助成金とは?補助金との違いや支給条件、申請方法を一覧で解説

助成金とは?補助金との違いや支給条件、申請方法を一覧で解説

事業で資金繰りが厳しい場合、頼りになるのは公的機関が募集している助成金。

返済不要の助成金を望んでも「どのような種類があるのかわからない」とお悩みではありませんか?

そこで、この記事では、助成金の支給条件や2023年最新の助成金一覧などについて解説

最後まで読めば、助成金の内容を理解し申請するか判断できます。また、申請するときのフローもわかり、資金繰り改善のためのアクションを起こすことが可能です。

目次
  1. 1. 助成金とは
    1. 1-1. 助成金と補助金・給付金の違い
  2. 2. 助成金の支給条件
    1. 2-1. 適正な労務管理が行われている
    2. 2-2. 支給のための審査に協力している
    3. 2-3. 雇用保険適用事業所である
    4. 2-4. 助成金が支給されない場合
  3. 3. 2023年最新の助成金一覧
    1. 3-1. 雇用関係助成金
    2. 3-2. 労働条件等関係助成金
  4. 4. 助成金の申請方法・手順
    1. 4-1. 公募されている助成金の検索
    2. 4-2. 申請書類提出と採択
    3. 4-3. 計画の実施と助成金支給
  5. 5. 助成金を申請するメリット
    1. 5-1. 返済がいらない
    2. 5-2. 増額の可能性がある
    3. 5-3. 補助金より受給しやすい
  6. 6. 助成金を申請する注意点
    1. 6-1. 不正受給に注意する
    2. 6-2. 中小企業の定義が異なる
    3. 6-3. 支給までに時間がかかる
  7. 7. 助成金の支給条件や申請方法について解説しました

助成金とは

助成金とは、厚生労働省管轄で雇用促進と職場改善を目的に支給されるお金のこと。目的は労働者の職に関する安定であり、事業存続の危機や休業の可能性がある際に支援金が出ます。

助成金の主な目的は下記の通りです。

  • 労働者の職業安定
  • 失業の予防
  • 労務管理を厳守
  • 雇用機会の増大
  • 雇用状態の是正
  • 労働者の能力開発

また、助成金には雇用に関係した助成金のほか、研究開発型の助成金もあります。研究開発型は経済産業省が管轄。雇用関係の助成金より高額な助成金を受け取ることが可能です。

項目

雇用関係

研究開発

支給元

厚生労働省

経済産業省・外郭団体

対象

  • ・新規雇用

  • ・定年延長

  • ・雇用維持

  • ・開発費

  • ・外注費用

  • ・市場調査費

  • ・コンサルティング費

  • ・販促費

助成金と補助金・給付金の違い

補助金との違いは以下の通りです。

補助金・助成金が企業対象なのに対し、給付金は個人が対象

項目

助成金

補助金

給付金

管轄

厚生労働省・

経済産業省

経済産業省・

地方自治体

経済産業省・

厚生労働省・地方自治体

目的

雇用関係・

研究開発

公益性がある

事務・事業

病気・災害など

に対する救済措置

難易度

低い

高い

低い

財源

雇用保険料

税金

雇用保険料・国庫

事例

  • ・雇用調整助成金
  • ・労働移動支援助成金
  • ・障害者雇用安定助成金
  • ・IT導入補助金

  • ・小規模事業者

  • 持続化補助金

  • ・事業再構築補助金

  • ・持続化給付金

  • ・家賃支援給付金

  • ・新型コロナウイルス感染症

  • 対応休業支援金・給付金

助成金の支給条件

助成金の支給条件

助成金の支給条件について解説します。

適正な労務管理が行われている

助成金を受給する際、以下のように労務管理も調査されます。

  • 必要な届出をすべて提出しているか
  • 未払いの賃金がないか

書類に不備があると、正しい労務管理を行っていないとみなされ、不正受給を疑われます。

受給できない場合の事例は以下の通り。

助成金の種類

失敗例

キャリアアップ助成金

【正社員化コース】

  • ・労働条件通知書が正しく作成されていない

  • ・労働条件通知書が、就業規則の内容と違う

  • ・残業未払いが生じていた

両立支援等助成金

  • ・男性の育児休業に関する雇用環境の整備をしていない

働き方改革推進支援助成金

  • ・36協定の届出をしていない※

特定求職者雇用開発助成金

  • ・労働条件通知書の更新条項が自動更新になっていない

※労働基準法36条に基づいたもの。「サブロク協定」を指す。8時間/日、40時間/週までしか労働できないが、協定があると超過しても罰則を科されない。

適切な労務管理のためには以下の点が重要です。

  • 正しい労働時間の管理や賃金計算
  • 就業規則が法令・実態に合っていること

支給のための審査に協力している

管轄労働局は申請した企業の調査を実施。書類提出で終わる場合と、実地調査が必要な場合もあります。雇用関係助成金に共通の要件は下記の通りです。

1 雇用保険適用事業所の事業主であること(雇用保険被保険者が存在する事業所の事業主であること)

2 支給のための審査に協力すること

(1)支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等を整備・保管していること

(2)支給または不支給の決定のための審査に必要な書類等の提出を、管轄労働局等から

  求められた場合に応じること

(3)管轄労働局等の実地調査を受け入れること など

3 申請期間内に申請を行うこと

引用:厚生労働省「雇用関係助成金に共通の要件等」

雇用保険適用事業所である

雇用保険の適用事業者とは、業種、規模を問わず労働者を雇用する者。雇用保険の適用を受け、事業者の下で働く労働者は雇用保険の被保険者となります。

事業主の義務は下記の通り。

  • 労働保険料の納付
  • 雇用保険法の規定による各種の届出等の義務

助成金の財源は雇用保険料です。そのため、助成金を受給するには事業主の雇用保険への加入が条件になります。しかし適用事業者でも労働保険料の滞納があると、助成金受給の対象外になるため、注意が必要です。

助成金が支給されない場合

助成金が支給されない場合は以下の通りです。

  • 労働関連法令に違反(労働基準法・最低賃金法など)
  • 5年以内に不正受給
  • 労働保険料の未納
  • 倒産
  • 暴力団関係事業者であること
  • 性風俗関連営業者であること

2023年最新の助成金一覧

2023年最新の助成金一覧

2023年最新の助成金一覧について紹介します。ただし、あくまでも2023年3月時点の情報です。詳細は厚生労働省のWebサイトを参照してください。

雇用関係助成金

主な雇用関係助成金について以下のようにまとめました。

制度名

概要

雇用調整助成金

  • ・休業・教育訓練や出向を通じ従業員の雇用を維持する

産業安定助成金

(スキルアップ)

  • ・労働者のスキルアップのため在籍型出向を行い、

  • 賃金を出向前より5%以上上昇させる

産業安定助成金(雇用維持)

  • ・新型コロナウイルスによる事業活動縮小のため、

  • 従業員の雇用維持を目的としている

  • ・在籍型出向で従業員を送り出すまたは当該従業員を受け入れる

労働移動支援助成金

(再就職支援コース)

  • ・事業規模の縮小により退職勧告した労働者に対する再就職支援を

  • 職業紹介サービスに委託

中途採用等支援助成金

(中途採用拡大コース)

  • ・中途採用者の雇用管理制度を整備し、中途採用の拡大を図る

両立支援等助成金

  • ・職業生活と家庭生活が両立できる

  • 「職場環境づくり」のために、以下の取り組みを促進する

    • ⚪︎男性の育児休業取得促進

    • ⚪︎仕事と介護の両立支援

    • ⚪︎仕事と育児の両立支援

人材開発支援助成金
(特定訓練コース)

  • ・雇用する正社員に対して、下記のような10時間以上の訓練を実施する

    • ⚪︎OJT付き訓練

    • ⚪︎若年者への訓練

    • ⚪︎労働生産性向上に資する訓練

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労働条件等関係助成金

主な労働条件等関係助成金について以下のようにまとめました。

制度名

概要

業務改善助成金

  • ・生産性向上に関した設備投資を行う

人材開発支援助成金

(障害者職業能力開発コース)

  • ・障害者に必要な教育訓練を継続的に実施する

助成金の申請方法・手順

助成金の申請方法・手順

助成金の申請方法・手順について解説します。

公募されている助成金の検索

先述した通り、多くの助成金が出されているため、自社にマッチするものを探します。早いものは2月、遅いものは6月ごろの募集開始となるため随時確認はしておきましょう。

助成金の検索は以下のサイトから探します。

J-Net21

助成金は全ての経費が支給されるわけではなく、支給も検査後となるため注意が必要です。

申請書類提出と採択

代表的な必要書類は以下の通り。

  • 応募申請書
  • 事業計画書
  • 経費明細書
  • 事業要請書など

申請方法は助成金により異なるため、該当する助成金のWebサイトを確認してください。採択されると事業開始となります。開始後に実施計画を提出。

なお、書類に不備があると審査を通過できないため、注意が必要です。国の認定を受けた支援機関に相談すると、正しい書類の書き方がわかり、審査を通過しやすくなります。

認定支援機関は以下の通り。

  • 税理士
  • 税理士法人
  • 公認会計士
  • 中小企業診断士
  • 商工会・商工会議所
  • 金融機関など

認定支援機関を利用するメリットは以下の通りです。

  • 信用保証協会の保証料が減額(マイナス0.2%)
  • 様々な補助金が申請可能
  • 事業計画の策定を支援してもらえること
  • 海外展開のための資金調達が可能

採択後は助成金受取りの手続きが必要。手続きが認定されたら事業開始です。

計画の実施と助成金支給

交付決定後すぐに計画を実行に移しましょう。対象経費の領収書や請求書などの証拠書類は保管しておきます。計画変更の場合は事前に計画変更申請の手続きが必要です。

取り組み完了後に申請書類を提出し受給となります。
ただし、支給決定から実際の振り込みまでにはタイムラグがあるため、注意が必要。申請書類の確認が終わると、助成金額が確定し、支給されます。

提出するための書類は下記の通り。

  • 実績報告書
  • 経費エビデンス(領収書など)
  • 請求書

助成金を申請するメリット

助成金を申請するメリット

助成金を申請するメリットについて解説します。

返済がいらない

助成金は労働関係法令を守り、従業員の労働環境を整備しようとする中小企業向けの施策。その目的から返済不要なため、融資や借金とは異なります。助成金は労働関係法令の順守が条件であることから、採択されると企業の信用にもつながります。

会計上では営業外収益のため、雑収入(本業とは無関係な収入)として計上。確定申告では備考欄に「雑収入は助成金」と入れておきましょう。何も書いていないと税務署から脱税の疑いをもたれる可能性があります。

増額の可能性がある

一部の助成金は一定の要件を満たすと増額されます。条件は助成金やコースによって異なるため、該当する助成金のWebサイトで確認しておきましょう。

増額されるのは生産性要件が必要な以下の助成金。

  • 人材確保等支援助成金
  • 業務改善助成金
  • 労働移動支援助成金
  • 地域雇用開発助成金

補助金より受給しやすい

助成金は条件をクリアしていれば受給できます。

補助金の特徴は、支給要件を満たすだけではなく内容審査もあるため、難易度が高いこと。一方、助成金は審査を通過すると受給が可能です。先着順のため、事業開始後すぐに申し込むと受給できる確率もアップします。

募集に制限がかかっている補助金とは異なり、通年で申請可能な点も助成金が受給しやすいといわれる理由です。

助成金を申請する注意点

助成金を申請する注意点

助成金を申請する際の注意点について解説します。

不正受給に注意する

助成金が支給されない場合」で上述したように、助成金には共通の要件があります。要件を満たさず受給すると不正受給になってしまいます。

雇用調整助成金は、令和4年2月11日時点で支給決定額5兆3470億円でしたが、2022年9月末までに不正受給は135億円にも上っています。会計検査院の調査では、キャリアアップ助成金や人材開発支援助成金においても不正受給が発覚。

不正受給が発覚すると、刑法第246条の詐欺罪等に問われる可能性があり、不正受給額の2割相当額を返還請求されます。

また、雇用調整助成金だけではなく、他の雇用関係助成金も5年間の不支給措置となるため、注意が必要です。

中小企業の定義が異なる

助成金の中には中小企業の中でも条件を設けているものがあります。また、支給額が変わる場合もあるため応募前の確認は必須

例えば、キャリアアップ助成金は中小企業を以下のように資本金の額・出資の総額や労働者数によって判定しています。

 

資本金の額・出資の総額

労働者数

小売業(飲食店を含む)

5,000万円以下

50人以下

サービス業

5,000万円以下

100人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

その他の業種

3億円以下

300人以下

支給までに時間がかかる

助成金によって異なりますが、申請から受給できるまで1〜2カ月かかります。中には1年近くかかるものもあるため、応募前に確認が必須。

助成金は以下の流れで支給されるため「財務状況が厳しいために使う」といった目的で利用するのは難しくなります。

  • 事業を実施
  • 報告書を作成・提出
  • OKが出て支給

そのため、自社で先に事業に必要な資金を用意して進めなければ、助成金の受給は困難です。

助成金は、支払いが後払いになると覚えておきましょう。

助成金の支給条件や申請方法について解説しました

助成金について知りたい方向けに、助成金の支給条件や2023年最新の助成金一覧などを解説しました。

助成金を申請する際の注意点は以下の通りです。

  • 要件を満たしていないと申請できない
  • 中小企業の定義が異なる
  • 支給までに時間がかかる

本記事で紹介した内容をもとに、助成金の申請を検討してみましょう。