創業補助金とは?活用するメリットやデメリット、申請手順を解説

創業補助金とは?活用するメリットやデメリット、申請手順を解説

創業を考えたとき、資金が足りないからすぐにアクションを起こせない、とお悩みではありませんか?そこで利用できるのが地方自治体支援による創業補助金です。

創業補助金の利用により、創業に必要な資金を補うことができます。この記事では、創業補助金の申請条件や創業補助金の申請手順などについて解説

最後まで読めば、創業補助金を申請するか判断できます。また申請する場合のフローもわかり、アクションを起こすことが可能です。

目次
  1. 1. 創業補助金とは
    1. 1-1. 助成金との違い
    2. 1-2. 交付金・給付金との違い
  2. 2. 創業補助金を活用するメリット
  3. 3. 創業補助金を活用するデメリット
  4. 4. 創業補助金の申請条件
  5. 5. 創業補助金の申請手順
    1. 5-1. 事業計画書・申請書の提出
    2. 5-2. 審査
    3. 5-3. 審査結果通知
    4. 5-4. 期間終了後に報告書を提出
    5. 5-5. 補助金交付
  6. 6. 創業時に活用できる補助金・助成金
    1. 6-1. 経済産業省系の補助金・助成金
    2. 6-2. 厚生労働省系の補助金・助成金
    3. 6-3. 自治体主体の補助金・助成金
    4. 6-4. 政府系金融機関・大企業の補助金・助成金
  7. 7. 創業補助金を活用するメリットや申請手順を解説しました

創業補助金とは

創業補助金とは

創業補助金は、創業に必要な費用の一部を地方自治体が補助する制度のこと。2018年以降「地域創造的起業補助金」に名前が変わっていますが、創業補助金の通称で呼ばれています。

創業補助金を利用することにより、開業資金を抑えられ、起業をしやすくなります。抑えた分を予備資金に回すと不測の事態に備えることも可能です。

創業補助金は返済不要。しかし受給後、一定の期間内に収益が向上すると、返還する必要があります。

また補助金は、申請が通過した直後ではなく半年以上経過してから支給。そのため、最初は創業者が資金を用意する必要があります。

ただし、創業補助金は毎年実施されているわけではなく、2019年は実施されていません。

助成金との違い

助成金は補助金よりも受給の難易度が低い傾向にあり、財源も異なります。助成金の目的は雇用促進。一方補助金は生産性拡大・事業拡大を目的としたものです。

項目

助成金

補助金

募集先

厚生労働省

経済産業省や地方自治体

財源

雇用保険料

税金

難易度

低い

高い

目的

雇用促進

生産性拡大・事業拡大目的

その他の特徴

  • ・雇用保険加入従業員が1名以上必要である

  • ・書類に不備があれば修正が必要である

  • ・人気の助成金は早く終了する可能性がある

  • ・労働関連法規を守る

  • ・申請期間が短い

  • ・予算が決まっている

  • ・給付まで時間がかかる

  • ・一部費用補助の場合がある

  • ・事業計画書が重視される

交付金・給付金との違い

交付金は助成金とよく似ています。一方給付金は病気や災害に対する支給で役割が異なっているのが特徴です。

また、補助金・助成金・交付金は主に企業対象、給付金は個人を対象にしています。

項目

補助金

助成金

交付金

給付金

支給元

国・地方自治体

国・地方自治体

国・地方自治体

国・地方自治体

申請

必要

必要

必要

必要

返済

不要

不要

不要

不要

審査

主な目的

公益性がある

事務・事業

雇用関係

研究開発

国などが

特定の目的のため交付

病気・災害など

に対する救済措置

主な事例

  • ・軽減税率対策補助金

  • ・市町村水道総合対策

  • 事業補助金

  • ・働き方改革推進

  • 支援助成金

  • ・雇用調整助成金

  • ・運輸事業振興

  • 助成交付金

  • ・農業次世代人材

  • 投資事業交付金

  • ・地域経済循環創造

  • 事業交付金

  • ・持続化給付金

  • ・住居確保給付金

  • ・新型コロナウイルス

  • 感染症対応

  • 休業支援金・給付金

創業補助金を活用するメリット

創業補助金を活用するメリットは、創業前でも申請可能で返済義務がないこと。政府系金融機関などは自己資金が必要ですが、創業補助金は自己資金の制約がありません。

創業補助金を申請するには事業計画書が必要です。事業計画書によって、以下を明確にできます。

  • 事業のビジョン
  • 目安になる売上高

また創業補助金を支給されると、金融機関の信用を得られ、融資の申し込みも有利です。

創業補助金を活用するデメリット

創業補助金は原則後払いであるため、一時的な負担が必要。提出する書類の作成で時間がかかるほか、交付後5年間は事業状況の報告が必須です。

ただし申請通過後には、補助金を担保に、一時的な負担を公的金融機関から融資で補うことも可能。資金調達に詳しい税理士などに相談するのがおすすめです。

また創業補助金公募には期限があるため、申請する場合は見逃さないようにしましょう。

創業補助金の申請条件

申請条件は補助金や年度、自治体によって内容は大きく変わります。以前は中小企業庁が創業補助金を支給していましたが、平成30年度を最後に制度を終了。2023年3月現在、国ではなく地方自治体が独自予算で支給しています。

ただし、すべての自治体が創業補助金を支給しているとは限らないため、補助金幹事で確認しておきましょう。

対象は各自治体の募集要項によって異なります。補助事業完了日までに個人事業もしくは会社設立が必要です。

申請期間は短く、例年春ごろに1ヶ月程度。また、募集する自治体によって募集期間は異なります。

申請条件の事例としては以下の通り。東京都の条件についてまとめました。

実施機関

東京都

募集者

東京都及び公益財団法人東京都中小企業振興公社(公社)

対象者

都内創業予定者・創業後

5年未満の中小企業

金額

上限300万円・下限100万円

公募期間

2023年04月11日~04月20日

支給条件

  • ・TOKYO創業ステーションの事業計画書策定支援の終了者

  • ・インキュベーション施設運営計画認定事業の認定施設の入居者

  • ・都内の公的創業支援施設入居者

  • ・東京都や都内区市町村が行う創業制度融資の利用者

  • ・都内区市町村で認定特定創業支援等事業の支援対象者

対象費用

  • ・助成対象経費の2/3以内

  • ・創業初期に必要な経費

創業補助金の申請手順

創業補助金の申請手順

自治体や補助金、年度によって大きく異なります。J-Net21のHPで確認してください。

当サイトでは事例として東京都の例を紹介します。他の自治体の方法については最寄りの自治体にお問い合わせください。

東京都では申請以前に一定の要件を満たす必要があります。申請者は交付決定日から半年以上最長2年間経費を助成されます。

申請できる対象者は申請要件1〜4を満たす創業者。

申請要件

内容

1

  • ・創業を計画している個人

  • ・創業してから5年未満の中小企業

  • ・創業してから5年未満の特定営利法人

2

  • ・TOKYO創業ステーションに関する事業計画書策定支援の終了者

  • ・多摩ものづくり創業プログラムに関する事業計画書策定支援の終了者

  • ・事業可能性評価事業で継続的支援を受けている場合

  • ・「進め!若手商人育成事業」を期間内に受講修了

  • ・東京都が設置した創業支援施設に入居

  • ・インキュベーション施設運営計画認定事業の認定施設の入居者など

3

法人

  • ・中小企業である

  • ・みなし大企業ではない

  • ・登記が都内にある

  • ・都内に事務所が実在している

個人

  • ・中小企業である

  • ・個人開業医ではない

  • ・納税地が都内にある

  • ・都内に事務所が実在している

  • ・個人事業税を東京都に納税している

特定非営利活動法人

  • ・中小企業と連携して事業を行っている

共通項目

  • ・事業承継や譲渡ではない

  • ・成果が特定の法人・個人対象ではない

  • ・事業内容が社会貢献につながる

  • ・人件費のみを助成対象経費にしないなど

4

  • ・開業届の写しを提出できる(個人)

  • ・履歴事項全部証明書の写しを提出できる(法人)

  • ・本助成金以外の創業関係の助成金・補助金を受けていない

  • ・併願申請した場合、一方の助成金・補助金を取り下げる予定である

  • ・再度の申請ではないなど

申請できない創業者は下記の通りです。

  • 創業してから5年以上の個人・法人
  • みなし大企業の該当者
  • 個人開業医
申請要件1確認チャート

画像引用:東京創業ステーション

確認チャート

画像引用:東京創業ステーション

申請スケジュール

画像引用:東京創業ステーション

事業計画書・申請書の提出

どのような事業をするのか、計画を実行しどの程度の売上を計上するのかを申請書に記述

以下の書類も提出します。

  • 創業助成事業申請書
  • 直近2期分の確定申告書
  • 法人:発行後3カ月以内の履歴全部証明書
  • 個人:開業届など
助成金申請額の計算の仕方

画像引用:東京創業ステーション

審査

助成金の申請が出来なくなる時期

画像引用:東京創業ステーション

6月に書類審査を通過すると7月に面接審査、8月に総合審査があります。ただし基準日となる2023年の6月30日から事業完了日の間に、法人設立を行うと助成金を受給できないため、注意が必要です。

なお、採択率は難易度が高く13%です。

審査基準は下記の通り。

審査

内容

書類審査・面接審査

  • ・製品・サービスの内容の完成度

  • ・問題意識・潜在力の明確さ

  • ・対象市場に対する理解度・適応性

  • ・事業の実現性

  • ・助成金の活用方法の有効性

  • ・スケジュール・経営見通しの妥当性

  • ・資金調達の妥当性

  • ・申請経費の妥当性

総合審査

  • ・書類審査と面接審査の結果より助成事業者として適しているか

審査結果通知

審査通過後、書面で採択の可否が送られてきます。

審査で決定されるのは下記の2つ。

  • 申請事業の実施により助成金を受け取る事業者
  • 支給される助成金額の上限

採択された場合、約半年間が経費補助期間です。経費補助期間に事業活動で発生した経費の領収書や請求書を提出。

請求できる経費は下記の通りです。

  • 賃借料
  • 広告費
  • 器具備品購入費
  • 産業財産権出願・導入費
  • 専門家指導費
  • 従業員人件費

ただし、下記のような場合は助成対象外です。

  • 対象期間外の賃借料
  • 対象期間外の人件費
  • 最後の支払が対象期間外
  • 対象期間外のカードの引き落とし
助成対象とならないケース

画像引用:東京創業ステーション

期間終了後に報告書を提出

助成対象期間終了後、事業実績を報告する必要があります。助成対象期間中の経費が適性かを検査。検査後に助成金が確定する仕組みです。

実績報告書には下記の書類が必要。

  • 見積書
  • 契約書
  • 支払証拠書類等

補助金交付

補助金が交付されますが、助成対象期間が半年以上経っている場合、事業実績の報告を行うと、1回限定で中間払いを受けられます。ただし人件費のみの申請はできません。

また、助成金額は検査結果により減額されることもあります。請求書と印鑑証明書を提出すると、銀行口座に振り込まれる仕組みです。

事業完了年度の翌年度から5年間、財産を管理する必要があります。さらに助成事業で取得した50万円以上の財産を処分する場合、あらかじめ公社から承諾を得る必要があります。

スケジュール

画像引用:東京創業ステーション

創業時に活用できる補助金・助成金

創業時に活用できる補助金・助成金

創業時に活用できる補助金・助成金は、補助金や年度によって変わる可能性があります。各種制度のHPで確認しておきましょう。

経済産業省系の補助金・助成金

経済産業省系の補助金・助成金は下記の通りです(2023年3月現在)。

種類

目的

補助率

条件

小規模事業者

持続化補助金

中小企業が販路開拓・

業務効率化・

生産性向上のため

  • ・補助上限:

[通常枠]50万円

[賃金引上げ枠・卒業枠・

 後継者支援枠・創業枠] 200万円

  • ・補助率:2/3(赤字事業者は3/4)

  • ・策定した経営計画に基づいた

  •  販路開拓・業務効率化・

  •  生産性向上のための取組

  • ・商工会議所の支援を受けながら

  •  取り組む事業

  • ・他の補助金等と重複しない事業

  • ・売上げにつながる事業

  • ・風俗を害さない事業

ものづくり

補助金

中小企業が働き方改革・

被用者保険の適用拡大・

賃上げ、インボイス導入等に

対応するため

  • ・機械装置・システム構築費:

単価50万円以上の設備投資

  • ・技術導入費:

上限額の1/3

  • ・専門家経費:

上限額の1/2

  • ・外注費:

上限額の1/2分など

  • ・給与支給総額を

  •  年率平均1.5%以上増加

  • ・最低賃金が毎年、

  •  地域別最低賃金+30円以上の水準

  • ・事業者全体の付加価値額を

  •  年率平均3%以上増加など

事業再構築

補助金

新分野展開・事業転換・

業種転換、業態転換等、

事業再構築に意欲を持った

中小企業を支援するため

  • ・補助金額(通常枠):

【従業員数20人以下】100万円~2,000万円 

  • ・補助率(通常枠):

中小企業者等 2/3 

中堅企業等 1/2 など

  • ・2020年4月以降の合計売上高が、

  •  コロナ以前の合計売上高より10%以上減少

  • ・事業計画書を

  •  認定経営革新等支援機関等と共同で策定

IT導入補助金

中小企業がITツールを導入する場合

一部経費を支援するため

(通常枠)

  • 補助率:

1/2以内

  • A類型:

30万円~150万円未満

  • B類型:

150万円~450万円以下

※通常枠の場合

  • ・2020年4月以降の合計売上高が、

  •  コロナ以前の合計売上高より10%以上減少

  • ・事業計画書を認定経営革新等

事業承継・

引継ぎ

中小企業の事業承継、

事業再編・事業統合を

促進するため

  • ・経営革新事業:

補助率 1/2 

補助上限500万円以内

  • ・専門家活用事業:

補助率 1/2 

補助上限 400万円以内

  • ・廃業・再チャレンジ事業:

補助率 1/2 

補助上限 150万円以内

  • ・2017年4月1日から2022年12月16日に

  •  事業承継または承継者との間にM&A

  • ・事業再編・事業統合を実施

  • ・事業承継・M&Aで事業を譲渡後の廃業など

厚生労働省系の補助金・助成金

厚生労働省系の補助金・助成金は下記の通りです(2023年3月現在)。

種類

目的

補助率

条件

キャリアアップ

助成金

キャリアアップ助成金とは、

非正規労働者のキャリアアップを

促進するため

  • ・有期 → 正規:

 57万円<72万円>

(42万7,500円<54万円>)/人

  • ・無期 → 正規:

 28万5,000円<36万円>

(21万3,750円<27万円>)/人

※正社員化コースの例

※< >は生産性が向上した場合の金額、

 ( )内は大企業の金額

  • ・有期雇用労働者等を

  •  正規雇用労働者に転換

  •  または直接雇用した場合に助成

 ※正社員化コースの例

人材開発支援

助成金

事業主などが従業員に、

職務関連の専門的な知識・技能を

習得させるため

  • ・OFF-JT:

 賃金助成額 760円/時間/人

 経費助成率 45%

  • ・OJT:

 実施助成額 20万円/コース

 ※中小企業の特定訓練コースの場合



  • ・従業員として事業所から賃金を

  •  受けている者により行われる OJT

  • ・以下の業務を行う従業員へのオンライン訓練

    •  労務管理

    •  経理

    •  ソフトウェア開発

    •  システム開発など
       ※特定訓練コースの場合

人材確保等支援

助成金

魅力ある雇用創出を図ることにより、

人材確保・定着させるため

  • ・雇用管理制度助成コース:

 離職率低下57万円

  • ・介護福祉機器助成コース:

 離職率低下 導入費用20%など

  • ・雇用管理制度の導入

  • ・離職率目標達成

  • ・介護福祉機器の導入など

両立支援等

助成金

職業生活と家庭生活が

両立できる職場環境づくりのため

  • ・第1種 20万円

  • ・第2種:60万円~

 ※出生時両立支援コースの場合

  • ・育児・介護休業法に定める

  •  雇用環境整備に関する複数の措置

  • ・男性が連続5日以上の

  •  育児休業を取得(8週間以内)など

 ※出生時両立支援コースの場合

雇用調整

助成金

新型コロナウイルス感染症の影響により、

事業活動の縮小になった場合の従業員の

雇用維持を図るため

  • ・令和4年11月までの助成率

  • (雇用維持)

    •  大企業:3/4

    •  中小企業: 9/10

  • ・令和4年12月以降の助成率

  • (雇用維持)

    •  大企業:2/3

    •  中小企業:9/10

  • ・売上高が対前年比30%以上減少

  • ・緊急事態宣言の実施区域で

  •  営業時間の短縮に協力した企業を

  •  譲渡後の廃業など

自治体主体の補助金・助成金

自治体独自の補助金・助成金があり、多岐にわたっています。代表的な制度として、創業助成事業(東京)、大阪起業家グローイングアップ事業(大阪)があります。

上述したように、東京都には都内での創業予定企業を支援する創業助成金があります。東京都と公益財団法人東京都中小企業振興公社(以後、公社)が募集。賃借料・人件費など、創業時の一部経費を100〜300万円支援してくれる助成金です。

大阪起業家グローイングアップ事業は、大阪府内の起業者を支援する制度。起業家支援には以下の事業があります。

  • 創業支援機関による有望な起業家の発掘
  • ビジネスプランコンテストの開催
  • 優勝者に補助金交付(補助金100万円)

政府系金融機関・大企業の補助金・助成金

上記のほか、政府系金融機関や大手企業が独自で行っている制度があります。

たとえば千葉県にあるひまわりベンチャー育成基金は、千葉県内のベンチャー企業への支援をするもの。助成金は300〜500万円と公的機関より高めです。

また広島県にも、ひろしまベンチャー育成基金があります。審査は学識経験者や金融機関が行い、ハードルは高いものの、法人の場合、100〜300万円を助成。特に有望とみなされた場合、500万円が助成されます。

優秀なビジネスプランは必要ですが、挑戦してみる価値はあるでしょう。

創業補助金を活用するメリットや申請手順を解説しました

社員研修で使える助成金について方向けに、創業補助金の申請条件や創業補助金の申請手順などを解説しました。

研修で助成金を活用するメリット・デメリットは下記の通りです。

メリット・デメリット

内容

メリット

  • ・返済義務がない

  • ・自己資金の制約がない

  • ・事業計画書によってビジョンが明確になる

デメリット

  • ・後払いであるため一時的な負担が必要

  • ・経費や賃金を一時的に負担する必要がある

  • ・交付後5年間は事業状況の報告が必要である

本記事で紹介した内容をもとに、創業補助金の申請を検討してみましょう。