例
最後に、助成金の申請代行を利用できる助成金を紹介します。
- 雇用調整助成金
- キャリアアップ助成金
- 両立支援等助成金
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例として提供されている制度です。新型コロナウイルスの影響で事業活動の縮小を余儀なくされた場合に限って、従業員の雇用を継続するために休業する事業主を支援しています。雇用調整助成金で助成されるのは、休業手当の一部です。
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受給額 |
休業・教育訓練の場合 |
中小企業:休業手当の2/3 大企業:休業手当の1/2 1日8,490円/人が上限 訓練費は1日1,200円/人を加算 |
出向の場合 |
出向元事業主の出向労働者の賃金に対する負担額 (出向前の通常賃金のおおむね1/2を上限額とします)に、 助成率(中小企業:2/3、大企業:1/2 )を乗じて得た額
上限額は1人1日あたり雇用保険基本手当日額の 最高額に330/365を乗じて得た額 |
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者のキャリアアップ促進をするための助成金です。非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善に取り組みを実施する事業主を支援しています。
キャリアアップ助成金は以下のように目的ごとにコースが設けられており、それぞれで受給額が異なります。
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受給額 |
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正社員化コース |
有期雇用労働者から正規雇用労働者等への転換: 中小企業57万円、大企業42万7,500円 無期雇用労働者から正規雇用労働者等への転換: 中小企業28万5,000円、大企業21万3,750円 |
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障害者正社員化コース (1年間) |
重度身体障害者、 重度知的障害者 および精神障害者 |
有期雇用から 正規雇用への転換 |
支給総額(1人あたり) 中小企業:120万円 中小企業以外:90万円 |
有期雇用から 無期雇用への転換 |
支給総額(1人あたり) 中小企業:60万円 中小企業以外:45万円 |
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無期雇用から 正規雇用への転換 |
支給総額(1人あたり) 中小企業:60万円 中小企業以外:45万円 |
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重度以外の身体障害者、 重度以外の知的障害者、 発達障害者、 難病患者、 高次脳機能障害 と診断された者 |
有期雇用から 正規雇用への転換 |
支給総額(1人あたり) 中小企業:90万円 中小企業以外: 67万5,000円 |
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有期雇用から 無期雇用への転換 |
支給総額(1人あたり) 中小企業:45万円 中小企業以外:33万円 |
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無期雇用から 正規雇用への転換 |
支給総額(1人あたり) 中小企業:45万円 中小企業以外:33万円 |
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賃金規定等改正コース |
中小企業:賃金引き上げ3%以上5%未満5万円(1人あたり)、 5%以上65,000円 大企業:3%以上5%未満33,000円、5%以上43,000円 |
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賃金規定等共通化コース |
中小企業:60万円(1事業所あたり) 大企業:45万円 |
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賞与・退職金制度導入コース |
中小企業(賞与または退職金制度を導入):40万円 中小企業(賞与と退職金制度を導入):56万8,000円 大企業(賞与または退職金制度を導入):30万円 大企業(賞与と退職金制度を導入):42万6,000円 |
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短時間労働者労働時間延長コース |
3時間以上延長した場合 中小企業:23万7,000円 大企業:17万8,000円
1時間以上2時間未満の延長(基本給を10%以上増額) 中小企業:5万8,000円 大企業:4万3,000円
2時間以上3時間未満の延長(基本給を6%以上増額) 中小企業:11万7,000円 大企業:8万8,000円 |
出典:キャリアップ助成金
両立支援等助成金
両立支援等助成金は、職業生活と家庭生活を両立させられる職場環境づくりをするための取り組みを支援する助成金です。
両立支援等助成金には、以下3コースがあります。
- 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金):男性の育児休業取得を促進する
- 介護離職防止支援コース:仕事と介護の両立を支援する
- 育児休業等支援コース:仕事と育児の両立を支援する
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受給額 |
出生時両立支援コース |
第1種(男性労働者の出生時育児休業取得):20万円 第1種(代替要員加算):20万円 (代替要員を3人以上確保した場合には45万円) 第1種(育児休業等に関する情報公表加算):2万円
第2種(男性労働者の育児休業取得率上昇) 1事業年度以内に30ポイント以上上昇した場合:60万円 2事業年度以内に30ポイント以上上昇した (または連続70%以上)場合:40万円 事業年度以内に30ポイント以上上昇した (または連続70%以上)場合:20万円 |
介護離職防止支援コース |
介護休業(休業取得時):30万円 介護休業(職場復帰時):30万円 介護休業(業務代替支援加算):新規雇用20万円、手当支給等5万円 介護両立支援制度:30万円 個別周知・環境整備加算:15万円 |
育児休業等支援コース |
【育休取得時・職場復帰時】 休業取得:30万円 職場復帰時:30万円
【業務代替支援】 新規雇用:50万円 手当支給等:10万円 有期雇用労働者加算:10万円
【職場復帰後支援】 制度導入時:30万円 制度利用時: A:子の看護休暇制度1,000円×時間 B:保育サービス費用補助制度実費の2/3 |
【まとめ】助成金申請代行の費用を紹介しました
ここまで助成金申請代行の費用を紹介しました。申請代行を依頼する場合は、着手金で2〜10万円、成果報酬で支給額の10〜30%が費用の目安です。依頼先によって詳細な費用が異なるので、見積もり時に確認してみましょう。本記事を参考に、助成金の申請代行を利用してみてください。