ものづくり補助金は個人事業主でも利用可能!採択率を高める方法まで解説!
ものづくり補助金を利用したいと考えている、個人事業主の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ものづくり補助金の概要や個人事業主が採択されにくい理由、採択率を高める方法について解説します。個人事業主でものづくり補助金の採択を目指す方はぜひ参考にしてください。
ものづくり補助金とは
ものづくり補助金は全国中小企業団体中央会が実施し、働き方改革やインボイス制度、賃上げなどに対応しようとする中小企業や小規模事業者を対象にした補助金です。個人事業主も利用できます。
技術革新や生産プロセスを目的とした設備支援に対して利用可能で、審査に通る必要があります。
補助対象 |
資本金と従業員数が一定数以下の中小企業・小規模事業者 |
補助額(補助率) ※小規模事業者の場合 |
750万円〜1250万円(補助率:2/3) |
応募期間(16次締め切り) |
2023年11月7日17時 |
補助対象者
申請対象者は資本金と従業員が一定より少ない中小企業と個人事業主を含めた小規模事業主です。具体的な規模については業種によって、以下のように異なります。
資本金 |
従業員 |
|
製造業・建設業・運輸業・旅行業 |
3億円 |
300人 |
卸売業 |
1億円 |
100人 |
サービス業 (ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く) |
5,000万円 |
100人 |
小売業 |
5,000万円 |
50人 |
ゴム製品製造業 |
3億円 |
900人 |
ソフトウェア業・ 情報処理サービス業 |
3億円 |
300人 |
旅館業 |
5,000万円 |
200人 |
その他の業種 |
3億円 |
300人 |
補助額と補助対象経費
ものづくり補助金の補助額と補助率は、補助金の枠によって変わります。具体的には以下の表の通りです。
補助額(上限) |
補助率 |
|
・通常枠 ・回復型賃上げ・雇用拡大枠 ・デジタル枠 |
750万円〜1250万円 |
2/3 (小規模事業者の場合) |
グリーン枠 |
4000万円 |
|
グローバル市場開拓枠 |
3000万円 |
大幅賃上げに係る補助上限額引上げの特例が受けられる場合には、補助額が100万〜1000万円上乗せされます。主要な補助対象経費は以下の通りです。
- 機械装置・システム構築費
- 運搬費
- 技術導入費
- 外注費
- 専門家経費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費
ただし、ものづくり補助金の交付決定日以降に発注を行い、補助事業実施期間内に支払いを完了したものが対象となります。
申請要件
要件を満たす事業計画書の作成と、補助事業実施期間内に計画書内のすべての事業を実施することが条件です。具体的な要件は以下の通り。
- 補助事業実施期間内で、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
- 補助事業実施期間内で、毎年事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上であること
- 補助事業実施期間内で、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加させること
また、上記以下の条件を満たす場合には、大幅賃上げに係る補助上限額引上げの特例が受けられ
ます。
- 補助事業実施期間内で、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加に加え、4.5%増加させる(合計6%増加させる)
- 補助事業実施期間内で、毎年事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上に加え、年額+45円増額させる
- 上記達成に向けて詳細な計画書の作成
補助金交付後に目標未達が発覚すると、返還義務が発生します。なお、通常枠以外の枠については上記に加え、それぞれの枠で規定された要件も満たす必要があります。
通常枠以外の要件についてはこちらをご確認ください。
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(16次締切分)
ものづくり補助金の種類
ものづくり補助金は、以下5種類の枠に分けられます。
- 通常枠
- 回復型賃上げ・雇用拡大枠
- デジタル枠
- グリーン枠
- グローバル
- 市場開拓枠
それぞれの枠について簡単に解説します。
通常枠
革新的な製品・サービス開発や、生産プロセスの改善に必要な設備・システム投資に取り組む中小企業や小規模事業者を支援する補助金です。他の枠と比較して、要件が少ないです。
回復型賃上げ・雇用拡大枠
業績が厳しい中で賃上げや雇用枠拡大に取り組もうとする企業や小規模事業者が、革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善に取り組む際に利用できる枠です。
デジタル枠
デジタル枠はDX(ITやAIなどデジタル技術を用いた企業風土の改革)に関する製品開発や、DXを活用した生産プロセス改善に利用できる枠です。
グリーン枠
温室効果ガスの排出削減について取り組みに関して、革新的な革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善に取り組む際に利用できる枠です。
グローバル市場開拓枠
海外事業の拡大や強化を目的に、革新的な革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善に取り組む際に利用できる枠です。
審査項目
ものづくり補助金を受給する際には審査があり、審査に通る確率を高めるには、審査項目を意識した事業計画書作成が重要です。主な審査項目は以下の通り。
具体的な審査項目 |
|
技術面 |
・事業内容の革新性 ・課題や目標の明確さ ・技術的な能力 |
事業化面 |
・事業の実施体制 ・市場ニーズの有無 ・事業化までのスケジュールが妥当かどうか |
政策面 |
・地域経済への波及効果 ・隙間事業で高い競争力を持てるか |
炭素生産性向上の取り組みについての妥当性 ※グリーン枠のみ |
・設備投資効果の妥当性 ・設備投資の効果と根拠 ・継続的な取り組みが実施できるか |
グローバル市場開拓の取り組みについての妥当性 ※グローバル市場開拓枠のみ |
・実施体制・事業計画・遂行能力があるか ・市場調査分析がされており、国際競争性があるか ・国内地域の需要・雇用の創出ができるか |
大幅賃上げの取り組みについて妥当性 ※大幅賃上げに取り組む場合のみ |
・賃上げ計画の内容と根拠 ・継続性と企業の成長見込み |
申請までのスケジュール
ものづくり補助金の申請は2023年8月4日時点で、16次申請までの公募が可能です。具体的なスケジュールは以下の通り。
応募期間 |
2023年11月7日17時 |
審査期間 |
2024年1月中旬予定 |
なお、最新の予定についてはこちらをご確認ください。
個人事業主での採択率
ものづくり補助金について、個人事業主での採択率は公表されていません。14次締め切りにおける、申請者数と採択者数は以下の表の通りです。
申請者数 |
採択者数 |
|
全体 |
4,865 |
2,470 |
通常枠 |
3,322 |
1,661 |
回復型賃上げ・雇用拡大枠 |
190 |
95 |
デジタル枠 |
1,015 |
569 |
グリーン枠 |
131 |
72 |
グローバル 市場開拓枠 |
207 |
73 |
ものづくり補助金の14次締め切りにおける全体の採択率は50.7%でした。
ものづくり補助金の採択がされにくい要因
ものづくり補助金は個人事業主でも申請可能なものの、採択されにくいといわれています。その要因は以下の通りです。
それぞれの理由について次で解説します。
審査要件を満たす技術力がない
ものづくり補助金で審査される要素として、技術力が挙げられますが、個人事業主と中小企業では技術力に差が生まれやすい点が問題です。個人事業主の場合は、中小企業と比較して設備が整っていないことが多いでしょう。
革新的なアイデアが思いついたとしても、実現するための設備や人材が揃っていなければ、審査に通りません。
事業実施体制を整える難易度が高い
ものづくり補助金の審査項目には、事業実施のために社内外の体制が整っていることが要求されます。具体的には以下のような要素です。
- 事業実施に必要な人材が揃っているか
- 事務処理能力は十分にあるか
- 専門的知見があるか
これらの要素を個人事業主で満たすのは簡単ではありません。
資金的な体力が求められる
ものづくり補助金では財務状況が審査対象の1つです。入金タイミングは事業後であるため、補助金なしでも事業が実施できる状態でなければいけません。
最近の財務状況や、金融機関等からの十分な資金の調達が見込めているかどうかが判断の基準になります。しかし、個人事業主の場合、革新的な製品開発のための生産設備を構築できるほど財務状況を整えることは簡単ではないでしょう。
ものづくり補助金の採択率を高めるポイント
ものづくり補助金の採択率を高めるためには、以下の点を押さえておくことが大切です。
それぞれのポイントについて、次で解説します。
審査ポイントを踏まえる
審査側が審査する項目は事業の技術や実現可能性やニーズを踏まえているかなどが挙げられてい
ます。
実現可能性やニーズについて、できるだけ信用に足るデータや分析を用意することが大切です。ただし、原則として10ページ以内にまとめる必要があるため、必要な情報をコンパクトに盛り込みま
しょう。
実施体制を整える
個人事業主の場合、従業員や資金が少ない傾向にあり、実施体制を整えることは簡単ではありま
せん。
従業員のみで実施体制を整えられない場合には、外注を利用して構築する方法もあります。なお、補助金の対象には外注費用も含めることが可能です。補助金をうまく利用すれば、従業員が少ない場合でも実施体制を整えられます。
資金計画を事前に立てておく
ものづくり補助金が入金されるのは事業が実施され、審査を受け終わった後です。そのため、事業期間中は、補助金なしで事業を進められるよう資金計画を立てる必要があります。
事業者の財務状況は審査対象でもあるため、銀行融資や自己資本、クラウドファンディングなどを活用し、必要な資金を確保しましょう。
ものづくり補助金に必要な書類
ものづくり補助金の申請に必要な書類は以下の通りです。
- 事業計画書
- 補助経費に関する誓約書【様式1】
- 賃金引上げ計画の誓約書【様式2】
- 確定申告書
- 従業員数の確認資料(所得税青色申告決算書または所得税白色申告収支内訳書の写し)
- 労働者名簿
- 大幅な賃上げ計画書【様式4】
申請の際に必要な様式は以下からダウンロード可能です。
なお、申請する枠によっては必要な書類が増えることもあります。詳細はこちらの要項をご確認ください。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(16次締切分)
ものづくり補助金の申請手順
ものづくり補助金の申請手順は以下の通りです。
それぞれの手続きについて、次で解説します。
事前準備
事前に準備するものとしては以下のものがあります。
- GBizIDプライムアカウントの取得
- 事業計画書の準備
- IT支援事業者と導入ツールの選定
GBizIDプライムアカウントとは、ものづくり補助金の申請に必要なアカウントで、必要書類の提出や手続きはこちらのアカウントを利用します。
GBizIDプライムアカウントは以下から申請可能です。
申請・交付申請
ものづくり補助金の応募申請は電子申請でのみ行えます。郵送では手続きができません。電子申請は以下から行えます。
申請後、審査に通り、補助金交付候補者として採択された場合に、採択通知が届きます。採択後は補助金対象経費を精査し、交付申請を行います。交付申請ができるのは、採択から約1ヶ月後です。
補助事業の実施
事業計画書に沿って、補助事業実施期間内(交付決定日から10ヶ月以内)に、発注・事業実施・中間報告・実績報告を行います。補助事業実施期間前に発注の契約を結ぶと交付の対象外となるため、注意が必要です。
確定検査
確定検査は補助事業の実施と実績報告が行われたあとで、ものづくり補助金の事務局から行われる検査です。実績報告書の内容通りに事業が行われたか、機械設備等の入手・支払、補助事業の成果などを確認します。
補助金の請求・支払い
確定検査が完了し、問題がなかった場合には、補助金の金額が確定し、事務局から補助金確定通知書が届きます。その後、補助金精算払請求書を使って補助金の請求を行ったのち、補助金が入金され
ます。
事業化状況報告
補助事業が終了して5年経過するまでは、補助事業の成果について報告する義務があります。事業か状況報告をしない場合、補助対象外となる可能性があるため、注意が必要です。
ものづくり補助金を個人事業主が申請する方法についてまとめました
本記事では、ものづくり補助金を個人事業主が申請する方法について解説しました。ものづくり補助金は要件を満たしていれば個人事業主でも申請が可能です。
ただし、ものづくり補助金には審査があり、個人事業主が審査に通るのは簡単ではありません。ものづくり補助金を利用したい場合は、事業計画を入念に立て、実施体制や財務状況に至るまで準備を整えておくことが大切です。