ものづくり補助金の変更点・スケジュールを徹底解説【2024年版】
2024年1月31日、ものづくり補助金18次の公募が開始されました。従来のものづくり補助金から更なる変更点が加えられています。
本記事ではものづくりの補助金の大きな変更点や、基本的なポイント、スケジュールを解説します。この記事を読めばものづくり補助金の基本が理解でき、申請に必要な準備がしやすくなるのでぜひ参考にしてください。
ものづくり補助金とは
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業や小規模事業者などを対象とした補助金です。
働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む支援するために設立されました。
補助対象経費総額の2分の1以上という高い補助率が特徴であり、事業者に給与や最低賃金の引き上げ、業務の効率化、国際競争力の増加を促しています。
ものづくり補助金17次からの変更点
ものづくり補助金の17次公募から補助枠が大きく変わりました。従来型のものづくり補助金で注目すべき変更点は、以下の通りです。
- 省力化(オーダーメイド)枠の新設
- 製品・サービス高付加価値化枠の(通常類型)の新設
- 製品・サービス高付加価値化枠の(成長分野進出類型)の新設
- 大幅賃上げに係る補助上限額引き上げ特例の拡充
- 口頭審査の追加
それぞれの変更について詳しく紹介します。まずは従来のものづくり補助金との違いを確認しましょう。
1.省力化(オーダーメイド)枠の新設
省力化枠は17次から新設された申請枠であり、中小企業・小規模事業者の人手不足解消が目的です。
生産プロセス等の省力化の取り組みを進めるため、オーダーメイド型の省力化投資に対して補助金を設けています。従業員規模によって補助額が変わる特徴があり、以下のように比例して補助額が増加していきます。
なお再生事業者とは、中小企業活性化協議会等からの支援を受け、再生計画等を策定中もしくは3年以内に計画が成立した事業者のことです。
従業員規模 |
補助額 |
補助率 |
5人以下 |
100万~750万円以内(1,000万円以内)※ |
1500万を超える場合: 中小企業:1/2・1/3 小規模・再生事業者は2/3・1/3 |
6~20人 |
100万~1,500万円以内(2,000万円以内)※ |
|
21~50人 |
100万~3,000万円以内(4,000万円以内)※ |
|
51~99人 |
100万~5,000万円以内(6,500万円以内)※ |
|
100人以上 |
100万~8,000万円以内(1億円以内)※ |
※大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例を受けると、括弧内の補助額に引き上げられます。
なお、ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠では、補助金額が1,500万円を超えた部分の補助率が変更されます。
|
補助金額1,500万円まで |
補助金額1,500万円を超える部分 |
中小企業 |
1/2 |
1/3 |
小規模・再生事業者 |
2/3 |
1/3 |
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 18次公募要領 概要版
従来のものづくり補助金では最大5,000万円までの補助額でしたが、新設された省力化枠は、1億円まで引き上げられています。ものづくり補助金の中で最も高い補助額になっており、申請できるなら省力化枠がおすすめです。
2.製品・サービス高付加価値化枠の(通常類型)の新設
製品・サービス高付加価値化枠の(通常類型)は、17次から再編成された申請枠です。
革新的な製品・サービス開発の取組みに必要な設備・システム投資等を支援する補助金です。例えば、最新複合機械加工機を導入し、国際基準に準拠した精密部品を開発する場合に適用されます。
こちらの申請枠も従業員規模によって補助額が変わる特徴があり、以下のように比例して補助額が増加していきます。
従業員規模 |
補助上限額 |
補助率 |
5人以下 |
750万円(850万円) |
|
6~20人 |
1,000万円(1,250万円) |
|
21人以上 |
1,250万円(2,250万円) |
※大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例を受けると、括弧内の補助額に引き上げられます。
またこの申請枠には新たな特例措置があり、新型コロナ回復加速化特例に該当すれば中小企業の補助率が1/2から2/3にアップします。
新型コロナ回復加速化特例の要件
- 常時使用する従業員がいること
- 2022年10月から2023年8月までに、3か月以上地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること
- 補助事業を完了した事業年度の翌年度3月末時点において、その時点での給与支給総額が1.5%以上増加目標を達成していること
- 補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での事業場内最低賃金が地域別最低賃金+50円以上の水準を達成していること
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 18次公募要領 概要版
申請前に該当するか確認し、申告しましょう。
3.製品・サービス高付加価値化枠の(成長分野進出類型)の新設
製品・サービス高付加価値化枠の(通常類型)は、17次から新設された申請枠です。
今後成長が見込まれる分野(DX・GX)に資する革新的な製品・サービス開発の取組みに必要な設備・システム投資等を支援します。
なおこの申請枠は、今後成長が見込まれる分野(DX)や特定の分野(GX)に限定されており、製品・サービスの開発を伴わないものは申請できません。
従業員規模 |
補助上限額 |
補助率 |
5人以下 |
1,000万円(1,100万円) |
2/3 |
6~20人 |
1,500万円(1,750万円) |
|
21人以上 |
2,500万円(3,500万円) |
※大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例を受けると、括弧内の補助額に引き上げられます。
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 18次公募要領 概要版
4.大幅賃上げに係る補助上限額引き上げ特例の拡充
経済産業省は大幅賃上げに取り組む事業者に対して、補助額を引き上げています。補助上限額引き上げ特例をうけるには、以下の要件を満たす必要があります。
項目 |
詳細 |
1.給与支給総額 |
給与支給総額を年平均成長率(CAGR)1.5%以上増加に加え、 |
2.事業場内最低賃金 |
事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上の水準とすることを満たし、 |
3.計画の提出 |
上記1.2.の詳しい事業計画の提出 |
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 18次公募要領 概要版
再生事業者や従業員がいない場合には申請ができません。また、要件未達の場合、上乗せ分については全額返還が求められます。
5.口頭審査の追加
17次公募から新しく「口頭審査」が事務局の審査として追加されました。一定規模以上の申請を行う事業者に対して、オンラインにて15分程度の審査が実施されます。
審査方法 |
オンライン(Zoom等)にて実施 |
口頭審査期間 |
2024年4月24日(水)~5月15(水) ※延長受付分は2024年5月20日(月)~5月24日(金)となります。 |
対応者 |
申請事業者自身、もしくは法人代表者等の1名が対応 |
審査内容 |
本事業に申請された事業計画の適格性、革新性、優位性、実現 可能性等を審査 |
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 18次公募要領 概要版
なお公平・公正な審査を行う観点から、審査委員及び事務局はカメラをオフにして審査します。
18次ものづくり補助金の概要
ここでは18次のものづくり補助金を検討する際に、チェックすべきポイントを紹介します。
公募スケジュール
ものづくり補助金の申請スケジュールは、以下の通りです。
公募開始 |
2024年1月31日(水)17時~ |
申請期間 |
2024年3月11日(月)17時~3月27日(水)17時 |
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 18次公募要領 概要版
なお能登半島地震の影響を鑑みて、事業実施場所を新潟県・富山県・石川県・福井県の4県とする計画に限定して、2024年5月9日(木)まで延長受付を実施しています。
条件として、令和6年能登半島地震による被害を受けたことの「被災証明書・罹災証明書」等の書類添付が必須です。
申請対象者
ものづくり補助金は、中小企業等が対象となっています。
そのため、企業の組合や商工組合、一定の要件を満たす特定非営利活動法人(NPO法人)、社会福祉法人も対象です。
申請には、以下の要件が必要です。
- 資本金又は従業員数(常勤)が一定値以下となる会社又は個人中小企業者(組合関連以外)
- 「中小企業等経営強化法」2条1項に規定される、特定の組合に該当する中小企業者(組合・法人関連)
- 従業員数(常勤)が一定値以下となる個人事業主(小規模企業者・小規模事業者)
- 従業員数、資本金額(または出資総額)や組合などの条件を満たす特定事業者の一部
- 活動内容や従業員数などの条件を満たす特定非営利活動法人
- 従業員数が300人以下の「社会福祉法」32条に規定する所管庁の認可を受け設立されている社会福祉法人
なお、公益財団法人・一般社団法人・医療法人・法人格のない任意団体は対象外となります。
申請方法
申請は、専門ページからの電子申請のみ提出が可能です。
電子申請システム「jGrants」からの申請が可能であり、郵送は受け付けていません。申請には「GビズID」プライムアカウントへの事業者登録が必要で、IDの取得までに時間がかかります。早めに登録し、申請前の準備を整えましょう。
申請枠
ものづくり補助金は3つの枠で構成されています。
- 省力化(オーダーメイド)枠
- 製品・サービス高付加価値化(通常類型・成長分野進出類型)枠
- グローバル枠
なお、ものづくり補助金や事業再構築補助金などの事業者向けの国の補助金は、同じ事業の場合、同時期に2つ以上を受給することはできません。似たような事業を展開している場合には、別会社での申請を検討するのがおすすめです。
補助金上限額
申請する類型や従業員の数によって、金額や補助率が変わります。
補助金の種類ごとの上限金額と補助率をまとめると以下の通りです。
枠・類型 |
補助上限額(特例上限) |
補助率 |
省力化(オーダーメイド)枠 |
750万円~8,000万円 |
補助金額1,500万円までは1/2もしくは2/3 1,500万円を超える部分は1/3 |
製品・サービス高付加価値化枠 |
750万円~1,250万円 |
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製品・サービス高付加価値化枠 |
1,000万円~2,500万円 |
|
グローバル枠 |
3,000万円 |
|
※大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例を受けると、括弧内の補助額に引き上げられます。
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 18次公募要領 概要版
計画している事業が、どのくらいの補助金が交付されるのか確認しておきましょう。
従業員の定義
ものづくり補助金の従業員の定義は、中小企業法に沿って判断されます。そのため以下の雇用契約をする社員が従業員としてみなされます。
- 正社員
- アルバイト、パート
- 契約社員
なお、役員や日雇い労働者は従業員として認められません。従業員の定義を理解し、補助額を計算しましょう。
基本な要件
ものづくり補助金の申請には、以下の基本要件を満たす必要があります。以下のとおりです。
- 事業計画期間において、給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加させること
- 事業計画期間において、事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準とすること
- 事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年平均成長率 3%以上増加させること
毎次報告が必要
ものづくり補助金の受給後は、経済産業省への報告義務があります。「ものづくり補助金総合サイト」からログインし、報告を実施しましょう。事業者は事務局へ5年間で計6回、「事業化状況・知的財産権等報告書」を提出します。
【まとめ】ものづくり補助金の変更点を紹介しました
ものづくり補助金は、予算ごとに修正や変更があります。従来の補助事業だけを参考にするのではなく、現在の変更点を抑えておく必要があります。
最新の公募要領を読むだけでなく、過去の活用事例や変更点を知り、より自社にあった補助事業の構築・策定をしましょう。