人材確保等支援助成金とは?対象資格や助成金額をわかりやすく解説

人材確保等支援助成金とは?対象資格や助成金額をわかりやすく解説

人材確保等支援助成金は、職場環境を改善し、人材を定着させるための取り組みを補助する制度。しかし、助成金の申請は手続きが複雑でコストがかかります。本記事では

  • 人材確保等支援助成金ってなに?
  • 実際にいくらもらえるの?
  • 採択されるための条件は?

といった疑問にお答えします。ぜひ参考にしてください。

目次
  1. 1. 人材確保等支援助成金とは
  2. 2. 人材確保等支援助成金の種類は9種類
    1. 2-1. (1)雇用管理制度助成コース
    2. 2-2. (2)介護福祉機器助成コース
    3. 2-3. (3)中小企業団体助成コース
    4. 2-4. (4)人事評価改善等助成コース
    5. 2-5. (5)建設キャリアアップシステム等普及促進コース
    6. 2-6. (6)若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
    7. 2-7. (7)作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
    8. 2-8. (8)外国人労働者就労環境整備助成コース
    9. 2-9. (9)テレワークコース
  3. 3. 人材確保等支援助成金の受給までの流れ
  4. 4. 人材確保等支援助成金の3つの注意点
    1. 4-1. 創業1年未満の企業は受給できない
    2. 4-2. 申請期限は計画開始日の1~6ヶ月前の前日まで
    3. 4-3. 最終目的は受給ではなく従業員の環境改善
    4. 4-4. 助成金申請は外部委託するのもおすすめ
  5. 5. 人材確保等支援助成金について紹介しました

人材確保等支援助成金とは

人材確保等支援助成金は、事業主が魅力的な職場環境を整備し、人材を確保・育成をしやすくするための制度

たとえば、研修制度の導入や従業員が人間ドックを受けられるようにするなど、働きやすい職場環境を整える際にかかった費用の一部をキャッシュバックしてもらえます。

ほかにも、介護福祉関係では、介護士の負担を軽減するための機器導入にも利用可能。こうした雇用環境の整備によって、従業員が長く企業で働けるようにするのが人材確保等支援助成金の目的です。

最大1,000万円まで助成金を受けられます。

人材確保等支援助成金の種類は9種類

人材確保等支援助成金には9つのコースがあります。

コース

助成額

補助対象

雇用管理制度助成コース

57万円〜72万円

雇用管理制度の導入・実施

介護福祉機器助成コース

導入費用の20%(最大150万円)

労働者の負担を軽減する

介護福祉機器の導入

中小企業団体助成コース

費用の2/3(最大1,000万円)

中小企業団体(事業協同組合等)が

人材確保や従業員の職場定着を

支援するための事業

人事評価改善等助成コース

80万円

生産性向上を目的とした

人事評価制度を整備

建設キャリアアップシステム等

普及促進コース

費用の1/2〜2/3

建設事業主団体が実施する

建設キャリアアップシステム

(CCUS)に関する取り組み

若年者及び女性に魅力ある

職場づくり事業コース

(建設分野)

費用の9/20〜2/3

・若年および女性労働者の

 入職や定着のための取り組み

・建設工事における訓練を

 推進する活動

作業員宿舎等設置

助成コース(建設分野)

費用の1/2〜2/3

・ 被災三県に所在する作業員宿舎、

 作業員施設、賃貸住宅を賃借

・自ら施工管理する建設工事現場に

 女性専用作業員施設を賃借

・認定訓練の実施に必要な

 施設や設備の設置または整備

外国人労働者就労環境

整備助成コース

費用の1/2(上限57万円)

または

費用の2/3(上限72万円)

外国人特有の事情に配慮した

就労環境の整備

(就業規則等の多言語化など)

テレワークコース

機器等導入助成:経費の30%

目標達成助成:経費の20%

良質なテレワークシステムの導入し実施

※雇用管理制度助成コース(建設分野)、介護・保育雇用管理制度助成コース、設備改善等支援コース、働き方改革支援コースは廃止済み

(1)雇用管理制度助成コース

※本コースは令和4年4月1日以降、整備計画の新規受付を休止中です。

従業員が働きやすい職場環境を整備し、人材の定着と離職率の低下を目的とする助成金です。

【助成額】

57万円(生産性要件を満たした場合は72万円)

人材確保等支援助成金では、助成額がアップする条件として「生産性要件の達成」があります。生産性要件とは、従業員の生産性を向上させる取り組みを評価するための指標のことです。

生産性は以下の式で算出します。

生産性の算出方法

また、具体的な生産性要件は下記です。

生産性要件

【主な要件】

  • 制度申請時点の離職率が30%以下であること
  • 以下の雇用管理制度を計画、実施すること
      ・諸手当等制度(通勤手当・住居手当・転居手当(異動手当)・
       家族手当・単身赴任手当など)
      ・研修制度(新入社員研修、管理職研修、幹部職員研修、
       新任担当者研修、マーケティング技能研修、特殊技能研修など)
      ・健康づくり制度(胃がん検診、子宮がん検診、肺がん検診、
       乳がん検診、大腸がん検診など)
      ・メンター制度(コーチング、カウンセリングなど)
      ・短時間正社員制度(保育事業主のみ)
  • 目標値を達成させること

【目標値】

対象事業所の

雇用保険被保険者

1 ~9人

10~29人

30~99人

100~299人

300人以上 

低下させる離職率(目標値)

15%

10%

7%

5%

3%

(2)介護福祉機器助成コース

介護福祉事業において、従業員の身体的な負担を軽減することを目的にした新たな機器導入のための助成金

【助成金額】

導入費用の20%(生産性要件を満たした場合は35%)
ただし、上限150万円まで。

【目標値】

対象事業所の

雇用保険被保険者

1~9人

10~29人

30~99人

100~299人

300人以上 

低下させる離職率(目標値)

15%

10%

7%

5%

3%

【主な要件】

  • 以下の補助対象に該当すること
      ・介護福祉機器の導入費(特殊浴槽 、装着型移乗介助機器、
       体位変換支援機器、移動・昇降用リフト)
      ・保守契約費
      ・機器の使用を徹底させるための研修費
  • 離職率が目標値まで低下すること

(3)中小企業団体助成コース

中小企業団体(事業協同組合等)が所属する中小企業に対して、人材確保や従業員の職場定着の支援事業を行うための助成金

【助成金額】

1年間実施された中小企業労働環境向上事業の経費の2/3
ただし、上限額が区分によって異なります。

認定組合等の区分

上限額

大規模認定組合等(構成中小企業者数500以上)

1,000万円

中規模認定組合等(同100以上500未満)

800万円

小規模認定組合等(同100未満)

600万円

【主な要件】

  • 雇用管理改善計画を策定し、都道府県知事の認定を受けること。
  • 1年間の「中小企業労働環境向上事業」を策定し、労働局長の認定を受けること。
     ・計画策定・調査事業(雇用管理状況調査、従業員意識調査など)
     ・安定的雇用確保事業(募集・採用ガイドブック、
      合同会社説明会の開催など)
     ・職場定着事業(安全衛生セミナーの実施、職業相談員の配置および
      職業相談の実施など)
     ・モデル事業普及活動事業(モデル事業説明会の実施など)
  • 認定された「中小企業労働環境向上事業」を実施すること。

(4)人事評価改善等助成コース

※本コースは令和4年4月1日以降、整備計画の新規受付を休止中です。

定期昇給以外の人事評価制度を整備することで生産性向上事業のための助成金。成果をあげた従業員が相応の報酬を得られる制度を導入すれば、賃金アップや離職率の低下を期待できます。

【助成金額】

80万円

【主な要件】

  • 人事評価制度等整備計画を作成して管轄の労働局の認定を受けること。
  • 計画に基づいて実際に従業員に実施すること。
  • 申請日の会計年度の前年度とその3年後の会計年度を比較して生産性が6%以上伸びていること。
  • 従業員の賃金が2%以上増加していること。
  • 離職ポイントを以下の目標値以上に低下させること。

対象事業所における

雇用保険一般被保険者の人数規模区分 

1~300人      

301人以上

低下させる離職率ポイント

維持

1%ポイント以上

(5)建設キャリアアップシステム等普及促進コース

建設事業主団体が実施する建設キャリアアップシステム(CCUS)に関連する事業の為の助成金

【助成金額】

中小建設事業主団体:支給対象経費の2/3
中小建設事業主団体以外の建設事業主団体:支給対象経費の1/2

【主な要件】

  • 建設キャリアアップシステム(CCUS)の登録
    建設事業主団体が、団体に所属する事業主に対して事業者登録料、技能者登録料、レベル判定手数料、見える化評価手数料を補助する事業
  • CCUSの事務手続き
    建設事業主団体が、団体に所属する事業主に対して事業者登録、技能者登録、レベル判定、見える化評価の申請手続を支援する事業
  • CCUSの各種機器やソフトウェア等の導入
    建設事業主団体が、団体に所属する事業主に対してカードリーダーやアプリなどのソフトウェア導入を促進する事業

(6)若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)

建設業での若手や女性に対する設備投資や広域職業訓練事業のための助成金

【助成金額】

<若手や女性に対する職場定着事業の場合>

(中小建設事業主):支給対象経費の3/5(生産性要件を満たした場合は3/4)
(中小建設事業主以外の建設事業主):支給対象経費の9/20(生産性要件を満たした場合は3/5)

※雇用管理研修等を受講させた場合、1人あたり日額8,550円<10,550円>加算(最長6日間)

(中小建設事業主団体):支給対象経費の2/3
(中小建設事業主団体以外の建設事業主団体):支給対象経費の1/2

<広域職業訓練事業の場合>

支給対象経費の2/3

【主な要件】

  • 建設事業主または建設事業主団体で、若年、女性労働者の人材確保を目的とした事業を行う(現場見学会、新規入職者への研修会、女性労働者向けのキャリアパス作成など)
  • 職業訓練法人が建設工事における職業訓練を広域的にを実施する

(7)作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)

以下の3つに対して助成します。

  1. 作業員宿舎等経費助成
    被災三県(岩手県、宮城県、福島県)の工事現場に作業員宿舎、賃貸住宅及び作業員施設(便所、休憩室、更衣室、シャワー室、浴室及び食堂)を賃借する事業
  2. 女性専用作業員施設設置経費助成
    工事現場で作業する女性専用の作業員施設(便所、更衣室、シャワー室、浴室)を賃借する事業
  3. 訓練施設設置経費助成
    建設事業にかかわる認定訓練を実施するための施設・設備の設置事業

【助成金額】

  1. 支給対象経費の2/3(1事業年度で上限200万円)
  2. 支給対象経費の4/5(生産性要件を満たした場合は3/4)(1事業年度で上限60万円)
  3. 支給対象経費の1/2(1つの計画で上限3億円)

【主な要件】

  1. 被災三県(岩手県、宮城県、福島県)に所在する作業員宿舎、作業員施設、賃貸住宅を賃借した中小建設事業主
  2. 建設工事現場に女性専用作業員施設を賃借した中小元方建設事業主
  3. 認定訓練の実施に必要な施設や設備の設置又は整備を行った広域的職業訓練を実施する職業訓練法人

(8)外国人労働者就労環境整備助成コース

人材不足解消のために、外国人労働者が働きやすい職場環境づくりに取り組むための助成金

【助成金額】

支給対象経費の1/2(上限57万円)
生産性要件を満たした場合は2/3(上限72万円)

【主な要件】

  • 外国人労働者を雇用している事業主であること
  • 外国人労働者に対する就労環境整備措置を新たに導入し、外国人労働者に対して実施すること(※1及び2の措置に加え、3~5のいずれかを選択)
     1. 雇用労務責任者の選任
     2. 就業規則等の社内規程の多言語化
     3. 苦情・相談体制の整備
     4. 休暇制度(一時帰国用)の整備
     5. 社内マニュアル・標識類等の多言語化
  • 就労環境整備計画期間終了1年後での外国人労働者の離職率が10%以下であること

(9)テレワークコース

テレワーク環境を構築・運用し、従業員の確保や雇用管理改善のための助成金

【助成金額】

  • 機器等導入助成:支給対象経費の30%
  • 目標達成助成:支給対象経費の20%(生産性要件を満たす場合35%)

テレワーク用サービス利用料も助成対象となります。

※初期費用:合計5万円(税抜)、利用料合計:35万円(税抜)まで

(例)

  • リモートアクセス及びリモートデスクトップサービス
  • 仮想デスクトップサービ
  • クラウドPBXサービス
  • web会議等に用いるコミュニケーションサービス
  • ウイルス対策及びエンドポイントセキュリティサービス

【主な要件】

  • テレワーク実施計画を作成し、管轄の労働局に提出・認定を受けること。
  • 実施計画に基づき、取組を実施すること。
  • テレワーク実施状況が、以下のいずれかを満たすこと。
     1. 1回以上、テレワーク実施対象労働者全員がテレワークを実施すること。
     2. テレワーク実施対象労働者が週平均1回以上テレワークを実施すること。
  • 従業員に向けた「企業トップからのメッセージ発信・社内呼びかけ」や「事例収集及び社内周知」を実施すること。

人材確保等支援助成金の受給までの流れ

人材確保等支援助成金の受給までの流れ

人材確保等支援助成金を受給するには、事業計画の作成、実施だけでなく事業の評価を認められる必要があります。事業計画の作成は各コースで指定されたフォーマットをダウンロードして記入してください。事業実施の2ヶ月以内に支給申請をして、審査が通れば晴れて受給となります。

事業を実施する際には、計画どおりに実施できていないと支給申請が通りません。そのため、一部の従業員がルールを守らないということがないよう、組織内での周知や認識共有が不可欠です。

また、事業にかかる経費は1度自社で負担する必要があることに注意しましょう。事業の評価期間が1年~3年あるコースもあるため、事業資金が十分にあるのかも確認しておく必要があります。

人材確保等支援助成金の3つの注意点

人材確保等支援助成金の3つの注意点

創業1年未満の企業は受給できない

創業1年未満の企業は人材確保等支援助成金の対象になりません。なぜなら、人材確保等支援助成金では「離職率の低下」が目標値として設定されていて、創業間もない企業では、取り組み実施による効果を確認できないから。

創業間もない企業が人材確保等支援助成金を利用しようと考えているのであれば、最低でも1度は確定申告を済ませてからにしましょう。

申請期限は計画開始日の1~6ヶ月前の前日まで

事業開始が4月1日であれば、少なくとも2月28日までに計画書を作成・申請しなくてはいけません。計画書の作成には多くの時間と人的コストがかかりますので、申請のやり直しにならないよう、計画的に進めることをおすすめします。

最終目的は受給ではなく従業員の環境改善

助成金を受給はあくまで目標達成の手段であり、ゴールではありません。従業員が働きやすい職場環境の整備と長期的な人材定着が最終目標です。

有能な人材を長期的に留めておけることは、自社の優位性を確保できるだけでなく、安定的な成長にもつながります。また、働きやすい環境ができれば新たな人材の獲得も容易になるでしょう。

そのためにも、実施後の受給要件を満たすだけでなく、長期的な考えで事業計画を立てることが重要となります。

助成金申請は外部委託するのもおすすめ

人材確保等支援助成金は、各コースの助成金額や要件が異なるため素人が読んでも理解が困難。自社にあった制度の選定や書類の作成には相応の時間とコストが発生します。そのため、外部の専門家に依頼してしまったほうがスピーディーに事業を実施できるでしょう。

  • 中小企業診断士
  • 社会保険労務士
  • 行政書士

などに相談すれば、適切なコースの選定や書類の作成を代行してくれます。

費用は「着手金(5~10万円)」と「成功報酬(補助金額の15~20%)」が相場。着手金のない「完全成功報酬(補助金額の25~30%)」もありますが、補助金額によっては相当割高になってしまうケースもあります。そのため、依頼する際には期待できる補助金額を考慮してどちらの報酬タイプを選ぶか決めるようにしましょう。

人材確保等支援助成金について紹介しました

本記事では、人材確保等支援助成金について解説しました。

人材確保等支援助成金を活用すれば、従業員にとって魅力ある職場づくりができます。従業員にとって働きやすい環境が整えば、長期的な人材の定着や、新たな人材の確保にも有利です。職場環境の整備にお悩みの場合は、本記事を参考にしてみてください。