事業承継・引継ぎ補助金の申請方法は?申請の流れや注意点を解説!
事業承継・引継ぎ補助金の利用を検討しているものの、どのような方法で申請するのかがわからないという方も多いのではないでしょうか。本記事では、申請方法や申請の流れ、申請する際の注意点を解説します。また、申請枠や類型についても解説するので、参考にしてください。
事業承継・引継ぎ補助金とは
事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業者や個人事業主の事業承継・再編・統合を支援する補助金です。事業の承継や再編・統合をきっかけに新たな取り組みを行う場合に、その事業の経費の一部を補助することで事業承継を促進し、経済を活性化することを目的としています。
国内の経済の活性化を目的としているため、日本国内に拠点・居住地があり、国内で事業を行う場合のみ補助の対象になります。
事業承継・引継ぎ補助金の申請枠とは
事業承継・引継ぎ補助金は、補助の対象になる経費の種類や取り組みによって申請枠が分けられています。また、経営革新枠は3種類の類型、専門家活用枠は2種類の類型に分類されます。枠と類型をまとめたものが以下の表です。
枠 |
類型 |
主な利用状況・ケース |
経営革新枠
|
創業支援類型 |
廃業予定の者から株式譲渡・事業譲渡で経営資源を引き継ぐ |
経営者交代類型 |
親族や従業員が事業を継承する |
|
M&A 類型 |
合併・吸収や買収などにより事業を再編・統合する |
|
専門家活用枠 |
買い手支援類型 (Ⅰ型) |
事業再編・統合にともなって株式や経営資源を譲り受ける |
売り手支援類型 (Ⅱ型) |
事業再編・統合にともなって株式や経営資源を譲り渡す |
|
廃業・再チャレンジ枠 |
|
出典
事業承継・引継ぎ補助金 第9次公募要領(経営革新枠)
事業承継・引継ぎ補助金 第9次公募要領(専門家活用枠
事業承継・引継ぎ補助金 第9次公募要領(廃業・再チャレンジ枠)
以下で、順に詳細を解説していきます。
経営革新枠
経営革新枠は、中小企業者や個人事業主が事業の承継をきっかけにして、引き継いだ経営資源を活用して新たな取り組みを行い生産性を向上させる場合に利用できる枠です。以下の内容にあてはまる方に利用されています。
- 親族で承継した(今後承継をする)
- M&Aで経営を引き継いだ
- 事業承継やM&A後に取り組む事業の費用を補助してほしい
- 設備の導入や販路の開拓などをして新たに事業展開を予定している
補助率や補助上限・下限は以下の表の通りです。
事業者の条件 |
賃上げの有無 |
補助上限額 |
補助率 |
|
あり ※1 |
800万円 |
2/3 (600万円以下の部分) |
1/2 |
|||
なし |
600万円 |
2/3 |
|
上記に該当しない事業者 |
あり |
800万円 |
1/2 |
なし |
600万円 |
1/2 |
出典:事業承継・引継ぎ補助金 経営革新枠 9次公募要領
※1 地域別最低賃金+50円以上となる賃上げの実施。
達成している場合は補助事業期間終了時に+50円以上の賃上げ
創業支援類型・経営者交代類型・M&A類型の3つの類型に分類されています。以下、順に各類型で申請するために必要な条件を解説していきます。
創業支援類型(Ⅰ型)
- 事業承継の対象期間内(第9次公募であれば2019年11月23日から2024年11月22日まで)に法人の設立や個人事業の開業をすること
- 廃業を予定している者から株式譲渡や事業譲渡で設備や従業員、顧客などの経営資源を引き継いでいること
ただし、設備のみを引き継ぐケースのように特定の経営資源だけを引き継ぐ場合は対象外です。
経営者交代類型(Ⅱ型)
- 親族や従業員による事業承継であること(事業再生の場合も対象)
- 産業競争力強化法にもとづく認定市区町村や認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者、経営に関して一定の実績や知識を有している者であること
ただし、承継する者が法人の場合は原則として、事業譲渡や株式譲渡による承継は対象外です。
M&A 類型(Ⅲ型)
- 吸収・合併や買収などのM&Aによって事業再編・事業統合を行うこと
- 産業競争力強化法にもとづく認定市区町村や認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者、経営に関して一定の実績や知識を有している者であること
親族の承継の場合は、M&A類型の対象外になることに注意しましょう。
専門家活用枠
専門家活用枠は、地域の雇用や需要の創出や維持を図るために事業を再編・統合する際に利用できる枠です。以下の内容にあてはまる方に利用されています。
- 事業の売却や買収などのM&Aを検討している
- 関係先からM&Aの提案を受けている
- M&Aに向けて専門家と契約をしている
- M&Aで専門家に支払う費用を補助してもらいたい
各類型の補助率や補助上限・下限は以下の表の通りです。
類型 |
補助率 |
補助下限額 |
補助上限額 |
買い手支援類型 (Ⅰ型) |
補助対象経費の2/3以内 |
50万円 |
600万円以内 ※2 |
売り手支援類型 (Ⅱ型) |
補助対象経費の1/2以内 ※1 |
※1 物価高騰の影響により営業利益率が低下している者や直近決算期の営業利益
または経常利益が赤字の者と認められた場合は2/3以内
※2 補助事業期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合は300万円以内
出典:事業承継・引継ぎ補助金 専門家活用枠 9次公募要領
上記のほか、廃業・再チャレンジ枠を併用した場合は廃業費を150万円まで計上可能
専門家活用枠は、買い手支援類型と売り手支援類型に分類されています。
両類型の要件は以下の通りです。
買い手支援類型(Ⅰ型)
事業再編・統合にともなって株式や経営資源を譲り受ける予定の中小企業者であること
売り手支援類型(Ⅱ型)
事業再編・統合にともなって株式や経営資源を譲り渡す予定の中小企業者であること
廃業・再チャレンジ枠
廃業・再チャレンジ枠は、事業承継やM&Aで事業を譲り渡した者や譲り受けた者が、既存事業や事業の一部を廃業する際に利用できます。経営革新枠や専門家活用枠の買い手支援類型・売り手支援類型と併用することが可能です。以下の内容にあてはまる方に利用されています。
- 2020年以降にM&Aで事業の売却をしようとした
- 売却先はみつかっていないが廃業を考えている
- 会社を廃業する費用を補助してもらいたい
- 廃業後に新たに法人を設立したり事業を起こしたりして再チャレンジをしたい
各類型の補助率や補助上限・下限は以下の表の通りです。
類型 |
補助率 |
補助下限額 |
補助上限額 |
廃業・再チャレンジ |
補助対象経費の2/3以内 |
50万円 |
150万円以内 |
出典:事業承継・引継ぎ補助金 廃業・再チャレンジ枠 9次公募要領
また、事業を譲り渡せなかった中小企業者・個人事業主であっても、地域の新たな需要の創造や雇用の創出につながる取り組みのために廃業する場合も利用できます。
事業承継・引継ぎ補助金の申請の流れ
事業承継・引継ぎ補助金の交付申請の流れは、主に上記の通りです。6つのステップに分けて解説していきます。
【ステップ1】利用する枠を確認して選択する
自社の事業が「経営革新枠」「専門家活用枠」「廃業・再チャレンジ枠」のどの枠に該当するかを確認します。「経営革新枠」と「専門家活用枠」の場合は、類型が分かれているので類型についても確認しましょう。
「廃業・再チャレンジ枠」は「経営革新枠」や「専門家活用枠」と併用できるので、要件を満たしている場合は併用すると良いでしょう。
【ステップ2】補助金の対象になるかを確認する
利用する枠を選択したら、各枠を利用するための要件や対象となる経費を公募要領や公式サイトで確認し、対象になるかを確認します。また、公式Webサイトに説明動画やパンフレットもありますので、参考にすると良いでしょう。
【ステップ3】申請に必要な書類を準備する
自社の事業が事業承継・引継ぎ補助金の対象になることを確認できたら、申請に必要な書類を準備します。必要書類の例は、以下の通りです。
- 履歴事項全部証明書(法人の場合)
- 閉鎖事項全部証明書(法人の場合)
- 住民票(個人事業主の場合)
- 税務署の受付印のある直近3期分の確定申告書B(個人事業主の場合)
- 認定経営革新等支援機関による確認書(専門家活用枠以外の場合)
- 加点事由への該当を証する書類(加点項目がある場合)
上記のほか、経営革新枠で今後承継する「未来の承継」にあたる場合は、事業承継計画書や誓約書が必要です。また賃上げを行って補助上限を上げる場合は、賃金引き上げ計画の誓約書や表明書が必要になるので忘れないように注意しましょう。
専門家活用枠で以下のどちらかに該当する場合は、追加書類を提出すると補助率を2/3にできます。
- 物価高の影響により営業利益率が低下している者
- 直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の者
物価高の影響により営業利益率が低下している者にあたる場合、必要な書類は以下の通りです。
- (法人の場合)直近期および 2 期前の、確定申告の基となる決算書の損益計算書
- (個人事業主の場合)直近期および 2 期前の所得税青色申告決算書
直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の者にあたる場合、必要な書類は以下の通りです。
- (法人の場合)直近期の確定申告の基となる決算書の損益計算書
- (個人事業主の場合)直近の確定申告書Bと所得税青色申告決算書
廃業・再チャレンジ枠で申請した場合は「M&A(事業の譲り渡し)に着手したことの証憑」が必要になるので、忘れずに用意しておきましょう。
【ステップ4】gBizIDプライムアカウントを発行する
申請する前に、電子申請システムのjGrantsを利用するために必要なgBizIDプライムアカウントを発行しましょう。既にIDを持っている方は【ステップ5】へ進んでください。
gBizIDプライムアカウントは、デジタル庁gBizIDプライム公式サイトで作成できます。
アカウントの発行には2~3週間程度かかりますので、できるだけ早めに申請をすると良いでしょう。即日発行できるgBizIDメンバーアカウントでは、事業承継・引継ぎ補助金の申請はできないことに注意してください。
【ステップ5】jGrantsを利用して交付申請をする
jGrantsを利用して、事業承継・引継ぎ補助金の申請をします。事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトでjGrantsの利用マニュアルが配布されていますので、参考にすると良いでしょう。
事業承継・引継ぎ補助金公式サイト - jGrants利用マニュアル
申請する枠によって利用する交付申請フォームが違いますので、申請時はフォームが間違っていないか画面の表示を確かめましょう。
【ステップ6】実績報告・補助金申請をする
事業承継・引継ぎ補助金は、申請をして採択されただけでは補助金を受け取れません。実際に補助事業を開始してから、規定された状況報告・実績報告をし、確定通知を受け取ってから補助金申請をする必要があります。
状況報告や補助金申請の手続きを正しく行わないと、減額されるおそれや補助金を受け取れなくなってしまうおそれがありますので、注意が必要です。実績報告の際に必要な書類は、主に以下の通りです。
- 実績報告書
- 事業実施概要報告書
- 補助対象経費総括表
- 経費区分別内訳書
- 検査チェックシート
- 経費区分別証拠書類一覧
- 経費区分別の証拠書類
また、以下の各書類の提出条件に該当する場合は提出が必要になるので、忘れずに用意をしてください。
- 補助対象とする人件費
- 人件費対象者別計算結果表
- 旅費明細書
- 出張報告書
- 謝金単価報告書
- 選定理由書
- 受託業務完了報告書
- 見積と支払金額の差異報告書
- 経費区分変更申請書
- 取得財産等管理明細表
- 専門家選定における見積金額確認書(専門家活用枠)
- 関与専門家選定理由書(専門家活用枠)
- 未成約時の追加報告書(専門家活用枠)
- 対象会社の廃業が確認できる閉鎖事項全部証明書(廃業・再チャレンジ枠)
- 個人事業の廃業等届出書(廃業・再チャレンジ枠)
事業承継・引継ぎ補助金を申請するときの注意点
事業承継・引継ぎ補助金の申請時の注意点は、主に上記の3つです。以下で順に詳細を解説していきます。
ほかの補助金や助成金と併用はできない
事業承継・引継ぎ補助金の補助対象事業期間内に、同一の事業で国や独立行政法人の別の補助金や助成金を受ける場合は、事業承継・引継ぎ補助金を利用できません。
ただし、異なる事業であれば事業再構築補助金をはじめとする他の補助金を利用できます。同一の事業であるかどうかは、事務局によって判断されるので注意しましょう。客観的に見ても明らかに別の事業と判断できる必要があります。
交付申請別紙の書式は変えない
交付申請に使う書類は、書式をそのまま利用して申請しなければいけないことに注意しましょう。例えば、記入欄のセルを延ばしたり、結合したりしてはいけません。記入欄に書き切れない場合でも、内容を精査してまとめるなどして書式のセル内に収まるように記入してください。
補助対象経費は税抜きで記入する
補助対象経費を記入する際は、税抜き表記で記入してください。税込みで記入した場合や税抜き・税込みが混在している場合は、書類の不備になってしまうので注意が必要です。
【まとめ】事業承継・引継ぎ補助金の申請方法を紹介しました
事業承継・引継ぎ補助金の申請枠や類型、申請方法・申請の流れ、注意点を紹介しました。申請枠や類型の種類によって申請フォームや必要書類が変わるので、間違えないように注意しましょう。
また、事業承継・引継ぎ補助金の交付申請に必要なgBizIDプライムアカウントの開設には2~3週間かかるので、早めにアカウントを開設しておくと良いでしょう。