事業承継・引継ぎ補助金は親子でも利用できる?ポイントを解説!

親子

事業承継・引継ぎ補助金を親子間の事業承継でも使えるのか、調べている方も少なくないのではないでしょうか。本記事では、親子間で事業承継・引継ぎ補助金を利用する際の要件や補助金額、注意すべきポイントなどを解説しますので、参考にしてください。

目次
  1. 1. 事業承継・引継ぎ補助金とは
  2. 2. 事業承継・引継ぎ補助金は親子間の承継でも利用できる
  3. 3. 親子間の事業承継・引継ぎ補助金の金額と補助率
  4. 4. 親子間の事業承継・引継ぎ補助金で対象となる経費
  5. 5. 親子間の事業承継・引継ぎ補助金で対象とならない経費
  6. 6. 親子間で事業承継・引継ぎ補助金を利用する際のポイント(親が法人の場合)
    1. 6-1. 法人の代表を子どもにする必要がある
    2. 6-2. 今後承継する場合は指定された要件を満たす必要がある
  7. 7. 親子間で事業承継・引継ぎ補助金を利用する際のポイント(親が個人事業主の場合)
    1. 7-1. 子どもが法人として引き継げるケースがある
    2. 7-2. 青色申告をしていなければならない
    3. 7-3. 贈与や相続による引き継ぎの場合は廃業届・開業届が必要
    4. 7-4. 今後承継する場合は指定された要件を満たす必要がある
  8. 8. 事業承継・引継ぎ補助金の申請の流れ
  9. 9. 【まとめ】事業承継・引継ぎ補助金の親子間での利用について紹介しました

事業承継・引継ぎ補助金とは

事業承継・引継ぎ補助金は、中小企業者や個人事業主に向けて事業の継承や再編・統合を支援する補助金です。事業の継承や賽銭・統合にかかる費用の一部を補助し、経済を活性化することを目的としています。

以下で、事業承継・引継ぎ補助金について解説します。

事業承継・引継ぎ補助金は親子間の承継でも利用できる

事業承継・引継ぎ補助金は、親子間の事業承継でも受け取れます。ただし、利用できるのは経営革新枠に限られます。経営革新枠のうち「経営者交代類型」か「創業支援類型」が利用可能です。

ただし、事業承継後にかかる費用が対象で、事業承継にかかる費用自体は対象になりません。また、公募要領で定められた期間内に行われた事業承継のみが対象になることに注意しましょう。第9次公募の場合は、2019年11月23日から2024年11月22日までが対象です。

親子間の事業承継・引継ぎ補助金の金額と補助率

親子間で事業承継をする際の補助金の条件と補助率は以下の表の通りです。条件や賃上げの有無で上限額・補助率が変わることに注意しましょう。

事業者の条件

賃上げの有無

補助上限額

補助率

  • ・小規模事業者
  • ・物価高騰などの影響で
  •  営業利益率が低下した事業者
  • ・営業利益や経常利益が赤字の事業者
  • 再生事業者

あり ※1

800万円

2/3

(600万円以下の部分)

1/2
(600万円を超える部分)

なし

600万円

2/3

上記に該当しない事業者

あり

800万円

1/2

なし

600万円

1/2

出典:事業承継・引継ぎ補助金 9次公募要領

※1 地域別最低賃金+50円以上となる賃上げの実施。
  達成している場合は補助事業期間終了時に+50円以上の賃上げ

上記のほか、経営革新枠とあわせて廃業・再チャレンジ枠を利用する場合は、廃業に関する費用の部分で150万円まで追加申請できます。

親子間の事業承継・引継ぎ補助金で対象となる経費

事業承継・引継ぎ補助金の対象経費として計上するには、以下の条件を満たした上で事務局に必要な経費と認められる必要があります。

  • 使用目的が補助対象事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
  • 補助事業期間内に契約・発注を行い支払った経費(原則として、被承継者が取り扱った経費は対象外)
  • 補助事業期間終了後の実績報告で提出する証拠書類によって金額・支払いが確認できる経費

また、事業承継・引継ぎ補助金は国内の事業者を支援する補助金のため、基本的に国外の事業所にかかる経費は対象になりません。

事業費の主な区分と詳細は以下の表の通りです。

区分

概要

店舗等借入費

国内の店舗・事務所・駐車場の賃借料・共益費・仲介手数料

設備費

国内の店舗・事務所の工事、国内で使用する機械器具調達費用

原材料費

試供品・サンプル品の製作に必要な原材料費用

産業財産権等関連経費

補助対象事業実施に必要な特許権の取得に要する弁理士費用

謝金

補助対象事業実施のために依頼した専門家に支払う経費

旅費

販路開拓を目的とした国内外出張にかかる交通費、宿泊費

マーケティング調査費

自社で行うマーケティング調査にかかる費用

広報費

自社で行う広報にかかる費用

会場借料費

販路開拓や広報活動に関する説明会での一時的な会場借料費

外注費

業務の一部を第三者に外注(請負)するために支払われる経費

委託費

業務の一部を第三者に委託(委任)するために支払われる経費

出典:事業承継・引継ぎ補助金 9次公募要領

廃業費の主な区分と詳細は以下の表の通りです。

区分

概要

廃業支援費

廃業に関する登記申請手続きに伴う司法書士に支払う作成経費

在庫廃棄費

既存の事業商品在庫を専門業者に依頼して処分した際の経費

(商品在庫を売却して対価を得る場合は対象外)

解体費

既存事業の廃止にともなう建物・設備の解体費

原状回復費

借りていた設備を返却する際に原状回復をする費用

リースの解約費

リースの解約にともなう解約金・違約金

(リース資産の売買にかかる費用は補助対象経費とならない)

移転・移設費用

効率化のため設備などを移転・移設するために支払われる経費

(創業支援類型・M&A類型の場合のみ対象になる)

出典:事業承継・引継ぎ補助金 9次公募要領

上記のほか、経営革新枠の創業支援類型の場合は、効率化のため設備などを移転・移設するために支払われる経費を移転・移設費用として計上できます。

親子間の事業承継・引継ぎ補助金で対象とならない経費

事業承継・引継ぎ補助金では、補助事業以外にも利用できる経費は対象となりません。例えば、以下のような経費は対象外になります。

区分

対象とならない経費の例

店舗等借入費

  • ・店舗・事務所の賃貸借契約にかかる敷金・礼金・保証金
  • 補助対象事業に直接関係のない店舗・事務所・駐車場の
  •  借り入れにかかる仲介手数料、賃借料・共益費
  • ・海外の店舗・事務所の賃貸借契約にかかる賃借料・共益費、
  •  借り入れにかかる仲介手数料
  • ・従業員専用の駐車場の借り入れにかかる仲介手数料、賃借料・共益費
  • ・火災保険料、地震保険料
  • ・本人や三親等以内の親族が所有する不動産にかかる店舗の借入費
  • ・海外の店舗・事務所の賃貸借契約にかかる賃借料・共益費、
  •  借り入れにかかる仲介手数料
  • ・交付決定日より前に支払った賃借料

設備費

  • ・金型
  • ・DIY工事の設備材料費
  • ・事務用品・衣類・食器などの消耗品に類する費用、
  •  雑誌購読料、新聞代、書籍代、包装紙など
  • ・中古品の購入費
  • ・不動産の購入費
  • ・道路運送車両法に規定される自動車の購入費
  •  (リース・レンタルの場合は対象になる)
  • ・自動車などの車両の修理費・車検費用
  • ・パソコンやタブレット端末、スマートフォン、携帯電話、
  • ・カメラなど持ち運びが容易でほかの用途に使えるもの
  • ・家庭用及び一般事務用ソフトウェアの購入費、
  •  家庭用及び一般事務用ライセンス費用
  • ・既に借用している物の交付決定日より前に支払った賃借料

出典:事業承継・引継ぎ補助金 9次公募要領

また、事業の内容や設置場所によって対象となるかどうかが変わるケースもあるので注意しましょう。例えば、冷蔵庫は物販業や宿泊・飲食業で店舗への据え付け型で接客のために必要であると認められれば対象になります。ただし、事務所へ設置した場合は補助事業に必須とはいえないため対象外になります。

補助事業以外で利用しないことを客観的に説明できない経費は、対象外になりやすいと覚えておくと良いでしょう。

親子間で事業承継・引継ぎ補助金を利用する際のポイント(親が法人の場合)

事業承継・引継ぎ補助金は親子でも利用できる?ポイントを解説!        _1

親子間で事業承継・引継ぎ補助金を利用する際のポイントは、上記の2つです。以下で順に詳細を解説していきます。

法人の代表を子どもにする必要がある

法人の代表である親が子どもに法人を譲る形で事業を承継する場合は、原則として法人の代表を子どもにしなければいけません。経営者交代類型の要件となっている代表者の交代は、登記事項全部証明書の代表役員が変更されているかどうかで判断されます。ただし、株式の移転の必要はありません。

今後承継する場合は指定された要件を満たす必要がある

経営者交代類型では「未来の承継」として、今後承継する場合でも事業承継・引継ぎ補助金を利用できます。例えば、現在は親が法人の代表や個人事業主として事業を行っていて、将来的に子どもがその事業を承継するケースが該当します。ただし、以下の要件を満たす必要があるので注意しましょう。

  • 同一法人内の代表者交代による事業承継であること
  • 交付申請時点で「対象会社の役員として3年以上の経営経験がある 」または「対象会社に継続して3年以上雇用され業務に従事した経験がある」こと
  • 法人の承継予定者が、該当する法人に在籍していること
  • 事業承継計画から、補助事業期間の終了年度から5年後の事業年度末までに事業承継を完了できる蓋然性が高いと確認できること
  • 後継者候補が主導して取り組む事業であること
  • 承継予定の中小企業で取り組む事業であること
  • 承継予定の中小企業の経営資源を有効活用すること

出典:事業承継・引継ぎ補助金 9次公募要領

親子間で事業承継・引継ぎ補助金を利用する際のポイント(親が個人事業主の場合)

親子間で事業承継・引継ぎ補助金を利用する際のポイントは以下の4つです。以下で、各項目の詳細を解説していきます。

子どもが法人として引き継げるケースがある

経営者交代類型で事業承継・引継ぎ補助金を利用する場合、親が個人事業主であれば子どもは基本的に個人事業主として引継ぎます。ただし、経営革新枠の創業支援類型で申請する場合は、個人事業主の親から法人として引き継ぎ可能です。

創業支援類型を利用するには、2019年11月23日から2024年11月22日までに設立した法人であることが要件となっているので、法人の設立日に注意しましょう(日付は第9次公募の場合の事業継承期間)

青色申告をしていなければならない

個人事業主の親から個人事業主の子が事業を承継する場合は、どちらも青色申告をしている必要があります。

税務署の受領印が押印された確定申告書と所得税青色申告決算書の写しを提出できることが補助金の要件になっているので、用意しておきましょう。税務申告を電子で行っている場合は、受付が確認できるメール詳細(受付結果)を追加で提出します。

贈与や相続による引き継ぎの場合は廃業届・開業届が必要

贈与や相続による事業承継で「事業譲渡契約書」が提出できない場合は、廃業届と開業届が必要です。補助金の不正利用を防ぐ目的から、引継ぎが実際に行われることを確認するために廃業届・開業届けの提出が義務付けられています。

今後承継する場合は指定された要件を満たす必要がある

個人事業主の親から個人事業主の子へ承継する場合も、以下の実務要件のいずれかを満たす必要があります。

  • 個人事業主として3年以上の経験を有する者
  • 「個人事業に継続して3年以上雇用され業務に従事した経験を有する者」または「個人事業と同じ業種において通算して6年以上業務に従事した経験を有する者」
  • 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けた者
  • 地域創業促進支援事業を受けた者
  • 中小企業大学校が実施する経営者・後継者向けの研修(具体的には経営後継者研修、経営管理者研修、経営管理者養成コースのいずれかの研修)を履修した者

出典:事業承継・引継ぎ補助金 9次公募要領

事業承継・引継ぎ補助金の申請の流れ

事業承継・引継ぎ補助金は、以下の流れで実施されます。

  1. 認定経営革新等支援機関への経営相談
  2. 認定経営革新等支援機関からの確認書の発行
  3. 事業承継・引継ぎ補助金の事務局への交付申請
  4. 事業承継・引継ぎ補助金の事務局からの交付決定通知
  5. 事業承継・引継ぎ補助金の事務局への状況報告
  6. 事業承継・引継ぎ補助金の事務局への実績報告
  7. 事業承継・引継ぎ補助金の事務局からの確定通知
  8. 事業承継・引継ぎ補助金の事務局への補助金申請
  9. 事業承継・引継ぎ補助金の事務局からの補助金交付
  10. 事業承継・引継ぎ補助金の事務局への事業化状況報告

交付申請や各種手続きは、原則として「jGrants」を利用する電子申請で行われます。交付申請は以下の流れです。

  1. jGrantsの利用に必要なgBizIDプライムのアカウントを取得する
  2. 補助金のWebサイトから認定支援機関による確認書をダウンロードする
  3. 交付申請に必要な書類を集め、交付申請用紙に必要事項を記載する
  4. 認定支援機関に確認書の記載を依頼して確認書を受け取る
  5. 加点項目を満たしている場合は、加点事由に該当することを証明する書類を用意する
  6. jGrantsの申請フォームに提出書類を添付し提出後、提出完了画面を確認する

gBizIDプライムのアカウントはgBizID公式サイトから作成できます。

【まとめ】事業承継・引継ぎ補助金の親子間での利用について紹介しました

事業承継・引継ぎ補助金は、親子間で利用できること、「創業支援類型」「経営者交代類型」が利用できること、受け取れる補助金の上限・補助率を解説しました。承継した法人・事業主が主体となって事業を行うことや承継する子どもに実務経験が必要であることなどさまざまな制限があるので注意しましょう。

また、補助金の対象になる場合であっても申請書類の書き方が間違っていたり、必要書類が足りなかったり、採択されなかったりすると補助金を利用できません。そのため、補助金の概要や申請の仕方について正しい知識をつけて申請することが大切です。別記事でも事業承継・引継ぎ補助金について解説していますので、ぜひ参考にしてください。