事業再構築補助金の事業計画書の書き方とは?項目や作成のコツを解説
事業再構築補助金の申請にあたって「事業計画書」に悩む事業者もいるかと思います。そこで本記事では、事業再構築補助金の事業計画書の書き方を徹底解説。計画書に盛り込むべき項目や書類の様式、審査に通るための記載のポイントまで詳しくお伝えします。
事業再構築補助金とは?
事業再構築補助金とは、アフターコロナのために事業を再構築したい事業者に向けた補助金です。中小企業庁によって採択され、企業の事業再編や業態転換、新分野展開などを支援しています。
事業再構築補助金の主な対象は、日本国内に本社をもつ中小企業です(個人事業主も可)。補助率や補助金額は申請枠や従業員数によって異なります。補助率だと1/2~3/4、補助金額だと100万円〜1,5億円までと幅が広いです。
事業再構築補助金では「事業計画書」の提出が必須
事業再構築補助金の申請にあたっては、何のために補助を受けるのかを記載する「事業計画書」が必須です。国に認められた認定支援機関のサポートを受けた上で、事業者が計画書を作成します。
事業計画書の書き方
事業再構築補助金の事業計画書には「審査」があります。審査に通るためには、項目や要件を満たしつつ、わかりやすい書類を作らなければなりません。まずは、事業計画書の「書き方」について詳しく解説します。
事業計画書に盛り込む項目
まずは、事業計画書に盛り込む内容から見ていきましょう。盛り込むべき内容は大きく4つに分類できます。
- 補助事業の具体的取組内容
- 将来の展望
- 本事業で取得する主な資産
- 収益計画
補助事業の具体的取組内容
補助事業の具体的取組内容には、現在の事業状況や展開したい事業内容などを軸に、事業再構築補助金の必要性について詳しく記載します。たとえば以下のような内容です。
- 事業者名
- 事業計画名
- 申請枠
- 事業スケジュール
- 現在の事業状況
- 現在の事業の強みや弱み、事業環境
- 事業再構築の詳しい内容と課題、解決方法
- 事業再構築が必要な理由
- 事業再構築による差別化の内容
上記すべての記載義務はありませんが、計画書を通して、なぜ自社に事業再構築が必要なのか?を伝える必要があります。
たとえば、過去の売上や来客数を示したり、事業環境や市場の動きを分析したりして、事業再構築の必要性を訴えかけましょう。また、事業再構築を行うことで、どのような付加価値を生み出せるかも伝えられると印象がよいです。
将来の展望
将来の展望では、補助事業を行った結果、売上増加が市場やターゲットに対してどのように寄与するのかを記載します。以下のような記載例があげられます。
- 補助事業で期待できる成果(売上や客数など)
- 補助事業の成果によるターゲット(ユーザー)の動き
- 補助事業によって想定される市場の拡大規模
- 競合他社と比べて価格や性能に優位性、収益性があるか
- 補助事業を行うことでの課題やリスクと解決方法
将来の展望で重要なのは、市場や競合他社などの情報をもとに、自社の補助事業に優位性や収益性があるかを示すこと。統計データなどで客観的な情報を示しながら、自社が勝ち残る理由を述べることが大切です。補助事業の優れた点ばかりを並べるのもよくないので、課題やリスクもあるが解決できる点を記載しましょう。
本事業で取得する主な資産
機械装置やシステム、単価50万円以上の建物など、本事業で取得予定の資産を記載します。資産の名称や分類、取得予定価格、建設や設置予定の場所などを詳しく記載しましょう。
「分類」については補助金の公募要項に記載されていないので、総務省の日本標準商品分類などを参照しましょう。たとえば、マーケティングシステムを導入する場合の分類は「広告宣伝費」です。
参照:日本標準商品分類
収益計画
収益計画では、売上や経費など想定している収益計画とスケジュールを記載します。以下の項目を網羅していると好印象です。
- 収益計画表
- 資金調達の計画
- 補助事業の実施スケジュール
- 補助事業の実施体制
- 付加価値額の根拠と実現プロセス
収支計画では、売上や利益だけでなく「付加価値額」が見られます。また、全体の付加価値額や従業員1人あたりの付加価値額の伸び率も重要です。以下に計算方法を記載しておくのでご参考ください。
- 付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
- 伸び率 (%)=(当該年度の経常利益 - 直近期末の経常利益額)÷ 直近期末の経常利益額
- 従業員一人あたりの付加価値額 = 従業員1人あたりの売上高 × 付加価値率(付加価値額 ÷ 売上高)
書類の様式
上記でお伝えした「補助事業の具体的取組内容」「将来の展望」「本事業で取得する主な資産」「収益計画」の4項目については原則、A4サイズで15ページ以内に収める必要があります(補助金額1,500万円以下の場合は10ページ以内)。
また、事業再構築補助金の申請はオンラインのみです。申請にあたっては、中小企業庁が定めている法人や個人事業主のアカウント「GビズIDプライム」にてアカウントIDを発行する必要があります。
参考:GビズID
事業再構築補助金の事業計画書を作成する際のポイント・注意点
続いて、事業再構築補助金の事業計画書を作成するポイントと注意点を見ていきましょう。
申請枠に応じて事業計画書を作成する
事業再構築補助金には申請枠があり、それぞれの枠の要件を満たした事業計画書を作成する必要があります。申請枠の種類は以下の通りです。
【申請枠の種類と要件】
申請枠 |
枠による要件 |
成長枠 |
市場拡大要件 給与総額増加要件 |
グリーン成長枠 |
グリーン成長要件 給与総額増加要件 |
産業構造転換枠 |
市場縮小要件 |
サプライチェーン 強靭化枠 |
国内増産要請要件 市場拡大要件 デジタル要件 事業場内最低賃金要件 給与総額増加要件 パートナーシップ構築宣言要件 |
物価高騰対策・回復再生応援枠 |
売上高等減少要件 再生要件 |
最低賃金枠 |
売上高等減少要件 最低賃金要件 |
卒業促進枠 ※上乗せ支援なので単体利用不可 |
卒業要件 |
大規模賃金引き上げ 促進枠 ※上乗せ支援なので単体利用不可 |
賃金引上要件 従業員増員要件 |
【共通要件の特徴】
事業再構築要件 |
事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること |
認定支援機関要件 |
事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けていること。 補助金額が3,000万円を超える案件は認定経営革新等支援機関及び 金融機関の確認をうけていること |
付加価値額要件 |
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均4.0%以上増加、 又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均4.0%以上 増加する見込みの事業計画を策定すること |
全ての枠に共通している要件は「事業再構築要件」「認定支援機関要件」「付加価値額要件」の3つです。それ以外の要件は申請枠によって異なり、枠ごとに必要な要件を満たす必要があります。申請枠の要件の詳細については、事業再構築補助金の公募要領をご参考ください。
支援機関の確認を受ける
事業計画書を作成する際は、認定経営革新等支援機関による確認や支援が必要です。国が認めている金融機関や商工会議所、弁護士、税理士、行政書士などが該当します。
何を目的にどのように事業再構築補助金を利用するのか、どのように事業計画書を書くのかなど、申請全般について相談を受け付けています。最終的に事業計画書を作成するのは事業者本人ですが、自社に合った支援機関のサポートを受けながら作成しましょう。
審査項目を満たしているか確認する
事業再構築補助金の事業計画書は、提出後に審査にかけられます。審査項目は全部で4つです。審査項目を満たしているかどうか確認しましょう。
審査項目 |
内容 |
補助対象事業としての適格性 |
補助対象事業の要件を満たしているか。 補助事業終了後3~5年で付加価値額を 年率平均3.0%~5.0%以上の増加を期待できるかどうか |
事業化点 |
市場やユーザー、ニーズを検証できているか。 競合他社の状況を把握できているか。 商品サービスを分析した上で 自社の優位性を確保できる計画かどうか。など |
再構築点 |
自社の強みや弱みなどを分析した上で 事業再構築が必要だと判断できているか。 補助事業としての費用対効果が高いか。など |
政策点 |
日本経済の構造転換の促進につながる補助事業かどうか。 ニッチ分野のグローバル市場において トップを築ける潜在性があるか。など |
補助金の採択事例を参照しながら記載する
事業再構築補助金の事業計画書は合計15ページ程度とボリュームが多いです。本記事の内容では全貌をお伝えしきれないので、事業再構築補助金の公式ページが公開している「採択事例」を参考にしながら計画書を記載しましょう。
事業再編や業種転換、新分野展開などの取り組みのイメージが掴める「活用イメージ集」のPDF資料も公開されているので、ぜひ参考になさってください。
【まとめ】事業再構築補助金の事業計画書の書き方を紹介しました
事業再構築補助金には成長枠やグリーン成長枠、最低賃金枠などさまざまな枠があり、申請方法は複雑です。事業計画書も合計15ページ以内とボリュームが多くなるため、作成には入念な準備が必要でしょう。自社に合った認定支援機関を選んだり、必要に応じて申請代行会社を選んだりと、第三者を頼りながらの申請をおすすめします。