IT導入補助金の申請までの流れを徹底解説!採択率を上げるポイントもご紹介
IT導入補助金を利用したい事業担当者の中には、申請までの流れが分からずお困りの方もいるのではないでしょうか。
本記事では、申請までの流れ、必要書類、採択率を高めるポイントまで解説します。IT導入補助金の申請方法が分からない方はぜひ参考にしてください。
IT導入補助金とは
概要
IT導入補助金は、経営課題の解決を目的にITツール導入を支援する補助金です。対象となるツールやソフトウェアによって以下の枠に分けられます。
- 通常枠(A・B類型)
- デジタル化基盤導入類型
- 複数社連携IT導入類型
- セキュリティ対策推進枠
- 商流一括インボイス対応類型
補助対象者
補助対象となるのは、中小企業や個人事業主でかつ資本金と従業員数が一定数を下回る企業です。具体的には以下の通り。
|
資本金 |
従業員 |
製造業・建設業・運輸業・旅行業 |
3億円以下 |
300人以下 |
卸売業 |
1億円以下 |
100人以下 |
サービス業 (ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く) |
5,000万円以下 |
100人以下 |
小売業 |
5,000万円以下 |
50人以下 |
ゴム製品製造業 |
3億円以下 |
900人以下 |
ソフトウェア業・ 情報処理サービス業 |
3億円以下 |
300人以下 |
旅館業 |
5,000万円以下 |
200人以下 |
その他 |
3億円以下 |
300人以下 |
補助対象経費
補助対象経費は、IT導入補助金の枠ごとに異なります。具体的には以下の通り。
通常枠(A・B類型) |
・ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分) ・導入関連費(機能拡張やデータ連携ツールなど) ・導入コンサルティングや設定・導入研修など |
セキュリティ対策推進枠 |
・ITツールの導入費用・サービス利用料(最大2年分) (サイバーセキュリティお助け隊サービスリストに 掲載されているサービスが対象) |
デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) |
・会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ ECソフトの機能を1つ以上備えたもの ・導入関連費(機能拡張やデータ連携ツールなど) ・導入コンサルティングや設定・導入研修など ・ソフトウェア導入に必要なハードウェア (PC・タブレット・複合機・POSレジなど) |
デジタル化基盤導入枠 (商流一括インボイス対応類型) |
・インボイス制度に対応した受発注ソフト |
デジタル化基盤導入枠 (複数社連携IT導入類型) |
・会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ ECソフトの機能を備えたもの ・ITツール導入に必要なハードウェア ・消費者動向分析に役立つソフトウェア ・三角事業者の取りまとめに必要な経費・専門家費 |
補助額と補助率
IT導入補助金の補助額と補助率は、補助金の枠ごとに異なります。
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補助上限 |
補助率 |
通常枠(A類型) |
5万円以上 150万円未満 |
1/2以内 |
通常枠(B類型) |
150万円以上 450万円以下 |
1/2以内 |
セキュリティ対策推進枠 |
5万円以上 100万円以下 |
1/2以内 |
デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) |
・〜50万円以下 ・50万円超 350万円以下 ・10万円以下 (PC・タブレット) ・20万円以下 (レジ・券売機)
|
・〜50万円以下の 場合3/4以内 ・50万円超 350万円以下の 場合2/3以内 ・1/2以内 (ハードウェア) |
デジタル化基盤導入枠 (商流一括インボイス対応類型) |
〜350万円以下 |
2/3以内 (中小企業・ 小規模事業者等が 申請する場合) 1/2以内 (その他の事業者等が 申請する場合) |
デジタル化基盤導入枠 (複数社連携IT導入類型) |
3000万円以下 (基盤導入経費・ 消費動向等分析経費) 200万円以下 |
1/2~3/4 (基盤導入経費・ 消費動向等分析経費) 2/3以内 (事務費、専門家費) |
スケジュール
IT導入補助金のスケジュールの申請締め切りは以下の表の通りです。
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締切日 |
通常枠(A・B類型) |
2023年8月28日 (月) 17:00 |
セキュリティ対策推進枠 |
2023年8月28日 (月) 17:00 |
デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) |
2023年8月28日 (月) 17:00 |
デジタル化基盤導入枠 (商流一括インボイス対応類型) |
2023年10月2日 (月) 17:00 |
デジタル化基盤導入枠 (複数社連携IT導入類型) |
2023年10月2日 (月) 17:00 |
なお、詳細なスケジュールや今後については、以下をご確認ください。
IT導入補助金申請の流れ
IT導入補助金申請の流れは、枠に関わらず共通しています(デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)を除く)。
それぞれの手続きについて次で解説します。なお、より詳しい手続きについては、以下の交付申請の手引きをご確認ください。
事業理解を深める
IT導入補助金は申請時に審査があり、事業計画書の作成まで求められます。趣旨にあわない書類を作成しても審査には通らないため、IT導入補助金の目的・枠ごとの趣旨・審査項目・加点項目について理解を深めることが大切です。
ITツールと事業者の選定
ITツールとIT導入支援事業者の選定は申請の前に行う必要があります。IT導入支援事業者は、ITツールの選定や導入をサポートする事業者で、事務局や外部審査委員会による審査により採択を受けています。
IT導入補助金の申請は、IT導入支援事業者が手続きするものもあるため、ITツールとIT導入支援事業者を選ばなければ、その後の手続きには進めません。
事前準備
事前準備で必要な手続きは以下の通りです。
- gBizIDプライムアカウントを申請・取得する
- 「SECURITY ACTION」の「一つ星」または「二つ星」の申請
- 「みらデジ」の「経営チェック」を受ける
GBizIDプライムアカウントは、IT導入補助金をはじめとした補助金の申請に必要なアカウントです。補助金の申請・必要書類の提出・交付手続きなどに利用します。GBizIDプライムアカウントは以下から申請してください。
SECURITY ACTIONとは、中小企業が情報セキュリティ対策に取組んでいることを自己宣言する制度です。「一つ星」と「二つ星」に段階が分かれています。SECURITY ACTIONの具体的な宣言手順は以下をご覧ください。
情報セキュリティ対策支援サイト|SECURITY ACTION自己宣言
みらデジ経営チェックとは、経営課題やデジタル化への取り組み状況を同業種・同地域の事業者と比較しながら、確認できるチェックツールです。みらデジ経営チェックは以下のサイトから行えます。なお、チェックを受けるにはGBizIDプライムアカウント取得が必要です。
交付申請
IT導入支援事業者と相談し、交付申請に必要な事業計画を作成後、交付申請の手続きが行えます。交付申請の手続きは、IT導入支援事業者から、申請ページの招待を受ける必要があるためです。
招待を受けたら申請マイページから必要情報の入力を行い、申請に対する宣誓をした後で、事務局へ提出します。より詳しい手続きの流れについては、以下のサイトをご確認ください。
補助事業の実施
交付申請の後、事務局から「交付決定」を受けた段階で、ITツールの発注・契約・支払いなど補助事業の実施手続きが進められるようになります。交付決定前に発注や契約をしてしまうと、補助金の対象外となるため、注意しましょう。
事業実績報告
補助事業を実施し、発注から支払いまでの手続きが完了したら、発注・契約、納品、支払い等を行ったことが分かる証憑を提出します。
事業実績報告が完了し、補助金額が確定したら、申請マイページで補助額の確認が可能です。申請内容を事務局が確認した後で、補助金が交付されます。
事業実施効果報告
事業実施効果報告とは、事業が終了した後で、インボイス制度への対応状況やITツールを継続的に活用していることを証明する書類を報告することです。
申請した企業が必要な情報を入力、入力内容をIT導入支援事業者が確認した後で、提出されます。
必要書類
IT導入補助金の申請に必要な書類は、法人の場合と個人事業主の場合で異なります。それぞれの必要書類について次で解説します。
なお、より詳細な要件については、公募要項をご確認ください。
法人の場合
法人の場合の必要書類は以下の通りです。
実在証明書 |
履歴事項全部証明書(発行から3ヶ月以内のもの) |
事業実態確認書類 |
税務署で発行された直近分の法人税の納税証明書 (「その1」若しくは「その2」) |
個人事業主の場合
個人事業主の場合の必要書類は以下の通りです。
本人確認書類 |
運転免許証(有効期限内のもの)・運転経歴証明書若しくは住民票 (発行から3ヶ月以内のもの)
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事業実態確認書類1 |
税務署で発行された直近分の所得税の納税証明書 (「その1」若しくは「その2」) |
事業実態確認書類2 |
税務署が受領した直近分の確定申告書の控え |
IT導入補助金申請の注意点
IT導入補助金の申請時には以下の点に注意する必要があります。
それぞれの注意点について次で解説します。
審査に通らない可能性がある
IT導入補助金には審査があり、審査に通らなければ補助金は利用できません。デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)4次締切での申請者数は3,577、交付決定数は2,796であり、採択率は78.1%でした。
そのため、審査に落ちることがないよう、IT導入補助金の目的に沿った事業計画書を作成することが大切です。
準備や手続きの手間がかかる
審査に通るためには、事業計画を立てる手間と時間が必要です。そのため、IT導入補助金の申請をする際には、準備に必要な人と時間のリソースを確保する必要があります。
最初は自費で購入する
補助金が交付されるタイミングは事業完了後です。事業を実際に進めるための費用は補助金なしでまかなう必要があるため、ある程度の資金を準備する必要があります。
ITツールの導入に時間がかかる
IT導入補助金で申請するツールは、申請し交付決定がなされるまでは受注や契約、導入などの手続きを進めません。これらの手続きをしてしまうと、補助金の対象外となります。
そのため、緊急でITツールの導入を必要としている場合には、IT導入補助金を利用しないということも選択肢です。
採択率を高めるためのポイント
IT導入補助金の審査に通りやすくするためには、以下のポイントを抑えましょう。
審査項目を意識する
A・B 類型の場合の主要な審査項目は以下の通りです。
審査項目 |
審査事項 |
事業面からの審査項目 |
・経営課題を理解し、自社の経営課題改善に向けた 具体的な問題意識があるか ・自社の状況や課題分析・将来計画と、 ITツールの導入によりにより期待される効果がマッチしているか ・継続的な生産性向上と事業の成長に取り組んでいるか |
計画目標値の審査 |
・労働生産性の向上率 |
政策面からの審査項目 |
・生産性の向上や働き方改革を視野に入れ、 国の推進する関連事業への取り組みがあるか ・国の推進するセキュリティサービスを選定しているか |
加点項目を満たす
A・B 類型の場合の加点項目は以下の通りです。
- 地域経済牽引事業計画の承認を取得していること
- 地域未来牽引企業に選定されており、地域未来牽引企業としての「目標」を経済産業省に提出していること
- クラウド製品を導入ツールに選定していること
- 「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を導入ツールに選定していること
- インボイス制度対応製品を導入ツールに選定していること
- A類型の申請者であって、賃金に関わる取り組みで一定の要件を満たす事業計画を策定し、従業員に表明していること
- 令和4年度に「健康経営優良法人2023」に認定された事業者であること
- 支援コミュニティ・コンソーシアムから支援を受けていること
- 介護職員等特定処遇改善加算を取得しているものを運営していること(介護保険法に基づくサービスを提供する事業所)
- 応募申請時点で、以下のいずれかに該当すること。
・女性活躍推進法に基づく認定(えるぼし・プラチナえるぼしのいずれか)を受けている、または「女性の活躍推進企業データベース」に女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を公表している(従業員数100人以下の場合)
・次世代法)に基づく認定(くるみん・トライくるみん・プラチナくるみんのいずれかの認定)を受けている、または「一般事業主行動計画公表サイト(両立支援のひろば)」に次世代法に基づく一般事業主行動計画を公表している(従業員数100人以下の場合)
これらの加点項目について、詳しく知りたい方は公募要項をご確認ください。
減点項目を満たさない
以下の条件を満たしている場合、審査で減点措置が取られます。
- IT導入補助金2022において、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)で交付決定を受けていること
- IT導入補助金2023において、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型・商流一括インボイス対応類型)で申請している、または交付決定を受けていること
IT導入補助金の申請の流れについて解説しました
本記事ではIT導入補助金の申請の流れについて解説しました。IT導入補助金の申請には審査があり、審査項目や加点項目について理解を深めることで、審査に通りやすくなります。
ITツールやIT導入支援事業者の選定を早めに行い、事前準備を整えておくことが、採択率を高めるうえで重要です。