人材開発支援助成金の対象講座・コースや支給金額、申請方法を解説

人材開発支援助成金の対象講座・コースや支給金額、申請方法を解説

職業訓練開発を実施して、社員教育を行いたいと思っていても、リソースが足りないとお悩みではありませんか?

人材育成の資金不足改善には人材開発支援助成金を利用できます。この記事では、人材開発支援助成金の概要や人材開発支援助成金の対象コースと支給額などについて解説

ただし、あくまでも2023年3月時点の情報であり、最新版ではありません。詳細は厚生労働省のWebサイトを必ず参照してください。

最後まで読めば、人材開発支援金助成金の内容を理解し申請するか判断できます。また、申請するときのフローもわかり、人材育成のための資金不足改善アクションを起こすことが可能です。

目次
  1. 1. 人材開発支援助成金とは
    1. 1-1. キャリアアップ助成金との違い
    2. 1-2. 令和4年の改正に伴う変更点
  2. 2. 人材開発支援助成金を活用するメリット
    1. 2-1. 人材開発費用の負担軽減が期待できる
    2. 2-2. 従業員だけではなく企業の底上げにもつながる
  3. 3. 人材開発支援助成金を活用する際の注意点
    1. 3-1. 申請に時間と手間がかかるため立て替えが必要になる
    2. 3-2. 対象の訓練以外は助成金が支給されない
  4. 4. 人材開発支援助成金の対象コースと支給額
    1. 4-1. 特定訓練コース
    2. 4-2. 一般訓練コース
    3. 4-3. 教育訓練休暇等付与コース
    4. 4-4. 人への投資促進コース
    5. 4-5. 事業展開等リスキリング支援コース
    6. 4-6. 建設キャリアアップシステム等普及促進コース
    7. 4-7. 障害者職業能力開発コース
  5. 5. 人材開発支援助成金の申請手順
  6. 6. 人材開発支援助成金の支給金額・申請方法を解説しました

人材開発支援助成金とは

人材開発支援助成金とは

人材開発支援助成金とは、職業能力開発の費用を一部国が助成する制度。2023年3月時点で7種類あります。内容を知りたい方は「人材開発支援助成金の対象コースと支給額」をご覧ください。

キャリアアップ助成金との違い

キャリアアップ助成金は有期契約労働者や無期雇用労働者が対象です。一方、人材開発支援助成金の対象者は雇用保険に加入している正社員

人材開発支援助成金が正社員の育成を目的としているのに対し、キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者の待遇改善が目的です。

有期雇用契約労働者・無期雇用労働者について以下のようにまとめました。

項目

有期契約労働者

無期雇用契約

契約期間

原則3年

(労働基準法14条1項)

なし

給与

契約時の給与と変わらないことが多い

能力に応じて昇給する

安定性

契約の打ち切りがある

契約更新する必要がない

種類

  • ・準社員型契約社員
  • ・パートタイム・アルバイト

・契約社員

 

令和4年の改正に伴う変更点

令和4年の改正に伴う変更があったコースは、以下の5つ。2023年3月時点の最新情報です。毎年ではありませんが、見直しが行われるため、厚生労働省のWebサイトで確認しておきましょう。

  • 特定訓練コース
  • 一般訓練コース
  • 特別育成訓練コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 人への投資促進コース

【特定訓練コース・一般訓練コース・特別育成訓練コース】

対象

内容

登記事項証明書の添付省略

  • ・登記情報連携システムにより確認が可能となるため、

  •  提出を省略

添付書類の簡素化

(支給申請時)

  • ・オンライン研修を実施した場合の確認書類提出が不要
  • ・「認定実習併用職業訓練の実施計画認定通知書(写)」の提出が不要

事業外訓練施設の要件見直し

  • ・「特定の対象における訓練用施設、

  •  事業主の別法人における施設など」を除く要件を廃止

OJT訓練担者の要件見直し

  • ・OJT訓練指導者が1日に指導できる人数を
  •  3人までとしていた要件を廃止

【教育訓練休暇等付与コース・人への投資促進コース】

対象

内容

制度の追加

  • 「教・育訓練短時間勤務等制度」が新たに助成対象

長期教育訓練休暇制度の拡充

  • ・賃金助成人数制限を撤廃

  • ・既に制度を導入した事業主も、

  •  一定の要件で賃金助成の対象

  • ・休暇の取得開始から「1年以内」の要件を撤廃

自発的職業能力開発訓練の創設

  • ・新たな訓練を創設

▼関連記事
社内研修に使える助成金については、「社内研修に使える助成金とは?活用のメリット・デメリットや助成金一覧を紹介」をあわせてご覧ください。

人材開発支援助成金を活用するメリット

人材開発支援助成金を活用するメリット

人材開発支援助成金を活用するメリットについて解説します。

人材開発費用の負担軽減が期待できる

研修の会場費や宿泊費・外部講師費や教材費などを助成してもらえるため、費用負担を軽減可能

抱えている従業員数が多くなれば、より恩恵を受けやすくなりますが、大企業だけではなく中小企業にもメリットがあります

従業員だけではなく企業の底上げにもつながる

従業員がスキルアップすると、給与水準上昇のほかキャリアアップとモチベーション上昇にもつながります。

従業員が専門的なスキルを身につけると、従来の仕事を効率にすることが可能。人材開発支援助成金の活用により、従業員の生産性向上・技術的なスキルアップが期待できます。

また、非正規雇用労働者を正規雇用労働者へ転換できるコースもあり、非正規雇用労働者の意欲を高めることもできます。

その結果、従業員だけではなく企業全体の底上げにもつながるでしょう。

人材開発支援助成金を活用する際の注意点

人材開発支援助成金を活用する際の注意点

人材開発支援助成金を活用する際の注意点について解説します。

申請に時間と手間がかかるため立て替えが必要になる

助成金は、申請から受給まで時間がかかるため一時的な費用の立て替えが必要。最低限の賃金が必須であり、助成金頼みは危険です。

以下のように所定の手続きと書類の準備も必要なため、受給には時間がかかります。

  • 事業を実施
  • 報告書を作成・提出
  • OKが出て受給

申請から受給できるまで1〜2カ月かかるものが多いため、資金調達が必要になります。財務状況が悪いという理由での利用は難しいでしょう。

対象の訓練以外は助成金が支給されない

後述するコースに該当しなければ助成金は支給されません。年齢や人数制限がかかっているため、条件の確認は必須

例えば、特定訓練コースは「35歳未満の若年労働者」や「15歳以上45歳未満の労働者」を条件にしています。

申請する場合、厚生労働省のWebサイトで自社の対象者が該当するのか確認しておきましょう。

人材開発支援助成金の対象コースと支給額

人材開発支援助成金の対象コースと支給額

人材開発支援助成金の対象コースと支給額について紹介します。

特定訓練コース

特定訓練コースとは以下に対して助成するコースです。

対象

内容

一般の労働者

  • ・厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練

  • ・若年者への訓練

  • ・労働生産性向上に資する訓練

    •   ○職業能力開発促進センターなどで実施する高度職業訓練

    •   ○事業分野別経営力向上推進機関による訓練

    •   ○専門実践教育訓練・特定一般教育訓練

    •   ○実践的情報通信技術資格取得のための訓練

    •   ○生産性向上人材育成支援センターによる訓練

    •   ○労働生産性向上に必要な専門性・特殊性がある訓練

35歳未満の

若年労働者
(勤続年数5年未満)

  • ・OFF-JTによる訓練

  • ・10時間以上の訓練

熟練技能者

  • ・OFF-JTによる訓練

  • ・10時間以上の訓練

  • ・下記の訓練

    •  ○指導力強化のための訓練

    •  ○技能承継のための訓練

    •  ○認定職業訓練

15歳以上45歳未満の

労働者

  • ・OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練

  • ・訓練実施期間が6か月以上2年以下

  • ・訓練時間は年850時間以上

  • ・OJTの割合が2割以上8割以下

  • ・訓練終了後に職業能力の評価を実施

厚生労働省「特定訓練コースパンフレット」

画像引用:厚生労働省「特定訓練コースパンフレット」

支給されるお金は以下の3つ。

対象

内容

事業内訓練

  • ・部外の講師への謝金・手当

  • ・部外の講師の旅費

  • ・施設・設備の借上費

  • ・教科書・教材の購入費

  • ・訓練コースの開発費

事業外訓練

  • ・入学料・受講料・教科書代など

賃金

  • ・訓練期間中の所定労働時間内における賃金

助成額・助成率は以下の通りです。ただし、訓練の受講回数の上限は、特定訓練コース・一般訓練コースあわせて3回/人までとなっています。

 

経費助成

生産性要件を

満たす場合

賃金助成

(1人/時)
※1,200時間が

限度時間

生産性要件を

満たす場合

OJT実施助成

(1人/時)

生産性要件を

満たす場合

OFF-JT

45%

(30%)

60%

(45%)

760円

(380円)

960円

(480円)

OJT

20万円

(11万円)

25万円

(14万円)

また、経費助成の限度額は以下の通り。

企業規模

20時間以上

100時間未満

100時間以上

200時間未満

200時間以上

中小企業事業主

・事業主団体等

15万円

30万円

50万円

中小企業以外の事業主

10万円

20万円

30万円

一般訓練コース

一般訓練コースとは、特定訓練コース以外で、専門的な知識・技能のための職業訓練を実施した場合に助成されるもの。

対象

内容

一般の労働者

  • OFF-JTによる訓練

  • 20時間以上の訓練

支給されるお金は以下の3つ。

対象

内容

事業内訓練

  • ・部外の講師への謝金・手当

  • ・部外の講師の旅費

  • ・施設・設備の借上費

  • ・教科書・教材の購入費

  • ・訓練コースの開発費

事業外訓練

  • ・入学料・受講料・教科書代など

賃金

  • ・訓練期間中の所定労働時間内における賃金

助成額・助成率は以下の通りです。ただし、訓練の受講回数の上限は、特定訓練コース・一般訓練コースあわせて3回/人までとなっています。

 

経費助成

生産性要件を

満たす場合

賃金助成

(1人/時)

生産性要件を

満たす場合

OJT実施助成

(1人/時)

生産性要件を

満たす場合

OFF-JT

30%

45%

380円

480円

また、経費助成の限度額は以下の通り。

企業規模

20時間以上

100時間未満

100時間以上

200時間未満

200時間以上

事業主

・事業主団体等

7万円

15万円

20万円

教育訓練休暇等付与コース

教育訓練休暇等付与コースとは、有給教育訓練休暇等制度を導入し、休暇を取得し訓練を受けた従業員がいる場合に助成するもの。以下3つの制度があります。

制度

内容

教育訓練休暇制度

  • ・3年間に5日以上の取得可能な有給の同制度を導入

  • ・30万円を支給

長期教育訓練休暇制度

  • ・30日以上の同制度を導入

  • ・20万円を支給

  • ・6,000円 /日・最大150日分の賃金助成を支給

教育訓練短時間勤務等制度

  • ・30回以上の所定労働時間の短縮および

  •  所定外労働時間の免除可能な同制度を導入

  • ・1回以上適用した場合20万円を支給

助成額・助成率は以下の通りです。

対象制度

賃金助成

(1人/日)

生産性要件を

満たす場合

経費助成

生産性要件を

満たす場合

教育訓練休暇制度

30万円

36万円

長期教育訓練休暇制度

6,000円

7,200円

20万円

24万円

教育訓練短時間勤務等制度

20万円

24万円

厚生労働省「教育訓練休暇等付与コースパンフレット」

画像引用:厚生労働省「教育訓練休暇等付与コースパンフレット」

人への投資促進コース

人への投資促進コースとは、以下の訓練を行った場合、訓練経費や訓練期間中の一部賃金を助成するもの。

  • デジタル人材・高度人材育成訓練
  • 労働者が自発的に行う訓練
  • サブスクリプション型訓練

助成率・助成額は以下の通りです。正規・非正規関係なく助成されますが、定額制訓練のみ正規社員が対象者。事業所が1年度に受給できる助成金の限度額は2,500万円です。

種類

対象訓練

経費助成率

賃金助成額

OJT実施助成額

高度デジタル人材訓練

高度デジタル訓練

中小企業:

75%

大企業:
60%

中小企業:

960円

大企業:
480円

成長分野等人材訓練

海外も含む

大学院での訓練

75%

国内大学院

の場合:

960円

情報技術分野認定実習

併用職業訓練

OFF-JT+OJTの

組み合わせ訓練

中小企業:

60%

大企業:
45%

中小企業:

760円

大企業:
380円

中小企業:

20万円

大企業:
11万円

定額制訓練

定額制訓練
(サブスクリ

プション型)

中小企業:

60%

大企業:
45%

自発的職業能力開発訓練

労働者の自発的な訓練を

事業主が費用負担

45%

長期教育訓練休暇等制度

長期教育訓練休暇制度

制度導入経費:

20万円

6000円/日

所定労働時間の短縮と

所定外労働時間の免除制度

制度導入経費:

20万円

また、受講者1人当たりの助成金の限度額は以下の通りです。

種類

実訓練時間数

100H未満

実訓練時間数

100~200H

未満

実訓練時間数

200H以上

大学

(一年度当たり)

大学院

(一年度当たり)

高度デジタル人材訓練

30(20)

万円

40(25)

万円

50(30)

万円

150(100)

万円

成長分野等人材訓練

国内150万円

<海外500万円>

情報技術分野認定実習

併用職業訓練

15(10)

万円

30(20)

万円

50(30)

万円

自発的職業能力開発訓練

7万円

15万円

20万円

※()内の助成率(額)は、生産性要件を満たした場合

厚生労働省「人への投資促進コースパンフレット」

画像引用:厚生労働省「人への投資促進コースパンフレット」

事業展開等リスキリング支援コース

事業展開等リスキリング支援コースとは、新規事業の事業展開に必要な知識・技能習得の訓練を実施した場合、訓練経費や訓練期間中の一部賃金を助成するもの。

対象

内容

一般の労働者

  • ・OFF-JTによる訓練

  • ・10時間以上の訓練

  • ・以下の訓練

    •  ○専門的な知識・技能の訓練

    •  ○DX化やグリーン・カーボンニュートラルに関連した

    •   知識・技能の訓練

支給されるお金は以下の3つです。

対象

内容

事業内訓練

  • ・部外の講師への謝金・手当

  • ・部外の講師の旅費

  • ・施設・設備の借上費

  • ・教科書・教材の購入費

  • ・訓練コースの開発費

事業外訓練

  • ・入学料・受講料・教科書代など

資格・試験に

関する受験料

  • ・ITSSレベル2、3及び4の資格試験

  • ・公的職業資格

  • ・教育訓練給付指定講座に記載された試験

賃金

  • ・訓練期間中の所定労働時間内における賃金

助成額・助成率は以下の通り。()は大企業の場合です。

  • 経費助成:75%(60%)
  • 賃金助成(1人/時間):960円(480円)

OFF-JTにかかる経費助成の限度額は以下の通り。

企業規模

10時間以上

100時間未満

100時間以上

200時間未満

200時間以上

中小企業

30万円

40万円

50万円

大企業

20万円

25万円

30万円

厚生労働省「事業展開等リスキリング支援コースパンフレット」

画像引用:厚生労働省「事業展開等リスキリング支援コースパンフレット」

建設キャリアアップシステム等普及促進コース

人材確保等支援助成金(建設分野)は、令和4年3月31日をもって廃止。令和4年4月1日より、人材確保等支援助成金(建設キャリアアップシステム等普及促進コース)が新設されます。

新たな制度の助成は下記の通りです。

コース名

要件

経費助成

建設労働者

認定訓練コース

建設関連の訓練を

実施した場合

経費助成:

対象経費の1/6

建設労働者が

認定訓練を受講した場合

賃金助成:

3,800円/人日

<1,000円/人日>

建設労働者

技能実習コース

若年者等の育成と

熟練技能のため、

技能実習を実施した場合

中小企業

経費助成 :

3/4 <3/20>

賃金助成:
8,550円/人日

<2,000円/人日>

大手企業

経費助成:7/10 <3/20>

賃金助成:

7,600円/人日

<1,750円/人日> など

※< >は生産性要件を満たした場合の増額分

障害者職業能力開発コース

障害者職業能力開発コースとは、障害者の職業に必要な教育訓練を継続的に実施する施設の設置・運営を行う事業主に一部費用を助成するもの。

対象

内容

訓練対象障害者

  • ・身体障害者

  • ・知的障害者

  • ・精神障害者

  • ・発達障害者

  • ・高次脳機能障害者

  • ・難治性疾患者

支給額

  • ・訓練用施設の設置・整備費用の3/4を乗じた金額を助成

  • ・初めて助成する場合5,000万円を上限

  • ・更新の場合については1,000万円を上限など

人材開発支援助成金の申請手順

人材開発支援助成金の申請手順は以下の通り。

  • 訓練実施計画届の提出を策定
  • 実施1ヶ月前までに労働局へ提出
  • 計画に沿って訓練を実施
  • 訓練終了後2ヶ月以内に支給申請書を労働局へ提出
  • 助成金の支給決定または不支給決定
  • 審査通過後に助成金を支給

ただし、助成金の提出書類はコースによって異なります。詳細については厚生労働省のWebサイトで確認しておきましょう。

人材開発支援助成金の支給金額・申請方法を解説しました

人材開発支援助成金について知りたい方向けに、人材開発支援助成金の概要や人材開発支援助成金の対象コースと支給額などを解説しました。

人材開発支援助成金を活用するメリットと注意点は以下の通りです。

メリットと注意点

内容

メリット

  • ・人材開発費用の負担軽減が期待できる

  • ・従業員だけではなく企業の底上げにつながる

注意点

  • ・申請に時間と手間がかかるため立て替えが必要になる

  • ・対象の訓練以外は助成金が支給されない

本記事で紹介した内容をもとに、人材開発支援助成金の申請を検討してみましょう。