人材開発支援助成金の申請手順は?必要書類や注意点も解説
人材開発支援助成金を活用したいなら、申請手順や必要書類を理解する必要がありますよね。しかし、厚生労働省のWebサイト等から調べても情報が膨大でわかりづらいとお悩みではありませんか。
本記事では、人材開発支援助成金の申請手順を解説します。申請のために必要な知識を身につけられますので、ぜひご覧ください。
※2024年2月時点の情報です。補助金の申請にあたっては最新の情報を調べてください。
人材開発支援助成金の申請の流れ
まずは、人材開発支援助成金の申請の流れを理解しておきましょう。前提として、人材開発支援助成金には、以下のコースがあります。
コース名 |
対象の訓練等(概要) |
人材育成支援コース |
職務に関連した専門的知識や技能習得のための職業訓練等を 実施する |
教育訓練休暇等付与コース |
有給教育訓練等の制度を導入し、実際に適用する |
人への投資促進コース |
高度なデジタル人材の育成を目指す訓練や定額制訓練、 労働者の自発的な能力開発の促進などを実施する |
事業展開等リスキリング 支援コース |
新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、 必要な知識および技能を習得させるための訓練を実施する |
建設労働者認定訓練コース |
認定職業訓練または指導員訓練のうち建設関連の訓練を実施 したり、建設労働者に有給で認定訓練を受講させたりする |
建設労働者技能実習コース |
雇用する建設労働者に技能向上のための実習を、有給で受講させる |
障害者職業能力開発コース |
障害者の職業に必要な能力を開発、向上させるための 教育訓練を継続的に実施する施設の設置・運営を行う |
まずは各コース共通の一般的な手順のみ説明し、続いてコース別の手順や必要書類を解説する流れで説明します。コースによって順番や内容は異なる場合がありますので、ご注意ください。
訓練計画の作成・提出
まずは「職業訓練実施計画届」や「事業内職業能力開発計画」などの書類を作成し、各都道府県労働局へ提出しましょう。必要な書類は、厚生労働省のWebサイトからダウンロードできます。なお、計画の内容に変更があった場合は、変更届の提出が必要です。
訓練の実施等
訓練の実施や、就業規則や労働協約への規定等への制度の導入を行います。訓練にかかる費用は、支給申請までに支払い終えている必要があることも押さえておきましょう。またコースによって、制度の導入タイミングが異なる点にも注意が必要です。
支給申請書の提出
定められた支給申請期間内に、支給申請書と必要な書類を用意し、各都道府県労働局に提出しましょう。支給申請書などの必要書類も、厚生労働省のWebサイトからダウンロードできます。
助成金の支給決定または不支給決定
審査の上、支給か不支給かが決定されます。審査には一定の時間を要します。
審査通過後に助成金を受給
審査が終わると、労働局から「支給決定通知書」が届きます。支給決定通知書の到着後、登録した振込先に助成金額が振り込まれて受給完了です。
人材開発支援助成金の主な必要書類
人材開発支援助成金の申請において、訓練計画届出時に必要な提出書類は主に以下の通りです。
- 職業訓練実施計画届
- 訓練別の対象者一覧
- 人材開発支援助成金 事前確認書
- 事業所確認票
- 訓練対象者が被保険者(有期契約労働者等を除く)または有期契約労働者等であること及び職務内容が確認できる書類
- キャリアコンサルティングについて規定した労働協約(写)、就業規則(写)または事業内職業能力開発計画(写) など
支給申請時に必要な申請書類は、主に以下の通りです。
- 支給要件確認申立書
- 支払方法・受取人住所届
- 支給申請書
- 賃金助成・OJT実施助成の内訳
- 経費助成の内訳
- OFF-JT実施状況報告書 など
必要な書類はコースによって異なるため、詳細は厚生労働省のWebサイトから確認してください。
【コース別】人材開発支援助成金の申請手順
コース別の申請手順を紹介します。スムーズに申請を進めるために、自社が申請する予定のコースの手順を確認しておきましょう。
人材育成支援コース
人材育成支援コースは、職務に関連した専門的知識や技能習得のための職業訓練等を実施した場合に助成を受けられる制度です。人材育成支援コースは、以下の訓練が用意されています。
訓練 |
内容 |
人材育成訓練 |
職務に関連した知識・技能を習得させるための10時間以上の訓練 |
認定実習併用職業訓練 |
事前に厚生労働大臣の認定を受けた実習併用職業訓練 (OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練) |
有期実習型訓練 |
有期契約労働者等に対し、正規雇用労働者等に転換するための訓練 |
申請の流れは前述した基本の流れと同様です。労働局への「職業訓練実施計画届(様式第1-1号)」と必要な書類の提出は、訓練開始日から起算して1か月前までに行いましょう。なお訓練によって、以下のように訓練内容が異なります。
訓練 |
内容 |
人材育成訓練 |
部内・部外講師によって行われる事業内訓練等を実施、 または、教育訓練施設で実施される事業外訓練等を受講 |
認定実習併用職業訓練 |
・企業内におけるOJTと教育訓練機関等で行われるOFF-JTを受講 ・訓練終了後に職業能力証明シートによって対象者の評価を実施 |
有期実習型訓練 |
訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に「支給申請書(様式第4号)」と必要な書類を労働局に提出してください。
教育訓練休暇等付与コース
教育訓練休暇等付与コースは、有給教育訓練等の制度を導入し、実際に適用した場合に助成を受けられる制度です。以下の制度が用意されています。
制度 |
内容 |
教育訓練休暇制度 |
3年間に5日以上の取得が可能な有給の教育訓練休暇を 導入・適用した場合に助成を受けられる制度 |
申請の流れは、上の画像の通りです。「制度導入・適用計画届」と必要書類を作成し、制度導入・適用計画期間の初日から起算して6か月前から1か月前までに各都道府県労働局へ提出します。次に、以下の通り制度導入および周知を行いましょう。
- 就業規則または労働協約への規定(制度の施行日を明記)
- 制度施行日までに就業規則または労働協約、事業内職業能力開発計画の労働者への周知
- (就業規則に規定した場合)規定した制度施行日までに労働基準監督署へ就業規則の届出
制度導入・適用計画に従い、被保険者へ制度を適用し、制度導入・適用計画期間終了日(制度導入日から3年)の翌日から2か月以内に支給申請書を提出します。審査の上、支給か不支給かが決定され、助成金の受給となります。
人への投資促進コース
画像引用元:令和5年度版パンフレット(人への投資促進コース)詳細版
人への投資促進コースは、高度なデジタル人材の育成を目指す訓練や定額制訓練、労働者の自発的な能力開発の促進などを実施した場合に助成を受けられる制度です。以下の訓練があります。
訓練 |
内容 |
高度デジタル人材訓練 |
高度デジタル人材の育成のための訓練や大学院での訓練 |
成長分野等人材訓練 |
|
情報技術分野認定 実習併用職業訓練 |
IT分野未経験者の即戦力化のための訓練 (OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練) |
定額制訓練 |
サブスクリプション型の研修サービスによる訓練 |
自発的職業能力開発訓練 |
労働者が自発的に受講した訓練 |
長期教育訓練休暇等制度 |
働きながら訓練を受講するための休暇制度や短時間勤務等制度 を導入する制度 |
申請の流れは上の画像の通りです。労働局への「職業訓練実施計画届(様式第1-1号) 」の提出は、訓練開始日から起算して1か月前までに行いましょう。
押さえておくべきポイントは 「自発的職業能力開発訓練」と「長期教育訓練休暇等制度」の場合、就業規則等に制度を定めることが必要な点です。また、訓練メニューによって制度導入のタイミングが異なることも押さえておきましょう。
訓練 |
制度導入のタイミング |
自発的職業能力開発訓練 |
計画提出前 |
長期教育訓練休暇等制度 |
計画提出後 |
訓練を実施したら、訓練計画に記載される訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に「支給申請書(様式第5号)」と、 必要な書類を労働局に提出してください。
事業展開等リスキリング支援コース
画像引用元:令和5年度版パンフレット(事業展開等リスキリング支援コース)詳細版
事業展開等リスキリング支援コースは、有給教育訓練等の制度を導入し、実際に適用した場合に助成を受けられる制度です。
申請の流れは上の画像の通りで、前述した基本の流れと同様です。労働局への「職業訓練実施計画届」(様式第1-1号)と必要な書類の提出は、訓練開始日から起算して1か月前までに行いましょう。
訓練は、部内・部外講師によって行われる事業内訓練を実施、 または教育訓練施設で実施される事業外訓練を受講します。訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に「支給申請書(様式第5号)」と必要な書類を労働局に提出しましょう。
建設労働者認定訓練コース
建設労働者認定訓練コースは、対象の訓練のうち建設関連の訓練を実施したり、建設労働者に有給で認定訓練を受講させたりする場合に助成を受けられる制度です。
申請の流れは、前述した基本の流れと同様です。建設関連の訓練を実施した場合に受けられる「経費助成」と、建設労働者に対して認定訓練を受講させた場合に受けられる「賃金助成」があります。
経費助成の場合
経費助成の場合、申請の流れは以下の通り。
画像引用元:建設事業主等に対する助成金(旧建設労働者確保育成助成金)のご案内(建設事業主向け)令和5年度版
認定訓練終了後、都道府県より認定訓練事業費補助金または広域団体認定訓練助成金にかかる精算確定の通知が発出されます。その日の翌日から原則2か月以内に、必要書類を労働局に提出しましょう。
賃金助成・賃金向上助成・資格等手当助成の場合
賃金助成の場合は、以下の通りです。賃金助成は、賃金助成分と、賃金向上助成・資格等手当助成分をそれぞれ申請する必要があります。
画像引用元:建設事業主等に対する助成金(旧建設労働者確保育成助成金)のご案内(建設事業主向け)令和5年度版
賃金助成分は、雇用保険適用事業所ごとに、人材育成支援コースの申請期間内に必要書類を労働局に提出しましょう。賃金向上助成・資格等手当助成分は、毎月決まって支払われる賃金または資格等手当を支払った日(※)の翌日から起算して5ヶ月以内に、必要書類を労働局に提出します。
(※)毎月決まって支払われる賃金または資格等手当の3ヶ月目の支払日を指す
建設労働者技能実習コース
建設労働者技能実習コースは、雇用する建設労働者に技能向上のための実習を、有給で受講させる場合に助成を受けられる制度です。
申請の流れは、申請の流れは、前述した基本の流れと同様です。計画届と必要書類は、技能実習を実施しようとする日の3か月前から原則1週間前までに労働局に提出し、訓練を実施します。
経費助成・賃金助成の場合
経費助成・賃金助成の場合、支給申請の流れは以下の通りです。
画像引用元:建設事業主等に対する助成金(旧建設労働者確保育成助成金)のご案内(建設事業主向け)令和5年度版
技能実習を終了した日の翌日から起算して原則2か月以内に、必要書類を労働局に提出します。
賃金向上助成・資格等手当助成の場合
賃金向上助成・資格等手当助成の場合は、以下の通りです。
画像引用元:建設事業主等に対する助成金(旧建設労働者確保育成助成金)のご案内(建設事業主向け)令和5年度版
毎月決まって支払われる賃金または資格等手当を支払った日(※)の翌日から起算して5ヶ月以内に、必要書類を労働局に提出します。
(※)毎月決まって支払われる賃金または資格等手当の3ヶ月目の支払日を指す
障害者職業能力開発コース
障害者職業能力開発コースは、障害者の職業に必要な能力を開発、向上させるための教育訓練を継続的に実施する施設の設置・運営を行う場合に助成を受けられる制度です。
受給手続きの方法は上の画像の通りですが、「施設または設備の設置・整備または更新」と「運営費」とで手続きの詳細が異なります。
施設または設備の設置・整備または更新の場合
訓練の施設または設備の設置・整備または更新に着手する前に、労働局に助成金にかかる受給資格の認定申請を行い、認定を受ける必要があります。指定の期間内に、必要書類を労働局に提出しましょう。
続いて、訓練の施設または設備の設置・整備または更新を完了した日の翌日から2か月以内に、必要書類を労働局に提出します。
運営費の場合
職業訓練を開始する3か月前までに労働局に対して、助成金にかかる受給資格の認定申請を行い、認定を受ける必要があります。指定の期間内に、必要書類を労働局に提出しましょう。
四半期ごとの支給となるので、各支給対象期が経過するごとに、当該支給対象期の末日の翌日から起算して2か月以内に必要書類を労働局に提出します。重度障害者等の就職加算について支給を受ける場合は、訓練終了日から起算して4か月以内に必要書類を提出してください。
人材開発支援助成金を申請する際の注意点
人材開発支援助成金を申請する際の注意点として、申請から受給までには時間がかかります。受給までに一時的に費用負担が発生することは押さえておきましょう。助成金の活用を考える場合、受給までの期間も考慮しておく必要があります。
【まとめ】人材開発支援助成金の申請手順を紹介しました
人材開発支援助成金の申請手順について解説しました。人材開発支援助成金の基本となる申請の流れは以下の通りです。
- 訓練計画の作成・提出
- 訓練の実施等
- 支給申請書の提出
- 助成金の支給決定または不支給決定
- 審査通過後に助成金を受給
コースによって申請方法の詳細や必要書類は異なるため、コース別に把握しておく必要があります。また、申請から受給までには時間がかかることにも注意が必要です。なお、人材開発支援助成金の対象講座・コースや支給金額などを理解したい方は、以下の記事もご覧ください。