【事業再構築補助金】建設業の採択率や事例、申請時の注意点を解説

【事業再構築補助金】建設業の採択率や事例、申請時の注意点を解説

建設業者の中には、事業再構築補助金の申請を検討している方も多いのではないでしょうか。実際、第10回の事業再構築補助金では製造業、卸売・小売業に次いで、建設業は3番目に応募件数および採択件数が多い業種です。

本記事では、建設業の採択率や補助金の活用事例、申請時の注意点などを解説します。

目次
  1. 1. 建設業は事業再構築補助金の対象
    1. 1-1. 事業再構築補助金における建設業の採択率
    2. 1-2. 事業再構築補助金の類型
    3. 1-3. 必須申請要件
    4. 1-4. 補助対象事業者
    5. 1-5. 補助対象経費
  2. 2. 建設業者が事業再構築補助金を申請して交付されるまでの流れ
    1. 2-1. 必要書類の準備
    2. 2-2. 申請
    3. 2-3. 採択結果の通知
    4. 2-4. 補助事業の実施
    5. 2-5. 補助事業の実施報告
    6. 2-6. 補助金の交付
  3. 3. 事業再構築補助金における建設業の採択事例
    1. 3-1. 株式会社ヴィレッジヒルズ(北海道)
    2. 3-2. 株式会社en人(東京都)
    3. 3-3. 株式会社EIVS(神奈川県)
    4. 3-4. 株式会社Standard(大阪府)
    5. 3-5. 栗原工業(佐賀県)
  4. 4. 建設業者が事業再構築補助金を申請する際の注意点
    1. 4-1. 必ず補助金がもらえるわけではない
    2. 4-2. 土地・建物の購入費用は補助されない
    3. 4-3. 補助金は後払いのため資金繰りに気をつける
  5. 5. 【まとめ】事業再構築補助金を建設業で活用しよう

建設業は事業再構築補助金の対象

【事業再構築補助金】建設業の採択率や事例、申請時の注意点を解説_7

建設業は事業再構築補助金の対象です。事業再構築補助金は業種に制限があるわけではないので、申請要件を満たし、補助対象事業者に該当すれば申請できます。

事業再構築補助金における建設業の採択率

【事業再構築補助金】建設業の採択率や事例、申請時の注意点を解説_2

画像引用:「事業再構築補助金 第10回公募の結果について(令和5年9月)」

第10回の公募では、総応募数が10,821件あり、5205件が採択されました(採択率48.1%)。建設業は応募割合13.1%(約1,417件)、採択割合13.4%(約697件)だったので、採択率は約49.2%と、平均より1.1%ほど採択率が高かったです。

なお、事業再構築補助金の第1~10回の採択率は以下の通りです。

申請枠

申請件数

採択件数

採択率

第1回

22,231件

8,016件

36.0%

第2回

20,800件

9,336件

44.8%

第3回

20,307件

9,021件

44.4%

第4回

19,673件

8,810件

44.7%

第5回

21,035件

9,707件

46.1%

第6回

15,340件

7,669件

49.9%

第7回

15,132件

7,745件

51.1%

第8回

12,591件

6,456件

51.2%

第9回

9,369件

4,259件

45.4%

第10回

10,821件

5,205件

48.1%

事業再構築補助金の公式ホームページをもとに編集部が作成

※2021年6月21日~2023年6月30日までを集計

事業再構築補助金の類型

事業再構築補助金には6つの類型が設けられています。それぞれの対象、補助上限額、補助率は以下の通りです。

類型

対象

補助上限額

補助率

最低賃金枠

最低賃金引上げの影響を受けており、

その原資を確保するのが困難な事業者

最大1,500万円

3/4

物価高騰対策・

回復再生応援枠

  • 厳しい業況にある事業者や
  • 事業の再生に取り組む事業者、
  • 原油価格や物価高騰などの
  • 影響を受ける事業者

最大3,000万円

2/3

 (一部3/4)

産業構造転換枠

国内市場が縮小するといった

構造的な課題に直面している

業種・業態の事業者

最大7,000万円

2/3

 

成長枠

成長分野での大胆な事業再構築に

取り組む事業者

最大7,000万円

1/2

※大規模な

賃上げ達成で

2/3

グリーン成長枠

研究開発や技術開発、

人材育成を行いながら、

グリーン成長戦略の「実行計画」における

14分野の課題解決に取り組む事業者

エントリー:

最大8,000万円

(中堅1億円)

 

スタンダード:

最大1億円

(中堅1.5億円)

1/2

※大規模な

賃上げ達成で

2/3

 

サプライチェーン

強靱化枠

海外で製造する製品の国内回帰を進め、

国内サプライチェーンの強靱化や

地域産業の活性化に資する

取り組みを行う事業者

最大5億円

1/2

参照:中小企業庁「事業再構築補助金の概要」

※大幅な賃上げの要件:事業終了時点で、給与支給総額+ 6%以上、事業場内の最低賃金+45円

必須申請要件

事業再構築補助金を申請する上で必須の要件が2つあります。

  1. 事業計画は認定経営革新等支援機関確認の確認を受ける
  2. 付加価値額を3~5年で年率平均3~5%以上増加させる

認定支援機関とは、経済産業大臣の認定を受けた中小企業支援を行っている機関です。認定機関は全国で3万以上あり、金融機関や税理士、中小企業診断士など、全国で3万以上の認定支援機関があります。なお、申請金額が3,000万円超の場合は、銀行や信用金庫、ファンドなどの金融機関の確認も必要です。

付加価値額とは、営業利益と人件費、減価償却費を合計したものを指します。補助事業終了後3〜5年で、年率平均3〜5%以上増加させるか、従業員1人当たり付加価値額を年率平均3〜5%以上増加させるのが要件です。

補助対象事業者

事業再構築補助金の補助対象事業者は中小企業と中堅企業、個人事業主です。

  • 中小企業(建設業):資本金3億円以下または常勤の従業員数300人以下
  • 中堅企業:資本金が10億円未満かつ常勤の従業員数が2,000人以下
  • 個人事業主:従業員数が300人以下

例えば、資本金が5億円だったとしても、従業員数が300人以下であれば中小企業に該当するので、申請できます。よって、多くの建設業者が事業再構築補助金の補助対象といえるでしょう。

補助対象経費

事業再構築補助金の対象経費には以下のようなものがあります。

補助対象経費

詳細

建物費

建物の建設・改修にかかる経費

機械装置・システム構築費

(リース料を含む)

  • 機械装置の購入や製作、借用にかかる経費
  • ・専用ソフトウェアや情報システムなどの購入・構築、借用にかかる経費

技術導入費

知的財産権の導入にかかる経費

専門家経費

専門家に支払う経費

運搬費

運搬料や宅配・郵送料などの経費

クラウドサービス利用費

クラウドサービスの利用料

外注費

加工や設計、検査などの一部を外注する場合の経費

知的財産権等関連経費

特許権をはじめとする知的財産権の取得にかかる経費

広告宣伝・販売促進費

パンフレットや動画の作成、展示会への出展などの経費

研修費

教育訓練や講座受講などの経費

参照:事業再構築補助金公募要領(第11回)

事業を実施する上で必要な経費のほとんどが対象です。補助金を活用すれば、負担を抑えて新たな事業を展開できます。

建設業者が事業再構築補助金を申請して交付されるまでの流れ

【事業再構築補助金】建設業の採択率や事例、申請時の注意点を解説_8

事業再構築補助金を申請する際の流れを解説します。

必要書類の準備

事業再構築補助金を申請する際に提出する書類の一例は以下の通りです。

  • 事業計画書
  • 認定経営革新等支援機関による確認書
  • 決算書
  • 労働者名簿
  • 賃金引上げ計画の表明書
  • 事業場内最低賃金を示す書類

公募要領を読み込んで、種類に過不足がないか、必要事項が記載されているかどうかなどを確認しながら作成しましょう。

申請

必要書類を準備したら、申請します。事業再構築補助金の場合、申請はオンラインのみで受け付けられています。なお、申請する際はGビズIDが必須です。GビズIDとは、法人と個人事業主向けの共通認証システムです。1つのIDとパスワードで複数の行政サービスをりようできます。GビズIDの発行には2週間程度を要するので、補助金の締め切りに間に合うよう早めに取得しておくのがおすすめです。

採択結果の通知

申請締め切りから3か月弱の審査期間を経て、採択結果が通知されます。補助金の公式ホームページでも、事業者名や事業計画の内容、認定支援機関などが公表されます。なお、第10回公募の申請は2023年6月30日に締め切られ、同年9月22日に採択結果が発表されました。

補助事業の実施

採択されたら提出した事業計画に沿って、補助事業を実施します。なお、採択が確定する前に、支払った経費は補助事業の対象外となります。先走って進めないように注意しましょう。

補助事業の実施報告

補助事業の実施報告では、請求書や振込明細などを提出して、実際に経費を支払ったことを証明します。事業計画に記載していない経費は補助されないおそれがあるので注意しましょう。

補助金の交付

補助事業の実施報告を経て、補助金が交付されます。採択されてから補助金を受け取るまでに、複数の手続きを行う必要があります。記載ミスや提出漏れなどがないかチェックしながら進めましょう。

事業再構築補助金における建設業の採択事例

【事業再構築補助金】建設業の採択率や事例、申請時の注意点を解説_5

建設業で事業再構築補助金が採択された事例を5つ紹介します。

株式会社ヴィレッジヒルズ(北海道)

【事業再構築補助金】建設業の採択率や事例、申請時の注意点を解説_9

画像引用:株式会社ヴィレッジヒルズ

北海道北見市で建築業と不動産業を営む株式会社ヴィレッジヒルズは、事業再構築補助金を活用してプライベートサウナ付きのキャンプ場の経営に乗り出しました。補助金を活用するきっかけは、新型コロナウイルス感染症の流行や物価の高騰です。経営環境が厳しくなる中で、地域とのつながりや広大な土地を保有している強みを活かして、業績回復を図ることを目的としています。

株式会社en人(東京都)

【事業再構築補助金】建設業の採択率や事例、申請時の注意点を解説_1

画像引用:株式会社en人

東京都立川市に本社を構える株式会社en人は、リフォームやリノベーション事業を行う会社です。事業再構築補助金の事業目的は、体験型リアルショールームの出店やWebサイトの構築、SNSマーケティングの実施です。「リフォーム=修繕」というイメージを打ち破り「家で遊ぶためにリフォームする」という新しい価値観を広めることで、売り上げ拡大を目指しています。

株式会社EIVS(神奈川県)

【事業再構築補助金】建設業の採択率や事例、申請時の注意点を解説_6

画像引用:株式会社EIVS

株式会社EIVSは神奈川県横浜市にあるリフォーム事業を行う会社です。事業再構築補助金を活用して、シニア相談サロンを開設し、高齢化に関する課題解決を目指しています。具体的には、地域密着型でリフォーム事業を行ってきた実績を活かして、約130社の提携企業と高齢者をマッチングするサービスを開始。既存事業の顧客からも流⼊を想定しています。

株式会社Standard(大阪府)

【事業再構築補助金】建設業の採択率や事例、申請時の注意点を解説_4

画像引用:株式会社Standard

株式会社Standardは、大阪府吹田市で店舗やマンションのリノベーションを手掛けている企業です。事業再構築補助金を活用して、家具併売型のオーガニックカフェを出店。新型コロナウイルス感染症の流行や物価高騰の影響により、売上が減少したのが補助金申請のきっかけです。新規事業を行うにあたって活かした強みは、居⼼地のいい空間づくりをプロデュースしてきた実績。顧客が自社の家具を体験できるオーガニックカフェを展開し、⼩売り業に参⼊するとともに売り上げ回復を目指しています。

栗原工業(佐賀県)

塗装業を営んでいた佐賀県唐津市の栗原工業は、事業再構築補助金を活用して、解体工事業への事業転換を目指します。以前はゼネコンの下請として塗装業を行っていましたが、新型コロナウイルス感染症の流行により、仕事がなくなったことをきっかけに補助金を申請。家屋を解体するニーズに着目し、解体工事業の登録を受け、新規事業に乗り出します。

建設業者が事業再構築補助金を申請する際の注意点

【事業再構築補助金】建設業の採択率や事例、申請時の注意点を解説_3

事業再構築補助金を申請する際の注意点を3つ紹介します。

必ず補助金がもらえるわけではない

第1~10回までの事業再構築補助金の採択率は、36〜51.2%です。多くても2社に1社しか採択されないので、補助金をもらえることを前提に事業を進めないように注意しましょう。なお、書類に不備があったり、申請要件を満たしていなかったりする場合は、不採択になってしまいます。労力をかけたにもかかわらず、ケアレスミスで不採択になるともったいないので、複数人でダブルチェックした上で申請しましょう。

土地・建物の購入費用は補助されない

建設業では、新規事業を行うにあたって、土地・建物が必要になる場合がありますが、購入費用は補助対象外です。一方、建物の建設や改修にかかる費用は対象です。補助対象外の費用を捻出するのが難しい場合は、金融機関から借り入れたり、資金調達を行ったりして対応しましょう。

補助金は後払いのため資金繰りに気をつける

補助金の流れで紹介した通り、すべての経費を支払った後で、補助金額が確定し、給付されます。事業に必要な経費は一旦、自社で支払う必要があるので、資金繰りに注意する必要があります。補助金を申請する際は「事業資金は自社で賄えるか」「調達方法はどうするか」などを事前に検討しておきましょう。

【まとめ】事業再構築補助金を建設業で活用しよう

建設業は、事業再構築補助金の応募件数・採択件数ともに3番目に多い業種です。多種多様な業種の中でも、活用している企業が多いのが特徴です。採択率は49.2%。約2社に1社が採択されています。

類型によって補助上限額は異なりますが、最大で5億円の補助を受けることが可能です。投資金額が大規模になりがちな建設業には魅力です。「新しい分野に進出したい」「売り上げが減少しているのでV字回復を図りたい」方はぜひ申請を検討してみてください。