ものづくり補助金の対象業種とは?対象となる条件や利用事例を解説

対象業種

設備投資を考えているものの、資金調達の方法で悩んでいる方もいるのではないでしょうか。ものづくり補助金は、製造業以外の業種でも設備投資に使える補助金です。本記事では、ものづくり補助金の対象事業者や対象業種、対象にできる経費を解説しますので、ぜひ参考にしてください。

目次
  1. 1. ものづくり補助金とは
  2. 2. ものづくり補助金の対象事業者の条件
  3. 3. ものづくり補助金の対象外になる事業者
  4. 4. ものづくり補助金の対応業種
    1. 4-1. 組合関連以外の中小企業の場合
    2. 4-2. 組合・法人関連の中小企業の場合
    3. 4-3. 小規模企業者・小規模事業者の場合
    4. 4-4. 特定事業者の一部の場合
    5. 4-5. 特定非営利活動法人の場合
    6. 4-6. 社会福祉法人の場合
  5. 5. ものづくり補助金の対象となる経費
    1. 5-1. 機械装置・システム構築費
    2. 5-2. 技術導入費
    3. 5-3. 専門家経費
    4. 5-4. 運搬費
    5. 5-5. クラウドサービス利用費
    6. 5-6. 原材料費
    7. 5-7. 外注費
    8. 5-8. 知的財産権等関連経費
    9. 5-9. 海外旅費
    10. 5-10. 通訳・翻訳費
    11. 5-11. 広告宣伝・販売促進費
  6. 6. ものづくり補助金の対象外となる経費
  7. 7. ものづくり補助金の活用事例
    1. 7-1. 洋菓子店の事例
    2. 7-2. 産業廃棄物処分事業者の事例
    3. 7-3. 農産加工会社の事例
  8. 8. ものづくり補助金の申請の流れ
  9. 9. 【まとめ】ものづくり補助金の対応業種を紹介しました

ものづくり補助金とは

ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入に対応するための補助金です。主に生産性を向上させる目的の設備投資に利用できます。

ものづくり補助金の対象となる事業者の条件や対象になる業種を、以下で順に解説していきます。

ものづくり補助金の対象事業者の条件

ものづくり補助金の対象事業者は、主に日本の中小企業や小規模事業者です。小規模事業者は、常勤の従業員数が製造業その他・宿泊業・娯楽業では20人以下、卸売業・小売業・サービス業では5人以下の会社や個人事業主が該当します。

ものづくり補助金を利用するには、業種ごとに定められた資本金や常勤の従業員数が規定値以下でなければなりません。業種ごとの資本金や常勤の従業員数の規定は後述します。

上記に該当する中小企業・小規模事業者で、以下の基本要件を満たす3〜5年の事業計画の策定・実行をすることがものづくり補助金を利用する条件です。

  • 付加価値額:年平均成長率+3%以上増加
  • 給付支給総額:年平均成長率+1.5%以上増加
  • 事業場内最低賃金:地域別最低賃金+30円以上

ものづくり補助金の対象外になる事業者

大企業・みなし大企業(株式や出資額、役員などを規定値以上大企業のものが占めている中小企業)は対象外です。また、以下に該当する事業は対象外になります。

  • 17次公募で省力化枠に申請をした事業者
  • ものづくり補助金の目的に沿わない事業
  • 公序良俗に反する事業・法令違反のおそれがある事業
  • 事業の主たる課題の解決を外注や委託で行う予定の事業(企画のみ自社で行う場合も含む)
  • 補助金で購入した設備を該当事業に使わず、長期間他者に貸す事業

そのほか、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の第2条各項に定める事業も対象外です。一例を挙げると、キャバクラや雀荘などが対象外になります。

ものづくり補助金の対応業種

ものづくり補助金は、ものづくりで連想される製造業以外の業種でも利用可能です。ただし、資本金や常勤の従業員数(アルバイト・パート含む)が規定されている場合は、規定値以下でなければ対象にならないので注意しましょう。以下で詳細を解説していきます。

組合関連以外の中小企業の場合

業種

資本金

常勤の従業員数

製造業、建設業、運輸業、旅行業

3億円以下

300人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

サービス業

(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)

5,000万円以下

100人以下

小売業

5,000万円以下

50人以下

ゴム製品製造業

(自動車・航空機用タイヤ及びチューブ製造業
 並びに工業用ベルト製造業を除く)

3億円以下

900人以下

ソフトウェア業・情報処理サービス業

3億円以下

300人以下

旅館業

5,000万円以下

200人以下

その他の業種(上記以外)

3億円以下

300人以下

出典:ものづくり補助金公募要領18次締切分

組合・法人関連の中小企業の場合

組合関連の中小企業者の場合は、以下が該当します。

  • 企業組合
  • 協業組合
  • 事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会
  • 商工組合、商工組合連合会
  • 商店街振興組合、商店街振興組合連合会
  • 水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会
  • 生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、
  • 内航海運組合、
  • 技術研究組合

上記のほか、一定要件を満たした生活衛生同業組合連合会や酒販組合中央会、内航海運組合連合会も該当します。

小規模企業者・小規模事業者の場合

小規模企業者・小規模事業者の場合は以下が該当します。

業種

常勤従業員数

製造業その他

20人以下の会社及び個人事業主

商業・サービス業

5人以下の会社及び個人事業主

サービス業のうち宿泊業・娯楽業

20人以下の会社及び個人事業主

出典:ものづくり補助金公募要領18次締切分

特定事業者の一部の場合

資本金が10億円以下で以下の表の条件を満たす会社または個人が該当します。

業種

常勤従業員数

製造業、建設業、運輸業

500人以下

卸売業

400人以下

サービス業・小売業

(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)

300人以下

その他の業種(上記以外)

500人以下

出典:ものづくり補助金公募要領18次締切分

また、一定条件を満たす以下の組合も該当します。

  • 生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会
  • 内航海運組合、内航海運組合連合会
  • 技術研究組合
  • 酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会

特定非営利活動法人の場合

従業員数が300人以下で、収益事業を行う特定非営利活動法人が該当します。ただし、認定特定非営利活動法人の場合は該当しません。

また、ものづくり補助金の交付が決定するまでに補助金の事業にかかわる経営力向上計画の認定を受けている必要があります。なお「経営力向上計画」は、人材育成や設備投資など、経営力を向上するために実施する計画です。詳細は中小企業庁のページで確認できます。

社会福祉法人の場合

従業員数が300人以下で「社会福祉法」第32条に規定する所管庁の認可を受けている社会福祉法人が該当します。

ものづくり補助金の対象となる経費

ものづくり補助金の対象となる経費は、以下の11項目です。

  • 機械装置・システム構築費
  • 技術導入費
  • 専門家経費
  • 運搬費
  • クラウドサービス利用費
  • 原材料費
  • 外注費
  • 知的財産権等関連経費
  • 海外旅費
  • 通訳・翻訳費
  • 広告宣伝・販売促進費

順に詳細を解説していきます。

機械装置・システム構築費

ものづくり補助金の対象となる事業に使われる機械・装置、工具・器具の購入費、制作費、レンタル費用・リース費用などが機械装置・システム構築費に該当します。また、補助事業のために使用する専用のソフトウェア・情報システムの購入費・構築費、レンタル費用・リース費用も該当します。

機械装置・システム構築費は、単価が50万円(税抜き)以上の設備投資をすることが必須になっているので、少なくとも1つは50万円以上のものを計上しましょう。

また、3者以上の型式・年式が明記された相見積もりを用意すれば、中古設備もものづくり補助金の補助対象にできます。

技術導入費

ものづくり補助金の対象となる補助事業に必要な知的財産権(特許権や実用新案権、商標権、意匠権、著作権など)の導入にかかる費用が技術導入費に該当します。

知的財産権を他者から取得する場合は、契約を書面に残す必要があるので忘れないように注意しましょう。また、技術導入費を支払う相手には、専門家経費・外注費をあわせて支払うことはできません。

専門家経費

ものづくり補助金の対象となる補助事業を実施するために専門家に依頼した際に支払う経費が専門家経費に該当します。専門家に支払う謝礼の単価は以下の通りです。

  • 大学教授、弁護士、弁理士、公認会計士、医師:1日5万円以下(税抜き)
  • 大学准教授、技術士、中小企業診断士、ITコーディネータ:1日4万円以下(税抜き)

ただし、依頼する価格の妥当性を証明する複数の見積書を用意した場合は、1日5万円(税抜き)を上限として支払う金額で計上できます。

専門家経費を支払った相手には、技術導入費・外注費をあわせて支払えないので注意してください。

運搬費

ものづくり補助金の補助事業を実施するにあたって、運搬、宅配・郵送料などにかかる経費が運搬費に該当します。

ただし、機械装置を購入した際の運搬費は機械装置費で計上するので、間違えないように注意しましょう。

クラウドサービス利用費

ものづくり補助金の補助事業を実施するにあたって、クラウドサービスを利用する経費がクラウドサービス利用費に該当します。ただし、自社のほかの事業と共有する場合は補助の対象になりません。

サーバーの領域を借りる費用やサーバー上のサービスを利用する経費が主な対象で、サーバーの購入費や、サーバー自体を借りる費用は計上できないので注意してください。

また、クラウドサービスを利用するために必要なルータ使用料・インターネットプロバイダ契約料・通信料などは、補助事業に必要な最低限のものに限り対象になります。

原材料費

試作品の開発に必要な原材料や副資材の購入に要する経費が原材料費に該当します。ただし、原材料は必要最小限の量で、補助事業で使い切ることが原則として定められているので注意しましょう。

また原材料費を計上する場合は、受払簿を作成して受払いを明確にし、試作・開発で発生した仕損品・テストピースなどを保管する必要があります。

外注費

新製品や新サービスの開発に必要な設計・デザイン・加工・検査などの業務の一部を外注する費用が外注費に該当します。外注費を計上する場合は、外注先との契約を書面で残す必要があるので注意しましょう。

また、機械装置の製作にかかる費用は機械装置・システム構築費で計上するので、外注費に含まれません。また、外注費を支払う相手には、技術導入費・専門家経費をあわせて支払えないので注意しましょう。

知的財産権等関連経費

補助事業対象となる新製品・新サービスを事業化するために必要な知的財産権の取得にかかる弁理士の手続き代行費用や、外国特許出願のための翻訳料などが該当します。

ただし、日本の特許庁に納付する手数料や拒絶査定に対する審判請求・訴訟を行う場合に必要な経費などは知的財産権等関連経費に認められません。

海外旅費

グローバル枠で海外市場開拓に関する事業で申請する場合のみ、事業に必要な海外渡航費や宿泊費などが海外旅行費に該当します。ただし、補助事業に必須ではない海外旅費は計上できません。

計上できるのは、一度の渡航で3名まで(専門家、通訳者が海外に同行する場合には事業者3名に加え2名まで)です。また、1名あたり最大で50万円(税抜き)が限度です。

通訳・翻訳費

グローバル枠で海外市場開拓に関する事業で申請する場合のみ、対象事業の遂行に必要な通訳や翻訳を依頼する費用を通訳・翻訳費として計上できます。30万円(税抜き)が限度です。

ただし、翻訳の場合は広告宣伝や販売促進に必要な翻訳に限り対象になります。契約書の翻訳は対象になりません。

広告宣伝・販売促進費

グローバル枠で海外市場開拓に関する事業で申請する場合のみ、対象事業で開発・提供する製品やサービスの海外展開に必要な広告・販促費を計上できます。パンフレットや動画、写真の作成や掲載、ブランディング・プロモーションにかかる費用が主に該当します。

交付決定後に発注・契約することや補助事業の実施期間内に広告が使用されることが条件となっているので注意しましょう。

ものづくり補助金の対象外となる経費

ものづくり補助金の対象外となる経費は、主に以下の通りです。

  • 補助事業期間中の販売を目的とした製品、商品などの生産にかかわる機械装置・システム構築費以外の諸経費
  • 工場建屋、構築物、簡易建物(ビニールハウス、コンテナ、ドームハウスなど)の取得費用や、組み立て用部材の取得費用
  • 再生エネルギーの発電を行うための発電設備(ソーラーパネルなど)や附属設備
  • 設置場所の整備工事や基礎工事に要する費用
  • 事務所等にかかる家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱費
  • 電話代、インターネット利用料金等の通信費(クラウドサービス利用費に該当するものは除く)
  • 商品券を始めとする金券類
  • 文房具などの事務用品等の消耗品代、雑誌購読料、新聞代
  • 飲食、贅沢品、娯楽、接待などにかかる費用
  • 不動産の購入費、自動車等車両の購入費・修理費・車検費用
  • 税務申告、決算書作成等のために税理士、公認会計士等に支払う費用及び訴訟等のための弁護士費用
  • 収入印紙
  • 振込手数料(代引手数料を含む)や両替手数料
  • 公租公課(消費税や地方消費税額など)
  • 各種保険料
  • 借入金などの支払利息及び遅延損害金
  • 報告書等の事務局に提出する書類作成・申請にかかわる費用
  • 目的以外で使用できるものの購入費(ただし、補助事業のみに使用することが明らかなものは対象)
  • 中古市場において広く流通していない中古機械設備など、その価格設定の適正性が明確ではない中古品の購入費(中古品流通事業者から型式や年式が記載された相見積もりを3者以上から取得している場合は対象)
  • 事業にかかる自社の人件費
  • 同一代表者・役員が含まれている事業者、資本関係がある事業者への支払い
  • 公的な資金の用途として社会通念上、不適切と認められる経費

上記に該当しない場合であっても、ものづくり補助金の目的に沿わないことが客観的に判断される経費は対象外になるおそれがあります。

ものづくり補助金の活用事例

ものづくり補助金の対象業種とは?対象となる条件や利用事例を解説_1

ものづくり補助金の公式サイトで紹介されている活用事例から3件紹介します。各事例の概要と評価された点を解説しますので、参考にしてください。

洋菓子店の事例

佐賀県の洋菓子店の事例ではものづくり補助金を活用して、地元食材にこだわった新しい焼き菓子の開発と従業員の働き方改革を実現しています。

賞味期限が短いケーキを中心に販売していましたが、日持ちする焼き菓子を提供したいと考えて新商品の開発に取り組みました。ところが、理想的な柔らかさを実現することが手作業では難しく、専用の機械が必要になったため、ものづくり補助金を利用して機械を導入。

結果として、理想的な出来上がりを実現しつつ、機械生産によって生産性も向上して事業を成功させました。

本事例では、以下の点が評価されています。

  • 経営課題の解決を目指した取り組みであったこと
  • 地域貢献・顧客拡大・従業員の働きやすさへの価値提供を実践したこと
  • 異業種での新事業展開をしたこと

産業廃棄物処分事業者の事例

北海道の産業廃棄物収集・中間処理業者の事例では、異業種である林業、畜産業と連携して飼料を生産・販売して成功しました。

47年にわたって廃棄物処理業を営んでいた企業が、余っている廃棄物処理設備の有効活用方法を模索したところ「木材を蒸煮処理により飼料化する研究」を発見。大学と連携して手作業で飼料を生産し、効果が実証されたためものづくり補助金を活用して設備投資をして生産拡大。結果として売り上げを120%増加させ、従業員を5名増員、販路拡大も検討しています。

本事例では、以下の点が評価されています。

  • 古い技術に再注目して異業種参入したこと
  • 効果的に産官学民の連携をとったこと
  • 社会的意義、将来性、発展性がある技術であること

農産加工会社の事例

青森県の農産加工会社の事例では、廃棄処分される酒粕を活用して新商品を開発し、製造販売して成功しました。

地元酒造メーカー2社が大量の酒粕を廃棄し困窮していることから相談を受け、酒粕を使った新製品の開発を開始。従来の工法より熟成期間を短縮する工夫をして試作品を制作しましたが、本格的に製造するにあたって設備投資が必要になったため、ものづくり補助金を利用しました。

本事例では、以下の点が評価されています。

  • 地元原料にこだわり、手作業と長年培われた製法により丹念な製品づくりを貫いていたこと
  • 絶えず新たな製品開発に挑戦し続けていること
  • 若い研究者から現場に精通したベテラン社員まで一体となって取り組んでいること

ものづくり補助金の申請の流れ

ものづくり補助金は、以下の流れで申請・交付されます。

  1. 事前準備
  2. 公募開始後に申請
  3. 審査
  4. 補助金交付候補者の決定
  5. 交付申請・決定
  6. 補助事業実施(中間検査や実績報告あり)
  7. 確定検査
  8. 補助金の請求
  9. 補助金の支払い
  10. 事業化状況報告・知的財産権報告

ただし、ものづくり補助金は申請をして採択されただけでは補助金は支払われません。中間検査や実績報告、確定検査などを適切に行う必要があります。手続きが正しく行われないと、事業開始が遅れてしまったり、補助金が受け取れなくなってしまったりするので注意しましょう。

【まとめ】ものづくり補助金の対応業種を紹介しました

ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者であればほとんどの業種で利用できます。ただし、業種によって定められた資本金や常勤従業員数が規定の値以下である必要があるので注意しましょう。

また、ものづくり補助金は申請が難しいだけでなく、採択されて事業を開始した後も報告書の提出や検査などの手続きが必要になります。各種手続きに正しく対応しないと、補助金が受け取れなくなることもあるので注意してください。手続きが正しくできるか不安な場合は、専門家に相談することも手段の1つです。