業務改善助成金はいくらもらえる?助成金の上限額・助成率・計算方法を解説!

業務改善助成金はいくらもらえる?助成金の上限額・助成率・計算方法を解説!

業務改善助成金を活用して設備投資による生産性向上と賃金引き上げを実現したい。

しかし、自社の場合、業務改善助成金をいくら受給できるのか。知りたい方に向け、条件ごとの助成金上限額、助成率、計算方法などを紹介していきます。

目次
  1. 1. 業務改善助成金とは
    1. 1-1. 業務改善助成金の対象事業者
    2. 1-2. 業務改善助成金の対象となる設備投資
  2. 2. 業務改善助成金はいくらもらえる?
    1. 2-1. 最大600万円受給できる特例事業者とは
    2. 2-2. 業務改善助成金の助成率
    3. 2-3. 助成率の高くなる生産性要件とは
    4. 2-4. 賃金を引き上げる労働者の数え方
  3. 3. 業務改善助成金の計算方法
  4. 4. 業務改善助成金の申請期限について
  5. 5. 【まとめ】業務改善助成金はいくらもらえるのかを紹介しました

業務改善助成金とは

業務改善助成金とは、設備投資による生産性向上と従業員の賃金引き上げを計画している事業者を対象に、最大600万円を支給する助成金制度です。具体的には、事業場内最低賃金を30円以上引き上げる計画、設備投資計画を立てて申請し、承認 / 事業完了後に設備投資にかかった費用の一部が支給されます。

業務改善助成金の対象事業者

業務改善助成金の対象事業者は、中小企業 / 小規模事業者です。以下の要件を満たした事業者は「事業場ごと」に業務改善助成金を申請できます。

  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内
  • 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がないこと

事業場内最低賃金とは、事業場内でもっとも低い賃金のこと。地域別最低賃金とは、国が毎年10月頃に改定する都道府県ごとの最低賃金のことです。令和5年度(2023年度)の地域別最低賃金については、厚生労働省のホームページで確認できます。

業務改善助成金の対象となる設備投資

業務改善助成金の対象となるのは、生産性向上・労働能率の増進に役立つ設備投資等です。

  • POSレジシステムなどの機械設備導入
  • 業務フロー見直しなどの経営コンサルティング
  • 人材育成・教育訓練

また、生産量要件もしくは物価高騰等要件を満たす特例事業者であれば、200万円以下の自動車、PC / タブレットや周辺機器、広告宣伝費なども設備投資の対象にできます。

業務改善助成金の詳細については以下の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:業務改善助成金とは|令和5年度の対象者・助成額・申請の流れを紹介

業務改善助成金はいくらもらえる?

それでは、実際に業務改善助成金はいくらもらえるのか?知りたい方に向け、助成額の決まる仕組みを解説していきましょう。業務改善助成金は、30円から90円までの4つのコースが用意されており、それぞれ賃金を引き上げた労働者数、事業規模によって助成金の上限額が決まります。

コース区分

事業場内最低賃金の

引き上げ額

賃金を引き上げる

労働者数

助成金上限額

事業場規模

30人以上

事業場規模

30人未満

30円コース

30円以上

1人

30万円

60万円

2〜3人

50万円

90万円

4〜6人

70万円

100万円

7人以上

100万円

120万円

10人以上 ※

120万円

130万円

45円コース

45円以上

1人

45万円

80万円

2〜3人

70万円

110万円

4〜6人

100万円

140万円

7人以上

150万円

160万円

10人以上 ※

180万円

180万円

60円コース

60円以上

1人

60万円

110万円

2〜3人

90万円

160万円

4〜6人

150万円

190万円

7人以上

230万円

230万円

10人以上 ※

300万円

300万円

90円コース

90円以上

1人

90万円

170万円

2〜3人

150万円

240万円

4〜6人

270万円

290万円

7人以上

450万円

450万円

10人以上 ※

600万円

600万円

参考:厚生労働省

※最大600万円の業務改善助成金を受給できるのは、特例事業者の事業場のみです。

最大600万円受給できる特例事業者とは

特例事業者とは、業務改善助成金を申請する事業場が「賃金要件」「生産量要件」「物価高騰等要件」のいずれかを満たしている事業者のことです。

要件

概要

賃金要件

事業場内最低賃金が950円未満の事業者

生産量要件

新型コロナウイルスの影響で、

直近3か月の売上高 / 生産量などの月平均が前年、

または前々年、または3年前同期から15%以上減少している事業者

物価高騰等要件

物価高の影響で、申請前3か月の任意の1か月の利益率が、

前年同期から3%ポイント以上低下している事業者

上述したように、生産量要件もしくは物価高騰等要件を満たす特例事業者は、設備投資等の選択肢の広がる「助成対象経費の拡大」措置も受けられます。

業務改善助成金の助成率

ただし、業務改善助成金は、設備投資にかけた費用全額を補填できるものではありません。業務改善助成金には事業場内最低賃金に応じた「助成率」が定められており「設備投資した金額 × 助成率」「助成上限額」どちらか低い方の金額を受給できます。事業場内最低賃金の助成率は以下の通り。

事業場内最低賃金

助成率

生産性要件を満たした事業者の助成率

900円未満

9/10

900円以上950円未満

4/5

9/10

950円以上

3/4

4/5

参考:厚生労働省

助成率の高くなる生産性要件とは

一部の助成金制度で廃止された「生産性要件」ですが、業務改善助成金では引き続き設けられることになり、要件を満たした事業者は助成率の割増措置を受けられます。業務改善助成金を申請する直近の会計年度の生産性が「3年度前に比べて6%以上、または1%以上6%未満伸びている」ことが要件です。

具体的には、生産性要件算定シートへの転記 / 計算が必要ですが、付加価値を雇用保険被保険者数で割った数値が生産性です。

※付加価値 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費 + 動産・不動産賃料 + 租税公課

賃金を引き上げる労働者の数え方

業務改善助成金をいくらもらえるかに大きく関係する「労働者数」ですが、一律で賃金を引き上げても、全員が対象になるわけではないことを知っておきましょう。大前提として、引き上げ後の事業場内最低賃金をすでに上回っている従業員は対象となりません。賃金引き上げ額がコース区分の金額を下回っていても対象から外れます。

厚生労働省で公開している、「事業場内最低賃金が900円の事業場が30円コースを申請」する場合の例を紹介しておきましょう。

業務改善助成金はいくらもらえる?助成金の上限額・助成率・計算方法を解説!_1

画像出典:厚生労働省

業務改善助成金の計算方法

上述したように、業務改善助成金の計算方法は「設備投資した金額 × 助成率」または「助成上限額」どちらか低い方です。では実際、業務改善助成金はいくら支給されるのか?簡単にシュミレーションしてみましょう。条件は以下の通り。

  • 事業場内最低賃金890円の特例事業者(事業場規模40人、助成率9/10)
  • 10人の労働者を890円から980円へ賃上げ(90円コース、上限額600万円)
  • 600万円の設備投資

この場合、「設備投資した金額 × 助成率(600万円 × 9/10 = 540万円)」、「助成上限額は600万円」となるため、支給される業務改善助成金は540万円です。設備投資が700万円であれば(700万円 × 9/10 = 630万円)、助成上限額の600万円が支給されます。

業務改善助成金の申請期限について

いまからでも業務改善助成金を申請できるだろうか?そんな方でもまだ間に合います。1月31日に締め切られた令和5年度(2023年度)の業務改善助成金の申請期限は、2024年3月31日まで延長されたからです。

延長期限までに業務改善助成金を申請した対象事業者は、設備投資を含む事業完了期限を2024年4月1日〜2025年2月28日の間で設定可能。ただし、すでに従業員の賃上げを実施してしまっている場合は申請できません

業務改善助成金はいくらもらえる?助成金の上限額・助成率・計算方法を解説!_2

画像出典:厚生労働省

業務改善助成金の申請方法・手順については以下の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:業務改善助成金の申請方法・手続きの流れ・概要を解説!

【まとめ】業務改善助成金はいくらもらえるのかを紹介しました

業務改善助成金を活用して設備投資による生産性向上と賃金引き上げを実現したい。しかし、自社の場合、業務改善助成金をいくら受給できるのか。知りたい方に向け、条件ごとの助成金上限額、助成率、計算方法などを紹介してきました。

延長されたとはいえ、令和5年度の業務改善助成金の期限にあまり余裕はありません。ただし、2024年2月時点で正式は発表はないものの、令和6年度の業務改善助成金も実施される公算です。期限には間に合わないかもしれないが、業務改善助成金には興味があるという方は、続報をお待ちください。