業務改善助成金の申請方法・手続きの流れ・概要を解説!
業務改善助成金を申請したいが、方法は?必要な書類は?手続きはどうしたらいい?そんな疑問を持つ方に向け、制度の概要を簡単に紹介するとともに、業務改善助成金の申請方法・手続きの流れを解説していきます。
業務改善助成金とは
業務改善助成金とは、賃金引き上げを目的とした設備投資を計画 / 実行した事業者に、設備投資費用の一部を支給する助成金制度のこと。事業者の満たす要件、賃金の引き上げ額、企業規模、および設備投資の費用に応じて支給額が決まる仕組みです。
業務改善助成金の詳細については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:業務改善助成金とは|令和5年度の対象者・助成額・申請の流れを紹介
業務改善助成金の対象事業者と要件
業務改善助成金を申請できるのは、以下の要件を満たす事業者です。
- 要綱に定められた中小企業・小規模事業者
- 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内
- 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がない
事業場内最低賃金とは、事業場でもっとも低い賃金のこと。地域最低賃金とは、例年10月に改定される都道府県ごとの最低賃金のことです。また、過去に業務改善助成金を受給したことのある事業者でも、要件を満たせば再申請可能。これは業務改善助成金制度ならではの特徴です。
特例事業者とは
業務改善助成金の対象で、なおかつ以下のいずれかの要件を満たす事業者は、特例事業者としていくつかの優遇措置を受けられます。具体的には、通常450万円の助成上限額が最大600万円に拡大されること、助成対象経費の拡大措置も受けられること。自社が要件を満たせるかどうか、要確認です。
要件 |
概要 |
賃金要件 |
事業場内最低賃金が950円未満の事業者 |
生産量要件 |
新型コロナウイルスの影響で、直近3か月の売上高 / 生産量などの月平均が前年、 または前々年、または3年前同期から15%以上減少している事業者 |
物価高騰等要件 |
物価高の影響で、申請前3か月の任意の1か月の利益率が、 前年同期から3%ポイント以上低下している事業者 |
業務改善助成金の助成対象経費(設備投資等)
業務改善助成金を受給するには、30円以上の事業場内最低賃金引き上げを目的とする「生産性に寄与する設備投資等」を計画 / 実行しなければなりません。この設備投資等にかかる費用を「助成対象経費」といいますが、すべての設備投資等が助成対象となるわけではありません。原則として認められている助成対象経費は以下の通り。
- POSレジシステム / リフト付き特殊車両などの機械設備導入
- 業務フロー見直しなどの経営コンサルティング
- 人材育成・教育訓練
助成対象経費の拡大措置
ただし、上述したように「特例事業者」として認定された事業者のうち、生産量要件あるいは物価高騰等要件を満たした場合、助成対象経費の拡大措置を受けられます。具体的には、通常の助成対象経費に加え、以下のような経費も助成対象として認められます。
助成対象経費の拡大 |
経費の例 |
生産性向上に寄与する設備投資等 |
・定員7名以上または車両本体価格200万円以下の 乗用自動車 / 貨物自動車 ・PC / モバイル機器などの端末と周辺機器の新規購入 |
関連する経費 |
広告宣伝費、汎用事務機器、事務室の拡大、 机・椅子の増設など |
業務改善助成金の上限額 / 助成率
業務改善助成額の支給額は、30円〜90円まで4つ用意されたコース区分、賃金引き上げする労働者数、企業規模によって助成上限額が細かく定められています。
コース区分 |
事業場内最低賃金の 引き上げ額 |
賃金を引き上げる 労働者数 |
助成金上限額 |
|
事業場規模 30人以上 |
事業場規模 30人未満 |
|||
30円コース |
30円以上 (※は特例事業者のみ) |
1人 |
30万円 |
60万円 |
2〜3人 |
50万円 |
90万円 |
||
4〜6人 |
70万円 |
100万円 |
||
7人以上 |
100万円 |
120万円 |
||
10人以上 ※ |
120万円 |
130万円 |
||
45円コース |
45円以上 (※は特例事業者のみ) |
1人 |
45万円 |
80万円 |
2〜3人 |
70万円 |
110万円 |
||
4〜6人 |
100万円 |
140万円 |
||
7人以上 |
150万円 |
160万円 |
||
10人以上 ※ |
180万円 |
180万円 |
||
60円コース |
60円以上 (※は特例事業者のみ) |
1人 |
60万円 |
110万円 |
2〜3人 |
90万円 |
160万円 |
||
4〜6人 |
150万円 |
190万円 |
||
7人以上 |
230万円 |
230万円 |
||
10人以上 ※ |
300万円 |
300万円 |
||
90円コース |
90円以上 (※は特例事業者のみ) |
1人 |
90万円 |
170万円 |
2〜3人 |
150万円 |
240万円 |
||
4〜6人 |
270万円 |
290万円 |
||
7人以上 |
450万円 |
450万円 |
||
10人以上 ※ |
600万円 |
600万円 |
参考:厚生労働省
ただし、助成対象経費には事業場内最低賃金に応じた「助成率」が定められており、経費に助成率を乗じた金額、または助成上限額、いずれか低い金額が支給される決まりです。
たとえば、20人の事業場で事業場内最低賃金が900円(助成率4/5)、30円コースで2名の労働者の賃上げを実施、設備投資が100万円の場合で考えてみましょう。この場合の助成上限額は90万円ですが、助成対象経費に助成率を乗じた金額は(100万円 × 4/5)80万円。支給される業務改善助成金の額は80万円です。参考までに、助成率も紹介しておきましょう。
事業場内最低賃金 |
助成率 |
生産性要件を満たした事業者の助成率 |
900円未満 |
9/10 |
|
900円以上950円未満 |
4/5 |
9/10 |
950円以上 |
3/4 |
4/5 |
参考:厚生労働省
業務改善助成金の支給金額については以下の記事もあわせてご覧ください。
関連記事:業務改善助成金はいくらもらえる?助成金の上限額・助成率・計算方法を解説!
業務改善助成金の申請方法
業務改善助成金を申請するには、書類を作成して所轄の労働局に提出する必要があります。また大前提として、要件を満たす事業者は、オフィス / 工場などの事業場単位で業務改善助成金を申請しなければなりません。
業務改善助成金の申請に必要な書類
業務改善助成金の申請に必要な書類は「交付申請書」「国庫補助金所要額調書」の2つ。添付資料として「事業実施計画書」「助成対象経費の見積書」「申請前3か月分の賃金台帳写し」が必要なほか、特例事業者の場合はそれを証明する書類も必要です。
また、申請後に賃金引き上げを計画している場合、賃金引き上げ後に業務改善助成金を申請する場合では「事業実施計画書」の様式が異なることに注意。どちらの様式も、交付申請書とともに厚生労働省のホームページからダウンロードできますが、イメージできる簡単なサンプルも紹介しておきましょう。
交付申請書のサンプル
参考:厚生労働省
事業実施計画書のサンプル
参考:厚生労働省
助成対象経費の消費税について
業務改善助成金の申請時に注意しておきたいポイントとして挙げられるのは「消費税」です。原則として、課税事業者は消費税を除いて申請、助成金を受給するだけで済みますが、消費税込みの金額で申請、助成金を受給する場合はやや複雑。
消費税込みで申請した場合は「仕入控除税額報告」が必須であり、場合によっては仕入控除税額を返還する必要があるからです。
業務改善助成金手続きの流れ
業務改善助成金の申請後は、交付決定通知を受けて事業を開始、完了報告後に助成金支給を待つという流れで進んでいきます。業務改善助成金手続きの大まかな流れを整理しておきましょう。
- 必要書類を所轄の労働局に提出
- 承認された場合は交付決定通知送付(否決の場合は不交付決定通知)
- 計画にしたがって事業開始
- 事業完了後に労働局へ書類を提出して報告
- 交付額確定後に指定口座へ助成金が振り込まれる
なお、事業完了とは「労働者の賃上げ」「設備の導入」「経費の支払い」が完了している状態を指します。買掛金の支払いが完了していない、クレジットカードの引き落としが済んでいない場合は事業完了とみなされません。
事業完了後の提出が必要な書類
事業完了後、所轄労働局へ提出が必要な書類は「事業実績報告書」「支給申請書」の2つ。事業完了から1か月以内に提出する必要があります。こちらも簡単なサンプルを紹介しておきましょう。
事業実績報告書のサンプル
参考:厚生労働省
支給申請書のサンプル
参考:厚生労働省
事業計画に変更 / 中止 / 遅れが生じたら?
業務改善助成金の交付決定通知を受け、事業を開始したにもかかわらず、変更 / 中止 / 遅れが生じてしまうこともあるでしょう。こうしたケースでは、速やかに所轄労働局へ書類を提出 / 報告しなければなりません。それぞれのケースに応じた様式は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
ここまでで、業務改善助成金の申請 / 手続きの流れを解説してきましたが、わかりやすくまとまっている厚生労働省のフロー図も紹介しておきます。
参考:厚生労働省
業務改善助成金の申請期限延長について
業務改善助成金を申請したいが、期限はいつまでなのか?気になる方はすぐに行動しましょう。期限延長が発表されてはいますが、令和5年度(2023年度)分に関しては、2024年3月31日が業務改善助成金の申請期限だからです。
画像出典:厚生労働省
【まとめ】業務改善助成金の申請方法・手続きの流れを紹介しました
業務改善助成金を申請したいが、方法は?必要な書類は?手続きはどうしたらいい?そんな疑問を持つ方に向け、制度の概要を簡単に紹介するとともに、業務改善助成金の申請方法・手続きの流れを解説してきました。
期限や定数が設けられていて、制度変更も頻繁であることが助成金・補助金の特徴。業務改善助成金も例外ではありません。令和6年度(2024年度)分のプログラムも実施されると目されてはいますが、要件や支給額などの変更も予想されます。申請を検討中の方は、続報に注目しておきましょう。