働き方改革推進支援助成金とは?5つあるコースの違いや支給額を解説

働き方改革推進支援助成金とは?5つあるコースの違いや支給額を解説

働き方改革推進支援助成金の申請を検討しているが、コースごとの内容が資料では分かりにくく、お困りではないでしょうか。

本記事では働き方改革推進支援助成金の概要と申請方法について、簡潔にまとめて解説します。各コースの詳細内容や選び方、申請の手続きを把握しましょう。

目次
  1. 1. 働き方改革推進支援助成金とは
    1. 1-1. 中小企業事業主の定義
    2. 1-2. 支給対象となる取組
    3. 1-3. 賃金引き上げを目標に設定できる場合の支給額
    4. 1-4. 申請締切
    5. 1-5. 各コースの選び方
  2. 2. 適用猶予業種等対応コース
    1. 2-1. 補助対象者
    2. 2-2. 支給額
  3. 3. 労働時間短縮・年休促進支援コース
    1. 3-1. 補助対象者
    2. 3-2. 支給額
  4. 4. 勤務間インターバル導入コース
    1. 4-1. 補助対象者
    2. 4-2. 支給額
  5. 5. 労働時間適正管理推進コース
    1. 5-1. 補助対象者
    2. 5-2. 成果目標
    3. 5-3. 支給額
  6. 6. 団体推進コース
    1. 6-1. 支給対象者
    2. 6-2. 支給額と対象となる取り組み
  7. 7. 働き方改革助成金の申請手順
    1. 7-1. 1.交付申請
    2. 7-2. 2.事業実施
    3. 7-3. 3.支給申請
  8. 8. 働き方改革推進支援助成金の概要と申請方法をまとめました

働き方改革推進支援助成金とは

働き方改革推進支援助成金は、厚生労働省が中小企業事業主向けに、生産性向上とともに労働者の労働条件や環境の改善を目的にした取り組みを支援する助成金です。

取り組み目標や助成金の対象によって以下5つのコースに分かれています。

働き方改革推進支援助成金とは

働き方改革推進支援助成金はコースごとの要件もありますが、コースにかかわらず共通する部分もあります。まずは共通部分について解説します。

中小企業事業主の定義

働き方改革推進支援助成金は、中小企業事業主であることが要件です。中小企業事業主の条件は業種ごとに異なり、以下のAとBどちらかの条件を満たす場合です。

業種

A.資本または出資額

B.常時使用する労働者

小売業・飲食店

5,000万円以下

50人以下

サービス業

5,000万円以下

100人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

その他の業種

3億円以下

300人以下

ただし適用猶予業種等対応コースは、建設業、運送業、病院等、砂糖製造業(鹿児島・沖縄のみ)のいずれかに該当する業種である必要があり、中小企業事業主の定義も異なります。適用猶予業種等対応コースにおける中小企業の定義は、以下のどちらかに該当する企業を指します。

  • 常時使用する労働者数が300人以下
  • 資本金または出資額が3億円以下である

支給対象となる取組

働き方改革助成金の支給対象となる取り組みは、団体推進コースを除き共通しています。具体的には以下の通りです。

  1. 労務管理担当者に対する研修
  2. 労働者に対する研修、周知・啓発
  3. 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など) のコンサルティング
  4. 就業規則・労使協定等の作成・変更
  5. 人材確保に向けた取組
  6. 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
  7. 労務管理用機器の導入・更新
  8. デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
  9. 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新(小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)

引用:働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)

ただし、パソコン・タブレット・スマートフォンは原則として対象外です。

賃金引き上げを目標に設定できる場合の支給額

賃金引き上げを成果目標に入れている場合、団体推進コース以外では労働者数と引き上げた金額にあわせて支給額が決まります。なお、引き上げ人数は30人が上限です。

具体的な計算方法は以下の通りです。

【常時使用する労働者数が30人を超える中小企業事業主の場合】

引き上げ人数

1〜3人

4〜6人

7〜10人

11〜30人

引き上げ額3%以上

15万円

30万円

50万円

1人あたり5万円

(上限150万円)

引き上げ額5%以上

24万円

48万円

80万円

1人あたり8万円

(上限240万円)

【常時使用する労働者数が30人以下の中小企業事業主の場合】

引き上げ人数

1〜3人

4〜6人

7〜10人

11〜30人

引き上げ額3%以上

30万円

60万円

100万円

1人あたり10万円

(上限300万円)

引き上げ額5%以上

48万円

96万円

160万円

1人あたり16万円

(上限480万円)

申請締切

働き方改革推進支援助成金の締切はコースにかかわらず共通で、2023年11月30日(必着)です。ただし、申請状況によってはそれ以前に締め切られる可能性もあるため、事前に公式ページを確認しましょう。

各コースの選び方

働き方改革助成金は中小企業事業主単体向けに4コース、複数の中小企業グループ向けに1コース用意されています。

以下のフローチャートを参考に、自社に適したコースを選びましょう。

各コースの選び方

適用猶予業種等対応コース

適用猶予業種等対応コースは、建設業、運送業、病院等、砂糖製造業など、時間外労働の上限適用に対して猶予が与えられた業種に対しての助成金です。

補助対象者

支給対象は以下の条件すべてを満たす中小企業事業主です。

  • 労働者災害補償保険の適用事業主である
  • 成果目標1から4の設定に向けた条件を満たしている(交付申請時点)
  • 年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している(交付申請時点)

成果目標は以下4つが該当し、このうち1つ以上に取り組むことが求められます。

  1. 2023年または2024年の36協定に基づき、時間外および休日の労働時間を制限すること。月60時間以下、または60時間以上80時間以下にする(建設業、運送業、砂糖製造業の場合)。病院等では月80時間以下にする
  2. 4週間で休日を5日から8日以上に増やす(建設業の場合)
  3. 勤務間隔を9時間以上あける勤務間インターバル制度を導入する(運送業、病院等が対象)
  4. 医師の働き方改革のため、労務管理体制の構築、医師の労働時間の実態把握と管理に取り組む(病院等が対象)

成果目標についてのより詳しい内容はこちらをご確認ください。

支給額

支給額は成果目標の達成状況によって、計算方法が変わります。以下2つのうち金額が低い方が支給額となります。

  1. 成果目標1から4の上限額および賃金加算額の合計額
  2. 対象経費の合計額×補助率3/4

ただし、常時使用する労働者数が30人以下かつ、支給対象の取組のうち6から9を実施し、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5になります。

賃金引き上げを目標に設定できる場合の支給額の計算方法は、本記事の賃金引き上げを目標に設定できる場合の支給額」をご覧ください。

各成果目標の上限額は以下の通りです。

【成果目標1 建設業、運送業、砂糖製造業の場合の上限額】

事業実施後に設定する

時間外労働時間数

事業実施前に設定されている時間外労働時間数

月80時間を超えて

設定している場合

月60時間を超えて

設定している場合

月60時間以下

250万円

200万円

月60時間〜80時間以下

150万円

【成果目標1 病院等の場合の上限額】

事業実施後に設定する

時間外労働時間数

事業実施前に設定されている時間外労働時間数

月100時間を超えて

設定している場合

月90時間を超えて

設定している場合

月80時間を超えて

設定している場合

月80時間以下

250万円

200万円

150万円

【成果目標2達成時の上限額】

1日増加するごとに25万円(最大100万円)

【成果目標3達成時の上限額】

休息時間数

「新規導入」に該当する取組がある場合

適用範囲の拡大・時間延長のみの場合

9時間以上

11時間未満

100万円

50万円

11時間以上

150万円

75万円

【成果目標4達成時の上限額】

50万円

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)

労働時間短縮・年休促進支援コース

労働時間短縮・年休促進支援コースは時間外労働の削減や、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備を支援するコースです。

補助対象者

労働時間短縮・年休促進支援コースは、以下のすべてを満たす中小企業事業主です。

  • 労働者災害補償保険の適用事業主である
  • 「成果目標」1〜3の設定に向けた条件を満たしている(交付申請時点)
  • 年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している(交付申請時点)

成果目標は以下1から3のうち1つ以上選択し、達成を目指します。

  1. 2023年または2024年の36協定に基づき、時間外および休日の労働時間を制限すること。時間外・休日労働時間数を月60時間以下、または月60時間から80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出る
  2. 年次有給休暇の計画的付与についての規定を導入する
  3. 時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ病気休暇や教育訓練休暇など、特別休暇の規定を1つ以上新たに導入する

支給額

支給額は成果目標の達成状況によって、計算方法が変わります。以下2つのうち金額が低い方が支給額となります。

  1. 成果目標1から4の上限額および賃金加算額の合計額
  2. 対象経費の合計額×補助率3/4

ただし、常時使用する労働者数が30人以下かつ、支給対象の取組で6から9を実施し、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5になります。

賃金引き上げを目標に設定できる場合の支給額の計算方法は、本記事の「賃金引き上げを目標に設定できる場合の支給額」をご覧ください。

各成果目標の上限額は以下の通りです。

【成果目標1】

事業実施後に設定する時間外労働時間数

事業実施前に設定されている時間外労働時間数

月80時間を超えて

設定している場合

月60時間を超えて

設定している場合

月60時間以下

200万円

150万円

月60時間〜80時間以下

100万円

【成果目標2】

25万円

【成果目標3】

25万円

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

勤務間インターバル導入コース

勤務間インターバル導入コースは、勤務終了後、次の勤務までに一定時間以上の休息時間を設ける勤務間インターバル制度の導入を支援するコースです。

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律により、勤務間インターバル制度の導入は企業の努力義務となっています。

勤務間インターバル制度を導入した際、以下のような働き方が一例として挙げられます。

勤務間インターバル導入コース

画像引用:東京労働局|勤務間インターバル制度をご活用ください

補助対象者

労働時間短縮・年休促進支援コースは、以下のすべてを満たす中小企業事業主です。

  • 労働者災害補償保険の適用事業主である
  • 勤務間インターバルについて導入していないまたは、休息時間数や対象人数が規定の基準を満たしていない
  • 36協定が協定が締結・届出されている(交付申請時点)
  • 過去2年間に、月45時間を超える時間外労働の実態がある
  • 年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備している(交付申請時点)

詳細な対象者についてはこちらをご確認ください。

成果目標は勤務間インターバルを休息時間数について、以下のどちらかの時間で導入し、定着を図ることです。

  • 9時間以上11時間未満
  • 11時間以上

上記に加え、時間当たりの賃金額の引上げを3%以上行うことも成果目標に加えられます。

支給額

勤務間インターバル導入コースの支給額は以下の通りです。

  • 対象経費の合計額×補助率3/4

ただし、常時使用する労働者数が30人以下かつ、支給対象の取組のうち6から9を実施し、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5になります。

休息時間数と、支給額の上限の関係は以下の通りです。

休息時間数

「新規導入」に該当する

取組がある場合

適用範囲の拡大・

時間延長のみの場合

9時間以上

11時間未満

80万円

40万円

11時間以上

100万円

50万円

賃金引き上げを目標に設定できる場合の支給額の計算方法は、本記事の「賃金引き上げを目標に設定できる場合の支給額」をご覧ください。

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)

労働時間適正管理推進コース

労働時間適正管理推進コースは生産性を向上させ、労働時間の適正管理に向けた環境整備に取り組む中小企業を支援するコースです。

補助対象者

支給対象は以下の条件すべてを満たす中小企業事業主です。

  • 労働者災害補償保険の適用事業主である
  • 勤怠管理と賃金計算等をリンクさせること、賃金台帳等の作成・管理・保存の両方が統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用していない
  • 交付決定日より前に、賃金台帳等の労務管理書類について5年間保存することが就業規則などで規定されていない
  • 36協定が締結・届出されている(交付申請時点)
  • 年5日の年次有給休暇の取得のため、就業規則等を整備している(交付申請時点)

成果目標

支給対象となる成果目標は以下の3つで、申請する際は全ての目標達成を目指して実施することが条件となっています。

  1. 勤怠管理と賃金計算等をリンクさせること、賃金台帳等の作成・管理・保存の両方が統合管理ITシステムを用いた労働時間管理方法を採用する
  2. 賃金台帳などの労務管理書類を5年間保存することを、就業規則などに規定する
  3. 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」に係る研修を労働者と労務管理担当者に対して行うこと

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」についてはこちらをご覧ください。

上記に加え、時間当たりの賃金額の引上げを3%以上行うことも成果目標に加えられます。

支給額

労働時間適正管理推進コースの支給額は、成果目標達成時の上限が100万円と定められています。支給額の計算方法は以下の通りです。

  • 対象経費の合計額×補助率3/4

ただし常時使用する労働者数が30人以下かつ、支給対象の取組のうち6から9を実施し、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5になります。

賃金引き上げを目標に設定できる場合の支給額の計算方法は、本記事の「賃金引き上げを目標に設定できる場合の支給額」をご覧ください。

参考:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)

団体推進コース

団体推進コースは、中小企業事業主の団体や連合団体が、傘下である事業主の労働者の労働条件改善に取り組む際に利用できるコースです。

支給対象者

支給対象者は3事業者以上で構成され、以下のいずれかに該当し、かつ1年以上の活動実績があるものです。

  • 事業主団体(事業協同組合・商工組合など)
  • 共同事業主(共同する全事業主が合意に基づく協定書を作成するなどの要件を満たした団体)

事業主団体と共同事業主の詳細についてはこちらをご確認ください。

支給額と対象となる取り組み

労働時間適正管理推進コースの支給額は以下のうち、金額が低いもので計算します。

  • 対象経費の合計額
  • 総事業費から収入額を引いた額
  • 上限額500万円

対象となる取り組みは以下の通りです。

  1. 市場調査の事業
  2. 新ビジネスモデル開発、実験の事業
  3. 材料費、水光熱費、在庫等の費用の低減実験(労働費用を除く)の事業
  4. 下請取引適正化への理解促進など、労働時間などの設定の改善に向けた取引先等との調整の事業
  5. 販路の拡大等の実現を図るための展示会開催及び出展の事業
  6. 好事例の収集、普及啓発の事業
  7. セミナーの開催等の事業
  8. 巡回指導、相談窓口設置等の事業
  9. 構成事業主が共同で利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新の事業
  10. 人材確保に向けた取組の事業

引用:働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)

働き方改革助成金の申請手順

働き方改革助成金の申請手順の大まかな流れは、コースごとに共通しています。

働き方改革助成金の申請手順

1.交付申請

まずは交付申請前に、管轄の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にて、「働き方改革推進支援助成金交付申請書」を提出します。

提出書類は申請するコースによって変わりますが、交付申請書・事業実施計画・就業規則の写しなどが必要です。

詳細は各コースごとの申請マニュアルをご確認ください。

働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)申請マニュアル(2023年度) 

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)申請マニュアル(2023年度) 

働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)申請マニュアル(2023年度) 

働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)申請マニュアル(2023年度) 

働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)申請マニュアル(2023 年度)

2.事業実施

提出した事業計画書に沿って、事業を実施します。交付決定前に事業の契約や発注をしてしまうと、支給が受けられないため、注意が必要です。

働き方改革推進支援助成金は、事業計画書で設定した事業実施予定期間までに事業を完了させる必要があります。支給申請の締切は事業実施予定期間から 30日後または2024年2月9日(団体推進コースのみ2月28日)のいずれか早い方です。

また、実際に事業を行ったことを証明できる書類も保存しましょう。具体的には変更した就業規則の写しやソフトウェアなどの納品書などが挙げられます。

3.支給申請

事業実施が完了したら、事業実施予定期間終了から30日後または2月9日のいずれか早い日までに支給申請書を提出します。提出先は管轄の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)です。

働き方改革推進支援助成金の概要と申請方法をまとめました

本記事では働き方改革推進支援助成金の概要と申請方法についてまとめました。働き方改革推進支援助成金は5種類あり、対象事業者や取り組み内容が変わるため、自社の課題にあわせて導入を検討しましょう。