ものづくり補助金グリーン枠とは?申請手順をわかりやすく解説!
ものづくり補助金グリーン枠の申請を検討しているものの、要件や審査に通る方法が分からずお困りではないでしょうか。
本記事では、ものづくり補助金グリーン枠の概要や申請手順に加え、採択率を高めるポイントまで解説します。ものづくり補助金グリーン枠を利用したい方はぜひ参考にしてください。
ものづくり補助金グリーン枠とは
ものづくり補助金グリーン枠の概要や補助額、対象者を解説します。
概要
ものづくり補助金は全国中小企業団体中央会が実施する補助金です。働き方改革やインボイス制度、賃上げなどに対応しようとする中小企業を対象にしています。
グリーン枠は温室効果ガスの排出削減に貢献する製品・サービス開発や、炭素生産性向上に向けた生産プロセス・サービス提供方法改善に対しての、設備やシステムへの投資を支援します。
グリーン枠の対象となるような事例は以下の通り。
- 省エネ・環境性能に優れた製品やサービスの開発
- 非石油由来の部素材を用いた製品やサービスの開発
- 廃棄物削減に資する製品・サービスの開発
- 生産工程の労働生産性向上を伴いつつ脱炭素化に資する設備投資
- 水素・アンモニアを活用する設備導入による燃焼工程と生産プロセスの最適化・効率化
補助対象者
申請対象者は資本金と従業員が上記の表の条件を満たす、中小企業や中小企業組合、特定非営利活動法人などです。
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資本金 |
従業員 |
製造業・建設業・運輸業・旅行業 |
3億円以下 |
300人以下 |
卸売業 |
1億円以下 |
100人以下 |
サービス業 (ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く) |
5,000万円以下 |
100人以下 |
小売業 |
5,000万円以下 |
50人以下 |
ゴム製品製造業 |
3億円以下 |
900人以下 |
ソフトウェア業・ 情報処理サービス業 |
3億円以下 |
300人以下 |
旅館業 |
5,000万円以下 |
200人以下 |
その他の業種 |
3億円以下 |
300人以下 |
補助対象については詳細を知りたい方は以下の資料をご確認ください。
補助額
補助額は申請する類型と従業員の規模で変わります。ここでは類型ごとの補助額と補助率は以下の表の通りです。
類型 |
従業員規模 |
補助金上限 |
補助率 |
エントリー類型 |
5人以下 |
750万円以内 |
2/3 |
6〜20人 |
1,000万円以内 |
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21人以上 |
1,250万円以内 |
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スタンダード類型 |
5人以下 |
1,000万円以内 |
|
6〜20人 |
1,500万円以内 |
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21人以上 |
2,000万円以内 |
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アドバンス類型 |
5人以下 |
2,000万円以内 |
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6〜20人 |
3,000万円以内 |
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21人以上 |
4,000万円以内 |
採択率
ものづくり補助金。14次締切におけるグリーン枠の採択率は申請者数が190人で採択者数が72人であり、採択率は54.9%でした。
通常枠との違い
グリーン枠と通常枠の違いは補助上限と補助率、申請要件です。グリーン枠は申請要件が多く、難易度が高くなっていますが、補助率は2/3、補助上限は最大で4,000万円まで利用できます。
通常枠の場合は、中小企業の場合補助率が1/2で、補助上限は最大で1,250万円です。ただし、要件は少なく、基本要件を満たせば申請できます。
申請要件
申請要件は以下のものに分けられます。
また、グリーン枠には3つの類型があり、類型ごとの要件を満たすことも必要です。
それぞれの要件について解説します。
基本要件
ものづくり補助金全体の基本要件は以下の通りです。
- 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させること
- 毎年事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にすること
- 事業者全体の付加価値額を年率で平均3%以上増加させること
上記の条件は補助事業を実施する期間内に達成する必要があります。
大幅賃上げに係る補助上限額引上げの特例
大幅賃上げに係る補助上限額引上げの特例についての要件を満たす場合には、補助額を増やすことが可能です。
- 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加に加え、さらに4.5%増加させる(合計6%増加させる)こと
- 毎年事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上に加え、さらに年額+45円増額させること
- 上記達成に向けて詳細な計画書の作成すること
上記の条件は補助事業を実施する期間内に達成する必要があります。
グリーン枠の要件
グリーン枠は類型が要件の難易度によって以下の3つに分かれています。
- エントリー類型
- スタンダード類型
- アドバンス類型
下の類型ほど要件を満たす難易度が上がりますが、補助額上限での優遇を受けることが可能です。
グリーン枠全体で必要な要件
グリーン枠で類型に関わらず求められる要件は以下の通りです。
- 温室効果ガスの排出削減に役立つ製品・サービスの開発または、炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供の方法の改善に向けたものであること
- 3~5年の事業計画期間内に、炭素生産性を年率平均1%以上増加する事業であること(事業場単位または会社全体のいずれか)
ただし、社内での節電のような取り組みや、設備投資での間接的な炭素排出量の削減は要件には当てはまりません。
エントリー類型
エントリー類型では以下のいずれかを満たすことが要件です。
- エネルギーの種類別に使用量を毎月整理している、または補助対象の事業者のCO2の年間排出量を把握していること
- 事業所の電気、燃料の使用量を用途別に把握していること
スタンダード類型
スタンダード類型はグリーン枠の要件とエントリー類型の要件に加え、以下の要件のいずれか1つを満たすことが必要です。
- ものづくり補助金を利用して開発する製品・サービスが、業界・産業全体での温室効果ガス削減に貢献するものであること
- 電気事業者と、再生可能エネルギーに関連する電気メニューを選択し、契約していること
- 自社で再生可能エネルギーでの発電を導入していること(太陽光やバイオマスなど)
- グリーン電力証書を購入していること
- J-クレジット制度に参加し、削減取り組みについて認証を受けていること
グリーン電力証書とは、グリーン電力(太陽光やバイオマスなどの自然エネルギーを利用した発電)に環境価値という付加価値を与え、その付加価値を取引できる仕組のことをいいます。
J-クレジット制度とは、省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度です。
アドバンス類型
アドバンス類型の要件はグリーン枠の要件とエントリー類型の要件を満たし、かつスタンダード類型で紹介した要件のうち2つ以上満たす必要があります。さらに以下の要件のいずれかを満たすことが必要です。
- SBT(Science Based Targets)の認証またはRE100に参加していること
- 省エネ法における事業者クラス分け評価制度において、2022年度定期報告書分評価が『Sクラス』評価であること
- 2020年度以降、以下のいずれかの事業における省エネルギー診断を受診している、または、地方公共団体で実施する省エネルギー診断を受診している
・一般財団法人省エネルギーセンター実施の「無料省エネ診断等事業及び診断結果等情報提供事業」または「エネルギー利用最適化診断事業及び情報提供事業」
・一般社団法人環境共創イニシアチブ実施の「省エネルギー相談地域プラットフォーム構築事業」・「地域プラットフォーム構築事業」・「中小企業等に向けた省エネルギー診断拡充事業」
SBTとは、パリ協定が求める⽔準に合わせ、企業が設定する温室効果ガス排出削減⽬標のことです。詳細はこちらをご確認ください。
参考:環境庁|SBT(Science Based Targets)について
事業者クラス分け評価制度とは、経済産業省が実施し、省エネ法の定期報告を元にクラス分けする制度です。詳細なクラス分け基準や詳細は以下をご確認ください。
省エネルギー診断とは、事業所全体のエネルギーの使用状況や設備の運転状況から効果的な省エネ対策を提案する診断です。
申請までのスケジュール
ものづくり補助金の申請はどの枠でも変わりません。2023年8月8日時点で、16次申請までの公募が可能で、応募期間や審査期間は以下の通り。
応募期間 |
2023年11月7日17時 |
審査期間 |
2024年1月中旬予定 |
ものづくり補助金の最新スケジュールを確認したい方はこちらをご確認ください。
ものづくり補助金グリーン枠に必要な書類
ものづくり補助金の申請に必要な書類は以下の通りです。
- 事業計画書
- 補助経費に関する誓約書【様式1】
- 賃金引上げ計画の誓約書【様式2】
- 確定申告書
- 従業員数の確認資料(所得税青色申告決算書または所得税白色申告収支内訳書の写し)
- 労働者名簿
- 炭素生産性向上計画及び温室効果ガス排出削減の取組状況【様式3】
- 大幅な賃上げ計画書【様式4】(大幅賃上げに係る補助上限額引上げの特例)
申請の際に必要な様式は以下からダウンロード可能です。
書類ごとの詳細についてはこちらの要項をご確認ください。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(16次締切分)
ものづくり補助金グリーン枠の申請手順
ものづくり補助金グリーン枠の申請手順は以下の通りです。
それぞれの具体的な内容について次で解説します。
事前準備
補助金の申請前に準備するものは以下の通り。
- GBizIDプライムアカウントの取得
- 事業計画書の準備
- IT支援事業者と導入ツールの選定
GBizIDプライムアカウントとは、ものづくり補助金の申請に必要なアカウントです。ものづくり補助金は郵送では手続きできず、電子申請のみで行います。
GBizIDプライムアカウントは以下から作成してください。
申請・交付申請
ものづくり補助金の電子申請は以下から行えます。
申請が完了した後は、補助金交付候補者として採択された場合にのみ、採択通知が届きます。採択から約1ヶ月後になったら補助金対象経費を精査し、交付申請を行いましょう。
補助事業の実施
交付申請し、交付決定日が確定したら、事業計画書に沿って、補助事業を実施します。この時点では補助金は利用できないため、事前に資金を準備しておきましょう。なお、補助事業実施期間前に発注の契約を結ぶと交付の対象外となりますのでご注意ください。
確定検査
確定検査とは、ものづくり補助金の事務局が行う検査です。実績報告書の内容に間違いがないか、機械設備等の入手・支払、補助事業の成果などを確認します。
補助金の請求・支払い
確定検査が問題なく完了したら、補助金の金額が確定し、事務局から補助金確定通知書が届きます。補助金精算払請求書を使って、補助金の請求を行ったら実際に補助金が入金されます。
事業化状況報告
補助事業が終了して5年経過するまでは、補助事業の成果について報告する義務があります。事業化状況報告をしない場合や主体的な協力がない場合、補助対象外となる可能性があるため、注意が必要です。
ものづくり補助金グリーン枠に採択されるためのポイント
ものづくり補助金グリーン枠には審査があり、審査に通らなければ補助金の利用はできません。具体的には以下のポイントを意識しましょう。
成果を測定できる体制を整える
ものづくり補助金グリーン枠では、エネルギーの使用量やCO2排出量を把握することが要件に定められています。そのための書類を事業計画書と別で作成する必要があります。エネルギーの使用量やCO2排出量を推計するためには、補助金の申請前に、ガソリンや電気の使用量などを計測できる体制整備が必要です。
革新性や事業化可能性を意識する
ものづくり補助金での審査項目は要項で以下のように示されています。
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具体的な審査項目 |
技術面 |
・事業内容の革新性 ・課題や目標の明確さ ・技術的な能力 |
事業化面 |
・事業の実施体制 ・市場ニーズの有無 ・事業化までのスケジュールが妥当かどうか |
政策面 |
・地域経済への波及効果 ・隙間事業で高い競争力を持てるか |
炭素生産性向上の取り組みについての妥当性 ※グリーン枠のみ |
・設備投資効果の妥当性 ・設備投資の効果と根拠 ・継続的な取り組みが実施できるか |
大幅賃上げの取り組みについて妥当性 ※大幅賃上げに取り組む場合のみ |
・賃上げ計画の内容と根拠 ・継続性と企業の成長見込み
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上記で示されているように、事業内容の革新性に加え、実際に事業や予測される効果が実現可能かどうかが審査の対象となっています。
これらの要素を意識して事業計画を作成することで、採択率を高められることが可能です。
ものづくり補助金グリーン枠についてまとめました
本記事ではものづくり補助金グリーン枠について、申請方法や採択率を高める方法を解説しました。ものづくり補助金グリーン枠は要件が多く、エネルギー消費量やCO2排出量を測定できる体制作りが必要ですが、補助金額は通常枠よりも優遇されています。
ただし、ものづくり補助金グリーン枠の審査に通るためには、革新性と実現可能性の両方を意識した事業計画書の作成が重要です。