事業再構築補助金の卒業促進枠とは?採択率や必要書類も解説!
事業再構築補助金について調べたものの、自社が卒業促進枠が利用できるのかいまいち分からなくて困っている方もいると思います。
本記事では、卒業促進枠とは何か、どのような条件で利用できるのか、必要な要件・書類は何かなどを解説していきます。ぜひ、参考にしてください。
事業再構築補助金の卒業促進枠とは
事業再構築補助金の卒業促進枠は、成長枠やグリーン成長枠の補助事業によって、中小企業から中堅企業になることを目指す事業者への支援枠です。
成長枠やグリーン成長枠の上乗せ支援を目的としているので、成長枠やグリーン成長枠と同時に申請する必要があります。ただし、卒業促進枠の補助対象経費は成長枠・グリーン成長枠の補助対象経費と分けて申請しなければならない点に注意が必要です。
卒業促進枠の概要は以下の通りです。
|
卒業促進枠の要件 |
概要 |
成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、 中小企業から中堅企業などに成長する事業者に対する上乗せ支援 |
補助金額 |
成長枠・グリーン成長枠の補助金額上限と同等 |
補助率 |
・中小企業など 1/2 ・中堅企業など 1/3 |
補助事業の 実施期間 |
交付決定日から成長枠・グリーン成長枠の事業計画期間終了まで ※ただし、交付決定後に自己の責任によらない理由で期間内に完了できない場合は、 規定の報告書を提出することで延長がみとめられる場合があります |
補助対象経費 |
成長枠・グリーン成長枠と同等 ※ただし、卒業促進枠の補助対象経費は 成長枠やグリーン成長枠と分ける必要があります |
卒業促進枠は成長枠かグリーン成長枠のどちらかに該当する必要がある
卒業促進枠は、成長枠やグリーン成長枠の上乗せ支援を目的としているため、成長枠かグリーン成長枠のどちらかに該当しなければいけません。
また、卒業促進枠の申請は成長枠やグリーン成長枠と同時に申請する必要があります。卒業促進枠のみでの申請はできないので注意しましょう。
補助額を2倍に引き上げられる
卒業促進枠を利用すると、成長枠やグリーン成長枠を単独で利用するときの2倍まで補助を受けられます。
例えば、上限7,000万円(従業員数101 人以上の場合)の成長枠なら1億4,000万円まで、上限1億5,000万円のグリーン成長枠なら3億円が上限です。
ただし、成長枠やグリーン成長枠の補助対象経費と卒業促進枠の補助対象経費は明確に分ける必要があることに注意しましょう。従業員数別の詳細な上限額は以下の表の通りです。
従業員数 |
成長枠+卒業促進枠 |
グリーン成長枠(エントリー) |
20人以下 |
4,000万円 |
8,000万円 |
21~50人 |
8,000万円 |
1億2,000万円 |
51人~100人 |
1億円 |
1億6,000万円 |
101人以上 |
1億4,000万円 |
2億円 |
事業再構築補助金の申請者に共通する申請要件
事業再構築補助金の申請をする際に共通する申請要件は、主に以下の3つです。
事業再構築要件
事業再構築補助金の交付を受けるためには、事業再構築要件として5つの類型のどれかに該当する必要があります。各類型の概要は以下の表の通りです。
類型 |
内容 |
新市場進出 (新分野展開、 業態転換) |
※上記3項目をすべて満たす必要があります |
事業転換 |
※上記3項目をすべて満たす必要があります |
業種転換 |
※上記3項目をすべて満たす必要があります |
事業再編 |
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国内回帰 |
※サプライチェーン強靭化枠でのみ利用可能です |
認定支援機関要件
事業再構築補助金の申請をするときに必要な認定支援機関要件は、以下の2つです。
- 事業計画は認定支援機関(認定経営革新等支援機関)と相談の上で作成して確認を受け「認定経営革新等支援機関による確認書」を提出する
- 補助金額が3,000万円を超える場合は、認定支援機関の確認書に加えて「金融機関による確認書」を提出する
補助金額が3,000万円を超える場合で確認を受ける金融機関が認定支援機関も兼ねていた場合は、金融機関のみで2種類の確認書をそろえられます。
付加価値額要件
付加価値額要件は、主に以下の2つです。
- 付加価値額とは、営業利益や人件費、減価償却費を足したもの
- 成果目標の基準になる付加価値額は、補助事業が終了する月が属する決算年度の付加価値額
この付加価値額は、審査項目の「補助対象事業としての適格性」の審査で確認されます。「補助事業終了後3~5年で付加価値額を年率平均3%~5%(事業類型により異なる)以上の増加を達成する取組みであるか」の条件を満たす必要があります。
事業再構築補助金の卒業促進枠の要件
事業再構築補助金の卒業促進枠で申請するために必要な要件は、以下の2つです。
- 成長枠またはグリーン成長枠に申請する事業者であること
- 成長枠またはグリーン成長枠の補助事業終了後3~5年で、中小企業・特定事業者・中堅企業の規模から卒業すること(卒業要件)
卒業の目安は以下の表の通りです。
応募時点の規模 |
卒業要件を満たす規模 |
中小企業 |
特定事業者、中堅企業、大企業 |
特定事業者 |
中堅企業、大企業 |
中堅企業 |
大企業 |
中小企業と中堅企業の範囲
事業再構築補助金の申請における中小企業の範囲は、以下の表の通りです。
業種 |
範囲の定義 |
製造業・その他 |
資本金3億円以下の会社または従業員数300人以下の会社及び個人 |
卸売業 |
資本金1億円以下の会社または従業員数100人以下の会社及び個人 |
小売業 |
資本金5,000万円以下の会社または従業員数50人以下の会社及び個人 |
サービス業 |
資本金5,000万円以下の会社または従業員数100人以下の会社及び個人 |
※ただし大企業の子会社のような「みなし大企業」は対象外
※直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える場合は、中小企業ではなく中堅企業になる
※企業組合や協業組合、事業協同組合を含む「中小企業者」や収益事業を行う一般社団法人、一般財団法人、NPO法人も支援の対象になる
中堅企業の範囲は、中小企業の範囲に該当しない会社で、資本金10億円未満の会社です。
要件が未達だと補助金は支給されない
卒業促進枠の要件が未達の場合は、卒業促進枠の分の補助金が支給されません。ただし、同時に申請している成長枠やグリーン成長枠は卒業促進枠とは別に審査され、要件を満たしていれば支給を受けられます。
主な未達要件は以下の5つです。
- 応募したときの規模に応じて、定められた規模に成長する
- 補助事業者が上記の規定する法人に成長した場合であって、応募申請のときより資本金や従業員数が現象している場合は卒業要件を満たさない
- 企業規模の成長に関して、資本金と従業員数の両方を基準以上にする
- 卒業計画書に応募申請時点での従業員数・資本金、補助事業の実施期間終了後3~5年までにどのように従業員数・資本金を伸ばしていく予定かを記載する
- 卒業促進枠で採択された場合でも、事業計画期間終了までに法人規模の成長を達成出来なかった場合は卒業要件を未達とする
事業再構築補助金における卒業促進枠の審査項目
卒業促進枠では、共通の審査項目に加えて以下の項目が審査されます。
- 事業再構築の実施による売上高や付加価値額の継続的増加が妥当なものであり、法人規模の拡大・成長に向けたスケジュールが具体的かつ明確に示されているか
- 資本金増加の見込・出資予定者や従業員の増加方法が具体的に示されており、その記載内容や算出根拠が妥当か
成長枠やグリーン成長枠とあわせて卒業促進枠の申請をする際は、卒業促進枠のみで審査される「卒業計画の妥当性」を忘れずに説明しましょう。
事業再構築補助金の申請に必要な書類
事業再構築補助金の申請に必要な書類は、主に以下の7つです。順に詳細を解説します。
事業計画書
事業計画書は、事業の内容が事業再構築補助金で補助する事業に該当するか審査するための書類です。事業の取り組み内容や事業の状況、強み・弱み、環境、事業再構築の必要性などを説明します。認定支援機関と相談しながら作成しましょう。
認定支援機関や金融機関の確認書
事業再構築補助金の申請では、事業計画書について認定支援機関が確認をしたことを示す確認書が必要です。また、補助金額が3,000万円を超える場合は、金融機関による確認書も必要になります。
ただし、確認を受ける金融機関が認定支援機関である場合は「金融機関による確認書」の提出が不要になります。(事業再構築補助金の第11回「公募要領」より)
決算書
企業の財務状況を示す書類として、直近2年間の貸借対照表、損益計算書(特定非営利活動法人は活動計算書)、製造原価報告書、販売管理費明細、個別注記表が必要です。2年分の提出ができない場合は、1期分の決算書を添付してください。
決算書の添付ができない中小企業の場合は、法人の全体の事業計画書と収支予算書を添付しましょう。
ミラサポplus「ローカルベンチマーク」の事業財務情報
事業の財務情報を示す書類として、ミラサポplus「ローカルベンチマーク」で作成した事業財務情報をPDF化した書類が必要です。以下のサイトで作成できます。
「中小企業向け補助金総合支援サイト ミラサポ plus」:https://mirasapo-plus.go.jp/
従業員数を示す書類
従業員数を確認するために、労働基準法に基づいた労働者名簿の写しが必要です。
ただし、最低賃金枠で申請する場合は申請時点の労働者名簿の写しだけでなく「最低賃金要件」の対象となる3ヶ月分の労働者名簿も提出します。
収益事業を行っていることを説明する書類
収益事業を行っていることを説明する書類として、法人の場合は直近の直近の確定申告書別表一と法人事業概況説明書の控えが必要です。個人事業主の場合は、直近の確定申告書第一表と所得税青色申告決算書の控えを提出します。白色申告の場合は、直近の確定申告書第一表及び収支内訳書の控えを提出しましょう。
建物の新築が必要であることを説明する書類
建物の新築にかかわる費用を補助対象の経費として計上している場合は、建物の新築が必要であることを説明する書類が必要です。
購入可能な物件が近くにない場合や、新築をした方が最終的に安く済む場合など、新築する必要性・合理性を記載して提出しましょう。
事業再構築補助金の卒業促進枠で必要な書類
事業再構築補助金の卒業促進枠では、上記で解説した書類に加えて卒業要件を満たしていることを説明するために「卒業計画書」の提出が必要です。
以下の内容を記載して、提出しましょう。
- 応募申請時点での従業員数・資本金
- 成長枠・グリーン成長枠の補助事業終了後3~5年でどのように従業員数・資本金を伸ばしていくか
事業再構築補助金における卒業促進枠の採択率について
第10回の事業再構築補助金の卒業促進枠は応募2件に対して採択が0件で、採択率は0%でした。ただし、第10回から卒業枠に代わる枠として採用された枠なのでまだ申請件数が多くないため、あまり参考にならないかもしれません。(第6回~第9回の公募にはありません)
【まとめ】事業再構築補助金の卒業促進枠を紹介しました
事業再構築補助金の卒業促進枠とは何かや、申請に必要な要件、必要書類などを解説してきました。
卒業促進枠は、中小企業から成長したい企業に向けて支援する枠です。成長枠・グリーン成長枠とあわせて利用すると補助金の上限を2倍まで増やすことができます。ただし、卒業要件を満たさないと卒業促進枠の補助金が交付されなくなるので注意しましょう。