ものづくり補助金の対象になる設備投資|対象外の設備・システムも解説!

設備投資に活用できる補助金・助成金9選!要件や申請方法を紹介

ものづくり補助金を利用して設備投資したいと考えているが、そもそも検討中の設備・システムは補助金の対象なのか?申請前に知っておきたい。そんな経営者の方に向け、ものづくり補助金の対象になる設備投資を申請枠・類型ごとに紹介するとともに、注意しておきたい経費対象外の設備も解説していきます。

目次
  1. 1. ものづくり補助金の概要
    1. 1-1. ものづくり補助金の対象事業者
    2. 1-2. ものづくり補助金の基本要件
    3. 1-3. ものづくり補助金の申請枠・補助金額・補助率
  2. 2. 【申請枠・類型別】ものづくり補助金の対象となる設備投資
    1. 2-1. 省力化(オーダーメイド)枠
    2. 2-2. 製品・サービス高付加価値化枠:通常類型
    3. 2-3. 製品・サービス高付加価値化枠:成長分野進出類型(DX / GX)
    4. 2-4. グローバル枠
  3. 3. ものづくり補助金の対象になる設備投資(補助対象経費)
  4. 4. ものづくり補助金の経費対象にならない設備投資
  5. 5. 【まとめ】ものづくり補助金の対象になる設備投資を紹介しました

ものづくり補助金の概要

ものづくり補助金とは、働き方改革 / 賃上げ等に対応するため、革新的な製品 / サービスの開発や生産性向上に取り組む中小企業の「設備投資」を支援する補助金制度のこと。正式には「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」という名称の補助金制度です。

ものづくり補助金を受給するには、要件を満たす事業者が設備投資に関する事業計画を策定し、申請 / 採択されなければなりません。比較的継続して実施されている補助金制度ですが、公募開始ごとに内容に若干の変更が加えられることもあります。まずはものづくり補助金の基本概要を理解し、公募ごとの変更点を確認することが重要です。

参考サイト:ものづくり補助金総合サイト

ものづくり補助金の対象事業者

ものづくり補助金を申請できる対象事業者は以下の通り。

  • 中小企業者(組合関連以外)
  • 中小企業者(組合・法人関連)
  • 小規模企業者・小規模事業者
  • 特定事業者の一部
  • 特定非営利活動法人
  • 社会福祉法人

組合・法人関連中小企業者とは、企業組合 / 商工組合など、中小企業等経営強化法第2条第1項で規定する一部の組合・法人のこと。特定事業者の一部とは、中小企業等経営強化法第2条第5項で規定する会社 / 個人のうち、資本金 / 出資総額10億円未満の事業者のことです。
本記事では、組合関連以外の中小企業者、小規模企業者等の要件を紹介しておきましょう。

中小企業者(組合関連以外)の要件

業種

資本金(以下)

常勤従業員数(以下)

製造業、建設業、運輸業、旅行業

3億円

300人

卸売業

1億円

100人

サービス業
(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)

5,000万円

100人

小売業

5,000万円

50人

ゴム製造業
(タイヤ / チューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く)

3億円

900人

ソフトウェア業、情報処理サービス業

3億円

300人

旅館業

5,000万円

200人

その他の業種

3億円

300人

小規模企業者・小規模事業者の要件

業種

常勤従業員数

製造業その他

20人以下の会社および個人事業主

商業・サービス業

5人以下の会社および個人事業主

サービス業のうち宿泊業・娯楽業

20人以下の会社および個人事業主

ものづくり補助金の基本要件

対象事業者がものづくり補助金を申請するためには、以下の基本要件すべてを満たす3〜5年間の事業計画を策定しなければなりません。

基本要件

概要

要件詳細

給与支給額の増加

全従業員および役員に支払った給与等。
福利厚生費、法定福利費、退職金は除く

事業計画期間に給与支給総額を
年平均成長率1.5%以上増加させる

最低賃金の引き上げ

補助事業を実施する事業場内で
もっとも低い賃金

事業場内最低賃金を
毎年「地域別最低賃金 + 30円」以上の水準にする

付加価値額の増加

付加価値額
= 営業利益 + 人件費 + 減価償却費

事業計画期間に事業者全体の付加価値額を
年平均成長率3%以上増加させる

ものづくり補助金の申請時点で「要件を満たす賃金引き上げ計画」を策定していなければならないことに注意が必要。交付後に計画を策定していないことが発覚した場合、支給された補助金の返還を求められてしまいます。

ものづくり補助金の申請枠・補助金額・補助率

ものづくり補助金には、3つの申請枠と2つの類型が用意されており、設備投資する事業の
目的 / 計画に応じた適切な枠で申請可能。受給できる補助金額 / 補助率は、申請枠によって異なるほか、事業者の種類 / 規模によっても異なります。

申請枠・類型

補助上限額(大幅賃上げの場合)

補助率

省力化(オーダーメイド)枠

5人以下:750万円(1.000万円)

6〜20人:1,500万円(2,000万円)

21〜50人:3,000万円(4,000万円)

51〜99人:5,000万円(6,500万円)

100人以上:8,000万円(1億円)

中小企業:1/2

小規模・再生:2/3

※補助金額1,500万円まで。
1,500万円を超える部分は1/3

製品・サービス高付加価値化枠
(通常類型)

5人以下:750万円(850万円)

6〜20人:1,000万円(1,250万円)

21人以上:1,250万円(2,250万円)

中小企業:1/2

小規模・再生:2/3

新型コロナ回復加速特例:2/3

製品・サービス高付加価値化枠
(DX・GX)

5人以下:1,000万円(1,100万円)

6〜20人:1,500万円(1,750万円)

21人以上:2,500万円(3,500万円)

2/3

グローバル枠

3,000万円(3,100〜4,000万円)

中小企業:1/2

小規模・再生:2/3

大幅賃上げとは、基本要件で3%以上が求められている「給与支給額の増加」を、事業計画内で6%以上に定めた事業者を対象とした特例措置のこと。要件を満たす事業者は、補助上限額100万円〜2,000万円が上乗せされる特例を受けられます。

ものづくり補助金の詳細については以下の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:ものづくり補助金の内容を解説!対象となる事業者の要件と金額とは

【申請枠・類型別】ものづくり補助金の対象となる設備投資

ものづくり補助金の概要は把握できた。それでは、どのような設備投資・システム投資なら、ものづくり補助金の経費として認められるのか。知りたい方のため、ものづくり補助金の対象となる設備投資・システム投資を、申請枠・類型別に解説していきましょう。

省力化(オーダーメイド)枠

省力化(オーダーメイド)枠とは、デジタル技術を活用したオーダーメイド設備の導入等で、生産過程 / サービス提供方法の効率化・高度化を支援する申請枠のこと。IoT / センサー / AI / ロボットなどを活用した設備を「オーダーメイド設備」といい、個々の業務に応じて専用設計された機械装置 / システムを意味します。

一般的には、外部のシステムインテグレーター(SIer)などと協力して設計 / 構築したシステムが対象。デジタル技術を応用しない単なる機械装置は、ものづくり補助金の設備投資対象にはなりません。

たとえば、苗の選別や水・気温の管理がシビアなイチゴ農園。AI / IoT / センサーを利用し、ハウスの換気や給水を自動化することにより、重労働で人手の必要作業を省力化可能。自動化による品質管理や生産性の向上も期待できます。

省力化(オーダーメイド)枠の追加要件

  • 事業計画期間内に、設備投資前と比較して労働生産性が2倍以上となる事業計画を策定
  • 事業計画期間内に、投資回収可能な事業計画を策定
  • SIerを活用したシステム投資の場合、事業計画期間内の保守・メンテナンス契約を締結する
  • 事業資金を金融機関等から調達する場合、金融機関による事業計画確認書を提出

製品・サービス高付加価値化枠:通常類型

製品・サービス高付加価値化枠とは、自社独自の革新的な製品・サービスを開発し、顧客に新たな価値を提供するための設備投資・システム投資を支援する申請枠のこと。「通常」「DX / GX」という2つの類型が用意されており、成長分野として指定されたDX・GX以外に関する事業は「通常類型」で申請します。

通常 / DX・GXどちらの類型も、製品・サービスの開発を伴わない設備投資・システム投資はものづくり補助金の対象外です。同業他社で相当程度普及している製品・サービスの開発も対象にはなりません。

製品・サービス高付加価値化枠(通常類型)の追加要件

  • 事業計画期間内に、新製品・サービスの売上高の合計が10%以上となる事業計画を策定
  • 事業資金を金融機関等から調達する場合、金融機関による事業計画確認書を提出

製品・サービス高付加価値化枠:成長分野進出類型(DX / GX)

製品・サービス高付加価値化枠のうち、DX / GXに資する革新的な製品・サービスを開発し、顧客に新たな価値を提供するための設備投資・システム投資を支援する制度です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)に資するとは、AI / IoT / センサーなどを活用した遠隔操作、自動制御などの革新的製品・サービスのこと。従来の「デジタル枠」に相当する申請枠です。

一方のGXとは、グリーン成長戦略「実行計画14分野」の課題解決に資する革新的製品・サービスのこと。従来の「グリーン枠」に相当する申請枠だといえるでしょう。グリーン成長戦略とは「2050年カーボンニュートラル」実現に向けた戦略です。再生可能エネルギー、次世代熱エネルギー、航空機産業など、14分野での実行計画が策定されています。

参考:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略

製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型)の追加要件

成長分野進出類型でものづくり補助金を申請する場合は、通常類型に加え、以下の追加要件を満たさなければなりません。

  • DXはDXに資する革新的な製品・サービス開発であること
  • GXはグリーン成長戦略の実行計画14分野解決に資する革新的な製品・サービス開発であること

グローバル枠

海外事業を実施する事業者を対象に、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備投資・システム投資を支援する制度です。ものづくり補助金で定められた海外事業の定義は、以下の4つ。

  • 海外への直接投資に関する事業
  • 海外市場開拓(輸出)に関する事業
  • インバウンド対応に関する事業
  • 海外企業と合同で実施する事業

グローバル枠の対象は「新商品・サービスの開発改良、ブランディング、新規販路開拓などへの取り組み」を目的とする事業です。そのため、グローバル枠で申請するためには「事前にマーケティング調査を実施し、結果に基づく開発改良、ブランディング等を実施する」基本要件が設けられています。

また、事業資金を金融機関等から調達する場合、金融機関による事業計画確認書の提出という追加要件のほか、海外への直接投資 / 輸出に関する追加要件もあります。詳しくは、ものづくり補助金の公募要項を確認してください。

ものづくり補助金の対象になる設備投資(補助対象経費)

申請枠 / 類型ごとに、ものづくり補助金の対象になる設備投資がイメージできたのではないでしょうか。もう少し具体的に、設備・システムのどのような費用が認められるのか知りたいという方に向け、ものづくり補助金で認められている補助対象経費を紹介しておきましょう。

補助対象経費

概要

備考

機械装置・システム構築費

機械装置・システム構築の
購入・製作・借用に要する経費

ものづくり補助金の必須経費。
税抜き単価50万円以上の設備投資が必須

専門家経費

事業実施のために依頼した専門家に
支払われる経費

補助対象経費総額の1/2が上限

技術導入費

事業実施に必要な
知的財産権等の導入に要する経費

補助対象経費総額の1/3が上限

運搬費

運搬等に要する経費

機械装置の運搬料は機械装置費に含めること

クラウドサービス利用料

クラウドサービスの利用に関する経費

補助事業での利用に限る。
補助事業期間中の経費のみ

原材料費

試作品の開発に必要な
原材料・副資材購入に要する経費

補助事業終了時の未使用残存品は経費対象外

外注費

開発に必要な加工・設計・デザイン・検査
などの一部を外注する場合の経費

補助対象経費総額の1/2が上限

知的財産権等関連経費

知的財産権等の取得に要する弁護士、
外国特許出願の翻訳などに要する経費

補助対象経費総額の1/3が上限

海外旅費

海外事業の拡大・強化を目的にした
必要不可欠な渡航・宿泊に要する経費

補助対象経費総額の1/5が上限

※グローバル枠(輸出)のみ

通訳・翻訳費

補助事業遂行に必要な
通訳・翻訳の依頼に要する経費

補助対象経費総額の1/5が上限

※グローバル枠(輸出)のみ

広告宣伝・販売促進費

補助事業で開発する製品・サービスの
広告宣伝・販売促進に要する経費

補助対象経費総額の1/5が上限

※グローバル枠(輸出)のみ

ものづくり補助金の経費対象にならない設備投資

中古品やレンタル / リースも認められていることからも、ものづくり補助金の設備投資の範囲は意外に幅広いことがわかります。もちろん、すべての設備が経費として認められるわけではありません。たとえば、以下のようなものは補助の対象外です。

  • 設置場所の整備 / 基礎工事に要する費用
  • 工場 / 建築物 / 簡易建物などの取得費用、組み立て部材などに要する費用
  • 不動産 / 自動車の購入費用、修理・車検費用
  • PC / プリンタ / タブレット / 複合機など目的外で利用できるものの費用

ものづくり補助金は、大前提として「工場やオフィスなどの事業場」を持つ事業者を対象にしています。また、補助金で導入・構築した設備・システムを「補助事業以外で利用する」ことも認められません。自動車やPCなどの汎用設備は、補助事業でのみ利用することを証明できるものに限り、経費として認められます。

【まとめ】ものづくり補助金の対象になる設備投資を紹介しました

ものづくり補助金を利用して設備投資したいと考えているが、そもそも検討中の設備・システムは補助金の対象なのか?申請前に知っておきたい。そんな経営者の方に向け、ものづくり補助金の対象になる設備投資を申請枠・類型ごとに紹介するとともに、注意しておきたい経費対象外の設備も解説してきました。