ものづくり補助金とは?制度の概要や申請方法を分かりやすく解説

制度

設備やシステムなどの補助が受けられる「ものづくり補助金制度」。18次公募では、3つの申請枠と2つの類型があり、それぞれで概要や補助額が異なります。

中には、それぞれの違いについて理解できていない方もいるでしょう。本記事では、ものづくり補助金制度の概要をはじめ、申請方法や注意点を紹介します。

目次
  1. 1. ものづくり補助金制度とは
  2. 2. 2024年のものづくり補助金制度の申請枠・類型
    1. 2-1. 1. 省力化(オーダーメイド)枠
    2. 2-2. 2. 製品・サービス高付加価値化枠
    3. 2-3. 3. グローバル枠
  3. 3. ものづくり補助金の申請方法
    1. 3-1. 申請の流れ
    2. 3-2. 申請前の準備
    3. 3-3. 申請に必要な書類
  4. 4. 2024年(令和6年度)ものづくり補助金の変更点
    1. 4-1. 「大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例」が強化
    2. 4-2. 口頭審査の新設
  5. 5. ものづくり補助金の審査に受かるには?
    1. 5-1. 適切な内容で事業計画書を策定する
    2. 5-2. 審査項目となる「要件」を満たす
    3. 5-3. 加点項目に対応する
  6. 6. ものづくり補助金申請における3つの注意点
    1. 6-1. 事務手続きが複雑で長くなりやすい
    2. 6-2. 補助金は後払いになる
    3. 6-3. 事業が終了しても状況報告しなければならない
  7. 7. ものづくり補助金の申請は申請代行会社を利用するのがおすすめ
  8. 8. 【まとめ】ものづくり補助金の制度で事業の促進を図りましょう

ものづくり補助金制度とは

ものづくり補助金とは、中小企業が製品・サービスを生産する際、必要となる設備への投資を支援するための制度です。革新的な製品・サービスの開発、業務の省力化による生産性の向上を目的とした設備やシステムが対象となり、最大で1億円までの補助金が給付されます。

ものづくり補助金は、例年公募がおこなわれ、2024年3月時点の最新は18次公募です。募集開始後に申請をおこなうことで、補助金を受けられます。ただし、公募ごとに申請枠や要件が定められており、補助金を受けるには要件を満たしたうえ、実施される審査に通過しなければなりません。実際に支給される補助金の金額も、審査にて決定されます。

2024年のものづくり補助金制度の申請枠・類型

ものづくり補助金には、「申請枠」が存在しており、自社の取り組みによって申請先が異なります。以下は、18次公募の申請枠と類型をまとめたものです。

申請枠

類型

要件

省力化(オーダーメイド)枠

生産プロセスの省力化への投資を目的としたもの

製品・サービス高付加価値化枠

通常類型

製品・サービスの高付価値化を目的としたもの

成長分野進出類型

DX・GXを目的としたもの

グローバル枠

海外事業の拡大・強化を目的としたもの

(参照:生産性向上を目指す皆様へ 令和5年度補正予算

18次公募で設けられた申請枠は、上記の3種類です。補助金を利用する際は、自社が該当する申請枠へ応募する必要があります。

また、ものづくり補助金には、基本要件が定められており、いずれの申請枠を利用する場合でも満たさなければなりません。定められている基本要件は、以下の3つです。

【ものづくり補助金の基本要件】

  • 付加価値額…年平均成長率3%以上増加
  • 給与支給総額…年平均成長率1.5%以上増加
  • 事業場内最低賃金…地域別最低賃金+30円以上

申請をおこなうときは、上記の基本要件に加え、申請枠ごとに定められた要件をすべて満たした3~5年間の事業計画書の提出が必要です。

1. 省力化(オーダーメイド)枠

省力化(オーダーメイド)枠は、デジタル技術を活用した革新的な生産プロセスやサービス提供方法の実現を支援するための申請枠です。企業の人手不足を目的としたものが前提となり、業務効率化や生産性アップを実現するために、必要な設備・システムへの投資が対象となります。

従業員規模別
補助金の上限

5人以下:750万円(1,000万円)

6~20人:1,500万円(2,000万円)

21~50人:3,000万円(4,000万円)

51~99人:5,000万円(6,500万円)

100人以上:8,000万円(1億円)

要件

該当する事業の労働生産性が、設備投資前より2倍を超える事業計画書の策定


投資回収可能な事業計画書を策定する外部Slerを活用する場合、
保守・メンテナンス契約を中小企業とSler間で凍結し、Slerは必要な体制を整備する

補助率

原則、中小企業:1/2 小規模・再生:2/3

※補助額1,500万円までの部分:1/2もしくは2/3

※補助額1,500万円以上の部分:1/3

対象となる経費

機械装置・システム構築費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、
外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費

※1 3~5年の事業計画期間内におこなうこと

(参照:ものづくり補助金事務局|18次公募要領 概要版

 この申請枠は、企業の規模や状況に応じて補助率が決定されていますが、補助額1,500万円を境に補助率が変動するのが特徴です。加えて企業の従業員数に応じて、補助金の支給上限が設定されています。

【活用例】

生産性の向上を目的として、手作業でおこなっていた工程に
AI技術を用いた自動組み立てロボットを導入し
業務の完全自動化と24時間稼働を実現した。

2. 製品・サービス高付加価値化枠

製品・サービス高付加価値化枠は、製品やサービスの価値向上への取り組みを支援するための申請枠です。「通常類型」と「成長分野進出類型」の2種類の類型に分けられており、要件や補助利金の上限などが異なります。

通常類型

通常類型は、これまでにないような革新的な製品・サービスを開発するうえで、必要となる設備やシステムへの投資を支援するためのものです。

従業員規模別
補助金の上限

5人以下:750万円(850万円)

6~20人:1,000万円(1,250万円)

21人以上:1,250万円(2,250万円)

要件

【基本要件の達成】
 + 
【3~5年の事業計画期間内に、
新製品(サービス)の売上合計額が、
企業全体の売上高の10%以上を占める事業計画を策定する】

新型コロナ回復加速化特例

  • ①常時使用する従業員がいる

  • ②3ヶ月以上「地域別最低賃金+50円以内」で雇用する
    従業員の割合が
    全従業員数のうち10%以上を占めている
    (2022年10月~2023年8月の間)
  •  
  • ③該当する事業が完了した翌年度の3月末時点で、
  • 給与支給総額が1.5%以上増加していること
  •  
  • ④該当する事業が完了した翌年度の3月末時点で、
  • 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+50円以上を達成している

補助率

原則、中小企業:1/2 小規模・再生:2/3

新型コロナ回復加速化特例:2/3

対象となる経費

機械装置・システム構築費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、
外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費

(参照:ものづくり補助金事務局|18次公募要領 概要版

革新的な製品やサービスとは、単に新しいサービスというわけでなく、顧客に新しい価値を提供するようなものでなければなりません。「サービスを導入するだけの開発を伴わないもの」「すでに同業界で普及しているもの」は対象外となります。

【活用例】

最新の複合加工機を導入したことにより、
これまでになかった精密加工を実現でき、
国際基準に準拠するような部品を開発した。

成長分野進出類型

成長分野進出類型は、今後の成長が見込まれるDX・GXに関する取り組みを支援するためのものです。DX・GXの分野において、これまでになかった革新的な製品・サービスの開発に必要となる、設備やシステムへの投資に関して補助金が支給されます。 

従業員規模別
補助金の上限

5人以下:1,000万円(1,100万円)

6~20人:1,500万円(1,750万円)

21人以上:2,500万円(3,500万円)

要件

1

3~5年の事業計画期間で、企業全体の売上高のうち、

新製品(サービス)の売上合計が10%以上を占める事業計画を策定する

2

  • 【DX】DX事業にて革新的な製品・サービスの開発である
  • 【GX】GX事業にて「実行計画」にある14分野に掲げている課題の解決を
  • 目指した革新的な製品(サービス)の開発である

補助率

中小企業:1/2 
小規模・再生:2/3

対象となる経費

機械装置・システム構築費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、

外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費

(参照:ものづくり補助金事務局|18次公募要領 概要版

DXに資する製品・サービスとは、AIやloTといったデジタル技術を活用した、遠隔操作や自動制御などの機能を有するものです。対してGXでは、グリーン成長戦略の実行計画に定められた原子力産業や自動車・蓄電池産業などの14分野にて、課題解決を目的とするような新しい製品・サービスの開発が対象となります。

【活用例】

AI・センサーを用いた自律走行搬送ロボットの試作機を開発

3. グローバル枠

グローバル枠は、海外での事業展開のために必要な設備・システムへの投資を支援するための申請枠です。海外展開に利用する製品・サービスを国内で生産するにあたり、生産性向上を図るうえで必要となる設備やシステムに対して補助金が給付されます。

従業員規模別
補助金の上限

5人以下:3,000万円(3,100万円)

6~20人:3,000万円(3,250万円)

21人以上:3,000万円(4,000万円)

 

要件

【共通要件】

海外事業に関する実現可能性調査(※1)を実施していること

社内に海外事業に特化した専門の人材を有すること、
または海外事業に関係する外部専門家との連携をする

【以下から該当する事業別に定められた申請要件を達成】

1.海外への直接投資に関する事業

2.海外での市場開拓に関する事業

3.インバウンド対応に関する事業

4.海外企業との共同で行う事業

例)1の海外へ直接投資に関する事業の場合

国内にある事業所における一体的な機械装置の取得や、

応募申請の際に海外子会社について指定の内容がわかる資料の提出が必要

補助率

原則、中小企業:1/2
小規模:2/3

対象となる経費

機械装置・システム構築費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、
外注費、専門家経費、
クラウドサービス利用費、原材料費、海外旅費、
通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費

※1:海外事業を実現できるか判断するための調査(市場・現地規制・取引先の信用など)

(参照:ものづくり補助金事務局|18次公募要領 概要版

グローバル枠には、基本的な要件に加え、補助対象となる事業が4つに分けられています。申請時には、基本的な要件に加え、該当する事業に定められた要件を満たさなければなりません。

ただし、事業ごとに定められた要件は細かく規定されており、「機械装置の取得や指定の内容がわかる資料の作成」というようにやや複雑です。自社のみで対応が難しい場合には、専門家への相談を検討しましょう。

【活用例】

海外市場の獲得に向け、新たな製造機械の導入・新製品の開発をおこない、海外展示会に出展する。

ものづくり補助金の申請方法

ものづくり補助金とは?制度の概要や申請方法を分かりやすく解説_1

つづいて、ものづくり補助金の申請方法についてみていきましょう。申請時におさえておきたいポイントは、以下の3つです。

申請の流れ

ものづくり補助金の18次公募の申請は、大まかに以下のような流れで進みます。

ものづくり補助金の申請スケジュール

 0   事前準備

 1   公募開始

2024年 1/31(水) 公募要領 公表

 2   申請の受け付け

受付開始:2024年 3/11(月)

申請締切:3/27(水)

 3   審査(書面審査・口頭審査・審査委員会)

 4   補助金を交付する立候補者の決定

2024年6月下旬頃 予定

 5   交付申請・決定

 6   補助事業実施期間

   (事業実施・中間検査・実績の報告)

2024年12/10(火)まで

 7   確定検査 ※交付額が決定する

 8   補助金の請求

2025年 1/31(金)まで

 9   補助金の支払い

10  事業化状況の報告・知的財産権の報告

毎年4月

(参照:ものづくり補助金事務局|18次公募要領 概要版 2024年3月時点

 ものづくり補助金は、後払いで補助金が支給される仕組みです。事業契約書に沿って事業を実施し、かかった費用を申請することにより、補助金が支給されます。ただし、補助金の支給をうけるには、審査に通過しなければなりません。

審査では、3種類の審査が実施され、事業計画書をはじめとする提出書類や面談にもとづいて、交付の対象となるかを判断されます。なお、ものづくり補助金は、補助金の給付が終わったら終了となるわけではありません。

補助金の給付を受けたあとの5年間は、フォローアップが実施され、毎年4月に事業化状況の報告・知的財産権の報告をおこないます。

申請前の準備

事業の申請には、あらかじめ「gBizIDプライム・アカウント」の取得が必要です。gBizIDプライムをはじめとするGビズID は、デジタル庁が提供する法人・個人事業主向けの共通認証システム。IDを取得することで、さまざまな行政サービスへのログインが可能となります。IDの取得には、一定の期間を要するため早めに対応しておきましょう。

ちなみに、GビズIDには大きく2つのアカウントがあり、サービスによって必要なアカウントが異なります。

gBizIDプライム

  • 会社代表、個人事業主向け
  • 2つの申請方法から選べる(書類郵送orオンライン)
  • 行政サービス 無制限

gBizIDエントリー

  • 事業しているなら誰でも
  • 書類郵送は不要(即時発行)
  • 行政サービス 制限あり

(参照:gBIzID|デジタル庁

 ものづくり補助金で必要となるのは、「gBizIDプライム」アカウントです。

申請に必要な書類

申請に必要な書類は以下のとおりです。

提出必須

事業計画書

様式は自由だが、A4で10ページ程度で提出

(具体的取組内容、将来の展望、数値目標など)

補助経費に関する誓約書

補助金を補助事業計画書に記載した事業のために
使用する旨の誓約書

賃金引上げ計画の誓約書

直近の最低賃金と給与支給総額を明記するとともに、
それを引き上げる旨の誓約書

決算書等

直近2年間の貸借対照表・損益計算書など

従業員数の確認資料

法人の場合:法人事業概況説明書の写し

個人事業主の場合:所得税青色申告書の写し

該当する場合に提出

労働者名簿

応募申請時に従業員数が21名以上でありながら、

従業員数の確認資料は20名以下の場合に提出

「再生事業者」であることを証明する書類

再生事業者申請する場合

大幅な賃上げ計画書

「大幅な賃上げに係る補助上限額引き上げの特例」

を申請する場合

金融機関による確認書

金融機関より資金調達をおこなう場合

海外事業の準備状況を 示す書類

  • 海外子会社等の事業概要等
  • 海外市場調査報告書
  • インバウンド市場調査報告書
  • 共同研究契約書または業務提携契約書

最低賃金要件に関する 確認書

新型コロナ加速化特例に申請する場合

その他加点に必要な資料 (任意)

成長性加点・政策加点・災害等加点・賃上げ加点などを
受ける場合で、
添付資料が必要なとき

(参照:ものづくり補助金事務局|18次公募要領 概要版

 ものづくり補助金の申請では、1~5までの資料は提出が必須です。そのほかの書類については、自身が該当する場合に必要となります。

2024年(令和6年度)ものづくり補助金の変更点

ものづくり補助金とは?制度の概要や申請方法を分かりやすく解説_4

2024年におけるものづくり補助金では、以下のような変更点があります。

「大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例」が強化

「大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例」は、賃金の大幅な引き上げを実施する企業に対して、補助金の上限の引き上げが適用される制度です。これまでにも設けられていましたが、18次公募では内容が変更されています。18次公募における本特例の概要は、以下のとおりです。

 

【省力化(オーダーメイド)枠】

【製品・サービス高付加価値化枠】
【グローバル枠】

従業員規模別
補助金の引き上げ上限

5人以下

250万円

各申請枠・類型の上限から
最大100万円

6~20人

500万円

各申請枠・類型の上限から
最大250万円

21~50人

1,000万円

各申請枠・類型の上限から
最大1,000万円

51~99人

1,500万円

100人以上

2,000万円

要件

▼基本要件と以下の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定している

1.給与支給総額の年平均成長率を合計で6%以上の増加
2.事業場の最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準とし、
さらに毎年の事業場内最低賃金を年額+50円以上に増額する
3.応募時に上記「1・2」を達成するための、具体的かつ詳細な事業計画を提出する

(参照:ものづくり補助金事務局|18次公募要領 概要版

本特例を利用するには、定められた要件を満たす3~5年間の事業計画書の策定・提出が必要です。策定する事業計画書には、具体的な賃上げへの取り組みを記載する必要があります。

口頭審査の新設

補助金の申請が一定額以上の場合には、申請後の審査にて口頭審査も実施されます。16次審査まで口頭審査は、実施されませんでした。17次公募と18次公募では口頭審査が実施されており、ものづくり補助金事務局「18次締切公募要領」によると、口頭審査では事業の「適格性・革新性・優位性・実現可能性」を審査するとしています。

 口頭審査の概要については、以下のとおりです。

審査の方法

オンライン

(申請事業者自身1名のみが参加可能)

審査期間

2024.4.24(水)~2024.5.15(水) ※4.30~5.2を除く

(上記期間のうち、事務局が指定した日時に申請者へ連絡が入る)

口頭審査の内容

事業計画の適格性・革新性・優位性・実現可能性など

準備物

顔写真付きの身分証明書

安定したインターネットに接続されたPC

(参照:ものづくり補助金事務局|18次公募要領 概要版

口頭審査に参加できるのは、企業の代表者のみとなり、経営コンサルタントをはじめとする外部顧問の同席は一切認められません。専門家のサポートを受ける際は、質疑応答に困らないよう、代表者の方も事業計画の全容をしっかりと理解しておきましょう。

ものづくり補助金の審査に受かるには?

ものづくり補助金とは?制度の概要や申請方法を分かりやすく解説_3

ものづくり補助金の審査に受かりやすくするには、以下のポイントをおさえておきましょう。

適切な内容で事業計画書を策定する

ものづくり補助金の申請をおこなうときは、適切な内容で事業計画を策定することが大切です。ものづくり補助金の申請では3~5年間の事業計画書が必須となり、基本要件については必ず盛り込む必要があります。

【ものづくり補助金の基本要件】

  • 付加価値額…年平均成長率3%以上増加
  • 給与支給総額…年平均成長率1.5%以上増加
  • 事業場内最低賃金…地域別最低賃金+30円以上

ただし、単に数値を羅列するのではなく、達成するための根拠を示さなければなりません。
たとえば付加価値は、「営業利益・人件費・減価償却費」を足し合わせたものです。

事業計画書では、この付加価値額の増加予想が3%以上になるように計画し、根拠もあわせて記載します。また、給与支給総額は役員をはじめ、全従業員に支払う給与額です。給与・賞与・役員報酬などは含みますが、福利厚生費や退職金は除いて計算します。

なお、事業場内最低賃金については、はじめに都道府県ごとに定められた最低賃金の確認が必要です。事業計画では、事業所が所在する都道府県の最低賃金+30円以上の待遇を計画する必要があります。

審査項目となる「要件」を満たす

ものづくり補助金の審査に受かるには、審査項目となる要件を満たすことも重要です。ただし、要件には明確に定められていない部分もあるため、判断に困ることもあるでしょう。審査に受かる可能性を高めるには、要件の趣旨や要素に対して理解を深める必要があります。

たとえばものづくり補助金では、「革新的」という言葉が要件に盛り込まれていますが、具体的な範囲については明記されていません。しかし、補足事項として「開発を伴もなわない」「同業界で一般的に普及している」ものは対象外とされていることから、一般的に普及していない製品やサービスの開発が必要と考えられます。

ただ、革新的という言葉には幅広い程度が含まれるため、自社で判断が難しいケースもあるはずです。そういったときは、ものづくり補助金事務局が設置している相談窓口に問いあわせて確認するか、申請サポート会社への依頼を検討してみるとよいでしょう。

なお、18次公募では審査項目に関する情報が開示されており、以下の4つの観点で審査されます。

審査項目

具体的な内容

技術面

  • 取り組みの革新性
  • 課題や目標の明確さ
  • 課題の解決方法の優位性
  • 技術的な能力
  • 開発内容の妥当性
  • 労働生産性が向上するものであるか

事業化面

  • 事業の実施体制
  • 市場にニーズがあるか
  • 事業化までのスケジュールの妥当性
  • 補助事業としての費用対効果

政策面

  • 地域経済への波及効果があるか
  • 隙間市場において、圧倒的なシェアをとれる潜在性が見込めるか
  • 事業の連係性
  • イノベーション性
  • 事業環境の変化に対応する投資内容

大幅賃上げ

  • 賃上げ計画の内容とその根拠
  • 継続性・企業成長の見込み

(参照:ものづくり補助金事務局|18次公募要領 概要版

取り組む事業については、上記の審査項目を満たせるように計画しましょう。

加点項目に対応する

ものづくり補助金の審査には、以下にある4つの加点項目が定められています。

成長性加点

有効期間内の経営革新計画の承認を取得した事業者

政策加点

創業・第二創業後間もない事業者

(パートナーシップ構築宣言を行っている事業者など計9項目)

災害などの加点

有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者

賃上げ加点など

給与支給総額の増加、事業場内最低賃金の水準を満たす

被用者保険の適用拡大の対象であること

(参照:ものづくり補助金事務局|18次公募要領 概要版

加点項目の取り組みは任意ですが、審査で有利にはたらくと考えられるため、可能な限り活用しましょう。

ものづくり補助金申請における3つの注意点

ものづくり補助金とは?制度の概要や申請方法を分かりやすく解説_2

ものづくり補助金の制度を活用する際は、以下の3つの注意点を把握しておきましょう。

事務手続きが複雑で長くなりやすい

ものづくり補助金の申請では、さまざまな書類を準備する必要があり、手続きが煩雑になりがちです。また、事業計画書にも適切な内容を記述しなければならず、専門家のサポートが必要となるケースもあるでしょう。

専門家のサポートを受ける場合であっても、設備投資における費用を計算や給与のベースアップの計画など、さまざまなプロセスが必要となるため、それなりの時間と労力がかかります。

ギリギリのスケジュールで進めてしまうと修正や調整が必要となった際、適切な対処ができなかったり、期限に間に合わなかったりする可能性も考えられます。事業計画が不十分だと審査にマイナスな影響を及ぼす恐れもあるため、ゆとりをもったスケジュールで臨むことが大切です。

補助金は後払いになる

ものづくり補助金は、後払いであるため、すぐに補助金を受け取れない点に注意しましょう。補助金が支給されるのは、事業を実施して発生した費用を申告したあとです。設備の導入費用は一旦、自社で負担し、のちにその支払額の一部を補助金として受け取ります。

そのため設備の導入費が自己資金だけで賄えないときは、金融機関からの融資を検討しなければならない可能性も出てくるでしょう。融資を受ける場合には、返済で資金繰りが悪化しないかも考慮する必要があります。

事業が終了しても状況報告しなければならない

ものづくり補助金では、事業実施期間にフォローアップが実施されます。申請をおこなってから5年間が対象となり、毎年4月に事業化状況報告書と知的財産権報告書の提出が必要です。

もし、報告書に不備があったり、当初に提出した事業計画書の目標を達成できなかったりすると、補助金の返還を求められます。補助金を受け取ったあとは、引き続き事業計画書に沿った事業を実施し、必要書類は忘れずに提出しましょう。

なお、天災をはじめ、事業者に責任のない事由で目標を達成できなかったときは、返還規定が免除される場合があります。

ものづくり補助金の申請は申請代行会社を利用するのがおすすめ

ものづくり補助金は、新しい製品やサービスの開発に役立つ制度ですが、申請までの準備や申請方法が細かく規定されています。しかし、企業によってはメイン業務との同時進行が難しいという企業もあるでしょう。

自社のみでの対応が難しい場合は、申請代行会社を利用するのがおすすめです。申請代行会社では、事業計画の策定や申請に必要な書類の作成などのサポートが受けられます。

以下ではものづくり補助金の申請代行会社を8選紹介しているので、申請代行の利用を検討する際にぜひ参考にしてください。

関連記事:ものづくり補助金申請代行会社おすすめ8社を厳選紹介!

【まとめ】ものづくり補助金の制度で事業の促進を図りましょう

ものづくり補助金は、開発にかかる設備やシステム導入の補助が受けられる制度です。大きく3つの申請枠に分けられており、それぞれ定められた条件を満たすことで、補助金が給付されます。補助金を活用することで、新製品・サービスの開発を優位に進められるでしょう。

ただし、ものづくり補助金には審査があり、審査項目に沿った事業計画書の策定や事業の実施が求められます。自社のみでの対応が困難なときは、申請代行会社をはじめとする専門家への依頼を検討するのがおすすめです。

ものづくり補助金は新規事業展開の負担軽減を図れるので、自社で活用できそうな申請枠があれば、有効に活用しましょう。