特定求職者雇用開発助成金とは?支給額や申請方法を紹介
特定求職者雇用開発助成金を申請するには条件があるため、すべての企業が利用できるわけではありません。本記事では、特定求職者雇用開発助成金の各コースの受給金額や条件、申請期間などを詳しく紹介します。本記事を読むことで、自社で助成金を活用できるかを判断できるようになります。ぜひご活用ください。
特定求職者雇用開発助成金とは
特定求職者雇用開発助成金とは、雇用者が高年齢者や障害者など一定の条件を満たす求職者を採用した場合に、国から支給される助成金制度。求職者が安定した雇用を見つけると同時に雇用の活性化を図ることが目的です。
特定求職者雇用開発助成金のコース別比較表
コース |
概要 |
支給金額 |
特定就職困難者コース |
高年齢者、障害者、母子家庭の母などの就職困難者を 雇い入れる場合に助成される |
年間30~240万円 |
発達障害者・難治性疾患 患者雇用開発コース |
発達障害者または難病患者を雇い入れる場合に助成される |
年間30~120万円 |
就職氷河期世代安定 雇用実現コース |
十分なキャリア形成ができずに正規雇用に就くことが 困難な者を雇い入れる場合に助成される |
年間50~60万円 |
生活保護受給者等 雇用開発コース |
自治体からハローワークに就労支援の要請があった 生活保護受給者などを雇い入れる場合に助成される |
年間30~60万円 |
成長分野等人材確保・ 育成コース |
上記コースいずれかの対象労働者を成長分野業務に 従事する者として雇い入れる場合に助成される |
年間75~360万円 |
特定求職者雇用開発助成金には5つのコースがあります(2023年4月時点)。雇用する対象者によって支給される条件や金額は変わるため、事前に確認することをおすすめいたします。
各コース共通のルール
それぞれのコースの詳細を説明する前に、各コース共通のルールを説明します。
雇用者の条件
- 雇用保険適用事業所の事業主であること
- 支給のための審査に協力すること(支給審査に必要な書類の整備・保管および提出)
- 申請期間内に申請を行うこと
助成金支給のルール
条件を満たした求職者を雇い入れる場合は、国から30~360万円の助成金が支給されます。また、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の「短時間労働者」と、それ以上働く「短時間労働者以外」では支給される金額が異なります。
なお、特定求職者雇用開発助成金の支給は6ヶ月を1期として実施されます。つまり、支給額を1年間で2回に分割して受け取れるということ。たとえば、360万円の支給が決定したら、1年で180万円を2回受け取ることになります。ここから先では、それぞれのコースの条件や支給額を説明します。
特定就職困難者コース
特定就職困難者コースは、高年齢者や障害者などの就職がとくに困難な方を、継続して雇用する事業者を助成するための制度です。
対象労働者の条件
特定就職困難者コースの支給対象者は以下のように細かく分類されています。以下の番号は図表で記載されている対象者に該当するものです。
重度障害者等以外の者
- 60歳以上の者
- 身体障害者
- 知的障害者
- 母子家庭の母等
- 父子家庭の父(児童扶養手当を受けている者に限る)
- 中国残留邦人等永住帰国者
- 北朝鮮帰国被害者等
- 認定駐留軍関係離職者(45歳以上の者に限る)
- 沖縄失業者求職手帳所持者(45歳以上の者に限る)
- 漁業離職者求職手帳所持者(45歳以上の者に限る)
- 手帳所持者である漁業離職者等(45歳以上の者に限る)
- 一般旅客定期航路事業等離職者求職手帳所持者(45歳以上の者に限る)
- 認定港湾運送事業離職者(45歳以上の者に限る)
- アイヌの人々(北海道に居住している者で、45歳以上の者)
- ウクライナ避難民
重度障害者等
- 重度身体障害者
- 身体障害者のうち45歳以上の者
- 重度知的障害者
- 知的障害者のうち45歳以上の者
- 精神障害者
雇用者の条件
対象となる雇用者の条件は以下のとおり。
- ハローワーク、地方運輸局または民間の職業紹介事業者からの紹介であること
- 雇用保険の一般被保険者として雇い入れること
- 対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、雇用期間が継続して2年以上であること(短時間労働の場合は3年以上)
助成金の支給額
特定就職困難者コースは、対象労働者の種類と勤務体系、企業規模に応じて1人当たり30万円から240万円を受け取れます。
申請期間
支給対象期の翌日から起算して2ヶ月以内
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースは、発達障害者または難病患者を、継続して雇用する事業者を助成するための制度です。
対象労働者の条件
対象労働者は以下の通り。
- 発達障害者支援法第2条に規定する発達障害者
- 厚生労働大臣が定める特殊の疾病(難病)にかかっている者
対象疾病については「障害者総合支援法の対象疾病(難病等)」を参照してください。
雇用者の条件
対象となる雇用者の条件は以下のとおり。
- ハローワーク、地方運輸局または民間の職業紹介事業者からの紹介であること
- 雇用保険の一般被保険者として雇い入れること
- 対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、雇用期間が継続して2年以上であること(短時間労働の場合は3年以上)
助成金の支給額
対象労働者の勤務体系と企業規模に応じて1人当たり30万円から120万円を受け取れます。
申請期間
支給対象期の翌日から起算して2ヶ月以内
就職氷河期世代安定雇用実現コース
就職氷河期世代安定雇用実現コースは、就職氷河期に就職の機会を逃したことで、十分なキャリア形成ができず就業が困難な方を、継続して雇用する事業者を助成するための制度です。
対象労働者の条件
下記すべての条件を満たすこと。
- 1968年4月2日~1988年4月1日に生まれた者
- 雇入れの日の前日から直近5年間に正規雇用された期間が通算で1年以下である者
- 雇入れの日の前日から起算して過去1年間に正規雇用された期間がない者、または過去1年間に雇用されていたが雇用主都合で離職した者
- ハローワークや職業紹介事業者等から就労支援を受けている者
- 正規雇用労働者として雇用されることを希望している者
雇用者の条件
対象となる雇用者の条件は以下のとおり。短期労働者は支給対象外である点に注意しましょう。
- ハローワーク、地方運輸局または民間の職業紹介事業者からの紹介であること
- 雇用保険の一般被保険者として雇い入れること(ただし、短時間労働者は対象外)
- 対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、雇用期間が継続して2年以上であること
助成金の支給額
就職氷河期世代安定雇用実現コースは、企業規模に応じて1人当たり50万円から60万円を受け取れます。
申請期間
支給対象期の翌日から起算して2ヶ月以内
生活保護受給者等雇用開発コース
生活保護受給者等雇用開発コースは、地方公共団体またはハローワークにて就労支援を受けている生活保護受給者を、継続して雇用する事業者を助成するための制度です。
対象労働者の条件
下記すべての条件を満たすこと
- 生活保護受給者または生活困窮者
- 就職支援を通算3ヶ月以上受けている者
- 紹介時点で失業状態である者
- 雇入れ日時点で満65歳未満である者
雇用者の条件
対象となる雇用者の条件は以下のとおり。短期労働者は支給対象外である点に注意しましょう。
- ハローワーク、地方運輸局または民間の職業紹介事業者からの紹介であること
- 雇用保険の一般被保険者として雇い入れること(ただし、短時間労働者は対象外)
- 対象労働者の年齢が65歳以上に達するまで継続して雇用し、雇用期間が継続して2年以上であること
助成金の支給額
対象労働者の勤務体系と企業規模に応じて1人当たり30万円から60万円を受け取れます。
申請期間
支給対象期の翌日から起算して2ヶ月以内
成長分野等人材確保・育成コース
成長分野等人材確保・育成コースは、高年齢者や障害者などで、デジタルやグリーン、カーボンニュートラル化関係業務などの成長分野への就職を希望する方を、継続して雇用する事業者を助成するための制度です。本コースでは、2つの助成メニューが用意されています(助成メニューA、助成メニューB)。
対象労働者の条件
A、B共通の条件 |
以下の4コースの条件いずれかに一致している「労働者」であること
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Aのみの条件 |
以下の業務への従事を希望すること。
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Bのみの条件 |
デジタル技能など一定の職業能力を必要とする業務に従事すること |
雇用者の条件
A、B共通の条件 |
以下の4コースの条件いずれかに一致する「雇用者」であること
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Aのみの条件 |
対象労働者に雇用管理改善または職業能力開発を行い、報告書を提出すること |
Bのみの条件 |
一定の職業能力を身につけるため、1コースの実訓練時間が50時間以上の訓練 (eラーニングの場合は50時間または3ヶ月以上の学習期間が必要)を実施する。 または、人材開発支援助成金に関連する訓練を実施する。
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助成金の支給額
対象労働者の勤務体系と企業規模に応じて1人当たり45万円から360万円を受け取れます。
申請期間
支給対象期の翌日から起算して2ヶ月以内
特定求職者雇用開発助成金の申請方法
ここからは、特定求職者雇用開発助成金の申請方法について解説します。
特定求職者雇用開発助成金の申請の流れ
申請の流れは以下のとおりです。
- ハローワーク、地方運輸局または民間の職業紹介事業者から労働者の紹介を受ける
- 労働者と雇用契約を結び、雇用保険加入手続きをする
- 特定求職者雇用開発助成金の案内が届く
- 1期分の特定求職者雇用開発助成金第1期支給申請書(様式第3号)を管轄労働局に提出する
- 審査の結果が届く
- 1期分の助成金が支給される
申請書類を提出するタイミングは、支給対象期の翌日から2ヶ月以内です。2ヶ月を過ぎてしまうと受給できないため注意しましょう。
特定求職者雇用開発助成金の申請書類の書き方
(画像参照元:【様式第3号】特定求職者雇用開発助成金 第1期支給申請書)
申請書類には以下の項目を記入してください。
- 助成金コース
- 事業主情報
- 対象労働者雇用事業所
- 対象労働者の状況
ファイルはエクセル形式でダウンロード可能です。
特定求職者雇用開発助成金の申請時の注意点
併給調整の存在に注意する
併給調整とは、事業主が同一の事業に対して複数の助成金を受けられないというもの。
たとえば、ある企業が特定求職者雇用開発助成金を申請することになったとします。さらに、同じ企業が地域雇用開発奨励金も受け取りたいと考えた場合、併給調整のルールにより、両方の助成金を同時に受け取ることはできません。
この場合、企業はどちらか一方の助成金を選択する必要があります。利用できる助成金が複数ある場合は、併給調整の対象かどうかを事前に確認することをおすすめします。
期日の相違に注意する
特定求職者雇用開発助成金では、「支給期間の起算日」と「申請書提出期限の起算日」があります。わかりにくい表記のため十分に注意してください。
たとえば「支給期間の起算日」が4月16日とすると、「申請書提出期限の起算日」は支給対象期(6ヶ月後)の末日(10月15日)の翌日、10月16日となります。つまり、申請書提出期限は2ヶ月間ですので、10月16日~12月15日が申請期間ということになります。
不正受給に気を付ける
当然ながら、助成金を不正受給するのはNGです。本来の目的から外れた助成金の利用は避けることをおすすめします。
仮に助成金調査で不正受給が判明すれば、受給した助成金を全額返済するのはもちろんのこと、返済時は受給額に2割を上乗せする必要があります。さらに労働局から事業主名を公表され、以降3年はすべての助成金が利用不可能になります。
また、コンサルティング会社の中には、手数料目当てで助成金を悪用するケースもあるため注意が必要です。
特定求職者雇用開発助成金の概要を説明しました
本記事では、特定求職者雇用開発助成金について、各コースの条件や受給金額、申請期間などについて解説しました。
人手不足が叫ばれる昨今では、多様な人材を活かす経営が生き残りの手段の1つになります。それだけでなく、高齢者や障害者などに活躍の場を提供することは、社会的にも大きな価値を生むでしょう。ぜひ、本記事を参考に特定求職者雇用開発助成金を活用してみてください。