事業再構築補助金はIT導入補助金と併用できる?可能・不可能なケースを解説!

事業再構築補助金はIT導入補助金と併用できる?可能・不可能なケースを解説!

事業再構築補助金とIT導入補助金のどちらを活用すればよいのか、両方を併用できるのか、併用できるケースとできないケースの違いは何か、知りたい方も多いのではないでしょうか。

本記事では、事業再構築補助金の活用方法と申請の流れ、IT導入補助金との違い、併用可能なケースと不可能なケースについて解説します。        

目次
  1. 1. 事業再構築補助金の概要
    1. 1-1. 事業再構築補助金の申請条件
    2. 1-2. 事業再構築補助金の対象になる経費
    3. 1-3. 事業再構築補助金の対象外となる経費
  2. 2. 事業再構築補助金を活用した事例
    1. 2-1. 新分野展開の事例
    2. 2-2. 業態転換の事例
    3. 2-3. 業種転換の事例
    4. 2-4. 事業転換の事例
    5. 2-5. 事業再編の事例
  3. 3. 事業再構築補助金の申請の流れ
    1. 3-1. 電子システムにログインする
    2. 3-2. 申請内容を選ぶ
    3. 3-3. 申請内容を送信
    4. 3-4. 採択結果の通知
    5. 3-5. 交付申請を実施
    6. 3-6. 補助事業実施期間
    7. 3-7. 交付額の確定
  4. 4. 事業再構築補助金の申請に必要な書類
  5. 5. IT導入補助金とは
  6. 6. 事業再構築補助金とIT導入補助金の違い
  7. 7. 事業再構築補助金とIT導入補助金は併用可能
    1. 7-1. 補助金は同一事業では併用できない
    2. 7-2. 補助金は同一事業・同一公募でも申請は可能
    3. 7-3. 事業再構築補助金と他の補助金が併用できるケース
  8. 8. ものづくり補助金は設備投資などを支援してもらえる
  9. 9. ものづくり補助金の申請枠
  10. 10. 【まとめ】事業再構築補助金とIT導入補助金の併用について解説しました

事業再構築補助金の概要

事業再構築補助金とは、長引くコロナ禍の影響下にある中小企業などが、ポストコロナ時代の経済変化に対応すべく、思い切った事業再構築を遂行できるよう支援する制度です。中小・中堅企業の再建による日本経済の構造転換を目的とし、以下の申請枠で募集を行っています。

  • 成長枠(旧 通常枠)
  • グリーン成長枠
  • 産業構造転換枠
  • 最低賃金枠
  • 物価高騰対策・回復再生応援枠
  • サプライチェーン強靭化枠※第11回公募では募集なし
  • 卒業促進枠(成長枠・グリーン成長枠の上乗せ)
  • 大規模賃金引上促進枠(成長枠・グリーン成長枠の上乗せ)

卒業促進枠と大規模賃金引上促進枠は、成長枠・グリーン成長枠への上乗せ枠として制定され、要件を満たした場合に補助金が上乗せ支給されます。

第11回公募で通常枠から改定された「成長枠」は、システム開発にも活用が可能で、補助金額と補助率は以下のとおりです。

従業員数

補助上限額

補助率

20人以下

100万円~2,000万円

中小企業:補助対象経費総額の1/2

(大規模な賃上げ※を行う場合は2/3)

 

中堅企業:補助対象経費総額の1/3

(大規模な賃上げ※を行う場合は1/2)

21~50人

100万円~4,000万円

51~100人

100万円~5,000万円

101人以上

100万円~7,000万円

出典:事業再構築補助金 公募要領

※大規模な賃上げ:事業終了時点で、事業場内最低賃金+45円と、給与支給総額+6%のいずれも達成していること。

成長枠では、申請時の売上高減少要件が外れたかわりに、成長分野の産業での補助事業実施が必要です。事業再構築補助金の発足当初は、コロナ禍により売上が減少した企業のみを補助対象としていましたが、成長枠では企業の成長にフォーカスし、要件を変更しています。

事業再構築補助金の申請条件

事業再構築補助金には申請枠のほかに、事業再構築の類型と、類型ごとに満たすべき要件があります。事業再構築補助金の全枠共通必須要件は、以下の2項目です。

  • 事業再構築指針に則った事業計画を事業者自身で作成し、「認定経営革新等支援機関(認定支援機関)」の確認を受けること
    ※補助金額が3,000万円を超える申請は金融機関の確認も必要。ただし認定支援機関が金融機関の場合は金融機関のみで可
  • 補助事業終了後3~5年で、企業または従業員1人あたりの付加価値額を、年率平均3.0~5.0%以上増加させること
    ※申請枠ごとに求められる年率は異なる

さらに、補助を受けて行う事業は、以下の事業再構築5類型のいずれかに当てはまる必要があります。

事業再構築の

類型

定義

事業計画で満たすべき要件

新市場進出

(新分野展開、

業態転換)

新たな製品・サービスの提供、

または提供方法の変更により、

新たな市場へ進出

(主たる業種・事業は変更せず)

新規事業の売上高が総売上高の10%以上

(もしくは総付加価値額の15%以上)となること

事業転換

新たな製品・サービスの提供により、

主たる「事業」を変更

(主たる業種は変更せず)

新製品・サービスを提供する事業(業種)が、

売上高構成比で最も高い事業(業種)となること

業種転換

新たな製品・サービスの提供により、

主たる「業種」を変更

新製品・サービスを提供する事業(業種)が、

売上高構成比で最も高い事業(業種)となること

事業再編

組織再編を行い、

新たな事業形態で新市場進出

(新分野展開、業態転換)・

事業転換・業種転換のいずれかを実施

交付決定後に「合併」「会社分割」「株式交換」

「株式移転」「事業譲渡」などを行うこと

国内回帰

海外で製造する製品について、

先進性のある製造方法で

国内生産拠点を整備

新規事業の売上高が総売上高の10%以上

(もしくは総付加価値額の15%以上)となること

参考:事業再構築補助金 公募要領経済産業省|事業再構築指針の手引き

「業種転換」と「事業転換」の区別は、総務省「日本標準産業分類」における大分類を変えるか中分類(小分類)を変えるかの違いです。大分類とは「製造業」「不動産業、物品賃貸業」「卸売業、小売業」などを指し、中分類とは「遷移・衣類等卸売業」と「飲食料品卸売業」といった区分を指します。

事業再構築補助金の補助対象事業者は、「中小企業」「中堅企業」「個人事業主」のほか「企業組合」などの法人です。

中小企業とは、業種ごとに基準が異なり、以下に該当する企業または個人を指します。

業種

資本金

従業員数(常勤)

製造業、建設業、運輸業

3億円

300人

卸売業

1億円

100人

サービス業

(ソフトウェア業、

情報処理サービス業、

旅館業以外)

5,000万円

100人

小売業

5,000万円

50人

ゴム製品製造業

(自動車または航空機用タイヤ・

チューブ製造業

ならびに工業用ベルト製造業以外)

3億円

900人

ソフトウェア業

または情報処理サービス業

3億円

300人

旅館業

5,000万円

200人

上記以外の業種

3億円

300人

出典:事業再構築補助金 公募要領 

「中堅企業」とは、資本金額または出資総額が10億円未満の法人のうち、中小企業などに当たらない事業者のことです。

事業再構築補助金の対象になる経費

事業再構築補助金で、補助対象と認められる経費は以下のとおりです。

経費区分

詳細

建物費

事務所、生産・加工・販売施設、倉庫などの

 建物の建設・改修の費用

・建物撤去や原状回復、一時移転の費用

機械装置・システム構築費

・ソフトウェア・情報システムの購入・構築・リースの費用

・上記と一体で行う改良・修繕・据付けなどの費用

技術導入費

知的財産権の導入費用

専門家経費

依頼した専門家への支払い費用

運搬費

運搬料、宅配・郵送料など

クラウドサービス利用費

クラウドサービスの利用料金

外注費

加工・設計(デザイン)・検査などの外注費用

※事業者が行うべき手続きの代行費用は対象外

知的財産権等関連経費

新製品・サービス事業化の特許権取得に必要な

弁理士の手続代行費用や、

外国特許出願の知的財産権等取得に必要な費用

広告宣伝・販売促進費

補助事業で提供する製品・サービスの広告の作成や媒体掲載、

展示会出展、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、

マーケティングツール活用の費用

研修費

補助事業遂行に必要な教育訓練や講座受講の費用

廃業費

・既存事業の廃止に必要な行政手続を司法書士、行政書士

 に依頼する費用

・既存事業の廃止にともなう解体、原状回復、リース解約、

 移転・移設の費用

出典:事業再構築補助金 公募要領

上記の費目であっても、補助対象経費と認められるのは補助事業実施に必要で、補助事業のためだけに使われると明示できるもののみです。既存事業や他事業と共用できる経費は補助対象と認められず、目的外使用と判断されれば、不採択や採択取り消しになるため注意しましょう。

事業再構築補助金の対象外となる経費

原則として、既存事業その他補助事業以外に転用できる経費や、補助事業に直接必要と認められない経費は補助対象外です。補助対象外とされる経費には以下の費目が挙げられます。

  • 補助事業に携わる従業員の人件費・旅費
  • 消耗品費、光熱水費、通信費
  • 商品の原材料費
  • 車両や運搬具の購入費
  • 建物の単なる購入・賃貸、賃貸契約の満了による原状回復
  • パソコンやタブレット端末・スマートフォンなどの本体費用
  • フランチャイズ加盟料
  • 申請時の認定支援機関への支払い費用、事業計画作成時の外部支援者への支払い費用
  • 既存事業と共有するクラウド費
  • サーバーの購入・レンタル費
  • 外注先の機械装置やシステム購入費
  • 事業の一部を閉鎖した場合の廃業費
  • 過去の公募回で採択された事業の廃業費

参考:事業再構築補助金の概要事業再構築補助金 公募要領

パソコンやプリンタのような汎用性の高い経費は、基本的に補助対象外です。ただし、CADやCAMなどに使用するパソコンは「機械装置・システム構築費」と認められる可能性があります。計上予定の経費が補助対象になるか不明な場合は、専門家に確認するとよいでしょう。

事業再構築補助金を活用した事例

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事業再構築補助金やIT導入補助金などの補助金を、どのように活用したらよいのか、わからない方もいるかもしれません。ここで補助金の活用法をイメージできるよう、事業再構築補助金の5類型で実際に採択され、補助金を活用している事例を紹介します。

新分野展開の事例

メイン事業は変えず、新製品・新サービスの開発・提供により、従来と異なる市場を開拓する「新分野展開」での活用事例です。

茨城県つくば市にある「有限会社葡萄酒蔵ゆはら」は、イタリア・フランス産をはじめとする銘品ワインのインターネット通販・レストラン卸を手がける事業者です。従来は主力事業として、会員制で企業・事業者向けに、オーガニックワインなどの卸売り・通信販売を実施してきました。

しかしコロナ禍を経て多様化した消費者行動を踏まえ、新たな収益源確保の必要性に迫られています。そこで店内にオーガニックワインを楽しめるワインバーを設置するほか、テイクアウトショップ事業にも進出する事業計画を策定。新たな顧客層へのアプローチに、事業再構築補助金を活用しています。

業態転換の事例

メインの商品・サービスは変えずに、製造方法・提供方法を転換する「業態転換」での活用事例です。

宮城県仙台市泉区にある「AQUAN」は、ブランド品や時計・貴金属・着物を中心に買取販売を行う、地域密着のリサイクルショップです。

新たに収益源を拡張するため、「きもの館京や」事業では、既存の買取事業で仕入れた3,000着以上の着物を活用した、結婚式・卒業式向けのレンタル事業をスタート。さらに利用客に対し、着付けとヘアセットまでトータルコーディネートで提供する事業計画を策定し、補助金に採択されました。地域顧客のニーズに応えつつ、「リデュース」「リユーズ」「リサイクル」の3Rを実現できる革新的な補助金活用法です。

業種転換の事例

新製品・新サービスの提供により、新事業の売上比率を高める「業種転換」での活用事例です。

北海道北広島市大曲にある「有限会社札幌食品機械」は、豆腐製造器具の製造と食品添加物の販売、洗浄機の卸売・修理を手がける企業です。

コロナ禍と物価・原油価格高騰の影響を強く受け、既存の食品関連事業が低迷したため、成長分野である食品加工機械の部品生産に活路を見いだそうと画策。もともとの強みである機械構造の技術力を活かして新市場へ進出し、売上と付加価値を高める事業計画を策定し、補助金に採択されました。

業種転換にはほかにも、卸売業による商品製造の内製化や、販売までの一貫化といった補助金活用事例が挙げられています。

事業転換の事例

メインの業種を変えずに、別の事業を手がける「事業転換」での活用事例です。

札幌市白石区にある「有限会社丸太千田商店」は、酒類の卸・小売を行う会社です。

新型コロナウイルス感染拡大で、主事業である飲食店・小売店の発注数が大幅に減ったことに危機感を抱き、話題性のある新規事業の立ち上げを画策。そこで卸先への商品提案にも使える、店頭での角打ちサービスを立案しました。「飲める酒屋」のコンセプトで、店舗に専用スペースを新設するリノベーション資金として、補助金を申請し採択されています。

事業転換としては上記以外にも、卸売・小売業から自社製造販売へ進出するために補助金を活用した事例が挙げられています。

事業再編の事例

複数事業を整理・統合し、新たな市場へ進出する「事業再編」の活用事例です。

仙台市太白区にある「有限会社MKD」は、音楽関連商材の卸売を手がける会社です。近年はパンデミックによる音楽イベントの減少や中止を受け、既存事業の収益が減少していました。

そこで地元仙台の名産・牛タンの総菜加工品製造や、他社ブランド商品の製造を請け負うOEM事業への着手を決定。もともと自社の物流ネットワークやEC販売事業者とのコネクションを持つ同社は、商品流通の独自ルートに強みがありました。牛タンの製造から卸売・流通までを請け負う事業へと転換を図る計画で、補助金に採択されています。

独自の既存リソースを活用しながら、事業統合で不足の人材とノウハウを補い、事業を再編した好事例といえるでしょう。

事業再構築補助金の申請の流れ

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ここから、事業再構築補助金の申請手続きの流れを紹介します。申請には「GビズID・プライム」アカウントが必要なため、まだ取得していない場合は、申請前に以下URLより取得してください。

アカウントの発行には1週間程度かかるため、補助金の申請期限に間に合うよう、余裕を持って手続きを行いましょう。

電子システムにログインする

GビズIDプライムアカウントを取得できたら、事業再構築補助金の電子申請システム「Jグランツ」を使用し申請します。申請システムへは、「GビズIDプライム」アカウントのIDと、ワンタイムパスワード(6桁)を使ってログインしてください。

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画像引用:電子申請システム 操作マニュアル (単独申請)

ワンタイムパスワードは登録済みの電話番号へ通知されますが、有効期間は1時間以内です。1時間で入力を完了しないと、最初からやり直しになるためご注意ください。入力手順は「電子申請システム 操作マニュアル (単独申請)」に記載されているため、事前に予習し、必要事項をあらかじめ整理しておくと安心です。提出書類も用意しておきましょう。

申請内容を選ぶ

ログイン後、申請枠を選択し、必要項目を入力します。

  1. 「電子申請システム利用規約等」の内容を確認し「承認する」をクリック
  2. 申請TOP画面」が表示されたら、申請の類型(枠)を選択
  3. それぞれの枠の申請ページへ移動したら、「補助率引上げの申請」から順に入力
  4. 入力内容に応じ、必要な書類を「B.提出書類添付」へ添付していく

入力項目は申請枠により異なります。マニュアルでは枠ごとの入力画面を掲載して説明しているので、参照しながら入力しましょう。提出書類のファイル形式もマニュアルで指定されているため、不備とならないよう遵守してください。

一連の申請手続きは、認定支援機関などに代行申請を依頼すると、不正アクセスとみなされ不採択となるほか、今後の公募で申請を受け付けてもらえない可能性があります。申請者自身で手続き・入力を行いましょう

申請内容を送信

「補助率引上げの申請」「B.提出書類添付」など、すべての入力を終えたら、以下の手順で申請内容の確認と送信を行います。

  1. 申請内容に問題がなければ、画面右下の「チェックリスト画面へ」をクリック
  2. チェックリストを1項目ずつチェックしたら「最終画面へ」をクリック
  3. 「誓約事項」へ移動したらチェックを入れる
  4. アンケート(準備・入力時間について)に答えたら、右下の「申請」をクリック
  5. 申請書類の送信が完了したら「終了」をクリック

時間をおいて申請受付メールが届きます。事務局への問い合わせに必要なため、受付番号を控えておきましょう。申請内容についても、採択発表までの期間はシステムから確認できますが、採択発表後は閲覧できなくなります。申請内容の保存と提出書類のバックアップを忘れずに行いましょう。

採択結果の通知

審査結果は、採択・不採択のどちらでも事務局からの通知で確認が可能です。採択された事業については、商号・名称や補助事業計画名、事業計画書の概要、認定支援機関名が公表されます。もし書類に形式的な不備があった場合は、採択結果の公表前に事務局から通知を受けます。

採択結果の発表までには、3ヵ月程度見ておきましょう。第11回公募では、応募締切が2023年10月6日、補助金交付候補者の採択結果発表は同年12月下旬~2024年1月上旬の予定でした。しかし後日経済産業省より、1月下旬~2月上旬頃までの結果発表延期が伝えられています。

交付申請を実施

申請が採択され「補助金交付候補者」となったら、補助金の交付申請手続きを行います。交付申請の手順や提出書類については、「補助事業の手引き」を参照し、漏れのないよう整備しましょう。

【すべての申請者の必須書類】

  • 「経費明細表」
  • 見積依頼書・見積書
  • 建物費、機械装置・システム構築費の追加書類
  • 「取得財産に係る誓約書」(参考様式 21)
  • 事業再構築補助金に係る補助対象経費について(理由書)

【該当者のみ提出する書類】

  • 「補助対象経費により取得する建物に係る宣誓書」(参考様式24)
  • 別途補助金交付候補者の採択発表時に事務局より提出を依頼した宣誓書類等
  • 共同申請のリース会社が作成した「共同申請にかかる確認書」(参考様式25)
  • 本補助事業に取り組むことについて、総会の議決を得ていることが確認できる証憑

「補助金交付候補者」の名称が表すとおり、採択されたことで、申請した事業経費の交付が決定される訳ではありません。交付申請で経費が補助対象かどうか、事業計画に沿って経費を精査したうえで、交付申請を行いましょう。

交付申請が遅れると、補助事業完了までの期限が短縮されてしまうため、見積書や領収書などの実績報告に必要な書類を早めに準備し、手順よく申請を進めることが大切です。

補助事業実施期間

交付申請が通り補助金の交付決定を受けたら、ただちに補助事業を開始しましょう。補助事業の実施期間は「交付決定日から12ヵ月以内」、ただし「補助金交付候補者の採択発表日から14ヵ月後の日」までのため、着手が遅れるほど期間が短くなります。

補助事業の実施期間内で、対象事業の契約から発注、納品、研修、支払い、補助事業実施報告書までを完了させることが必要です。さらに補助事業を完了した日から起算して30日、または補助事業完了期限日のいずれか早い日までに「補助事業実績報告書」を提出しなければなりません。提出が間に合わないと、交付決定を取り消されてしまいます

もし交付決定後に自社の責任以外の理由(甚大な自然災害・火災など)で、補助事業実施期間内に事業を完了できない場合は「事故等報告」を行いましょう。提出により、補助事業実施期間の延長が認められるケースがあります。

交付額の確定

補助事業が完了したら、「補助事業実績報告書」に基づいて補助金の交付額が確定されます。なお事務局は事業の成果を含めて交付を判断するため、交付される補助金額が申請した金額と同一とは限りません

補助金の支払いは原則、補助事業終了後に補助金額が確定してからの精算払いです。ただし事務局が必要と認めた経費に限り、補助事業実施期間中に「概算払」として支払われる場合もあります。

受領した補助金は経理上、支払いを受けた事業年度での収入として計上する必要があり、法人税などの課税対象となる点にも留意しましょう。

事業再構築補助金の申請に必要な書類

事業再構築補助金の申請手続きはJグランツで容易に行えます。とはいえ、提出書類が多いため、準備できていないと申請でつまづくばかりか、不備があれば採択を受けられません。

ここで事業再構築補助金の申請に必要な書類を以下にまとめました。

  • 事業計画書
  • 認定経営革新等支援機関・金融機関による確認書
  • 決算書(貸借対照表・損益計算書など)
  • ミラサポplusによる「事業財務情報」
  • 従業員数を証明する書類(労働者名簿)
  • 収益事業を行っていることを説明する書類
  • 建物新築の必要性を説明する書類

上記のほか申請する事業類型により、市場拡大(縮小)要件や、給与総額増加要件その他の要件を満たすことを説明する書類が必要になります。最新の「公募要項」に記載されている「添付書類」を参照し、漏れ・不備なく提出しましょう。

IT導入補助金とは

事業再構築補助金はIT導入補助金と併用できる?可能・不可能なケースを解説!        _6

画像引用:IT導入補助金2024の精度概要について

ITシステムの導入に使える補助金には、事業再構築補助金のほかに「IT導入補助金」があります。IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者の生産性を向上させるために、業務効率化・DX推進・セキュリティ対策のためのITツール導入費用を支援する制度です。

補助金申請者(中小企業・小規模事業者等)は、IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者※」とパートナーシップを組んで申請する必要があります。

補助額は450万円/者まで、補助率は補助対象経費総額の1/2~4/5で、安価なITツールの導入にも活用できること、ハードウェアも補助対象となることが特徴。2024年公募枠から「インボイス枠」が設けられ、インボイス制度に対応した会計・受発注・決済ソフトにも活用が可能です。

申請には「GビズID」プライムアカウントから事業者登録を行ったうえで、「みらデジ」の経営チェックを受ける必要があります。加えて交付申請要件としては、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「SECURITY ACTION」への宣言が必要です。

※IT導入支援事業者:申請者に対し、ITツールの説明や導入・運用方法の相談、および補助金の交付申請や実績報告などの各種申請・手続きをサポートする事業者のこと。

事業再構築補助金とIT導入補助金の違い

IT導入のために事業再構築補助金とIT導入補助金のどちらを活用するか、迷う企業も多いでしょう。そこで、両者の違いを表にまとめましたのでご参照ください。

 

事業再構築補助金

IT導入補助金

補助対象者

小規模事業者

・中小企業

・中堅企業

・小規模事業者

・中小企業

補助対象経費

  • ・建物費
  • ・機械装置・システム構築費
  • ・技術導入費
  • ・専門家経費
  • ・運搬費
  • ・クラウドサービス利用費
  • ・外注費
  • ・知的財産権等関連経費
  • ・広告宣伝・販売促進費
  • ・研修費
  • ・廃業費

・会計・受発注・決済などの各種業務ソフト

・セキュリティソフト

・クラウド利用費

・PC・タブレット端末、レジ、

 券売機などのハードウェア

・導入に関わるコンサルティングや設定、

 保守サポート費用

補助金額

~1億円

~450万円

補助上限

補助対象経費総額の2/3

(特別枠3/4)

補助対象経費総額の1/2

(特別枠2/3)

事業再構築補助金は補助対象者に中堅企業が含まれますが、IT導入補助金は小規模事業者・中小企業のみです。事業再構築補助金のほうが補助金額が多額で、補助対象経費も広範囲となっています。

一方で、IT導入補助金は生産性を上げるIT導入・セキュリティ対策のための補助金であり、導入目的が既存事業の業務効率化でも問題ありません。PC・タブレット端末、レジ、券売機などのハードウェア導入にも活用できるため、自社の事業展開に応じて、両者を使い分けるとよいでしょう。

事業再構築補助金とIT導入補助金は併用可能

事業再構築補助金のポータルサイト「よくある質問」には、他の補助事業との併用は可能であるとの記載があります。補助金のほかに持続化給付金や、事業復活支援金の給付を受けていても、事業再構築補助金に申請が可能です。

ただし複数制度の併用には注意点と条件があるため、ここから解説します。

補助金は同一事業では併用できない

事業再構築補助金ポータルサイトで「他の補助事業との併用は可能か?」との質問に対し、「同一事業で複数の補助金を受けることはできない」との回答があります。併用できない同一事業とは、例えば以下のようなケースです。

  • 飲食店を営む事業者が小売業へ進出し、IT導入補助金で通販サイトを構築すると同時に、事業再構築補助金でECサイト用の倉庫建設費・広告宣伝費を申請する

この場合、同じ事業にIT導入補助金と事業再構築補助金を利用しているため、併用とみなされ採択を受けられません。

補助金は同一事業・同一公募でも申請は可能

同一事業で2つ以上の補助金を受領できないことを説明しましたが、同一事業で複数の補助金について、それぞれの要件を満たしていれば「申請」自体は可能です。

ただし、仮に複数の補助金で採択された場合は、複数の併用(受領)が認められていないため、いずれか1つに絞り他を辞退しなければなりません。申請が不採択になった場合を見越して、複数の補助金へ申請するケースも考えられますが、辞退にも手間がかかる点に注意が必要です。

また、事業再構築補助金の公募要項に「同時に複数の事業を計画している場合には、事業計画書に複数の計画の内容を記載して申請することは可能」とあります。1回の公募につき1申請が原則ですが、同じ公募で複数事業の並行申請は可能です。

事業再構築補助金と他の補助金が併用できるケース

同じ事業者でも別の事業であれば、事業再構築補助金と他の補助金との併用は可能で、例えば以下のようなケースが当てはまります。

  • 外食産業の事業者が、IT導入補助金でシステムを導入し業務効率化を図り、新たに自社製品の製造販売を手がけるために事業再構築補助金を利用
  • 外食産業の事業者が、事業再構築補助金で不動産事業を立ち上げるほか、IT導入補助金で小売業のECサイトを構築する

事業再構築補助金とIT導入補助金との併用は、既存事業と新規事業、新規事業と新規事業といった組み合わせで申請すれば、採択される可能性が高まるでしょう。

ものづくり補助金は設備投資などを支援してもらえる

事業再構築補助金はIT導入補助金と併用できる?可能・不可能なケースを解説!        _1

画像引用:ものづくり補助金総合サイト・公募要領(17次締切分)

IT導入補助金と同様、システム導入に活用できる補助金に「ものづくり補助金」があります。

「ものづくり補助金」とは、中小企業・小規模事業者が生産プロセスを改善し、革新的なサービスを開発できるために、設備投資を支援する制度です。中小企業・小規模事業者などが度重なる制度変革(働き方改革・被用者保険適用拡大・賃上げ・インボイスなど)に対応できるよう、支援する目的もあります。

補助対象事業者には、中小企業と小規模事業者、従業員数が一定以下の特定事業者・特定非営利活動法人・社会福祉法人があります。

ものづくり補助金の補助対象経費は、以下のとおりです。

  • 機械装置・システム構築費
  • 運搬費
  • 技術導入費
  • 知的財産権等関連経費
  • 外注費
  • 専門家経費
  • クラウドサービス利用費
  • 原材料費

ものづくり補助金は事業再構築補助金と異なり、新規事業の建物費や広告宣伝・販売促進費などに活用できないかわりに、既存事業の設備投資に活用が可能です。

ものづくり補助金の申請枠

ものづくり補助金の申請枠は「省力化(オーダーメイド)枠」「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」の3つ。ただし第17次公募(2024年2月13日~3月1日)では「省力化(オーダーメイド)枠」のみの募集です。

「省力化(オーダーメイド)枠」は、革新的な生産プロセスの効率化を図るための、デジタル技術を活用した専用設備導入を支援する枠です。事業遂行に必要な設備・システム投資を支援し、人手不足の解消を図る目的で設けられました。

補助対象の「オーダーメイド設備」とは、生産工程を自動化するために、以下の先端技術を活用し、外部SIerと連携して自社専用に設計された装置・システムのことです。

  • ICT
  • IoT
  • AI
  • ロボット
  • センサー

ものづくり補助金の省力化(オーダーメイド)枠の補助金額は、従業員数により以下のように決められています。

従業員数

補助金額 ※()内は大幅賃上げを行う場合

従業員数5人以下

100万円~750万円(+250万円まで)

6~20人

100万円~1,500万円(+500万円まで)

21~50人

100万円~3,000万円(+1,000万円まで)

51~99人

100万円~5,000万円(+1,500万円まで)

100人以上

100万円~8,000万円(+2,000万円まで)

出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(17次締切分)省力化オーダーメイド

IT導入補助金と同様に、別の事業で申請すれば事業再構築補助金との併用が可能です。補助金の導入を検討する際には、何にどれだけ投資すべきかを明確にして、専門家に相談しながら上手に補助金を選択し使い分けましょう。

【まとめ】事業再構築補助金とIT導入補助金の併用について解説しました

事業再構築補助とIT補助金は併用できますが、同一事業で申請した場合は採択されないため注意が必要です。新規事業と既存事業のように、別の事業であれば併用して受領が可能です。

補助金併用の可・不可の判断には知識が必要なため、事業再構築補助金と他の補助金を併用したい場合には、専門家のアドバイスを得ることをおすすめします。申請できるケースとできないケースを確認しながら事業計画を作成し、各補助金の採択につなげましょう。