ものづくり補助金は農業に利用できる|採択案件・事例を紹介

ものづくり補助金は農業に利用できる|採択案件・事例を紹介

農業関連の事業者のなかには設備投資のために、ものづくり補助金の活用を検討している方もいるのではないでしょうか。

本記事では、ものづくり補助金の概要、採択率を高めるポイントなどを解説します。農業関連事業での設備投資のために、ものづくり補助金を申請する際にお役立てください。

目次
  1. 1. 農業に利用できるものづくり補助金の概要
    1. 1-1. 補助対象者
    2. 1-2. 補助対象事業の申請要件
    3. 1-3. 補助額と補助率
    4. 1-4. 補助対象経費
    5. 1-5. 審査項目
    6. 1-6. 申請に必要な書類
  2. 2. ものづくり補助金の手続きの流れ
  3. 3. 農業におけるものづくり補助金の採択率を高めるポイント
    1. 3-1. 公募要領を入念に確認する
    2. 3-2. 申請事業の革新性を意識する
    3. 3-3. 加点項目を意識する
    4. 3-4. 客観的なデータを提示する
    5. 3-5. プロに相談する
  4. 4. 農業にものづくり補助金を利用する際の注意点
    1. 4-1. 汎用性のあるものは補助経費の対象外になる
    2. 4-2. 農業の開業資金には使えない
    3. 4-3. 農作物の種類を増やすだけは不採択になりやすい
  5. 5. 農業におけるものづくり補助金の採択案件一覧
  6. 6. 農業におけるものづくり補助金の活用例
    1. 6-1. システム導入によるミニトマトの生産効率の向上
    2. 6-2. 最新設備の導入で米の乾燥・調製ラインを一新
    3. 6-3. 接木ロボットの導入によるリレー生産体制の構築
  7. 7. 【まとめ】農業におけるものづくり補助金を紹介しました

農業に利用できるものづくり補助金の概要

補助対象者

農業でものづくり補助金を利用する際の補助対象者は「資本金3億円以下」「常勤従業員数300人以下の法人または個人」に該当する会社または個人です。大手企業よりも中小企業向け補助金になります。

また、以下に該当する組合も補助対象者です。

  • 企業組合
  • 協業組合
  • 事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会
  • 商工組合、商工組合連合会
  • 商店街振興組合、商店街振興組合連合会
  • 生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会

上記に該当しない組合や財団法人(公益・一般)、社団法人(公益・一般)などの任意団体は対象外です。

補助対象事業の申請要件

ものづくり補助金は補助対象者であること以外にも、申請要件を満たす必要があります。申請する際は、以下の要件を全て満たす3〜5年の事業計画書の策定が必須です。

  • 事業計画期間で給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる
  • 事業計画期間で事業場内最低賃金を毎年地域別最低賃金+30円以上の水準にする
  • 事業計画期間で事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加させる

上記の要件を確認した上で、事業計画書を作成してください。

補助額と補助率

ものづくり補助金には複数の申請枠が定められており、それぞれで補助上限額と補助率が異なります。

申請枠

補助額

補助率

通常枠

従業員数5人以下:100万~750万円

6人~20人:100万~1,000万円

21人以上 :100万~1,250万円

経費の1/2、2/3

(小規模企業者・

小規模事業者、再生事業者)

回復型賃上げ・

雇用拡大枠

2/3

デジタル枠

2/3

グリーン枠

【エントリー類型】

従業員数5人以下:100万~750万円

6人~20人:100万~1,000万円

21人以上 :100万~1,250万円

 

【スタンダード類型】

従業員数5人以下:750万~1,000万円

6人~20人:1,000万~1,500万円

21人以上 :1,250万~2,000万円

 

【アドバンス類型】

従業員数5人以下:1,000万~2,000万円

6人~20人:1,500万~3,000万円

21人以上 :2,000万4,000万円

2/3

グローバル市場開拓枠

100万〜3,000万円

1/2、2/3

(小規模企業者・小規模事業者)

補助対象経費

ものづくり補助金の補助対象経費になるのは、以下のとおりです。

補助対象経費

機械装置・

システム構築費

・機械・装置、工具・器具の購入、

 製作、借用に必要な経費

・専用ソフトウェア・情報システムの購入・

 構築・借用に必要な経費

・改良・修繕または据付けに必要な経費

運搬費

・運搬料、宅配・郵送料等に必要な経費

技術導入費

・知的財産権等の導入に必要な経費

知的財産権等関連経費

・特許権等の知的財産権等の取得に必要な

 弁理士の手続代行費用

外注費

・新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)

 検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費

専門家経費

・本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費

クラウドサービス利用費

・クラウドサービスの利用に関する経費

原材料費

・試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に必要な経費

上記に該当しない場合、ものづくり補助金の経費として認められません。補助金が支払われなくなるので注意しましょう。

審査項目

ものづくり補助金は公募要領に審査項目が記載されています。どのような観点で審査されるのかを意識して申請することで、採択される可能性が高まるでしょう。

審査項目

概要

技術面

・取組内容の革新性

・課題や目標の明確さ

・課題の解決方法の優位性

・技術的能力

事業化面

・事業実施体制

・市場ニーズの有無

・事業化までのスケジュールの妥当性

・補助事業としての費用対効果

政策面

・地域経済への波及効果

・ニッチトップとなる潜在性

・事業連係性

・イノベーション性

・事業環境の変化に対応する投資内容

炭素生産性向上の取組等の妥当性

(グリーン枠のみ)

・温室効果ガス削減等に資する投資

・設備投資効果の妥当性

・設備投資の効果、根拠

・継続的な取組実施

グローバル市場開拓の取組等の妥当性

(グローバル市場開拓枠のみ)

・実施体制、事業計画、遂行能力の有無

・市場調査分析、国際競争性

・国内地域の需要・雇用の創出

・マーケティング戦略の内容

大幅賃上げの取組等の妥当性

(大幅賃上げに取り組む事業者のみ)

・賃上げ計画の内容及びその根拠

・継続性、企業の成長の見込み

また、ものづくり補助金は審査の加点になる項目も定められています。

加点項目

概要

成長性加点

・有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者

政策加点

・創業・第二創業後間もない事業者

・パートナーシップ構築宣言を行っている事業者など計9項目

災害等加点

・有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者

賃上げ加点等

・給与支給総額の増加、事業場内最低賃金の水準

・被用者保険の適用拡大の対象

申請時には審査項目に加えて、加点項目も意識してみてください。

申請に必要な書類

ものづくり補助金の申請に必要な書類は多くあるので、スムーズに申請をするために把握しましょう。

  • 事業計画書
  • 補助経費に関する誓約書
  • 賃金引上げの誓約書
  • 決算書等
  • 従業員数の確認資料
  • 労働者名簿
  • 「再生事業者」に係る確認書(再生事業者のみ)
  • 課税所得の状況を示す確定申告書類(回復型賃上げ・雇用拡大枠のみ)
  • 炭素生産性向上計画及び温室効果ガス排出削減の取組状況(グリーン枠のみ)
  • 大幅な賃上げ計画書(大幅な賃上げに係る補助上限額引上の特例のみ)
  • 海外事業の準備状況を示す書類(グローバル市場開拓枠のみ)
  • その他加点に必要な資料

申請枠によって必要な書類が異なるため、確認した上で申請準備を行ってみてください。

ものづくり補助金の手続きの流れ

ものづくり補助金の申請手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 事前準備
  2. 公募開始
  3. 申請
  4. 採択発表
  5. 交付申請・交付決定
  6. 補助事業実施
  7. 確定検査
  8. 補助金の請求
  9. 補助金の支払い
  10. 知的財産権等報告
  11. 事業化状況報告

公募期間は年度によって異なるので、事前に確認してから申請しましょう。

農業におけるものづくり補助金の採択率を高めるポイント

ものづくり補助金は農業に利用できる|採択案件・事例を紹介_2

農業でものづくり補助金を利用するなら、これから紹介するポイントを意識して申請の準備をしましょう。

公募要領を入念に確認する

ものづくり補助金の公募要領には、対象事業者、対象事業、基本要件、補助金額、スケジュールなどが記載されています。公募要領の理解が深まると、自社の事業はものづくり補助金に適しているのか、何を意識して申請準備をすればよいのかなどがわかります。

また、申請に必要な情報を理解していると、効率的に準備ができるのでスムーズな手続きが行えます。事前に公募要領の理解を深めてから申請しましょう。

申請事業の革新性を意識する

ものづくり補助金は事業の革新性が重要です。毎年、多くの事業者が補助金の申請をするため、革新性を意識することで、審査員に他社との違いをアピールしやすくなります。事業計画書を作成する際は、自社の事業の革新性をアピールしましょう。

加点項目を意識する

ものづくり補助金には、審査項目に加えて加点項目が設けられています。申請内容が加点項目を満たしていると採択率が高まります。公募要領に自社で狙える項目があるか確認して、申請内容に含めてみてください。

客観的なデータを提示する

ものづくり補助金を申請する際は、客観的なデータを含めて事業計画に具体性を持たせましょう。「売上アップ」「生産性の向上」などのように漠然とした情報だけだと、審査員に補助金を支給する必要性が伝わりづらくなります。自社の課題や解決方法などの記載に客観的なデータを含めて、自社の取り組みをアピールしましょう。

プロに相談する

ものづくり補助金を申請するには、多くの書類の提出が必要です。申請の準備にはテーマや労力がかかるので、自社のみで対応できないケースもあるでしょう。

自社で対応しきれない場合は、補助金のプロに相談することも1つの方法です。専門的な知識を持っており、ものづくり補助金の申請をサポートしてもらえます。的確なアドバイスをもらいながら申請できるため、自社で対応するよりも採択される可能性が高まるでしょう。

農業にものづくり補助金を利用する際の注意点

ものづくり補助金は農業に利用できる|採択案件・事例を紹介_1

農業にものづくり補助金を利用する際は、注意しなければならない点がいくつかあります。採択率を高めるために注意点を把握した上で申請しましょう。

汎用性のあるものは補助経費の対象外になる

ものづくり補助金は、補助事業の生産性向上を目的にした制度です。補助事業以外にも使える汎用性の高い経費は、補助対象外になります。

例えば、米の生産に使用するドローン田植え機を導入するとします。ドローンは米の生産性向上にのみ使えるため、補助経費として認められます。

しかし、米作りに使用するトラックは、補助事業以外にも使えるので経費として認められません。ものづくり補助金を申請する際は、どのような経費が対象になるか確認しましょう。

農業の開業資金には使えない

ものづくり補助金は、革新的サービス・試作品開発・生産プロセスの改善に取り組み、生産性向上を実現するための設備投資を支援する制度です。すでに事業として実績のあるものが対象になるので、農業の開業資金には利用できません

事業を創業してから、2期目以降であれば補助金に申請できます。創業から5年以内の事業者であれば、政策加点が認められるため、審査に有利になる制度があるので活用してみましょう。

農作物の種類を増やすだけは不採択になりやすい

ただ単に農作物の種類を増やすだけの場合、ものづくり補助金の目的を満たせないので、不採択になりやすい傾向にあります。例えば、レタスを生産している事業者が売上を上げるために、ミニトマトやキャベツなどを新たに生産するケースは採択されない可能性があります。

一方で、レタスの生産性向上を行うために導入した機械を利用して、他の農作物を作る場合は採択される可能性があります。ものづくり補助金を利用する際は、制度の目的にあう事業内容で申請しましょう。

農業におけるものづくり補助金の採択案件一覧

ものづくり補助金を申請するなら、過去の採択案件を把握することで、活用イメージを掴みやすくなります。

過去に採択された農業案件は以下のとおりです。

  • 自動操舵システム導入による農作業の飛躍的な生産向上事業
  • 肥料散布機導入による作業効率化・省力化、肥料散布の最適化
  • 最新型ポテト収穫機の導入による、収穫時期最適化及び収量アップ
  • 最新の機材導入による最適な肥料・農薬散布技術の確立と生産性向上
  • 最新型こんにゃく生産システムによる工程標準化と生産性向上事業
  • 生産能力強化・収益構造の安定化へ向けた大型大豆収穫機の導入
  • 北海道産ブランド米の需要拡大に伴う生産性向上による安定供給体制の確立
  • 最新型コンバイン導入による豆の品質向上および収量増加計画
  • 間作播種・肥料散布・農薬散布の3作業を農業用ドローンでスマート化
  • 土壌づくりや防除作業における効率の向上

令和元年度補正・令和3年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 第13次締切採択案件一覧」で採択事業を確認できるので、申請の参考にしてください。

農業におけるものづくり補助金の活用例

農業にものづくり補助金を活用するなら、実際の活用例を参考にして、自社の申請に活かしましょう。

システム導入によるミニトマトの生産効率の向上

静岡県でミニトマトを生産する農園では、環境制御技術を導入して、トマトの品質と生産性を高めるためにものづくり補助金を活用しました。同園は、質の高いミニトマトを作るには、日照・温度・湿度など客観的なデータに基づいたハウスの環境制御設備の導入が欠かせないと考えていました。

そこで、補助金を利用して以下の設備を導入しています。

  • ミスト発生装置
  • 2層自動カーテン装置
  • CO2発生装置
  • 除湿機
  • 加湿器
  • CO2発生装置
  • 循環ファン

稼働して半年でミニトマトの収量・品質が向上し、バイヤーからの評価も高く、首都圏のスーパーから取引量を倍増したいという引き合いがあったそうです。

最新設備の導入で米の乾燥・調製ラインを一新

広島の企業は、米の乾燥・調製ラインを再構築し、処理能力の増強とブランド力を強化するためにものづくり補助金を活用しました。同社は、乾燥・調製ラインの1日あたりの処理能力が低く、収穫作業が適正期間を超えており、米の品質維持が困難という課題を抱えていました。

そこで、他社にない新たな機能がある最新型の設備「汎用粗選機・中型遠赤乾燥機」および色彩選別機を導入しています。同時に乾燥・調製工程の再構築を行った結果「米の乾燥・調製処理の能力を増強」「米のブランド力強化」を実現しました。

接木ロボットの導入によるリレー生産体制の構築

高品質の花と野菜の苗をプロの生産家や家庭園芸を楽しむ園芸家に提供する企業は、接木ロボットの導入によるリレー生産体制を構築するために補助金を活用しています。

同社は1979年に設立され、千葉県印西市で新品種の試験や野菜の播種、接木、苗作りなどを行う農場を展開しています。その後、1989年に長野農場を開設し、本社で生産した種苗からポット苗を生産しています。

長野農場では、本社で取り組んでいたリレー生産体制を構築し、気温差を活かした生産可能時期の拡張、多品種少量生産が前提の商品ラインナップ充実に取り組みました。その一環として補助金を利用し、オランダ製の接木ロボットを導入しました。さらに、安定的な生産体制に必要な知識レベルを高めるために、勉強会・運用体制を構築しています。

取り組みの結果、野菜苗の生産時期の拡大、安定的な生産が行えるようになりました。同時に、オランダ型施設園芸農業の進展の後押しにも取り組んでいます。

【まとめ】農業におけるものづくり補助金を紹介しました

ここまで農業におけるものづくり補助金について紹介しました。ものづくり補助金は条件を満たしていれば農業でも申請が可能です。しかし、補助金を得るには審査が必要なので、申請したからといって採択されるわけではありません。本記事を参考に、ものづくり補助金の申請に取り組んでみてください。