ものづくり補助金のグローバル枠とは?制度や申請の流れなどを紹介

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海外に向けた事業を行うことになり、補助金の利用を考えている方もいるのではないでしょうか?

本記事では、ものづくり補助金のグローバル枠の制度や申請の流れなどを紹介します。他社の活用事例も紹介するので、利用を検討する際の参考にしてみてください。

目次
  1. 1. ものづくり補助金のグローバル枠とは
    1. 1-1. 類型
    2. 1-2. 基本要件
    3. 1-3. 類型別の要件
    4. 1-4. 対象事業者
    5. 1-5. 補助金額・補助率
    6. 1-6. 大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例
    7. 1-7. 補助対象の経費
    8. 1-8. 補助対象外の経費
    9. 1-9. スケジュール
  2. 2. ものづくり補助金のグローバル枠の採択結果
  3. 3. ものづくり補助金のグローバル枠の申請から完了までの流れ
    1. 3-1. 必要な書類を用意する
    2. 3-2. 申請手続きをする
    3. 3-3. 補助事業を実施する
    4. 3-4. 実績報告をする
    5. 3-5. 補助金を請求する
  4. 4. ものづくり補助金のグローバル枠の採択率を高めるポイント
    1. 4-1. 加点項目を意識する
    2. 4-2. 第三者目線で書類を準備する
  5. 5. ものづくり補助金のグローバル枠の活用事例
  6. 6. ものづくり補助金のグローバル枠がおすすめの事業者
  7. 7. 【まとめ】ものづくり補助金のグローバル枠を紹介しました

ものづくり補助金のグローバル枠とは

ものづくり補助金のグローバル枠は、海外事業を実施して、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備・システム投資等を支援する制度です。

本見出しについては、以下の資料を参考にしています。

出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 18次公募要領 概要版
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)

類型

ものづくり補助金のグローバル枠には、以下のような種類があります。

  • 海外への直接投資に関する事業
  • 海外市場開拓(輸出)に関する事業
  • インバウンド対応に関する事業
  • 海外企業との共同で行う事業

「海外への直接投資に関する事業」を行う際に、海外子会社または海外支店が補助事業実施主体となる場合は、日本国内の本社に対して補助対象事業の申請要件が適用されます。

基本要件

ものづくり補助金はグローバル枠に限らず、以下の基本要件を満たした事業者が補助の対象です。

  • 付加価値額(企業が生産活動で産出した価値を数値で表したもの)の年平均成長率+3%増加
  • 給与支給総額の年平均成長率+1.5%以上増加
  • 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上

上記3つの要件を全て満たす3〜5年の事業計画書の作成・実行をすることで、補助金を受け取れます。

また、グローバル枠では全ての類型に共通する以下の要件を満たす必要もあります。

  • 海外事業に関する実現可能性調査(市場調査や現地規制調査、取引先の信用調査など)を実施していること
  • 社内に海外事業の専門人材を有すること又は海外事業に関する外部専門家と連携すること

類型別の要件

グローバル枠では、基本要件に加えて類型別の要件もあります。それぞれの要件は以下のとおりです。

類型

要件

海外への直接投資に関する事業

  1. 国内に所在する本社を補助事業者とし、補助対象経費の2分の1以上が海外支店の補助対象経費となること、
    又は海外子会社(発行済株式の総数の半数以上又は、出資価格の総額の2分の1以上を補助事業者が所有している、
    国外に所在する会社)の事業活動に対する外注費(本補助金の補助対象経費の範囲に限る。
    一般管理費は含まない。

  2. 事業実施に不可欠な開発・試作にかかる業務等を想定。)
    若しくは貸与する機械装置・システム構築費(本補助金の補助対象経費の範囲に限る。)
    に充てられること
  3.  
  4. 国内事業所においても、海外事業と一体的な機械装置等(単価50万円(税抜き)以上)を
    取得(設備投資)すること
  5.  
  6. 応募申請時に、海外子会社等の事業概要・財務諸表・株主構成が分かる資料を提出すること
  7. 実績報告時に、海外子会社等との委託(貸与)契約書とその事業完了報告書を追加提出すること

海外市場開拓(輸出)に関する事業

  1. 国内に補助事業実施場所を有し、製品等の最終販売先の2分の1以上が海外顧客となり、
    計画期間中の補助事業の売上累計額が補助額を上回る事業計画を有していること
  2.  
  3. 応募申請時に、事前のマーケティング調査に基づく、
    想定顧客が具体的に分かる海外市場調査報告書を提出すること
  4.  
  5. 実績報告時に、想定顧客による試作品等の性能評価報告書を提出すること

インバウンド対応に関する事業

  1. 国内に補助事業実施場所を有し、製品・サービス等の販売先の2分の1以上が訪日外国人となり、
    計画期間中の補助事業の売上累計額が補助額を上回る事業計画を有していること
  2. 応募申請時に、想定顧客が具体的に分かるインバウンド市場調査報告書を提出すること
  3. 実績報告時に、プロトタイプの仮説検証の報告書を提出すること

海外企業との共同で行う事業

  1. 国内に補助事業実施場所を有し、外国法人と行う共同研究・共同事業開発に伴う設備投資等があり、
    その成果物の権利の全部又は一部が補助事業者に帰属すること(外国法人の経費は、補助対象外)
  2. 応募申請時に、共同研究契約書又は業務提携契約書(検討中の案を含む)を提出すること
  3. 実績報告時に、当該契約の進捗が分かる実績成果報告書を提出すること

出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)

申請する類型別に上記の要件を満たすか確認してみましょう。

対象事業者

ものづくり補助金のグローバル枠の対象事業者は「資本金3億円以下」「常勤従業員数300人以下」に該当する法人・個人です。

さらに、以下に該当する場合も申請対象です。

  • 企業組合
  • 協業組合
  • 事業協同組合、事業協同小組合、協同組合連合会
  • 商工組合、商工組合連合会
  • 商店街振興組合、商店街振興組合連合会
  • 水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会
  • 生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、生活衛生同業組合連合会
  • 酒造組合、酒造組合連合会、酒造組合中央会、酒販組合、酒販組合連合会、酒販組合中央会
  • 内航海運組合、内航海運組合連合会
  • 技術研究組合

ものづくり補助金は大手企業よりも、小規模な事業者向けの制度になります。

補助金額・補助率

ものづくり補助金のグローバル枠の補助金額・補助率は以下のとおりです。

補助上限額

従業員数5人以下:3,000万円

従業員数6〜20人:3,000万円

従業員数21人以上:3,000万円

補助率

中小企業:経費の1/2

小規模・再生:経費の2/3

グローバル枠の補助上限額は従業員数が異なっても同じく3,000万円を申請できます。

大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例

ものづくり補助金には大幅賃上げを行う場合に限り、補助上限額の引き上げ特例を受けられます。

基本要件に加えて、以下の要件を全て満たす3〜5年の事業計画を作成することが要件です。

  • 給与支給総額の年平均成長率1.5%以上の増加に加え、さらに年平均成長率4.5%以上(合計で年平均成長率6%)増加
  • 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準とすることを満たし、さらに毎年、事業場内最低賃金を年額+50円以上増額
  • 応募時に上記2つの達成に向けた具体的かつ詳細な事業計画の提出

これらの要件を満たした場合、補助上限額は以下のようになります。

  • 従業員数5人以下:3,100万円
  • 従業員数6〜20人:3,250万円
  • 従業員数21人以上:4,000万円

補助対象の経費

ものづくり補助金のグローバル枠の対象経費には、以下のように幅広い項目があります。

補助対象経費

概要

機械装置・

システム構築費

1:機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費

2:専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費

3:改良・修繕又は据付けに要する経費

運搬費

運搬料、宅配・郵送料などにかかる経費

技術導入費

知的財産権等の導入にかかる経費

知的財産権等関連経費

特許権等の知的財産権等の取得にかかる弁理士の手続代行費用

外注費

新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・
検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費

専門家経費

事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費

クラウドサービス利用費

クラウドサービスの利用に関する経費

原材料費

試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に必要な経費

海外旅費

(グローバル枠の海外市場開拓に関する事業のみ対象)

海外渡航および宿泊などにかかる経費

通訳・翻訳費

(グローバル枠の海外市場開拓に関する事業のみ対象)

通訳および翻訳を依頼する場合に支払われる経費

広告宣伝・販売促進費

(グローバル枠の海外市場開拓に関する事業のみ対象)

海外展開に必要な広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、
展示会出展等、ブランディング・プロモーションにかかる経費

出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)

グローバル枠は、追加で申請できる経費が増えるので申請前に確認しましょう。

補助対象外の経費

ものづくり補助金のグローバル枠で補助対象外になる経費は以下のとおりです。

  • 補助期間外の販売を目的にした製品等の生産にかかる諸経費
  • 工場建屋、構築物、簡易建物(ビニールハウス、コンテナなど)の取得費用、およびこれらを作り上げるための組み立て用部材の取得費用
  • 再生エネルギーの発電を行うための発電設備および当該設備と一体不可分の附属設備
  • 設置場所の整備工事や基礎工事にかかる費用
  • 事務所等にかかる家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費
  • 電話代、インターネット利用料金等の通信費(クラウドサービス利用費に含まれる付帯経費は除く)
  • 商品券等の金券
  • 文房具などの事務用品等の消耗品代、雑誌購読料、新聞代、団体等の会費
  • 飲食、奢侈、娯楽、接待等の費用
  • 不動産の購入費、自動車等車両

ものづくり補助金は、基本的に事業に必要な経費のみが対象になります。

スケジュール

2024年3月時点のものづくり補助金18次公募のスケジュールは、以下のとおりです。

  • 公募開始 :2024年1月31日(水)17:00~
  • 電子申請受付:2024年3月11日(月)17:00~
  • 申請締切 :2024年3月27日(水)17:00まで
  • 補助事業期間:2024年12月10日(火)まで

ただし、今後も19次以降の公募がされる可能性が高いです。最新情報を見逃さないように、ものづくり補助金のホームページを確認してみてください。

ものづくり補助金のグローバル枠の採択結果

ものづくり補助金(16次締切分)のグローバル枠の採択結果は、以下のとおりです。

類型・枠

申請者数

採択者数

総計

5,608

2,738

通常枠

3,846

1,967

回復型賃上げ・雇用拡大枠

177

80

デジタル枠

1,209

561

グリーン枠

199

78

グローバル市場開拓枠

177

52

出典:ものづくり補助金総合サイト 採択結果

全申請枠の総計の採択率は約49%ですが、グローバル枠の採択率は約29%と低くなっています。少しでも採択される可能性を高めるために、公募要領の審査項目を満たし、加点項目を含められるようにしましょう。

ものづくり補助金のグローバル枠の申請から完了までの流れ

ものづくり補助金のグローバル枠とは?制度や申請の流れなどを紹介_2

続いて、ものづくり補助金のグローバル枠の申請から完了までの流れを紹介します。

必要な書類を用意する

ものづくり補助金の申請には、数多くの書類が必要です。準備には時間がかかるので、締切直前になって焦る前に早めに用意しましょう。

例えば、全ての申請枠では以下のような書類を用意します。

  • 事業計画書
  • 補助経費にかかる誓約書
  • 賃金引上げ計画の誓約書
  • 決算書
  • 従業員数の確認資料
  • 労働者名簿 など

また、グローバル枠では上記の書類に加えて海外事業の準備状況を示す書類が求められます。

海外への直接投資に関する事業

海外子会社等の事業概要・財務諸表・株主構成が分かる資料

海外市場開拓(輸出)に関する事業

事前のマーケティング調査に基づく、想定顧客が具体的に分かる海外市場調査報告書

(製品等の最終販売先の2分の1以上が、海外顧客であることが分かる資料)

インバウンド対応に関する事業

想定顧客が具体的に分かるインバウンド市場調査報告書

(製品・サービス等の販売先の2分の1以上が、訪日外国人であることが分かる資料)

海外企業と共同で行う事業

共同研究契約書又は業務提携契約書

(検討中の案を含む)

※提出資料は日本語で作成されたもの、もしくは日本語訳が必要です。

申請手続きをする

必要な書類の用意ができたら、申請手続きをしていきます。ものづくり補助金は、電子申請になるので注意しましょう。申請には「GビズIDプライムアカウントの取得が必要になります。IDの取得には時間がかかるケースもあるので、早めに手続きを済ませましょう。

補助事業を実施する

申請手続きをして、採択が決定したら補助事業を実施していきます。ものづくり補助金を利用できるのは、指定期間内に実施した事業にかかる経費です。期限内に申請した事業が完了するように進めてください。

実績報告をする

補助事業が完了したら、事務局に実績報告書を提出する必要があります。報告を忘れてしまうと、補助金を受けられないので注意してください。

補助金を請求する

実績報告をしたら確定検査が行われて交付額が決定します。その後、事務局に補助金を請求することで、お金を受け取れます。

ものづくり補助金のグローバル枠の採択率を高めるポイント

ものづくり補助金のグローバル枠とは?制度や申請の流れなどを紹介_1

続いて、ものづくり補助金のグローバル枠の採択率を高めるポイントを見ていきましょう。

加点項目を意識する

ものづくり補助金は、審査の加点になる項目が公開されています。加点項目を申請することで、審査が有利になる可能性があるので、申請できるものはしましょう。

成長性加点

有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者

政策加点

  • 創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)
  • パートナーシップ構築宣言を公表している事業者
  • 再生事業者
  • 応募締切日時点で有効な認定を受けている事業者(DX認定事業者)
  • 申請時点において「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を利用している事業者
  • 令和4年度および令和5年度において健康経営優良法人に認定された事業者
  • 技術情報管理認証制度の認証を取得している事業者
  • J-Startup、J-Startup地域版に認定された事業者
  • 取引先の事業者がパートナーシップ構築宣言をしており、かつ宣言文中に項目について記載がある事業者
  • 「新規輸出1万者支援プログラム」に登録した事業者
  • J-クレジット制度を活用している事業者
  • GXリーグに参画している事業者
  • カーボンフットプリント(CFP)を算定している事業者

災害等加点

有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者

賃金加点等

  • 給与支給総額の増加、事業場内最低賃金の水準
  • 被用者保険の適用拡大の対象

※最大6項目の加点申請が可能です。

第三者目線で書類を準備する

ものづくり補助金の審査は、事務局側が行います。第三者目線で書類を準備することで、自社が伝えたいことを正確に伝えることが可能です。例えば、表・図・写真を使ったり、情報が多い箇所を箇条書きにしたりすることがあげられます。書類は第三者目線で、誰が読んでも意味が伝わるように作成しましょう。

ものづくり補助金のグローバル枠の活用事例

ものづくり補助金のグローバル枠は、様々な事業者で活用されています。

  • 拡大する山形のインバウンド獲得に向けた小ロット企画提案印刷の実現
  • インバウンド需要に対応した健康×文化の交流施設の提供
  • 調理工程の自動化により十割そばを提供しインバウンド獲得の計画
  • インバウンド市場回復に合わせた外国人観光客向けのお土産ニーズに対応したコーヒードリップバッグ内製化計画
  • インバウンド需要取り込みを目指した水産加工品量産体制の構築
  • 商品ラベルの防水シール転換による日本酒商品の差別化と輸出強化
  • 海外輸出強化に向けた最新焙煎機導入による生産性向上

上記のような他社の活用事例を参考にして、自社での活用イメージを掴んでみてください。

ものづくり補助金のグローバル枠がおすすめの事業者

ものづくり補助金のグローバル枠におすすめの事業者は以下のとおりです。

  • 海外向けの事業を行いたい
  • 海外にある会社やお店に新たな設備を導入したい
  • 訪日外国人観光客を新たなターゲットにしたい
  • 海外輸出のためのブランディングをかけたい

グローバル枠の補助金額は100〜3,000万円となっており、個人から中小企業まで幅広く活用しやすくなっています。海外向けの事業をしたい人やインバウンド事業をしたい人は、活用を検討してみてください。

【まとめ】ものづくり補助金のグローバル枠を紹介しました

ここまでものづくり補助金のグローバル枠を紹介しました。グローバル枠は、海外向けの事業を行いたい人向けの制度です。補助金額や使える経費が幅広いので、個人と企業を問わず活用しやすくなっています。本記事を参考に、グローバル枠の利用を検討してみましょう。