ものづくり補助金デジタル枠とは?対象者や申請手順をわかりやすく

ものづくり補助金デジタル枠とは?対象者や申請手順をわかりやすく

ものづくり補助金デジタル枠を利用したいが、具体的な審査要件が分からずお困りではないでしょうか。

本記事では、ものづくり補助金デジタル枠の概要や申請手順に加え、採択率を高めるポイントまで解説します。ものづくり補助金デジタル枠の採択を目指す方はぜひ参考にしてください。

目次
  1. 1. ものづくり補助金デジタル枠とは
    1. 1-1. 概要
    2. 1-2. 補助対象者
    3. 1-3. 補助額
    4. 1-4. 申請要件
    5. 1-5. 申請までのスケジュール
    6. 1-6. 通常枠との違い
  2. 2. ものづくり補助金デジタル枠に必要な書類
  3. 3. ものづくり補助金デジタル枠の申請手順
    1. 3-1. 事前準備
    2. 3-2. 申請・交付申請
    3. 3-3. 補助事業の実施
    4. 3-4. 確定検査
    5. 3-5. 補助金の請求・支払い
    6. 3-6. 事業化状況報告
  4. 4. ものづくり補助金デジタル枠に採用されるポイント
    1. 4-1. 審査項目を踏まえる
    2. 4-2. 加点項目を満たす
    3. 4-3. 専門家にサポートしてもらう
  5. 5. ものづくり補助金デジタル枠で採択された事例
    1. 5-1. アロン電機株式会社
    2. 5-2. 共同印刷工業株式会社
    3. 5-3. 有限会社ホテル十勝屋
  6. 6. ものづくり補助金デジタル枠についてまとめました

ものづくり補助金デジタル枠とは

ものづくり補助金デジタル枠とはどのようなものか、概要や補助額、対象者について解説します。

概要

そもそも、ものづくり補助金とは、中小企業や個人事業主が、経営革新や新商品開発などのための設備投資に利用できる補助金です。全国中小企業団体中央会が実施しています。

デジタル枠の場合には、DX(ITを利用し、ビジネスモデルや製品を変化させること)に関する設備やシステムへの投資が補助金の対象です。

補助対象者

申請対象者は資本金と従業員が一定より少ない中小企業や中小企業組合、特定非営利活動法人などです。補助対象者となる中小企業の具体的な規模については、業種によって以下のように異なります。

 

資本金

従業員

製造業・建設業・運輸業・旅行業

3億円以下

300人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

サービス業

(ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く)

5,000万円以下

100人以下

小売業

5,000万円以下

50人以下

ゴム製品製造業

3億円以下

900人以下

ソフトウェア業・

情報処理サービス業

3億円以下

300人以下

旅館業

5,000万円以下

200人以下

その他の業種

3億円以下

300人以下

中小企業以外の補助対象については以下の資料をご確認ください。

ものづくり補助金|公募要項

補助額

デジタル枠の補助上限額と補助率は以下の通りです。

従業員規模

補助額上限

※かっこ内は大幅賃上げに係る補助上限額引上げの

特例を受けた場合の追加上限

補助率

5人以下

750万円(100万円)

2/3以内

 

6〜20人

1,000万円(250万円)

21人以上

1,250万円(1,000万円)

申請要件

基本要件

・給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させること

・毎年事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にすること

・事業者全体の付加価値額を年率で平均3%以上増加させること

(上記全て補助事業実施期間内に達成することが必要)

 

大幅賃上げに係る補助上限額引上げの特例

・給与支給総額を年率平均1.5%以上増加に加え、

 さらに4.5%増加させる(合計6%増加させる)こと

・毎年事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上に加え、

 さらに年額+45円増額させること

・上記達成に向けて詳細な計画書の作成すること

(上記全て補助事業実施期間内に達成することが必要)

 

デジタル枠固有の申請要件

・デジタル技術を利用し革新的な製品・サービスの開発する、

 または生産プロセスやサービス提供方法を改善すること

・DX推進指標を活用し、DX推進状況の自己診断結果を

 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に提出すること

・独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する

 「SECURITY ACTION」の「一つ星」または「二つ星」

 いずれかの宣言を実施していること

ものづくり補助金の申請要件は全ての枠で共通する基本要件と、デジタル枠固有の要件の両方を満たす必要があります。基本要件は以下の通りです。

  • 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させること
  • 毎年事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にすること
  • 事業者全体の付加価値額を年率で平均3%以上増加させること

これらを補助事業実施期間内に達成する必要があります。

また、補助事業実施期間内で、以下の条件を満たす場合には、大幅賃上げに係る補助上限額引上げの特例が受けられます

  • 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加に加え、さらに4.5%増加させる(合計6%増加させる)
    こと
  • 毎年事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上に加え、さらに年額+45円増額させること
  • 上記達成に向けて詳細な計画書の作成すること

デジタル枠固有の申請要件は以下の通りです。

  1. デジタル技術を利用し革新的な製品・サービスの開発する、または生産プロセスやサービス提供方法を改善すること
  2. DX推進指標を活用し、DX推進状況の自己診断結果を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に提出すること
  3. 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の「一つ星」または「二つ星」いずれかの宣言を実施していること

2と3については、申請前に条件を満たしていることが条件です。

DX推進指標とは、企業内で(DX)の推進に向けた現状や課題に対する認識を共有し、アクションにつなげるための気付きの機会を提供するための指標です。DX推進指標についての詳細は以下をご確認ください。

参考: IPA|DX推進指標について

SECURITY ACTIONとは、中小企業が、情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する制度です。IPAが認定するものではありません。

SECURITY ACTIONの具体的な宣言手順は以下をご覧ください。

参考:情報セキュリティ対策支援サイト|SECURITY ACTION自己宣言

申請までのスケジュール

ものづくり補助金の申請は枠に関わらず共通で、2023年8月8日時点で、16次申請までの公募が可能です。

応募期間

2023年11月7日17時

審査期間

2024年1月中旬予定

ものづくり補助金の最新スケジュールを確認したい方はこちらをご確認ください。

参考:ものづくり補助事業公式ホームページ|スケジュール

通常枠との違い

デジタル枠は通常枠よりも要件が多くなり、申請難易度が高くなっています。基本要件に加え、デジタル枠での要件を満たさなければいけません。その反面、補助率は通常枠の場合は1/2ですが、デジタル枠の場合は2/3と、補助率の面で優遇されています。

ものづくり補助金デジタル枠に必要な書類

ものづくり補助金デジタル枠の申請に必要な書類は以下の通り。

  • 事業計画書
  • 補助経費に関する誓約書【様式1】
  • 賃金引上げ計画の誓約書【様式2】
  • 確定申告書
  • 従業員数の確認資料(所得税青色申告決算書または所得税白色申告収支内訳書の写し)
  • 労働者名簿
  • 大幅な賃上げ計画書【様式4】

デジタル枠の申請の際に必要な様式は、以下からダウンロード可能です。

ものづくり補助金総合サイト 公募要項

また、サイバーセキュリティお助け隊の契約書を添付すると審査で加点を受けられます。サイバーセキュリティお助け隊とは、中小企業のサーバーセキュリティ対策に必要なサービスをまとめたサービスのことです。

参考:IPA|サイバーセキュリティお助け隊サービス制度

ものづくり補助金デジタル枠の申請手順

ものづくり補助金デジタル枠の申請手順は以下の通りです。

ものづくり補助金デジタル枠とは?対象者や申請手順をわかりやすく_3

それぞれの手続きについて、次で解説します。

事前準備

ものづくり補助金デジタル枠で事前に準備すべきものは以下の通りです。

  • GBizIDプライムアカウント
  • 事業計画書
  • IT支援事業者と導入ツールの選定

GBizIDプライムアカウントとは、ものづくり補助金の申請に必要なアカウントです。必要書類の提出や手続きに利用します。GBizIDプライムアカウントは以下から申請可能です。

参考:gBizIDプライム申請書作成

申請・交付申請

ものづくり補助金の応募申請は郵送では手続きができず、電子申請でのみ行えます。電子申請は以下のサイトから行えます。

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

申請後は審査に通り、補助金交付候補者として採択された場合に、採択通知が届きます。採択通知が届いた後、約1ヶ月で交付申請ができるようになります。交付申請は、補助金対象経費を事務局が精査する手続きです。

補助事業の実施

事業計画書に沿って、補助事業実施期間内に、発注・事業実施・中間報告・実績報告を行います。補助事業実施期間は、交付決定日から10ヶ月までの期間です。補助事業実施期間前に発注の契約を結ぶと交付の対象外となるため、注意が必要です。

確定検査

確定検査は補助事業の実施と実績報告が行われたあとで、実施される検査です。ものづくり補助金の事務局から行われ、実績報告書の内容通りに事業が行われたか、機械設備等の入手・支払、補助事業の成果などを確認します。

補助金の請求・支払い

確定検査が完了し、問題がなかった場合には、補助金の金額が確定し、事務局から補助金確定通知書が届きます。その後、補助金精算払請求書を使って補助金の請求を行ったのち、補助金が入金され
ます。

事業化状況報告

補助事業が終了して5年経過するまでは、補助事業の成果について報告する義務があります。事業か状況報告をしない場合、補助対象外となる可能性があるため、注意が必要です。

ものづくり補助金デジタル枠に採用されるポイント

ものづくり補助金の採用されるポイントは以下の通りです。

ものづくり補助金デジタル枠とは?対象者や申請手順をわかりやすく_2

それぞれのポイントについて、次で解説します。

審査項目を踏まえる

ものづくり補助金デジタル枠には審査があり、審査に通らなければ補助金は受け取れません。審査項目は公募要項に記載があり、具体的な内容は以下の通りです。

 

具体的な審査項目

技術面

・事業内容の革新性

・課題や目標の明確さ

・技術的な能力

事業化面

・事業の実施体制

・市場ニーズがあるか

・事業化までのスケジュールが妥当かどうか

政策面

・地域経済への波及効果があるか

・隙間事業で高い競争力を持てるか

大幅賃上げについての妥当性

※大幅賃上げに取り組む場合のみ

・賃上げ計画の内容と根拠

・継続性と企業の成長見込み

 

事業計画書を作成する際には、上記の点を踏まえて作成を心がけると、審査に通る可能性が高まり
ます。

加点項目を満たす

上記の審査項目とは別で、条件を満たすことで、加点される要素もあります。具体的には以下の表の通りです。

 

具体的な加点項目

成長性加点

・有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者

政策加点

・創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)

・パートナーシップ構築宣言を行っている事業者

・再生事業者

・デジタル技術の活用及びDX推進の取組状況

・2022年度に健康経営優良法人に認定された事業者

・技術情報管理認証制度の認証を取得している事業者

・J-Startup・J-Startup 地域版に認定された事業者

災害等加点

・事業継続力強化計画の認定を取得した事業者

賃上げ加点等

・事業計画期間における給与支給総額と事業場内最低賃金について、

 計画の作成と誓約書を提出する

女性活躍等の推進の

取り組み加点

 

・女性活躍推進法に基づく「えるぼし認定」を受けている事業者

・「女性の活躍推進企業データベース」に女性活躍推進法に基づく

 一般事業主行動計画を公表している(従業員100人以下の場合)

・次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく

 「くるみん認定」を受けている

・「両立支援のひろば」に次世代育成支援対策推進法に基づく

 一般事業主行動計画を公表している事業者(従業員100人以下)

それぞれの加点項目の詳細については、以下の公募要項をご確認ください。

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(16次締切分)

加点要素には様々な要素が含まれるため、条件に当てはまらないか探してみましょう。

専門家にサポートしてもらう

ものづくり補助金では、認定経営革新等支援機関の利用を受けられます。認定経営革新等支援機関とは、中小企業の支援について一定水準以上の専門知識や実務経験があると国から認められている支援機関です。

参考:中小企業庁|認定経営革新等支援機関検索システム

専門家によるサポートを受けられることで、事業計画書の内容がブラッシュアップされ、採択率を高められるでしょう。

ものづくり補助金デジタル枠で採択された事例

ここでは、ものづくり補助金を通して、DX関連の設備投資をした企業の事例を紹介します。

企業名

特徴

アロン電機株式会社

・金型、治具、半導体製造装置部品、自動機・省力化装置等の製造

・高精度縦型マシニングセンタを導入による自動化を進め、

 生産性の向上や現場作業者の負荷軽減を実現

共同印刷工業株式会社

・出版会社

・高精度の印刷物検査機を導入し、

 チェック業務の負担軽減、自動化に成功

有限会社ホテル十勝屋

・ホテル業

・フロントでの自動チェックイン・チェックアウト機を導入し、

 チェックアウト待ちの人で溢れる状態の改善

アロン電機株式会社

ものづくり補助金デジタル枠とは?対象者や申請手順をわかりやすく_1

画像引用:アロン電機株式会社

アロン電機株式会社は鹿児島県に本社を置き、金型、治具、半導体製造装置部品、自動機・省力化装置等を製造する立地する中堅企業です。

2017年度ものづくり補助金事業では、従来は手作業で時間がかかるステンレス等難削材加工の時間短縮を目的に、高精度縦型マシニングセンタを導入しました。この機械の導入により自動化がなされ、生産性の向上や現場作業者の負荷軽減を実現させました。

今後は、手間がかかる業務のロボット化や属人的な職人仕事の機械化をさらに進めていく予定です。

共同印刷工業株式会社

ものづくり補助金デジタル枠とは?対象者や申請手順をわかりやすく_4

画像引用:共同印刷工業株式会社

共同印刷工業株式会社は京都にある印刷会社です。大学が多い京都という環境を生かし、専門書や教養書、参考書などを主に出版しています。高度な専門性が求められる専門書では印刷ミスへのチェックが重要で、多くの時間と人的負荷がかかり、ネックとなっていました。

そのような問題解決のため、2017年にものづくり補助金を申請し、高精度の印刷物検査機を導入。対象業務の大部分の自動化に成功しました。

今後は全日本印刷工業組合連合会(全印工連)にて「印刷DX推進プロジェクト」を立ち上げ、DX化に向けて事業活動を推進する一員として活動する予定です。

具体的には、付加価値を作るための組合員間受発注システム、生産性を高める生産管理システム、経営の見える化を進める業務基幹システムの導入を導入しようとしています。

有限会社ホテル十勝屋

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画像引用:有限会社 ホテル十勝屋

北海道にある有限会社ホテル十勝屋は、人手不足の解消と業務の効率化で余力が生まれた人材を生かし、宅配弁当事業という新規事業を成功させることを目的にものづくり補助金を導入しました。

ものづくり補助金を2018年に利用し、厨房での急速冷凍調理システムと、フロントでの自動チェックイン・チェックアウト機を導入。

導入後はフロントでのチェックアウト待ちで人が溢れている状態が解消され、顧客リピート率が補助金申請時の60%から72%に向上、「じゃらん」の「接客・サービス」評価も3.9から4.1に向上しました。

ものづくり補助金デジタル枠についてまとめました

本記事では、ものづくり補助金デジタル枠の概要や申請手順についてまとめました。ものづくり補助金デジタル枠は通常枠と比較して申請要件が増えるものの、補助率の点では優遇が受けられます。

しかし、ものづくり補助金の審査に通るためには、審査項目や加点要素を意識した事業計画書を作成することが大切です。