人材開発支援助成金の対象講座・コースや支給金額、申請方法を解説
職業訓練開発を実施して、社員教育を行いたいと思っていても、リソースが足りないとお悩みではありませんか?
人材育成の資金不足改善には人材開発支援助成金を利用できます。この記事では、人材開発支援助成金の概要や人材開発支援助成金の対象コースと支給額などについて解説。
ただし、あくまでも2023年3月時点の情報であり、最新版ではありません。詳細は厚生労働省のWebサイトを必ず参照してください。
最後まで読めば、人材開発支援金助成金の内容を理解し申請するか判断できます。また、申請するときのフローもわかり、人材育成のための資金不足改善アクションを起こすことが可能です。
人材開発支援助成金とは
人材開発支援助成金とは、職業能力開発の費用を一部国が助成する制度。2023年3月時点で7種類あります。内容を知りたい方は「人材開発支援助成金の対象コースと支給額」をご覧ください。
キャリアアップ助成金との違い
キャリアアップ助成金は有期契約労働者や無期雇用労働者が対象です。一方、人材開発支援助成金の対象者は雇用保険に加入している正社員。
人材開発支援助成金が正社員の育成を目的としているのに対し、キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者の待遇改善が目的です。
有期雇用契約労働者・無期雇用労働者について以下のようにまとめました。
項目 |
有期契約労働者 |
無期雇用契約 |
契約期間 |
原則3年 (労働基準法14条1項) |
なし |
給与 |
契約時の給与と変わらないことが多い |
能力に応じて昇給する |
安定性 |
契約の打ち切りがある |
契約更新する必要がない |
種類 |
・契約社員 |
令和4年の改正に伴う変更点
令和4年の改正に伴う変更があったコースは、以下の5つ。2023年3月時点の最新情報です。毎年ではありませんが、見直しが行われるため、厚生労働省のWebサイトで確認しておきましょう。
- 特定訓練コース
- 一般訓練コース
- 特別育成訓練コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 人への投資促進コース
【特定訓練コース・一般訓練コース・特別育成訓練コース】
対象 |
内容 |
登記事項証明書の添付省略 |
|
添付書類の簡素化 (支給申請時) |
|
事業外訓練施設の要件見直し |
|
OJT訓練担者の要件見直し |
|
【教育訓練休暇等付与コース・人への投資促進コース】
対象 |
内容 |
制度の追加 |
|
長期教育訓練休暇制度の拡充 |
|
自発的職業能力開発訓練の創設 |
|
▼関連記事
社内研修に使える助成金については、「社内研修に使える助成金とは?活用のメリット・デメリットや助成金一覧を紹介」をあわせてご覧ください。
人材開発支援助成金を活用するメリット
人材開発支援助成金を活用するメリットについて解説します。
人材開発費用の負担軽減が期待できる
研修の会場費や宿泊費・外部講師費や教材費などを助成してもらえるため、費用負担を軽減可能。
抱えている従業員数が多くなれば、より恩恵を受けやすくなりますが、大企業だけではなく中小企業にもメリットがあります。
従業員だけではなく企業の底上げにもつながる
従業員がスキルアップすると、給与水準上昇のほかキャリアアップとモチベーション上昇にもつながります。
従業員が専門的なスキルを身につけると、従来の仕事を効率にすることが可能。人材開発支援助成金の活用により、従業員の生産性向上・技術的なスキルアップが期待できます。
また、非正規雇用労働者を正規雇用労働者へ転換できるコースもあり、非正規雇用労働者の意欲を高めることもできます。
その結果、従業員だけではなく企業全体の底上げにもつながるでしょう。
人材開発支援助成金を活用する際の注意点
人材開発支援助成金を活用する際の注意点について解説します。
申請に時間と手間がかかるため立て替えが必要になる
助成金は、申請から受給まで時間がかかるため一時的な費用の立て替えが必要。最低限の賃金が必須であり、助成金頼みは危険です。
以下のように所定の手続きと書類の準備も必要なため、受給には時間がかかります。
- 事業を実施
- 報告書を作成・提出
- OKが出て受給
申請から受給できるまで1〜2カ月かかるものが多いため、資金調達が必要になります。財務状況が悪いという理由での利用は難しいでしょう。
対象の訓練以外は助成金が支給されない
後述するコースに該当しなければ助成金は支給されません。年齢や人数制限がかかっているため、条件の確認は必須。
例えば、特定訓練コースは「35歳未満の若年労働者」や「15歳以上45歳未満の労働者」を条件にしています。
申請する場合、厚生労働省のWebサイトで自社の対象者が該当するのか確認しておきましょう。
人材開発支援助成金の対象コースと支給額
人材開発支援助成金の対象コースと支給額について紹介します。
特定訓練コース
特定訓練コースとは以下に対して助成するコースです。
対象 |
内容 |
一般の労働者 |
|
35歳未満の 若年労働者 |
|
熟練技能者 |
|
15歳以上45歳未満の 労働者 |
|
画像引用:厚生労働省「特定訓練コースパンフレット」
支給されるお金は以下の3つ。
対象 |
内容 |
事業内訓練 |
|
事業外訓練 |
|
賃金 |
|
助成額・助成率は以下の通りです。ただし、訓練の受講回数の上限は、特定訓練コース・一般訓練コースあわせて3回/人までとなっています。
経費助成 |
生産性要件を 満たす場合 |
賃金助成 (1人/時) 限度時間 |
生産性要件を 満たす場合 |
OJT実施助成 (1人/時) |
生産性要件を 満たす場合 |
||
OFF-JT |
45% (30%) |
60% (45%) |
760円 (380円) |
960円 (480円) |
ー |
ー |
|
OJT |
ー |
ー |
ー |
ー |
20万円 (11万円) |
25万円 (14万円) |
また、経費助成の限度額は以下の通り。
企業規模 |
20時間以上 100時間未満 |
100時間以上 200時間未満 |
200時間以上 |
中小企業事業主 ・事業主団体等 |
15万円 |
30万円 |
50万円 |
中小企業以外の事業主 |
10万円 |
20万円 |
30万円 |
一般訓練コース
一般訓練コースとは、特定訓練コース以外で、専門的な知識・技能のための職業訓練を実施した場合に助成されるもの。
対象 |
内容 |
一般の労働者 |
|
支給されるお金は以下の3つ。
対象 |
内容 |
事業内訓練 |
|
事業外訓練 |
|
賃金 |
|
助成額・助成率は以下の通りです。ただし、訓練の受講回数の上限は、特定訓練コース・一般訓練コースあわせて3回/人までとなっています。
経費助成 |
生産性要件を 満たす場合 |
賃金助成 (1人/時) |
生産性要件を 満たす場合 |
OJT実施助成 (1人/時) |
生産性要件を 満たす場合 |
||
OFF-JT |
30% |
45% |
380円 |
480円 |
ー |
ー |
また、経費助成の限度額は以下の通り。
企業規模 |
20時間以上 100時間未満 |
100時間以上 200時間未満 |
200時間以上 |
事業主 ・事業主団体等 |
7万円 |
15万円 |
20万円 |
教育訓練休暇等付与コース
教育訓練休暇等付与コースとは、有給教育訓練休暇等制度を導入し、休暇を取得し訓練を受けた従業員がいる場合に助成するもの。以下3つの制度があります。
制度 |
内容 |
教育訓練休暇制度 |
|
長期教育訓練休暇制度 |
|
教育訓練短時間勤務等制度 |
|
助成額・助成率は以下の通りです。
対象制度 |
賃金助成 (1人/日) |
生産性要件を 満たす場合 |
経費助成 |
生産性要件を 満たす場合 |
|
教育訓練休暇制度 |
ー |
ー |
30万円 |
36万円 |
|
長期教育訓練休暇制度 |
6,000円 |
7,200円 |
20万円 |
24万円 |
|
教育訓練短時間勤務等制度 |
ー |
ー |
20万円 |
24万円 |
画像引用:厚生労働省「教育訓練休暇等付与コースパンフレット」
人への投資促進コース
人への投資促進コースとは、以下の訓練を行った場合、訓練経費や訓練期間中の一部賃金を助成するもの。
- デジタル人材・高度人材育成訓練
- 労働者が自発的に行う訓練
- サブスクリプション型訓練
助成率・助成額は以下の通りです。正規・非正規関係なく助成されますが、定額制訓練のみ正規社員が対象者。事業所が1年度に受給できる助成金の限度額は2,500万円です。
種類 |
対象訓練 |
経費助成率 |
賃金助成額 |
OJT実施助成額 |
|
高度デジタル人材訓練 |
高度デジタル訓練 |
中小企業: 75% 大企業: |
中小企業: 960円 大企業: |
ー |
|
成長分野等人材訓練 |
海外も含む 大学院での訓練 |
75% |
国内大学院 の場合: 960円 |
ー |
|
情報技術分野認定実習 併用職業訓練 |
OFF-JT+OJTの 組み合わせ訓練 |
中小企業: 60% 大企業: |
中小企業: 760円 大企業: |
中小企業: 20万円 大企業: |
|
定額制訓練 |
定額制訓練 プション型) |
中小企業: 60% 大企業: |
ー |
ー |
|
自発的職業能力開発訓練 |
労働者の自発的な訓練を 事業主が費用負担 |
45% |
ー |
ー |
|
長期教育訓練休暇等制度 |
長期教育訓練休暇制度 |
制度導入経費: 20万円 |
6000円/日 |
ー |
|
所定労働時間の短縮と 所定外労働時間の免除制度 |
制度導入経費: 20万円 |
ー |
ー |
また、受講者1人当たりの助成金の限度額は以下の通りです。
種類 |
実訓練時間数 100H未満 |
実訓練時間数 100~200H 未満 |
実訓練時間数 200H以上 |
大学 (一年度当たり) |
大学院 (一年度当たり) |
|
高度デジタル人材訓練 |
30(20) 万円 |
40(25) 万円 |
50(30) 万円 |
150(100) 万円 |
ー |
|
成長分野等人材訓練 |
ー |
ー |
ー |
ー |
国内150万円 <海外500万円> |
|
情報技術分野認定実習 併用職業訓練 |
15(10) 万円 |
30(20) 万円 |
50(30) 万円 |
ー |
ー |
|
自発的職業能力開発訓練 |
7万円 |
15万円 |
20万円 |
ー |
ー |
※()内の助成率(額)は、生産性要件を満たした場合
事業展開等リスキリング支援コース
事業展開等リスキリング支援コースとは、新規事業の事業展開に必要な知識・技能習得の訓練を実施した場合、訓練経費や訓練期間中の一部賃金を助成するもの。
対象 |
内容 |
一般の労働者 |
|
支給されるお金は以下の3つです。
対象 |
内容 |
事業内訓練 |
|
事業外訓練 |
|
資格・試験に 関する受験料 |
|
賃金 |
|
助成額・助成率は以下の通り。()は大企業の場合です。
- 経費助成:75%(60%)
- 賃金助成(1人/時間):960円(480円)
OFF-JTにかかる経費助成の限度額は以下の通り。
企業規模 |
10時間以上 100時間未満 |
100時間以上 200時間未満 |
200時間以上 |
中小企業 |
30万円 |
40万円 |
50万円 |
大企業 |
20万円 |
25万円 |
30万円 |
画像引用:厚生労働省「事業展開等リスキリング支援コースパンフレット」
建設キャリアアップシステム等普及促進コース
人材確保等支援助成金(建設分野)は、令和4年3月31日をもって廃止。令和4年4月1日より、人材確保等支援助成金(建設キャリアアップシステム等普及促進コース)が新設されます。
新たな制度の助成は下記の通りです。
コース名 |
要件 |
経費助成 |
|
建設労働者 認定訓練コース |
建設関連の訓練を 実施した場合 |
経費助成: 対象経費の1/6 |
|
建設労働者が 認定訓練を受講した場合 |
賃金助成: 3,800円/人日 <1,000円/人日> |
||
建設労働者 技能実習コース |
若年者等の育成と 熟練技能のため、 技能実習を実施した場合 |
中小企業 |
経費助成 : 3/4 <3/20> 賃金助成: <2,000円/人日> |
大手企業 |
経費助成:7/10 <3/20> 賃金助成: 7,600円/人日 <1,750円/人日> など |
※< >は生産性要件を満たした場合の増額分
障害者職業能力開発コース
障害者職業能力開発コースとは、障害者の職業に必要な教育訓練を継続的に実施する施設の設置・運営を行う事業主に一部費用を助成するもの。
対象 |
内容 |
訓練対象障害者 |
|
支給額 |
|
人材開発支援助成金の申請手順
人材開発支援助成金の申請手順は以下の通り。
- 訓練実施計画届の提出を策定
- 実施1ヶ月前までに労働局へ提出
- 計画に沿って訓練を実施
- 訓練終了後2ヶ月以内に支給申請書を労働局へ提出
- 助成金の支給決定または不支給決定
- 審査通過後に助成金を支給
ただし、助成金の提出書類はコースによって異なります。詳細については厚生労働省のWebサイトで確認しておきましょう。
人材開発支援助成金の支給金額・申請方法を解説しました
人材開発支援助成金について知りたい方向けに、人材開発支援助成金の概要や人材開発支援助成金の対象コースと支給額などを解説しました。
人材開発支援助成金を活用するメリットと注意点は以下の通りです。
メリットと注意点 |
内容 |
メリット |
|
注意点 |
|
本記事で紹介した内容をもとに、人材開発支援助成金の申請を検討してみましょう。