ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠をわかりやすく解説

製品。サービス高付加価値化枠

製品・サービス高付加価値化枠は、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)における申請枠のひとつです。

具体的な制度の詳細は、よく理解できていないという方もいるでしょう。本記事では、概要や流れ、必要な書類などについて、わかりやすく解説します。

目次
  1. 1. ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠とは
  2. 2. ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠の類型と特例
    1. 2-1. 通常類型
    2. 2-2. 成長分野進出類型
    3. 2-3. 大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例
  3. 3. ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠の対象となる経費
  4. 4. ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠を利用する際の流れ
    1. 4-1. 基本となるスケジュール
    2. 4-2. 申請手続き
    3. 4-3. 審査
  5. 5. ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠で必要な書類
  6. 6. ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠を利用する際の注意点
  7. 7. ものづくり補助金の申請は申請代行会社を利用するのがおすすめ
  8. 8. 【まとめ】ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠を紹介しました

ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠とは

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)の製品・サービス高付加価値化枠は、これまでにない革新的な製品やサービスを開発するにあたり、必要な設備やシステムへの投資を支援する補助金です。中小企業や小規模企業を対象としており、定められた要件を満たし、審査に通過することで補助金が給付されます。

 ものづくり補助金には、以下の3つの申請枠に分けられ、利用する際は該当する申請枠への応募が必要です。

  • 省力化(オーダーメイド)枠
  • 製品・サービス高付加価値化枠
  • グローバル枠

「製品・サービス高付加価値化枠」は、革新的な製品やサービスの開発、および今後成長が見込まれるDX・GX(※1)分野などの製品開発を支援するものです。補助金の活用には要件があり、利用するにはすべての要件を満たす必要があります。

なお、ものづくり補助金には、以下にある3つの基本要件が定められており、どの申請枠でも条件を満たす事業計画書の策定が必要です。

ものづくり補助金の基本要件

・事業全体の付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)が年平均成長率3%以上増加している

・給与支払総額が年平均成長率1.5%以上増加している

・事業場の最低賃金が「地域別最低賃金+30円」の水準になっている

(参照:ものづくり・商業・サービス 生産性向上促進事業|ものづくり補助金

申請時には、上記の要件すべてを満たす形で、3~5年間の事業計画書の策定・提出が必要です。

(※1)

DX:デジタルトランスフォーメーションの略。

デジタル技術を活用してビジネスを変革していく取り組みのこと。

 

GX:グリーントランスフォーメーションの略。

エネルギー転換による変革を指すもので、主に環境問題への取り組みのこと。

ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠の類型と特例

ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠では、さらに以下の2つに区分されています。

類型

目的

補助金の上限

通常類型

顧客にとってより良い製品・サービスの開発・取り組みで、

必要な設備やシステムの導入を支援する

750~1,250万円

成長分野進出類型

DX・GXの分野において、革新的な製品・サービスの開発や
取り組みに
必要な設備やシステムの導入を支援する

1,000~2,500万円

(参照:ものづくり・商業・サービス 生産性向上促進事業|ものづくり補助金

ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠を利用する際には、上記のいずれかの類型に該当する必要があります。

なお、17次と18次公募からは口頭審査の導入が実施されています。加えて、「大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例」に関しては、18次公募でさらに内容が拡充されました。

通常類型

通常類型の基本的な概要については、以下のとおりです。

通常類型の概要

対象

革新的な製品・サービスの開発や取り組みにおいて、必要な設備やシステムの導入

補助金の上限

従業員5人以下の事業所

750万円

従業員5~20人の事業所

1,000万円

従業員21人以上の事業所

1,250万円

応募要件

ものづくり補助金の基本要件に加え、新製品・サービスの売上高の合計が

企業全体における売上高の10%以上となる事業計画書の策定(3~5年)

補助率

中小企業:1/2

小規模・再生:2/3

新型コロナ回復加速化特例:2/3

(参照:ものづくり・商業・サービス 生産性向上促進事業|ものづくり補助金

 ここでいう「革新的な製品・サービスの開発」とは、顧客に新たな価値を提供する製品やサービスを新たに創り出すことです単にシステムや設備を導入するのみで、開発を伴わないものは該当しません。また、申請企業の同業界において、すでに普及している製品・サービスの開発も補助金の対象にはならないとされています。

なお、通常類型にて、以下の要件を満たすなら、新型コロナ回復加速化特例での申請も可能です。

【新型コロナ回復加速化特例の要件】

  • 常時使用する従業員がいる
  • 2022年10月~2023年8月の期間において3ヶ月以上、「地域別最低賃金+50円以内」で雇用している従業員が全従業員数の10%を超えている
  • 補助金事業が完了した年度の翌年度3月末の時点で、基本要件である給与支払総額が1.5%以上の増加を達成している
  • 補助金事業が完了した年度の翌年度3月末の時点で、事業場の最低賃金が「地域別最低賃金+50円以上」の水準を達成している

(参照:ものづくり・商業・サービス 生産性向上促進事業|ものづくり補助金

新型コロナ回復加速化特例が認められると、補助率が2/3となります。

成長分野進出類型

つづいて、成長分野進出類型の基本的な概要です。

成長分野進出類型の概要

対象

今後成長が見込まれるDX・GXの分野において、
革新的な製品・サービスの開発や取り組みに
必要な設備やシステムの導入

補助金の上限

従業員5人以下の事業所

1,000万円

従業員5~20人の事業所

1,500万円

従業員21人以上の事業所

2,500万円

応募要件

1.全体で共通の基本要件に加え、新製品・サービスの売上高の合計が、
企業全体における売上高の10%以上となる事業計画書の策定(3~5年)

2. DXまたはGXで
それぞれに定められた
要件を満たすこと

DX

DXにおける革新的な製品またはサービスである

GX

令和3年6月に策定された「2050年カーボンニュートラルに伴う
グリーン成長戦略」の14分野に掲げられた
課題の
解決を目的とするための製品・サービスの開発である

補助率

中小企業:2/3

(参照:ものづくり・商業・サービス 生産性向上促進事業|ものづくり補助金

成長分野進出類型の応募要件は、基本要件に加え、GX・GXそれぞれで設定された要件も満たすことが必要です。

なお、DXではAIやIoTを活用した遠隔操作や自動制御の機能を有したものなどが対象となります。一方のGXの場合は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」で定められた、ライフスタイル関連産業や航空機産業などの14分野での課題を解決できるような製品・サービスの開発が必要です。

大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例

ものづくり補助金では、「大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例」が設けられています。

企業の従業員規模

上限の引き上げ額

従業員5人以下の事業所

類型ごとに定められた上限から最大+100万円

従業員6~20人の事業所

類型ごとに定められた上限から最大+250万円

従業員21人以上の事業所

類型ごとに定められた上限から最大+1,000万円

(参照:ものづくり・商業・サービス 生産性向上促進事業|ものづくり補助金

この特例を利用すれば、上記のように補助金の上限が引き上げられます。ただし、特例を利用するためには、以下の要件を満たした、3~5年間の事業計画書を策定しなければなりません。

【大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例の要件】

  1. 給与支給総額:給与支払総額の年平均成長率が合計で6%以上の増加
  2. 事業所内の最低賃金:事業所の最低賃金が地域別最低賃金+50円以上の水準であることに加え、毎年事業所の最低賃金を年額+50円以上増額する
  3. 事業計画の提出:1と2の具体的かつ詳細な事業計画書を応募時に提出する

(参照:ものづくり・商業・サービス 生産性向上促進事業|ものづくり補助金

ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠の対象となる経費

ものづくり補助金の対象となる経費は、以下にある11種類です。

対象経費

概要

機械装置やシステム構築に関する費用

  • 機械、装置、工具の購入や制作などに関する費用
  • 専用ソフトウェアや情報システムの購入・構築・借用に関する費用
  • 改良や改修、備え付けに関する費用

運搬費

運搬や宅配、郵送などで発生した費用

知的財産権の技術導入にかかった費用

知的財産権などの導入に関して発生した費用

知的財産権の取得に関する費用

特許権の知的財産権を取得する際、
弁護士を利用したときの依頼料(手続き代行費など)

外注費

製品・サービスの開発の一部を
外注した際に発生する費用

専門家への依頼料

製品・サービスの開発にて
専門家へ依頼した場合に発生する費用

クラウドサービスの利用費

製品・サービスの開発で、
クラウドサービスを利用した際に発生する費用

原材料費

開発に必要となる材料に関する費用

グローバル枠のみ

旅費(海外)

製品・サービスの開発で、
必要な海外渡航や宿泊に関する費用

通訳・翻訳にかかった費用

製品・サービスの開発で、必要な
通訳・翻訳を依頼したときに発生する費用

広告宣伝費・販売促進費

海外展開に必要な広告・展示会出展
・ブランディング・プロモーションで発生する費用

(参照:ものづくり・商業・サービス 生産性向上促進事業|ものづくり補助金

ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠を利用する際の流れ

ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠をわかりやすく解説_1

つづいて、ものづくり補助金を利用する際の流れについてみていきましょう。ものづくり補助金を利用するうえで、おさえておきたいポイントは以下の3点です。

基本となるスケジュール

以下は、ものづくり補助金の18次公募の基本的なスケジュールです。

 1. 事前準備
 2. 公募開始
 3. 申請受付
 4. 審査
 5. 補助金の交付候補者の決定
 6. 交付申請と決定
 7. 補助事業の実施(計画書に沿った事業の実施・中間検査・実績報告)
 8. 交付額の決定
 9. 補助金の請求
10.補助金の支払い
11.事業化状況報告・知的財産権報告

(参照:ものづくり・商業・サービス 生産性向上促進事業|ものづくり補助金

2024年3月現在の18次公募では、申込と審査を経て2024年6月中旬ごろに、補助金の交付候補者が決定される予定です。交付が正式に決定したあとは、計画書に沿って事業を実施します。

事業の実施期間中には、中間検査がおこなわれ、企業は実績報告をしなければなりません。
実績報告の期限は、2024年12月10日までです。実績の報告後、確定検査が実施され、交付額が決定されます。交付額が決定したあと、企業側は2025年1月25日までに補助金の請求をすることで、支払いがおこなわれます。

なお、3~5年間の事業計画期間中は、毎年4月に事業化状況報告書と知的財産権報告書の提出が必要です。

申請手続き

ものづくり補助金の申請は、電子申請システムからのみおこなえます。申請スケジュールの詳細については、以下のとおりです。

  • 電子申請受付開始:2024年3月11日17時から
  • 申請締め切り:2024年3月27日17時まで

ものづくり補助金の申請を申請する際は、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。IDの取得には、一定の時間を要するとされているため、早めに手続きをしておく必要があります。

審査

ものづくり補助金では、以下にある3種類の審査が実施されます。

  • 口頭審査
  • 書面審査
  • 審査委員会

中小企業庁が公開している公募要領概要版「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業」によると、審査項目は以下にある4項目です。

審査項目

具体的な内容

技術面

  • 取り組みの革新性
  • 課題や目標が明確であるか
  • 課題の解決方法の優位性
  • 技術的な能力
  • 開発内容は妥当であるか
  • 労働生産性が向上するか

事業化面

  • 事業を実施する際の体制
  • 市場にニーズがあるか
  • 事業化までのスケジュールは妥当か
  • 補助事業としての費用対効果

政策面

  • 地域経済への波及効果があるか
  • 隙間市場において圧倒的なシェアをとる潜在性があるか
  • 事業の連係性があるか
  • イノベーション性
  • 事業環境の変化に対応する投資内容

大幅賃上げ

(大幅賃上げ特例を申請する事業者のみ)

  • 賃上げ計画の内容とその根拠
  • 継続性・企業成長の見込み

(参照:ものづくり・商業・サービス 生産性向上促進事業|ものづくり補助金

審査では、「成長性加点・政策加点・災害等加点・賃上げ加点」という、4つの加点項目が定められています。対象となる要件を満たしていれば、審査で有利にはたらく可能性があります。

なお、口頭審査は、16次公募までにはなかった取り組みです。18次公募では、補助金の申請額が一定規模以上の事業者を対象に、オンラインにて実施されます。頭審査は申請企業の代表者1名のみが参加する形となり、事業計画書の策定支援者や経営コンサルタントをはじめとする、外部顧問の同席は認められません。

口頭審査では、事業計画の適格性・革新性・優位性・実現可能性を審査するとされています。

ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠で必要な書類

ものづくり補助金の申請に必要な書類は、以下のとおりです。

提出が必須な書類

事業計画書

補助経費に関する誓約書

賃上げ計画の誓約書

決算書

従業員数を確認できる書類

該当する場合にのみ、
提出が必要となる書類

労働者名簿
(応募時の従業員数が21名以上でありながら、
 従業員数を確認できる書類が20名以下である場合)

金融機関による確認書
(製品・サービスの開発において、
 金融機関から資金調達を実施する場合)

再生事業者であることを証明する書類
(申請者が再生事業者である場合)

大幅な賃上げに関する計画書
(大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例に申請する場合)

海外事業を準備していることが分かる書類
(海外展開をしているまたは、準備している場合。
 海外子会社の事業概要や海外市場調査報告書などが該当)

最低賃金の要件に関する書類
(新型コロナ回復加速化特例に申請する場合)

加点に必要となるその他の書類
(成長性加点や政策加点などを受ける場合で、添付資料が必要となるとき)

(参照:ものづくり・商業・サービス 生産性向上促進事業|ものづくり補助金

申請する類型や特例によって、提出書類は異なるため、間違いがないようにしっかりと確認しておきましょう。企業の基本情報については、電子システムの入力欄に直接入力します。

ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠を利用する際の注意点

ものづくり補助金には、返還規定が定められており、要件を満たしていない場合や事業計画の目標が未達成であるときには、補助金を返還しなければなりません。返還規定は状況に応じて定められており、基本要件を満たしてない場合の規定は以下のとおりです。

【基本要件を満たしていない場合の返還規定】

返還対象となる事由

返還に関する事項

申請の時点で
賃上げ計画書を策定していなかったことが発覚した

全額返還

事業計画の終了時点で、
給与支払総額が要件に満たなかった

「残存簿価×補助金額÷実際の購入金額」で
算出した金額を返還

事業計画期間中の毎年3月末時点において、
事業所内の最低賃金が要件に満たなかった

「補助金額÷計画年数」で
算出した金額を返還

(参照:ものづくり・商業・サービス 生産性向上促進事業|ものづくり補助金

要件を満たしていない場合、基本的には返還が必要です。しかし、天災などの事業者に責任のない事由で達成できなかったと認められるときは、返還が免除される場合があります。

ものづくり補助金の申請は申請代行会社を利用するのがおすすめ

ものづくり補助金は、新規事業展開における支払いの負担の軽減に役立つものですが、事業計画書の策定や必要書類の提出など、手続きがやや煩雑です。たとえば対象となる経費も明確でない部分があり、自社のみでは判断が難しいこともあるでしょう。

自社のみで申請が困難なときは、申請代行会社の活用がおすすめです。ものづくり補助金をはじめ、補助金申請のプロが手続きや書類策定をサポートしてくれます。

なお、以下ではものづくり補助金の申請代行会社を8選紹介しているので、申請代行の利用を検討する際にぜひ参考にしてください。

関連記事:ものづくり補助金申請代行会社おすすめ8社を厳選紹介!

【まとめ】ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠を紹介しました

本記事では、ものづくり補助金の「製品・サービス高付加価値化枠」について、解説しました。「製品・サービス高付加価値化枠」は、これまでにない革新的な製品やサービスの開発を支援するものです。補助金をうまく活用することで、負担を軽減しつつ、製品やサービスの開発を実施できます。

ただし、補助金を利用するには、定められた要件を満たし、審査に通過しなければなりません。加えて事業計画書をはじめとする書類の策定・提出を求められるため、ゆとりをもって準備しましょう。もしも自社のみでの対応が難しいときは、申請サポート会社への依頼もおすすめです。