助成金を不正受給するのはNG!問題点・具体例・対処法まで解説!
助成金の不正受給は度々ニュースでも取り上げられており、対応強化が進んでいます。意図せず不正受給をしてしまっていた場合は、できるだけ早めに対応しましょう。
本記事では助成金の不正受給を行なった場合にどうなるかや、不正受給の具体例、不正受給してしまった場合の対処法まで解説します。本記事を読めば、不正受給に気づいた際にすぐ対処し、問題を最小限に止める方法が分かるでしょう。
助成金の不正受給は違法
助成金の不正受給は違法行為で、悪質な場合には刑事事件として詐欺罪に問われる可能性があります。実際に助成金を受け取った場合はもちろん、不正受給を目的に申請した段階で不正受給に該当します。
申告すべきことを申告しなかった場合は、意図的ではないにしても不正受給とみなされることがあります。助成金の不正受給は、違法行為である以上絶対にやるべきではありません。
不正受給の現状
さまざまな助成金や補助金で不正受給の被害は深刻化しています。
例えば新型コロナウイルス感染症の影響により、事業活動の縮小を余儀なくされた人を対象とした雇用調整助成金では、2022年9月末時点で不正受給の金額が135億円に達しています(*)。
雇用調整助成金は新型コロナウイルス感染症対策の特例として、手続きが簡略化されていました。また大企業の場合、上限額が1日1人あたり15,000円と高額だったことが、多くの不正受給を生んだ要因と考えられています。
このような状況を踏まえ、不正受給に対する対応を強化する動きが強まっており、後述する罰則の強化や積極的な調査を増やすことなどが公表されています。
(*)時事通信ニュース|雇調金、不正受給135億円=9月末、厚労省集計
代表者が把握していない場合も不正受給に該当する
経営者など、会社の代表が実態を把握せず、意図していない不正受給もあるでしょう。しかしそのような場合でも、責任は当然代表者にあります。
例えば厚生労働省の雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金では、代表者が把握していない場合でも、不正受給となり、公表の対象です。
そのため不正受給を防ぐためにも「代理人や社会保険労務士に任せている」と任せっきりにせず、必ず代表者も確認しましょう。
不正受給した場合どうなる?
不正受給が発覚した場合の対応は、補助金や助成金によって異なります。そのため、具体的な内容は申請した助成金や補助金の事務局に確認しましょう。
ここでは、雇用調整助成金の場合、どのような対応が取られるかを解説します。
関連記事:キャリアアップ助成金の不正受給の実態|発覚理由やペナルティを紹介
自主申告しなければ公表される
雇用調整助成金では、自主申告をせず、検査によって不正受給が発覚した場合、不正受給者として以下の情報が公表されます。
- 事業主の名称・所在地
- 代表者氏名
- 事業の概要
これらの情報が公開されることで、取引先や顧客からの信頼を損なう可能性が高いでしょう。その結果、取引停止などの問題が起きることもあります。
助成金の返還
雇用調整助成金の不正受給があると、助成金に加算された金額の返還が求められます。
具体的には以下の金額の合計です。
- 不正発生日を含む判定基礎期間以降に受給した助成金の全額
- 不正受給した助成金の額の2割に相当する額
- 延滞金(不正受給の日の翌日から納付の日まで年3分)
判定基礎期間とは、雇用調整助成金の要件である休業実績を判定するための期間で、おおよそ1ヶ月間です。
5年間の支給停止
雇用調整助成金の不正受給が発覚した場合、5年間は雇用関係助成金の受給が受けられません。
また、不正受給に関わった役員が他の企業でも役員となっている場合、その企業でも雇用関係助成金の申請ができなくなります。
社会保険労務士・代理人・訓練実施機関も罰則対象
社会保険労務士や代理人、訓練実施機関についても、罰則の対象です。不正受給に社会保険労務士や代理人が関与していた場合、事業所の所在地や名前、不正内容などが公表されます。
刑事告訴の可能性
意図的に書類の偽造を行うなど、悪質な不正受給を行っている場合には刑事告訴される可能性があります。刑事告訴がされると、刑事手続きへの対応が必要となる他、逮捕や起訴されるリスクもあるでしょう。
不正受給が発覚する要因
不正受給が発覚する要因はさまざまです。大まかには以下の要因があるでしょう。
- 労働局による調査
- 内部告発
- 他社からの情報提供
特に労働局による調査は強化していくと明言されており、どの程度強化されるかは公言されていないものの、調査自体が増えていくことは予想されます。
不正受給の具体例
不正受給はさまざまな事例があります。比較的多く見られるのが以下のような事例です。
これらの不正受給について、実際の事例を交えつつ、紹介します。
労働時間の改ざん
労働時間の改ざんとは、残業しているにもかかわらず、タイムカードの打刻させず、出勤簿の内容を改ざんするなどの行為が該当します。
架空の人物の雇用
架空の人物の雇用とは以下のような行為により、補助金や助成金の要件を満たしていると偽装することです。
- 退職した社員を現在も雇用していることに見せかける
- 架空の人物を雇用させているように装う
架空の休業
架空休業とは、休業していないにもかかわらず、休業していることを装うことです。例えば実際には出勤していないにもかかわらず、実際には従業員に出勤させているなどが該当します。
軽井沢町の卸売業を営む会社では、2年間従業員を休ませているといううその書類を提出し、およそ3,443万円の雇用調整助成金を不正に受け取っていました。この事業所の代表は詐欺の疑惑で逮捕されています。
不正受給してしまった場合の対処法
不正受給してしまった場合は、気づいた段階でできるだけ早く自主申告し、自ら実態の調査を行う必要があります。雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の場合、具体的な手順は上図の流れで行います。不正受給が発覚したら、できるだけ早く対応しましょう。
なお雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金では、提出や提示した書類等は支給決定日から起算して5年間保存することが義務付けられています。
書類がない場合などは、不正受給ではなく不適正に該当し、同じく早急に対処が必要ですので合わせて注意しましょう。
参考:雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金を受給(又は申請)した事業主の皆さまへ
1.都道府県労働局に連絡
不正受給をしている場合、把握している内容が一部であっても発覚した時点で、対象とする助成金の事務局に対して、自主申告しましょう。
雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の場合、自主申告をすることで、事業者名の公表を避けることが可能です。ただし、重大な場合や悪質な場合は、非公表の対象外になることもあります。
なお返還が困難な場合は返還までの期間について、不正受給の事実が公表されますが「自主申告したこと」も公表されます。
全体像が把握できていない場合は、自ら実態調査を行う必要があります。「一部で不正受給があったが、全体は調査中」という旨を伝えましょう。
2.書類の提出
対象となる補助金や助成金について、要件に合致しないことがわかる書類を労働局に提出します。
3.実態の調査
不正受給の自主申告後、まずは企業側で実態の調査を行います。実態調査を行い、不正受給に該当することが分かる書類をすべて集め、不正受給の全実体を事務局に報告しましょう。
実態の調査後には、都道府県労働局からも調査されます。調査に非協力的な場合は、自主申告とみなされない可能性があるため、調査への協力は必須条件です。
自主申告時に、提出した書類に抜け漏れや間違いがないかは慎重に確認しましょう。抜け漏れや間違いがある場合、それらも不正受給と見なされる可能性があります。
助成金を不正受給した際の問題や対処法について解説しました
本記事では助成金を不正受給した場合の問題点や、対処法について解説しました。不正受給は違法行為であり、絶対にやるべきではありません。
ただし意図的ではなくとも、不正受給につながる恐れもあります。そのため、そのような事態に陥らないよう、支給要件や申請状況を確認し、適切に助成金の申請が行えているか代表者自身が必ず確認しましょう。