省エネルギー投資促進支援事業費補助金とは?対象設備と手続き・事例も解説
エネルギー価格の高騰により、省エネ補助金で設備のランニングコスト削減を図りたい企業が増えています。一方で補助金の申請方法がわかりにくく、迷う方もいるでしょう。
本記事では、省エネルギー投資促進支援事業費補助金の概要や目的、補助対象設備を解説。申請の流れや注意点、採択のポイントと活用事例も紹介します。
「省エネ補助金」には2種類ある
省エネ補助金(省エネルギー設備への更新を促進するための補助金)とは、省エネを進めるために経済産業省が実施している経済的な支援のことです。「令和5年度補正予算におけるエネルギーコスト上昇に対する省エネ支援パッケージ」の中の事業者向け施策で、下記の(Ⅰ)~(Ⅳ)の事業区分(類型)に分かれています。
(Ⅰ)工場・事業場型
補助対象設備工場・事業場全体で導入する「機械設計をともなう設備」「事業者の使用目的や用途に合わせて設計・製造する設備」「先進型設備」
(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型
「化石燃料から電気への転換」より低炭素な燃料への転換など、電化や脱炭素目的の燃料転換を伴う設備
(Ⅲ)設備単位型
エネルギー消費効率の基準を満たし、補助対象設備として登録・公表された指定設備
(Ⅳ)エネルギー需要最適化型
エネマネ事業者と共同で作成した計画に基づいて導入される、EMS制御や高効率設備
各事業区分の対象となる補助金は次の表の様になっています。
事業区分 |
省エネルギー投資促進・ 需要構造転換 |
省エネルギー投資促進 支援事業費補助金 |
(Ⅰ) 工場・事業場型 |
〇 |
ー |
(Ⅱ) 電化・脱炭素燃転型 |
〇 |
ー |
(Ⅲ) 設備単位型 |
ー |
〇 |
(Ⅳ) エネルギー需要最適化型 |
〇 |
〇 ※1 |
※1(Ⅲ)設備単位型と組み合わせた場合のみ補助対象
出典:令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金
省エネ補助金の補助金制度には以下の2種類があり、種類ごとに該当する類型が異なります。
- 省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金
- 省エネルギー投資促進支援事業費補助金
「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」は先進的省エネ設備や、事業場に合わせた特注品、電化や脱炭素の燃転設備の更新費用の一部を支援する補助金です。(Ⅰ)工場・事業場型、(Ⅱ)電化・脱炭素燃転型、(Ⅳ)エネルギー需要最適化型の3類型が補助対象です。
一方の「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」は、さまざまな業種で横断的に使われる汎用的な省エネ設備への更新を支援する補助金です。(Ⅲ)設備単位型もしくは(Ⅲ)+(Ⅳ)エネルギー需要最適化型の組み合わせを補助対象とし、指定設備とEMS機器の導入が対象です。
次項からは、後者の省エネルギー投資促進支援事業費補助金について解説していきます。
省エネルギー投資促進支援事業費補助金の概要
指定設備、EMS機器の導入を目的とする「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」には、2つの事業区分があります。
- (Ⅲ)設備単位型
- (Ⅳ)エネルギー需要最適化型
「(Ⅲ)設備単位型」とは、SIIが予め定めたエネルギー消費効率等の基準を満たし、登録及び公表した設備(ユーティリティ・生産全15種+その他SIIが認めた高性能設備)の導入を支援する類型です。省エネルギー効果の要件は、定められたエネルギー消費効率の基準を満たす設備を導入することで、具体的な設備の種類は後述します。
「(Ⅳ)エネルギー需要最適化型」とは、SIIに登録されたエネマネ事業者と共働し、EMSを用いた効率的な省エネルギー化・エネルギー需要最適化を図る類型です。エネマネ事業者と「エネルギー管理支援サービス」を契約し、SIIに登録されたEMS(エネルギーマネジメントシステム)を用いて、省エネ効果の見える化を図ります。
なお省エネルギー投資促進支援事業費補助金での(Ⅳ)エネルギー需要最適化型事業は、(Ⅲ)設備単位型とあわせて実施する場合のみ補助対象となっています。「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」ではEMSの単体導入で補助対象となるのに対し、同補助金では(Ⅳ)のみだと補助対象外です。
制度の目的と背景
省エネルギー投資促進支援事業費補助金の目的は、省エネ効率の高いユーティリティ設備への更新やEMSの導入による、各分野の省エネルギー化の推進です。最終的に、内外の経済的社会環境に応じた安定的・適切なエネルギー需要構造を構築する狙いがあります。
制度設立の背景には、2030年のエネルギーミックスの達成・2050年のカーボンニュートラル実現に向けた、2021年「第6次エネルギー基本計画」策定があります。2023年には省エネ法の改正もあり、以下の2つが法令化されました。
- 非化石エネルギーを含めた全てのエネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換
- 電気の需要の最適化
2030年までに6,200万kl程度のエネルギー削減を目指し、国は産業分野を問わない省エネ設備投資を促す、グリーンリカバリー投資の推進を打ち出しました。施策の1つに「令和5年度補正予算におけるエネルギーコスト上昇に対する省エネ支援パッケージ」(省エネ補助金ほか)が位置づけられたのです。
特徴
省エネルギー投資促進支援事業費補助金の特徴は、申請時に計画省エネルギー量・計画省エネルギー率の算出が必要な点です。事業計画の審査では省エネルギー量と省エネルギー率の目標が問われ、事業実施の前後で省エネルギーの量・率を対比できるデータが必要となります。
もう1つの特徴は、複数年にわたる投資・事業計画(2年度事業)が補助対象事業として可能になった点です。2024年1次公募の予算としては、2年度にわたる以下の予算額が設けられました。
- 2024年度分(1年度目):約135億円
- 2025年度分(2年度目):約30億円
従来の設備単位型(指定設備導入事業)では、投資・事業計画が単年度で完了する事業しか実施できませんでしたが、2年計画でのエネルギー効率化が可能となっています。
同補助金ではさらに、省エネ設備の導入に何をしてよいかわからない場合でも、専門家の「省エネ診断」でアドバイスを受けられる点がメリットです。2024年度の省エネ診断は前年度の2倍の案件数が見込まれており、国が注力していることがわかります。省エネ診断を受けると、審査で加点を受けられる点も魅力です。
補助率・補助金限度額
省エネルギー投資促進支援事業費補助金における、各事業区分に対する補助率と補助金限度額は以下のとおりです。
|
(Ⅲ)設備単位型 |
(Ⅳ)エネルギー需要最適化型 |
|
補助率 |
1/3以内 |
中小企業等:1/2以内 |
|
大企業・その他:1/3以内 |
|||
補助金額 |
上限額:1億円/事業全体 下限額: 30万円/事業全体 |
上限額: 1億円/事業全体 下限額: 100万円/事業全体 |
出典:令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金
前述のとおり、(Ⅳ)は(Ⅲ)との組み合わせた場合のみ補助対象です。(Ⅲ)+(Ⅳ)の組み合わせ申請の場合には、各事業区分の補助率が各事業区分の補助対象経費に適用されます。
※事業区分で明確に分けられない費用(工事費など)は、不可分トータル費用に占めるそれぞれの割合を乗じ、事業区分の補助率を乗じて補助金額を算出
省エネルギー投資促進支援事業費補助金の補助対象
ここでは、省エネルギー投資促進支援事業費補助金の補助対象となる事業と設備、事業者、その他の要件について解説します。
補助対象事業
省エネルギー投資促進支援事業費補助金の補助対象となる事業は、エネルギー管理を一体で行う事業所で実施する、以下に該当する事業です。
(Ⅲ)設備単位型
定められたエネルギー消費効率の基準を満たした、SIIの指定する設備へ既存設備を更新する
(Ⅲ)設備単位型 +(Ⅳ) エネルギー需要最適化型
(Ⅲ)設備単位型に加え、SIIに審査・採択された「エネマネ事業者」からエネルギーマネジメントシステム(EMS機器)を導入し「エネルギー管理支援サービス」を契約締結、EMSによる計測・見える化・制御を図るほか、省エネルギー診断で運用改善を図り、原油換算量ベースで省エネルギー率2%以上を達成する
(Ⅳ) エネルギー需要最適化型の事業は、(Ⅲ) 設備単位型の事業と組み合わせて初めて、補助対象事業となる点にご注意ください(※)。
(※)省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金の場合は(Ⅳ)の単体事業で補助対象
参照:令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金、省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金
補助対象設備
省エネルギー投資促進支援事業費補助金の補助対象設備を、事業の類型(事業形態)ごとに解説します。
(Ⅲ)設備単位型
設備単位型の補助対象設備は、SIIで定められたエネルギー消費効率などの基準を満たす以下の設備です。
ユーティリティ設備 |
生産設備 |
1.高効率空調 (業務・産業用エアコン等) 2.産業ヒートポンプ 3.業務用給湯器 4.高性能ボイラ 5.高効率コージェネレーション 6.低炭素工業炉
7.変圧器 8.冷凍冷蔵設備 9.産業用モータ 10.制御機能付きLED照明器具 |
11.工作機械 12.プラスチック加工機械 13.プレス機械 14.印刷機械 15.ダイカストマシン |
※上記1~15に該当しない「その他SIIが認めた高性能な設備」として指定した設備も補助対象
出典:令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金
対象設備は、SIIの「対象設備一覧」で確認できます。「その他SIIが認めた高性能な設備」については、補助対象設備が随時追加されるため、自社で導入可能なものがあるかチェックするとよいでしょう。
(Ⅲ)設備単位型+(Ⅳ)エネルギー需要最適化型
(Ⅲ)+(Ⅳ)の事業で補助対象となる設備は、以下に当てはまるものです。
- SIIに定められた 「EMSのシステム要件」を満たしている
- エネマネ事業者が提供するエネルギー管理支援サービス実施に必要不可欠なシステム・機器
- SIIの確認を受け、補助対象システム・機器として登録されている
補助対象事業者
補助対象となる事業者は、以下の省エネ法に関する基準をすべて満たす必要があります。
- 国内において事業活動を営んでいる法人及び個人事業主
※年間のエネルギー使用量が原油換算1,500kl以上である「特定事業者等」は、省エネ法に基づき中長期計画書と定期報告書を提出している
※大企業は、省エネ法の事業者クラス分け評価制度で「Sクラス」「Aクラス」のいずれかに該当する
※中長期計画書の「ベンチマーク指標の見込み」で、2030年度の見込みがベンチマーク目標値を達成している
※個人事業主は青色申告者である
※「中小企業団体等」に該当する場合は所定の設立認可証が必要 - 同事業を実施するために必要な経営基盤があり、事業の継続性が認められる
- 同事業のために国内で設置する補助対象設備の所有者であり、設備の処分制限期間に継続的に使用する
※補助対象設備の所有者と使用者が異なる場合は共同申請が原則 - 取得した補助対象設備を、SIIの交付規程に定められた取得財産等管理台帳に記載・的確に管理し、補助金の交付の目的に従い効率的に運用する
- 成果報告時に、導入した設備の最低1週間以上のエネルギー使用量の実測データで省エネルギー効果を報告できる
- 会計検査院による現地検査の受検に会社単位で誠実に対応できる
なお省エネルギー投資促進支援事業費補助金では、以下のいずれかの要件を満たす「大企業・その他(みなし大企業を含む)」も補助対象となっています。
- 省エネ法の事業者クラス分け評価制度の「Sクラス」「Aクラス」に該当する
※Sクラスについては、公募締切時点で「令和4年定期報告書分」として資源エネルギー庁ホームページに「Sクラス」と公表されていることが原則 - 中長期計画書の「ベンチマーク指標の見込み」に記載された2030年度(目標年度)の見込みがベンチマーク目標値を達成する
「その他」とは、みなし大企業や従業員数300人を超える医療法人、社会福祉法人、NPO法人などを指します。
対象となる要件
省エネルギー投資促進支援事業費補助金の補助対象となるための、その他の要件をまとめました。
(Ⅲ)設備単位型
事業要件 |
所定のエネルギー消費効率などの基準を満たし、SIIに登録された指定設備へ更新する |
|
省エネルギー効果 の要件 |
導入する設備が、定められたエネルギー消費効率などの基準を満たす |
|
その他の 申請要件 |
指定設備一覧に該当しない「その他SIIが認めた高性能な設備」に指定された設備も対象 |
(Ⅳ)エネルギー需要最適化型
事業要件 |
(Ⅲ)に加えて、登録されたエネマネ事業者と 「エネルギー管理支援サービス」を契約し、登録されたEMSで、より効果的に省エネルギー化を図る |
|
省エネルギー効果 の要件 |
申請単位で「EMSの制御効果と省エネ診断等による運用改善効果」により、 原油換算量ベースで省エネルギー率2%以上を満たす |
|
その他の 申請要件 |
・投資回収年数が5年以上
|
参照:令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金より抜粋
詳細な要件は申請類型ごとに解説します。
(Ⅲ)設備単位型の要件
(Ⅲ)設備単位型の事業要件は、所定のエネルギー消費効率などの基準を満たし、SIIに登録された指定設備へ更新することです。省エネルギー効果の要件は、導入する設備が定められたエネルギー消費効率などの基準と、以下の項目を満たすことです。
- 国内で既に事業活動を営んでおり、現在使用している設備を定められた補助対象設備へ更新する場合
- 工場の移転・集約など、事業所の移設にともない既存設備を更新する場合は補助対象
- 既存設備を補助対象設備へ更新して省エネルギー化を図れる
- 更新前後で使用用途が同じである
- 兼用設備や将来用設備、予備設備ではない
- 中古品でない
- 法令に定められた安全上の基準を満たしている
登録された製品であっても、導入予定設備の性能(エネルギー消費効率)が既存設備を上回らず、省エネルギー化を図れない場合は、補助対象とは認められません。
(Ⅲ)設備単位型+(Ⅳ)エネルギー需要最適化型の要件
事業要件は(Ⅲ)に加え、登録されたエネマネ事業者と「エネルギー管理支援サービス」を契約し、EMSを活用してより効果的に省エネルギー化を図ることです。
また省エネルギー効果に関する要件として、省エネルギー効果の計算式で以下のいずれかを満たすことが求められます。
- 「EMSの制御効果と計測された運用改善効果」により、原油換算量ベースで計画省エネルギー率が2%以上である
- 申請者が自ら定め、合理的に説明できる計測・制御の範囲内で「EMSの制御効果と計測された運用改善効果」により、原油換算量ベースで計画省エネルギー率が2%以上である
参照:令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金をもとに作成
なお、補助事業者は成果報告時に、SII指定のフォーマットで運用改善の実施状況を報告する必要があり、その他の申請要件として、以下も満たす必要があります。
- 投資回収年数が5年以上である
- 「エネルギー使用量が1,500kl以上の工場・事業場」と「株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、有限会社※みなし大企業を含む」は、省エネ法に基づき作成した中長期計画に記載されている「(c)指定設備」または「(d)EMS機器」を導入する事業である
- 経費当たり計画省エネルギー量が補助対象経費1,000万円当たり1kl以上の事業である※経費当たりの計画省エネルギー量=計画省エネルギー量(kl/年)÷補助対象経費(千万円)
- 導入した補助対象設備の1年間のエネルギー使用量と省エネルギー効果を報告できる
(Ⅲ)+(Ⅳ)を組み合わせて申請し、要件を満たすためには、現状のエネルギー消費量と見込まれる省エネルギー効果の明確な算出が必要です。
省エネルギー投資促進支援事業費補助金の交付申請の流れ
ここからは2024年の省エネルギー投資促進支援事業費補助金の公募スケジュールと、交付申請手続きの流れ、申請時の必要書類を紹介します。
公募スケジュール
2024年の省エネルギー投資促進支援事業費補助金公募スケジュールは、以下のとおりです。
- 1次募集:2024年3月27日~4月22日 交付決定6月上旬(予定)
- 2次募集:5月下旬~6月下旬(予定)交付決定8月下旬(予定)
事業実施期間は、交付決定日から2025年1月31日(金)までとなっています(複数年度事業は2026年1月30日まで)。交付決定前の事前着手は補助対象外のため、契約・発注は交付決定後に行いましょう。
交付申請の流れ
省エネルギー投資促進支援事業費補助金の交付申請は以下の流れで行います。
交付申請書類は、SIIが提供する「補助事業ポータル(WEB)」を使用して作成します。
「補助事業ポータル」にはアカウント登録フォームでの登録が必要です。アカウント登録を行うと、約1日後に「補助事業ポータル」のURLとログイン用ユーザID・パスワード設定用URLを記載したメールが届きます。
「補助事業ポータル」のログイン画面からIDとパスワードでログインし、必要事項を入力すれば、書類の作成が可能です。ただし電子申請ではありません。
申請書類を出力したら指定の様式でファイリングし、郵送しなければならない点に注意が必要です。締め切り当日(1次公募は2024年4月22日)の17時必着で持ち込み不可のため、余裕を持って添付書類を手配し、手続きしましょう。
(Ⅲ)+(Ⅳ)型で申請する場合には、エネマネ事業者が補助事業者の求めに応じて手続きを行います。(Ⅲ)設備単位型の単独申請の場合は、設備販売事業者に手続きを依頼することも可能です。
申請に必要な書類
交付申請時に必要な共通の提出書類は、以下のとおりです(導入予定設備により別途必要書類あり)。
- 交付申請書(かがみ・2枚目)
- 補助事業に要する経費、補助対象経費及び補助金の配分額
- 補助事業に要する経費の四半期別発生予定額
- 役員名簿
- 実施計画書
- 申請総括表
- 事業者情報
- 手続担当申請書 ※該当する場合
- 資金調達計画
- 事業実施に関連する事項
- 所要資金計画(総括) ※組み合わせ申請の場合
- 発注区分表(総括) ※組み合わせ申請の場合
- 導入前後の比較図 ※組み合わせ申請の場合
- 新設備の配置図 ※組み合わせ申請の場合
- 事業場の全体図 ※組み合わせ申請の場合
- 事業スケジュール ※単独申請は該当する場合
上記以外に、添付書類として以下の書類が必要です。
- 会社情報(法人概要申告書)
- 決算書
- 中小企業者であることの宣誓書 ※中小企業の場合
- 商業登記簿謄本 ※個人事業主の場合は確定申告書
- 補助対象設備を導入する建物の登記簿謄本
- エネルギー使用量実績の確証、燃料評価単価算出根拠※組み合わせ申請の場合
- 生産量実績の確証 ※組み合わせ申請の場合
- 省エネルギー量独自計算書 ※単独申請で該当する場合
- 製品情報証明書 ※単独申請で該当する場合
- エネルギー管理支援サービスの契約書案 ※組み合わせ申請の場合
(以下、該当する場合のみ提出)
- 定期報告書の「特定第1表」の写し
- 開示宣言フォームの宣言を受けて経済産業省から送付されるメールの写し
- 経営力向上計画に係る認定申請書および認定書の写し
- 省エネ診断報告書(表紙)の写し
- 中長期計画書の写し
- ベンチマーク改善に資することが認められる資料
- 経営革新計画承認企業であることの承認申請書および承認書の写し
提出書類には様式が定められているため、公募要領でご確認ください。また、書類のファイリング方法にも「片面印刷」「インデックスは中仕切りに貼付」「ホッチキス不可」などの指定があります。不備のないよう作成しましょう。
省エネルギー投資促進支援事業費補助金の採択ポイント
ここで前回公募時の採択件数と採択率、審査・評価項目、事務局の採択方法を紹介します。
前回公募時の採択状況
令和4年度補正予算2次公募の採択結果から、直近の採択状況を確認してみましょう。
|
申請件数 |
採択件数 |
採択率 |
採択金額 合計 |
計画 省エネ量 |
(C)指定設備導入事業 |
1,622件 |
1,515件 |
93.4% |
95.6億円 |
13,040.3kl |
(C)指定設備導入事業 + (D)エネルギー需要 最適化対策事業 |
3件 |
3件 |
100.0% |
0.2億円 |
130.9kl |
※ 「計画省エネ量」は、採択事業の合計値
出典:令和4年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業 新規採択事業の結果について(2次公募)
なお「(C)指定設備導入事業」は(Ⅲ)設備単位型と名称が変わっていますがほぼ同類型です。「(C)指定設備導入事業+(D)エネルギー需要最適化対策事業」は(Ⅲ)設備単位型+(Ⅳ)エネルギー需要最適化型とほぼ同じ内容です。
2つの類型ともに採択率は高めです。より採択されやすくするためにも、手続きに不備がないよう確認し、次項で解説する審査・評価項目も押さえて申請しましょう。
審査項目
SIIが公表している交付申請の審査項目は、以下の内容です。
- 交付規程・公募要領の要件を満たしているか
- 全体計画(資金調達計画、工事計画等)が適切であり、事業遂行の確実性、事業の継続性が十分見込まれるか
- 経費(設備費、設計費、工事費)が類似事業の標準価格、工事事業者の参考見積に対し適切に算定されているか
いずれも基本的な項目であり、補助金の趣旨に則った事業計画の策定がポイントといえそうです。
評価項目
SIIでは審査時の評価項目として、以下の項目を挙げています。
- 計画省エネルギー量
- 計画省エネルギー率
- 経費当たり計画省エネルギー量(補助対象経費1,000万円当たりの計画省エネルギー量)
また、以下に該当する場合は追加の評価(加点)を受けられます。
- 任意開示制度への参画を宣言した特定事業者
- 中小企業
- 2020年度以降に省エネルギー診断を受けた省エネルギー事業※以下のいずれかの事業
- 「無料省エネ診断等事業及び診断結果等情報提供事業」
- 「エネルギー利用最適化診断事業及び情報提供事業」
- 「省エネルギー相談地域プラットフォーム構築事業」
- 「地域プラットフォーム構築事業」
- 「中小企業等に向けた省エネルギー診断拡充事業費補助金」
- ベンチマーク改善に資することが認められる事業※大企業を除く
- 経営力向上計画に記載された事業または経営革新計画の認定を受けた企業が実施する省エネルギー事業
該当する項目があるかチェックし、しっかり加点をもらいましょう。
採択方法
事務局では採択方法について、事業区分ごとに評価項目に従って審査を行い、外部審査委員会の評価を踏まえ、上位者から予算の範囲内で採択すると公表しています。
また交付申請の合計額が予算額を超える場合は、予算の範囲でなるべく多くの事業者・事業分野を採択する観点から、事業者・類似案件の絞込みを行う場合があるとのことです。
特に複数年度で申請する場合は、各年度の予算額を超えた採択は受けられないため、各年度の予算額の配分を考慮した2年度事業計画を策定し、申請する必要があるでしょう。
前回公募時の採択実績が高かったとはいえ、要件や審査項目を押さえ、実現性の高い事業計画を策定することが肝心です。
省エネルギー投資促進支援事業費補助金の活用事例
ここで省エネルギー投資促進支援事業費補助金の申請目安がわかるよう、異なる業種や導入設備の補助金活用事例を紹介します。
株式会社加賀屋(和倉温泉 加賀屋)【宿泊業】
画像引用:和倉温泉 加賀屋
石川県七尾市の「株式会社加賀屋(和倉温泉 加賀屋)」は、明治39年に創業した能登の老舗旅館です。くつろげる館内と行き届いたおもてなしに定評があり、2023年には「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」総合日本一にも選ばれています。
全館的な省エネ化計画に向けて、同社では社長をトップとした「施設改善委員会」を設け、省エネに取り組みました。2017年からの補助金事業では、コージェネレーションやボイラー、変圧器、照明などを高効率機器へ更新。一例として、高効率ボイラで作った熱を離れの宿泊棟へ融通し、エネマネ制御により設備運用を最適化したところ、大幅な省エネ効果を得られました。
同社では3年間の補助金事業でランニングコストを大幅に削減し、削減分を顧客サービスへと還元。同社はさらに補助金事業で省エネ大賞2021「省エネルギーセンター会長賞」にも輝いています。
事業年度 |
平成29年度~31年度(2017年度~2019年度) |
補助対象経費 |
6億6,530万円 |
補助金額 |
2億9,180万円 |
導入設備 |
ボイラー・コージェネレーション・ポンプインバーター盤 など |
省エネ目標の 達成状況 |
導入前:事業所全体のエネルギー使用量3,838(kl/年) ⇒省エネルギー量1,438(kl/年) 事業所全体の省エネルギー率37.4% |
参照:施設改善委員会を設置し、3年計画で効率的な省エネ。(株式会社加賀屋・和倉温泉 加賀屋)
介護老人保健施設オレンジガーデン・ケアセンター【社会保険・社会福祉・介護事業】
画像引用:オレンジガーデン・ケアセンター
千葉県船橋市の「介護老人保健施設オレンジガーデン・ケアセンター」は、心身の医療的ケアと介護・リハビリを実施する事業者です。地域交流や周辺施設との連携を図りながら、高齢者へ家庭復帰に向けた医療・生活サービスを提供しています。
近年の高気温期間の長期化や、燃料代の価格高騰に加え、空調設備の保守契約が終了したことなどを受け、同施設では高効率空調(ガスヒートポンプエアコン)の更新を検討。しかし入居者がいる中では温度管理を止められず、空調工事のための一次的な設備停止については、慎重かつ計画的に進める必要がありました。
こうした状況下で、補助金を活用できたことで設備更新計画を急ピッチで進められ、長時間稼働できる高効率空調への更新をようやく実現。大幅なランニングコストの削減にもつながりました。
高効率空調によりエアコンの効きムラを抑えられたため、入居者の居住性と従業員の働く環境も大きく改善されています。
事業年度 |
令和3年度(2021年度) |
補助対象経費 |
1,933万円 |
補助金額 |
966万円 |
導入設備 |
空調設備 |
省エネ目標の 達成状況 |
導入前:エネルギー使用量79.1(kl/年) ⇒省エネルギー量33.9 (kl/年) 補助対象設備の省エネルギー率42.8 % 削減コスト250(万円/年) |
参照:入居者の住みやすさと省エネを実現(介護老人保健施設オレンジガーデン・ケアセンター )
株式会社丸合(まるごう西倉吉店)【飲食料品小売店】
画像引用:まるごう
鳥取県倉吉市「株式会社丸合(まるごう西倉吉店)」は、食料品や日用品、衣料品を中心とした地域密着型のスーパーマーケットです。
同社では省エネ法で定められたエネルギー削減目標や、2020年の特定フロンの撤廃のような国の施策に則り、独自の省エネ設備更新を実施しています。
かねてから節電や節水など、全社的な店舗の省エネアクションに取り組んでいました。しかし計画的な高効率省エネ設備の更新を行う中で、店舗のアクションだけでは効果に限界があるとも感じたそうです。
そのような折に補助金とエネマネ事業者を知り、両者を活用して高効率省エネ設備へと更新。西倉吉店では店舗の照明から空調、ショーケースなど、多くの設備を省エネ型に更新し、大幅な省エネ効果を得られました。
同社では省エネ設備更新を全社で実施し、4年間に17店舗が省エネ補助金の採択を受けました。結果的に全社トータルで、5店舗分に相当する1,444klのエネルギー量削減にも成功しています。
事業年度 |
平成28年度(2016年度) |
補助対象経費 |
6,400万円 |
補助金額 |
3,200万円 |
導入設備 |
空調機・冷凍機・LED証明・EMS |
省エネ目標の 達成状況 |
導入前:エネルギー使用量325(kl/年) ⇒省エネルギー量113(kl/年) 省エネルギー率34.6% ※17店舗分の省エネ効果を実現 |
参照:多店舗展開スーパーマーケットにおける計画的な省エネ事例(株式会社丸合)
宇野港土地株式会社【複合サービス事業】
画像引用:宇野港土地株式会社
岡山県玉野市「宇野港土地株式会社」は、自社不動産の活用を主軸とした不動産賃貸や各種開発事業、レジャー・リゾート施設運営、太陽光発電事業を営む会社です。地元玉野市の総合スーパーに公共施設(市立図書館・中央公民館)を誘致しリニューアルするといった、大規模開発事業の実績もあります。
近年の社会情勢から省エネ化の重要性を再認識した同社では、多様なエネルギー使用量データから省エネの検討を繰り返し、確証を得て省エネ設備への更新を決断しました。
数ある自社施設の設備の中でも、1993年のショッピングモールの変圧器がオープン時から設置されたままであったため、トップランナー機器へと更新。モーターの高負荷に耐える変圧器で素材の損失を大幅に削減でき、エネルギー効率を大幅に向上させました。
同社では消費エネルギーを66.4%削減し、大幅なランニングコスト抑制に成功しています。
事業年度 |
平成3年度(2021年度) |
補助対象経費 |
565万円 |
補助金額 |
200万円 |
導入設備 |
変圧器 |
省エネ目標の 達成状況 |
導入前:エネルギー使用量9.49(kl/年) ⇒省エネルギー量 6.30 (kl/年) 補助対象設備の省エネルギー率 66.4 % 削減コスト 560,000(円/年) |
参照:トップランナー基準を大幅にクリアした変圧器を導入(宇野港土地株式会社)
株式会社和興ニット岩手(本社工場)【製造業】
画像引用:岩手工場のご紹介(株式会社和興ニット岩手) IWATE FACTORY
岩手県一関市「株式会社和興ニット岩手(本社工場)」は、1968年から衣料縫製業に携わり、多くのアパレルブランド製品を制作してきた本社工場です。生地の裁断、法制、仕上げから出荷までを手がけるOEM事業を展開しています。
同社では品種・高難易度・小ロットの商品需要にも対応できるよう、最新機器の導入で効率化を図る一方で、かさむランニングコストに悩まされてきました。海外企業に受注を奪われる厳しい状況下で、製品の品質を保ち生き残りをかけるために、省エネ設備への更新によるランニングコストの削減に踏み切ります。
設備販売会社からの提案で省エネ補助金を知り、申請可能なすべての設備の更新を決断。東日本大震災後の省エネ機運で、照明を更新した際にコスト削減効果を実感した経験も、決断を後押ししました。
蛍光灯をLEDへ、石油ストーブとクーラーを高効率電気式パッケージエアコンへと更新し、変圧器もトップランナー機器へと変更。その結果、約70%のランニングコスト削減に成功しました。
同社では設備更新の際に大がかりな配置替えを行い、生産性も大幅に向上させています。
事業年度 |
平成29年度(2017年度) |
補助対象経費 |
510万円 |
補助金額 |
170万円 |
導入設備 |
照明・空調・変圧器 |
省エネ目標の達成状況
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導入前:エネルギー使用量11.6(kl/年) ⇒省エネルギー量6.57(kl/年) 省エネルギー率56.7% |
参照:空調・照明・変圧器の複合省エネ設備更新によりランニングコストを7割カット(株式会社和興ニット岩手・本社工場)
【まとめ】省エネルギー投資促進支援事業費補助金について解説しました
省エネルギー投資促進支援事業補助金は多彩な業種・規模で設備投資に活用できます。省エネ効果の計算も必要ですが、省エネ診断で相談も可能です。
申請手続きをエネマネ事業者や設備販売事業者に依頼できる点や、2年がかりの事業に取り組める点も、同補助金の魅力です。本記事を参考に、省エネルギー投資促進支援事業補助金を活用し、自社設備の省エネ化を検討してみてはいかがでしょうか。