ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠とは?基本要件や補助率・上限などを解説

省力化枠(オーダーメイド)

ものづくり補助金の中でも「省力化(オーダーメイド)枠」の申請を考えているものの、自社が要件に当てはまっているかわからない方もいるかと思います。そこで本記事では、ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠の基本要件や対象者、補助率・上限などを解説。採択率を高めるポイントや活用事例もご紹介します。

目次
  1. 1. ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠とは?
  2. 2. ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠の対象者
    1. 2-1. 中小企業者
    2. 2-2. 小規模事業者
    3. 2-3. その他
  3. 3. ものづくり補助金の基本要件
    1. 3-1. 【要件1】給与支払総額の増加
    2. 3-2. 【要件2】最低賃金の引き上げ
    3. 3-3. 【要件3】付加価値額の増加
  4. 4. 省力化(オーダーメイド)枠の要件
  5. 5. ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠の補助金額・補助率
    1. 5-1. 対象となる経費
    2. 5-2. 大規模な賃上げに取り組むと上限額が拡充される
  6. 6. ものづくり補助金のの活用事例
    1. 6-1. 株式会社エース・クリーン
    2. 6-2. ヤスダ自動車板金塗装
  7. 7. ものづくり補助金の申請方法
  8. 8. 省力化(オーダーメイド)枠の採択率を高めるポイント
    1. 8-1. 製品やサービスの革新性を意識する
    2. 8-2. 課題や目標の達成度合いを明確化する
    3. 8-3. スケジュールや財務状況の透明性を示す
  9. 9. ものづくり補助金第18次公募について
  10. 10. 【まとめ】ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠の概要を紹介しました

ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠とは?

ものづくり補助金とは、中小企業による新たな製品・サービス開発や生産プロセスの効率化に必要な設備投資を支援する補助金です。2024年4月時点では以下の3つの枠が設けられています。

  • 省力化(オーダーメイド)枠
  • 製品・サービス高付加価値化枠
  • グローバル枠

省力化枠は、人材不足解消を目的に、デジタル技術を用いた設備(オーダーメイド設備)の導入費用を支援する枠です。例として、生産プロセス改善のためのAIロボットの導入やクラウドサービスの契約などがあげられます。

ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠の対象者

ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠の対象者は次のとおりです。

中小企業者

まず対象となるのが、中小企業や組合をはじめとする「中小企業者」です。中小企業者への対象基準は組織形態や資本金、常勤従業員数などによって異なります。

中小企業者(組合関連以外)の対象基準

業種

資本金

常勤従業員数

製造・建築・運輸・旅行業

3億円以下

300人以下

ソフトウェアまたは

情報処理サービス業

3億円以下

300人以下

サービス業

(ソフトウェア、情報処理サービス、旅館業を除く)

5,000万円以下

100人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

小売業

5,000万円以下

50人以下

ゴム製品製造業

3億円以下

900人以下

旅館業

3億円以下

300人以下

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)

中小企業者(組合・法人関連)の対象基準

上記の企業以外でも、次に該当する組合や法人は補助対象となります。

  • 企業組合
  • 協業組合
  • 事業協同組合
  • 商工組合
  • 商店街振興組合
  • 水産加工業協同組合
  • 酒造組合
  • 内航海運組合など

財団法人や社団法人、医療法人など法人格のない任意団体は対象とならないので注意しましょう。

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)

小規模事業者

従業員数が少ない企業や個人事業主の「小規模事業者」も対象となります。基準となる業種や常勤従業員数は以下のとおりです。

業種

常勤従業員数

製造業(その他)

20人以下の企業および個人事業主

商業・サービス業

5人以下の企業および個人事業主

宿泊業・娯楽業

20人以下の企業および個人事業主

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)

その他

お伝えした中小企業者や小規模事業者だけでなく、次に該当する事業者も補助の対象となります。

事業者

要件の例

特定事業者の一部

300〜500人以下(業種によって異なる)の

従業員数で資本金が10億円以下の企業または個人

特定非営利活動法人

従業員数300人以下で、

中小企業の振興や発展に直結する活動を行う法人

社会福祉法人

従業員数300人以下で、

規定認可を受け設立されている法人

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)

ものづくり補助金の基本要件

ものづくり補助金には3つの基本要件があり、以下すべてを満たす事業計画を策定する必要があります。

【要件1】給与支払総額の増加

1つ目の要件は「給与支払総額の増加」です。年平均1.5%以上の増加が求められます。

  • 給与支給総額とは、全従業員(非常勤を含む)及び役員に支払った給与等
    (給料、賃金、賞与及び役員報酬等は含み、福利厚生費、法定福利費や退職金は除く)をいいます。
  • 事業計画期間において、給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加させること。

引用:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)

【要件2】最低賃金の引き上げ

2つ目の要件は「最低賃金の引き上げ」です。最低賃金30円以上の引き上げが求められます。

  • 事業計画期間において、事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、
    毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準とすること。

引用:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)

【要件3】付加価値額の増加

3つ目の要件は「付加価値額の増加」です。年平均3%以上の増加が求められます。

  • 付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものをいいます。
  • 事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年平均成長率3%以上増加させること。

引用:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)

省力化(オーダーメイド)枠の要件

上記の基本要件に加えて、省力化(オーダーメイド)枠に限定された要件を満たす必要があります。要件の内容は以下のとおりです。

(1) 3~5年の事業計画期間内に、補助事業において、設備投資前と比較して労働生産性が

 2倍以上となる事業計画を策定すること

 

(2) 3~5年の事業計画期間内に、投資回収可能な事業計画を策定すること

※ 投資回収年数は「投資額/(削減工数×人件費単価)」とする。

 

(3) 外部SIerを活用する場合、3~5年の事業計画期間内における保守・メンテナンス契約を

中小企業等とSIer間で締結することとし

SIerは必要な保守・メンテナンス体制を整備すること 

 

(4)本事業に係る資金について金融機関(ファンド等を含む。)からの調達を予定している場合は、

金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出いただく必要があります。

金融機関は、事業所の所在地域にある必要はございませんので、任意の機関を選定してください。 

引用:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)

要件をまとめると、期間内に「生産性が2倍以上になるか」「投資回収の現実性はあるか」「Slerの体制は十分か」「資金調達の確認書は揃っているか」の4つがポイントとなります。

ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠の補助金額・補助率

ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠の補助金額・補助率は以下のとおりです。

従業員数

補助上限額

※()は大規模賃上げを

行う場合の上限額

補助率

5人以下

750万円(1,000万円)

中小企業:1/2

小規模事業者:2/3

 

※補助金額1,500万円までは1/2または2/3、

1,500万円を超えた分は1/3

6〜20人

1,500万円(2,000万円)

21〜50人

3,000万円(4,000万円)

51〜99人

5,000万円(6,500万円)

100人以上

8,000万円(1億円)

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)

対象となる経費

省力化(オーダーメイド)枠では、「デジタル技術の活用」を目的としていれば、さまざまな経費が対象となります。対象経費は以下のとおりです。

経費の種類

内容

機械装置・システム構築費

機械や装置、工具などの購入・借用に関する費用

専用ソフトウェアの購入・借用に関する費用

改良や修繕などに要する費用

運搬費

運搬、宅配、郵送に関する費用

技術導入費

知的財産権を導入する際に必要な費用

知的財産権等関連経費

知的財産権取得時の手続き代行費用(弁理士などへの)

外注費

製品・サービス開発における加工や設計、

検査プロセスを外部に委託する場合の費用

専門家経費

補助事業を遂行するために専門家に依頼する費用

クラウドサービス利用費

クラウドサービス利用に要する費用

原材料費

試作品の開発にかかる材料費

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)

大規模な賃上げに取り組むと上限額が拡充される

対象企業のうち大規模な賃上げを行う場合は、特例として上限額が拡充されます。
省力化(オーダーメイド)枠における従業員数や拡充金額は以下のとおりです。

従業員数

拡充金額

5人以下

申請枠の上限から最大250万円

6〜20人

申請枠の上限から最大500万円

21〜50人

申請枠の上限から最大1,000万円

51〜99人

申請枠の上限から最大1,500万円

100人以上

申請枠の上限から最大2,000万円

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)

ものづくり補助金のの活用事例

続いて、ものづくり補助金を活用し、事業の成長や改善がなされた企業事例をご紹介します。

株式会社エース・クリーン

ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠とは?基本要件や補助率・上限などを解説_2

画像引用:株式会社エース・クリーン

株式会社エース・クリーンは、北海道北見市で一般および産業廃棄物の収集や中間処理、排水処理施設の清掃事業などを行う会社です。同社では2014年から「木質飼料の開発・製造」を行っているが、コスト面のハードルの高さから難航していたといいます。

さらなる生産拡大を狙うために「ものづくり補助金」を活用。原材料加工を目的にスキットフォーク付きホイールローダーを導入したことで、原木の運搬や粉砕、保管の効率化を図れるようになったそうです。結果的に会社の売上は120%増加し、従業員も5名増員できたといいます。

ヤスダ自動車板金塗装

ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠とは?基本要件や補助率・上限などを解説_3

画像引用:ヤスダ自動車板金塗装

ヤスダ自動車板金塗装は、鳥取県にて自動車の整備や修理、板金塗装を行う会社です。自動車業界のハイブリッド化によって板金塗装に求められる技術力が高度化しており、それに対応するため「ものづくり補助金」を利用したといいます。

同社は補助金で「高度スポット溶接機」を導入し、ハイブリッド車にも問題なく対応できるように。近隣の同業者や自動車販売店からの受注が増えたり、外注機会が減ったりと、時間・コストの大幅なコストダウンを実現できたそうです。

ものづくり補助金の申請方法

ものづくり補助金の申請は電子システム上で行います。手順は以下のとおりです。

  • GビズIDプライムを取得する
  • 電子申請システムにログインする
  • 申請内容を入力する
  • 申請内容を送信する

ものづくり補助金は経済産業省が管轄する補助金なので、各種行政サービスにログインするための「GビズIDプライムの取得が必須です。GビズIDプライムを取得後、専用の電子申請システムにログインし、申請枠を選択、必要項目の入力を進めます。

電子申請の手順については以下の記事で詳しく解説しているので、ご参考ください。

【関連記事】ものづくり補助金を電子申請する手順|必要な書類や注意ポイントを紹介

省力化(オーダーメイド)枠の採択率を高めるポイント

ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠とは?基本要件や補助率・上限などを解説_1

ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠の採択率を高めるポイントを解説します。

製品やサービスの革新性を意識する

製品やサービスの革新性は、ものづくり補助金全体における重要な審査項目であり、設備導入による革新的な開発が求められます。すでに世の中に出回っている設備のみで簡単に達成できるものは、「技術革新性が低い」とみなされ、評価も下がってしまうでしょう。

課題や目標の達成度合いを明確化する

何が課題となっていて、補助事業によって達成された成果をどのように測るのか、を明確にすることが大切です。課題解決の方法を示す場合も、明確さだけでなく、「妥当かつ優位性があるか」を示す必要があります。

スケジュールや財務状況の透明性を示す

事業化のスケジュールが具体的かどうか、会社の財務状況が健全かどうかなど、補助事業や企業自体が期待できるものかを示すことも大切です。そもそも製品やサービスの市場性があるのか、もしあるのなら市場ニーズを深く分析できているかも見られます。

ものづくり補助金第18次公募について

2024年4月現在、ものづくり補助金の公募は行われていません。直近では「第18次公募」 が行われましたが、3月27日にて締切を迎えています。2024年内に新たな公募がされる可能性は十分にあるので、応募を検討されている方は、定期的に公式ページをチェックしておきましょう。

参考:公募要領|ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト

【まとめ】ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠の概要を紹介しました

ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠は、人材不足解消を目的に、デジタル技術を用いたオーダーメイド設備の購入や借用を補助する枠です。基本要件に加えて「生産性が2倍以上になるか」「投資回収の現実性はあるか」など、同枠ならではの要件もあります。審査に通過するためにも、補助金の全体像を押さえたうえで、解像度の高い事業計画書を作りましょう。