ものづくり補助金の通常枠|整理された申請枠と新たな通常類型を解説!

通常枠

ものづくり補助金の通常枠は、さまざまな設備投資に利用できると聞いたが、最新の申請枠には見当たらない。通常枠は廃止されたのか?そんな疑問を持つ経営者の方に向け、整理統合されたものづくり補助金の申請枠を解説するとともに、通常枠に近い新たな申請枠、通常類型の概要を紹介していきます。

目次
  1. 1. ものづくり補助金は通常枠を整理 / 統合
  2. 2. ものづくり補助金の概要
    1. 2-1. ものづくり補助金を申請できる事業者の要件
    2. 2-2. ものづくり補助金の基本要件
    3. 2-3. 整理 / 統合されたものづくり補助金の申請枠
  3. 3. ものづくり補助金の通常類型とは(製品・サービス高付加価値化枠)
    1. 3-1. 通常類型と成長分野進出類型(DX・GX)の違い
    2. 3-2. 通常類型の補助上限額 / 補助率
    3. 3-3. 通常類型で補助率の優遇を受けられる特例
    4. 3-4. 通常類型の追加要件
  4. 4. ものづくり補助金通常類型の対象経費(設備投資)
  5. 5. 経費の対象にならない設備投資・システム投資
  6. 6. 【まとめ】ものづくり補助金の通常枠 / 通常類型を解説しました

ものづくり補助金は通常枠を整理 / 統合

期間を限定して公募される補助金 / 助成金は、内容が頻繁に改正 / 変更されることが特徴。正式には「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」という名称です。

2013年度に「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」としてスタートしたものづくり補助金は、内容を拡充しながら制度を継続してきました。それにともない、申請枠 / 類型の多様化が進み、どこかのタイミングで整理 / 統合する必要に迫られていたことも事実です。

こうした状況を踏まえ、2024年度のものづくり補助金では、通常枠 / デジタル枠等が廃止され「製品・サービス高付加価値化枠」へ統合。従来の通常枠は、製品・サービス高付加価値化枠の「通常類型」へ整理されました。本記事では「通常類型」を中心に解説を進めていきますが、まずは基本となる「ものづくり補助金の概要」をおさらいしておきましょう。

ものづくり補助金の概要

ものづくり補助金とは、革新的な製品 / サービスの開発や、業務プロセスの省力化による生産性向上に取り組む中小企業等の「設備投資」を支援する補助金制度のこと。当初は、設備投資をともなわない試作品開発事業も対象でしたが、現在のものづくり補助金は、設備投資・システム投資の必要な事業のみを補助対象としています。

つまり、ものづくり補助金を受給するには、対象事業者が申請枠それぞれの要件を満たす「設備投資に関する事業計画」を策定 / 申請し、採択される必要があります。

ものづくり補助金の詳細については以下の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:ものづくり補助金の内容を解説!対象となる事業者の要件と金額とは

ものづくり補助金を申請できる事業者の要件

ものづくり補助金の目的からお分かりのように、申請要件を満たす主な対象事業者は、中小企業者および小規模企業者・小規模事業者です。ここでいう中小企業者・小規模事業者とは、中小企業基本法で定義されている以下のような事業者を意味します。

中小企業者の定義

業種

資本金(以下)

常勤従業員数(以下)

製造業、建設業、運輸業、旅行業

3億円

300人

卸売業

1億円

100人

サービス業
(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)

5,000万円

100人

小売業

5,000万円

50人

ゴム製造業
(タイヤ / チューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く)

3億円

900人

ソフトウェア業、情報処理サービス業

3億円

300人

旅館業

5,000万円

200人

その他の業種

3億円

300人

小規模企業者・小規模事業者の定義

業種

常勤従業員数

製造業その他

20人以下の会社および個人事業主

商業・サービス業

5人以下の会社および個人事業主

サービス業のうち宿泊業・娯楽業

20人以下の会社および個人事業主

また、ものづくり補助金では、企業組合 / 商工組合などの組合・法人関連中小企業者、資本金 / 出資総額10億円未満の特定事業者の一部も対象事業者として認められます。

ものづくり補助金の基本要件

ものづくり補助金を申請する事業者は、策定する3〜5年の事業計画に、以下の基本要件すべてを盛り込まなければなりません。これは、どの申請枠を選択する場合でも同じです。

基本要件

概要

要件詳細

給与支給額の増加

全従業員および役員に支払った給与等。
福利厚生費、法定福利費、退職金は除く

事業計画期間に給与支給総額を
年平均成長率1.5%以上増加させる

最低賃金の引き上げ

補助事業を実施する事業場内で
もっとも低い賃金

事業場内最低賃金を
毎年「地域別最低賃金 + 30円」以上の水準にする

付加価値額の増加

付加価値額
= 営業利益 + 人件費 + 減価償却費

事業計画期間に事業者全体の付加価値額を
年平均成長率3%以上増加させる

整理 / 統合されたものづくり補助金の申請枠

従来のものづくり補助金は、通常枠を含む5つの申請枠を選択できましたが、改正後は3つの申請枠と2つの類型、合計4つに整理 / 統合されました。

ものづくり補助金の申請枠 / 類型

概要

省力化(オーダーメイド)枠

デジタル技術を活用したオーダーメイド設備の導入等で、
事業者の生産過程 / サービス提供方法の効率化・高度化を支援

製品・サービス高付加価値化枠

通常類型

革新的な製品・サービスを開発し、
顧客に新たな価値を提供する事業者の設備投資・システム投資を支援

成長分野進出類型
(DX・GX)

成長分野に特化した革新的製品・サービス開発を支援

グローバル枠

海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な
設備投資・システム投資を支援

なお、ものづくり補助金18次公募では、すべての申請枠 / 類型で申請できましたが、17次公募では省力化(オーダーメイド)枠のみの申請でした。公募ごとに内容が変更されることも少なくないため、最新情報を確認しておくことが重要です。

参考サイト:ものづくり補助金総合サイト

ものづくり補助金の通常類型とは(製品・サービス高付加価値化枠)

ものづくり補助金の概要を理解できたところで、従来の通常枠と共通点の多い「製品・サービス高付加価値化枠:通常類型」について簡単に解説していきましょう。

上述したように、通常類型は自社独自の革新的な製品・サービスを開発し、顧客に新たな価値を提供するための設備投資・システム投資を支援する申請枠のこと。そのため、試作品の開発のみなど、製品・サービスの開発を伴わない設備投資・システム投資はものづくり補助金の補助対象になりません。

また、同業他社で相当程度普及している製品・サービスの開発も、ものづくり補助金の対象外です。

通常類型と成長分野進出類型(DX・GX)の違い

それでは、通常類型と同じ製品・サービス高付加価値化枠に分類される「成長分野進出類型(DX・GX)」とは、なにが違うのでしょうか。類型の名称からもお分かりのように、DX・GX類型は、成長分野に特化した製品・サービス高付加価値化枠です。従来のデジタル枠 / グリーン枠をまとめた類型だと考えればいいでしょう。

具体的には、DXに資する革新的な製品・サービスの開発、グリーン成長戦略の課題解決に資する革新的な製品・サービスの開発が「DX・GX類型」に該当します。補助上限額 / 補助率が通常類型よりも優遇されていることもDX・GX類型の特徴です。

通常類型の補助上限額 / 補助率

ものづくり補助金の通常類型では、どのくらいの補助金を受給できるのか?気になる補助上限額 / 補助率は以下の通りです。

申請枠・類型

補助上限額(大幅賃上げの場合)

補助率

製品・サービス高付加価値化枠
(通常類型)

5人以下:750万円(850万円)

6〜20人:1,000万円(1,250万円)

21人以上:1,250万円(2,250万円)

中小企業:1/2

小規模・再生:2/3

新型コロナ回復加速特例:2/3

大幅賃上げとは、基本要件で3%以上が求められている「給与支給額の増加」を、事業計画内で6%以上に定める事業者が受給できる補助上限額のことです。要件を満たす事業者は、補助上限額100万円〜2,000万円が上乗せされる特例を受けられます。

通常類型で補助率の優遇を受けられる特例

ものづくり補助金の通常類型は、中小企業1/2、小規模企業者2/3の補助率ですが、要件を満たす中小企業であれば補助率2/3の優遇措置を受けられます。補助率優遇の対象になるのは「再生事業者」および「新型コロナ回復加速化特例」の2つ。以下の要件に当てはまる中小企業は、応募申請時に申告しましょう。

再生事業者の要件

新型コロナ回復加速化特例の要件

中小企業再生支援協議会等から支援を受け、
応募申請時において以下のいずれかに該当していること

・再生計画を「策定中」の者

・再生計画を「策定済」かつ、
応募締切日から遡って3年以内に再生計画等が成立した者

・常時使用する従業員がいること

・2022年10月から2023年8月までに、
3か月以上地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること

・補助事業を完了した事業年度の翌年度3月末時点において、
その時点での給与支払総額が1.5%以上増加目標を達成していること

・補助事業を完了した事業年度の翌年度3月末時点において、そ
の時点での事業場内最低賃金が地域別最低賃金+50円以上の水準を達成していること

通常類型の追加要件

通常類型でものづくり補助金を申請する場合、必須の基本要件に加え、以下の追加要件を満たした事業計画を策定しなければなりません。

  • 事業計画期間内に、新製品・サービスの売上高の合計が10%以上となる事業計画を策定
  • 事業資金を金融機関等から調達する場合、金融機関による事業計画確認書を提出

成長分野進出類型で申請する場合は、さらなる追加要件を満たす必要があることに注意しておきましょう。

ものづくり補助金通常類型の対象経費(設備投資)

ものづくり補助金の通常類型なら、革新的な製品・サービスの開発に幅広く利用できることは理解できた。では、実際にどのような費用がものづくり補助金の経費として認められるのか?知りたい方に向け、一覧表を用意しました。

補助対象経費

概要

備考

機械装置・システム構築費

機械装置・システム構築の
購入・製作・借用に要する経費

ものづくり補助金の必須経費。
税抜き単価50万円以上の設備投資が必須

専門家経費

事業実施のために依頼した専門家に支払われる経費

補助対象経費総額の1/2が上限

技術導入費

事業実施に必要な知的財産権等の導入に要する経費

補助対象経費総額の1/3が上限

運搬費

運搬等に要する経費

機械装置の運搬料は機械装置費に含めること

クラウドサービス利用料

クラウドサービスの利用に関する経費

補助事業での利用に限る。
補助事業期間中の経費のみ

原材料費

試作品の開発に必要な
原材料・副資材購入に要する経費

補助事業終了時の未使用残存品は経費対象外

外注費

開発に必要な加工・設計・デザイン・検査などの
一部を外注する場合の経費

補助対象経費総額の1/2が上限

知的財産権等関連経費

知的財産権等の取得に要する弁護士、
外国特許出願の翻訳などに要する経費

補助対象経費総額の1/3が上限

海外旅費

海外事業の拡大・強化を目的にした
必要不可欠な渡航・宿泊に要する経費

補助対象経費総額の1/5が上限

※グローバル枠(輸出)のみ

通訳・翻訳費

補助事業遂行に必要な通訳・翻訳の依頼に要する経費

補助対象経費総額の1/5が上限

※グローバル枠(輸出)のみ

広告宣伝・販売促進費

補助事業で開発する製品・サービスの
広告宣伝・販売促進に要する経費

補助対象経費総額の1/5が上限

※グローバル枠(輸出)のみ

経費の対象にならない設備投資・システム投資

専門家経費、外注費、クラウドサービス料金など、ものづくり補助金ではさまざまな費用が経費として認められますが、経費の対象外となる費用もあります。たとえば、事業場を持つ事業者を対象とするものづくり補助金では、不動産や建物の取得、設置場所の整備 / 基礎工事の費用は経費として認められません。

また、PCや複合機、自動車など、補助事業以外にも汎用的に利用できるものも、ものづくり補助金の経費対象外です。構築するシステムに関連するPC端末などであっても、補助事業にのみ利用することを証明できなければなりません。

【まとめ】ものづくり補助金の通常枠 / 通常類型を解説しました

ものづくり補助金の通常枠は、さまざまな設備投資に利用できると聞いたが、最新の申請枠には見当たらない。通常枠は廃止されたのか?そんな疑問を持つ経営者の方に向け、整理統合されたものづくり補助金の申請枠を解説するとともに、通常枠に近い新たな申請枠、通常類型の概要を紹介してきました。