人材開発支援助成金はいつからいつまでに申請すればいい?

人材開発支援助成金はいつからいつまでに申請すればいい?

人材開発支援助成金の申請を検討している企業担当者の中には「いつから申請できるのか」「いつまでに申請すればいいのか」わからない方もいるのではないでしょうか。

本記事では、人材開発支援助成金に設けられている7つのコースごとにいつから申請できるのか解説します。申請の流れも紹介するのでぜひお役立てください。

目次
  1. 1. 人材開発支援助成金とは
    1. 1-1. 2023年度の改正内容
    2. 1-2. キャリアアップ助成金との違い
  2. 2. 人材開発支援助成金のコース一覧
    1. 2-1. 人材育成支援コース
    2. 2-2. 教育訓練休暇等付与コース
    3. 2-3. 人への投資促進コース
    4. 2-4. 事業展開等リスキリング支援コース
    5. 2-5. 建設労働者認定訓練コース
    6. 2-6. 建設労働者技能実習コース
    7. 2-7. 障害者職業能力開発コース
  3. 3. 人材開発支援助成金はいつから申請できる?
    1. 3-1. 人材育成支援コースを申請する際の流れ
    2. 3-2. 教育訓練休暇等付与コースを申請する際の流れ
    3. 3-3. 人への投資促進コースを申請する際の流れ
    4. 3-4. 事業展開等リスキリング支援コースを申請する際の流れ
    5. 3-5. 建設労働者認定訓練コースを申請する際の流れ
    6. 3-6. 建設労働者技能実習コースを申請する際の流れ
    7. 3-7. 障害者職業能力開発コースを申請する際の流れ
  4. 4. 人材開発支援助成金の活用事例
    1. 4-1. 高度なスキルを持つ人材の育成を行った事例
    2. 4-2. IT分野の未経験者に訓練を行った事例
    3. 4-3. 従業員が自発的に訓練を受けた事例
  5. 5. 人材開発支援助成金を活用する際の注意点
    1. 5-1. 助成金は研修・訓練後に支給される
    2. 5-2. 申請要件を満たしているか確認する
    3. 5-3. 制度の内容が定期的に見直される
  6. 6. 【まとめ】人材開発支援助成金はいつから申請できるのか解説しました

人材開発支援助成金とは

人材開発支援助成金とは、従業員のキャリア形成を目的に、業務に関連する訓練を実施した事業主を支援するための制度です。訓練にかかった経費や訓練中の賃金などが助成されるので、コストを抑えて人材育成を行えます。

2023年度の改正内容

2022年度までは、生産性を向上させた場合に、助成額が加算されていました。2023年度からは賃上げ要件および資格等手当要件を満たした場合に助成額が加算されるように改正されました。人材育成によって増加した付加価値額を、賃上げによって従業員に還元し、雇用の安定を実現することを目的としています。

そのほか、訓練コースの統合や対象者・対象訓練の拡充、計画届の提出方法の変更などがありました。2023年6月26日からは、雇用関係助成金ポータルで電子申請することが可能になりました。

キャリアアップ助成金との違い

人材開発支援助成金と似たものにキャリアアップ助成金があります。人材育成を支援する助成金である点は共通しているものの、両者には対象者と目的に違いがあります。人材開発支援助成金の対象者は正規雇用の労働者です。正規雇用の労働者の知識やスキルを向上させて、企業の競争力アップを実現することを目的としています。

一方、キャリアアップ助成金の対象者は、パートやアルバイト、契約社員、派遣社員といった非正規雇用の労働者です。非正規から正規雇用の労働者に転換させたり、待遇を改善させたりすることが目的です。

人材開発支援助成金のコース一覧

人材開発支援助成金はいつからいつまでに申請すればいい?_1

各コースの概要を順番に解説します。

人材育成支援コース

人材育成支援コースでは、被保険者に対して職務に関連する知識やスキルを習得させる訓練を実施した際に助成金が支給されます。

対象となる訓練は以下の通りです。

  • 認定実習併用職業訓練:大臣の認定を受けた認定実習併用職業訓練の計画に沿って、適格な指導者のもとで計画的に行われるOJT
  • 有期契約労働者を対象とした訓練:有期契約労働者の正社員化を目的に、適格な指導者のもとで計画的に行われるOJT

※OJTとは、職場内訓練のこと

対象となる訓練や助成率、助成額は以下の通りです。

対象の訓練

経費助成

賃金助成

(1人1時間

当たり)

OJT実施助成

(1人1コース

当たり)

人材育成

訓練

雇用保険被保険

(有期契約労働者等をく。)

の場合

45%

(+15%)

760円

(+200円)

有期契約労働者等の

場合

60%

(+15%)

有期契約労働者等を

正規雇用労働者等へ

転換した場合

70%

(+30%)

認定実習併用職業訓練

45%

(+15%)

 

 

有期実習

訓練

有期契約労働者

等の場合

60%

(+15%)

20万円

(+5万円)

有期契約労働者等を

正規雇用労働者等へ

転換等した場合

70%

(+30%)

10万円

(+3万円)

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」

※( )内は規定の要件を満たした場合に加算されます

教育訓練休暇等付与コース

教育訓練休暇等付与コースでは、職務に関連する訓練を自発的に受けた労働者に対して、休暇を付与する制度を設けた事業者に助成金が支給されます。対象となる制度や賃金助成額、経費助成額は以下の通りです。

支給対象の制度

賃金助成

(1人1日当たり)

経費助成

教育訓練休暇制度

30万円(36万円)

長期教育訓練休暇制度

6,000円(7,200円)

20万円(24万円)

教育訓練短時間勤務等制度

20万円(24万円)

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)のご案内」

※( )内は規定の要件を満たした場合に加算されます

人への投資促進コース

人への投資促進コースでは、人材育成のための訓練や労働者が自発的に受けた訓練などの経費や賃金の一部が助成金として支給されます。対象となる訓練や助成率、助成額は以下の通りです。

訓練メニュー

対象訓練

経費助成率

賃金助成額

OJT実施助成額

高度デジタル

人材訓練

高度デジタル訓練

75%

960円

成長分野等

人材訓練

海外も含む

大学院での訓練

75%

国内大学院の場合:

960円

情報技術分野

認定実習

併用職業訓練

OFF-JT+OJTの

組み合わせの訓練

(IT分野関連の訓練)

60%

(+15%)

760円

(+200円)

20万円

(+5万円)

定額制訓練

「定額制訓練」

(サブスクリプション型の

研修サービス)

60%

(+15%)

自発的職業能力

開発訓練

労働者の自発的な

訓練費用

事業主が負担した訓練

45%

(+15%)

長期教育訓練

休暇等制度

長期教育訓練休暇制度

(30日以上の連続休暇取得)

制度導入費

20万円

(+4万円)

6,000円/日

(+1,200円)

所定労働時間の短縮と

所定外労働時間の

免除制度

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のご案内」

※( )内は規定の要件を満たした場合に加算されます

事業展開等リスキリング支援コース

事業展開等リスキリング支援コースでは、企業が新たな分野に進出する際、必要な知識やスキルを労働者に習得させるための訓練に対して経費や賃金の一部が助成されます。助成率と助成額は以下の通りです。

経費助成

賃金助成

対象経費の75%

1時間あたり960円/人

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内」

建設労働者認定訓練コース

建設労働者認定訓練コースでは、認定職業訓練や指導員訓練のうち、建築設計やブロック施工といった建設関連の訓練を実施した場合、経費や賃金の一部が助成されます。助成率と助成額は以下の通りです。

経費助成

賃金助成

対象経費の1/6

3,800円(+1,000円)/日

参照:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「建設事業主等に対する助成金のご案内」

※( )内は規定の要件を満たした場合に加算されます

建設労働者技能実習コース

建設労働者技能実習コースでは、建設労働者のスキルアップのために実習を有給で受講させた場合、経費や賃金の一部が助成金として支給されます。被保険者数別の助成割合と助成額は以下の通りです。

 

経費助成

賃金助成

雇用保険被保険者数20人以下

対象費用の3/4

(+3/20)

8,550円/日

(+2,000円)

雇用保険被保険者数21人以上

35歳未満の労働者

対象費用の7/10

(+3/20)

7,600円/日

(+1,750円)

35歳以上の労働者

対象費用の9/20

(+3/20)

参照:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「建設事業主等に対する助成金のご案内」

※( )内は規定の要件を満たした場合に加算されます

障害者職業能力開発コース

障害者職業能力開発コースでは、障害者に対して職業能力開発訓練事業を実施する際に助成金が支給されます。具体的には、業務に必要な能力を開発・向上させることを目的に、教育訓練施設を設置したり、運営したりする場合に費用の一部が助成金として支給されます。対象となる費用と助成率は以下の通りです。

対象費用

助成率

障害者職業能力開発訓練事業を行うために、

訓練科目ごとの施設・設備を

設置・整備・更新にかかった費用

費用の3/4

重度障害者

(重度身体障害者や重度知的障害者、

精神障害者など)を対象に

障害者職業能力開発訓練を行う際の運営費

1人あたりの

運営費の4/5

※重度障害者以外の場合は

3/4

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金 障害者職業能力開発コース」

人材開発支援助成金はいつから申請できる?

人材開発支援助成金は、コースごとに申請期間が異なります。申請の流れをコースごとに解説します。

人材育成支援コースを申請する際の流れ

人材育成支援コースを申請する際の流れは以下の通りです。

  1. 訓練計画の提出:訓練開始日から1か月前までに、職業訓練実施計画届および必要書類を労働局へ提出する
  2. 訓練の実施:訓練を実施し、必要経費の支払いを完了する
  3. 支給申請書の提出:訓練終了日の翌日から2か月以内に「支給申請書」および必要書類を労働局に提出する
  4. 助成金の支給・不支給の決定:審査を経て支給・不支給が決まる

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」

教育訓練休暇等付与コースを申請する際の流れ

教育訓練休暇等付与コースを申請する際の流れは以下の通りです。

  1. 制度導入・適用計画の提出:適用計画期間の初日から起算して6か月前~1か月前までに制度導入・適用計画届および必要書類を労働局に提出する
  2. 制度の導入・周知:就業規則または労働協約に明記し、労働者に周知を行い、労働基準監督署に届出を行う
  3. 制度の導入・訓練の実施:被保険者に対して、制度を適用する
  4. 支給申請書の提出:制度別に定められた期間内に支給申請書を労働局に提出する
  5. 支給・不支給の決定:審査を経て、支給・不支給が決まる

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)のご案内」

人への投資促進コースを申請する際の流れ

人への投資促進コースを申請する際の流れは以下の通りです。

  1. 職業訓練実施計画届の提出:訓練開始日から1か月前までに労働局に提出する
  2. 制度の導入:制度を導入し、訓練によっては就業規則に明記する
  3. 訓練の実施:職業訓練実施計画届にもとづいて、訓練を実施する
  4. 支給申請書の提出:訓練計画に記載した訓練終了日の翌日から2か月以内に支給申請書および必要書類を労働局に提出する
  5. 助成金の支給・不支給の決定:審査を経て、支給・不支給が決まる

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のご案内」

事業展開等リスキリング支援コースを申請する際の流れ

事業展開等リスキリング支援コースを申請する際の流れは以下の通りです。

  1. 職業訓練実施計画届の提出:訓練開始日から1か月前までに、職業訓練実施計画届および必要書類を労働局に提出する
  2. 訓練の実施:内部または外部講師による事業内訓練を実施する
  3. 支給申請書の提出:訓練終了日から2か月以内に支給申請書および必要書類を提出する
  4. 助成金の支給・不支給の決定:審査を経て、支給・不支給が決まる

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内」

建設労働者認定訓練コースを申請する際の流れ

建設労働者認定訓練コースを申請する際の流れは以下の通りです。

  1. 賃金助成分の申請:訓練開始日から1か月前までに、支給申請書および必要書類を労働局へ提出する
  2. 賃金向上助成・資格等手当助成分の申請:毎月の賃金または資格等手当を支払った日の翌日から5か月以内に必要書類を労働局に提出する
  3. 助成金の支給・不支給の決定:審査を経て、支給・不支給が決まる

参照:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「建設事業主等に対する助成金のご案内」

建設労働者技能実習コースを申請する際の流れ

建設労働者技能実習コースを申請する際の流れは以下の通りです。

  1. 計画届の提出:技能実習を実施する日の3か月前から原則1週間前までに必要書類を提出する
  2. 支給申請書(経費助成・賃金助成分)の提出:技能実習が終了した日の翌日から原則2か月以内に必要書類を労働局に提出する
  3. 支給申請書(賃金向上助成・資格等手当助成)の提出:毎月の賃金または資格等手当を支払った日の翌日から5か月以内に必要書類を労働局に提出する
  4. 支給・不支給の決定:審査を経て、支給・不支給が決まる

参照:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「建設事業主等に対する助成金のご案内」

障害者職業能力開発コースを申請する際の流れ

障害者職業能力開発コース を申請する際の流れは以下の通りです。

訓練の施設・設備を設置、整備、更新にかかる経費を申請する場合

  1. 受給資格認定の申請:訓練の施設・設備を設置、整備、更新に着手する前に労働局に申請し、認定を受ける

※申請期間は毎年7月16日~9月15日または1月16日~3月15日の間

  1. 支給申請書の提出:訓練の施設・設備の設置、整備、更新を完了した日の翌日から2か月以内に支給申請書および必要書類を労働局に提出する
  2. 助成金の支給・不支給の決定:審査を経て、支給・不支給が決まる

運営費を申請する場合

  1. 受給資格認定の申請:職業訓練を開始する3か月前までに、労働局に申請し、認定を受ける
  2. 支給申請書の提出:支給対象期間の末日の翌日から2か月以内に、必要書類を労働局に提出する

※四半期ごとに支給される

  1. 助成金の支給・不支給の決定:審査を経て、支給・不支給が決まる

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金 障害者職業能力開発コース」

人材開発支援助成金の活用事例

人材開発支援助成金はいつからいつまでに申請すればいい?_2

人材開発支援助成金の活用事例を3つ紹介します。

高度なスキルを持つ人材の育成を行った事例

デジタル分野で高度なスキルを持つ人材を育成するために、中小企業が従業員に対してプロジェクトマネージャーの資格取得講座を実施した事例を紹介します。効果と助成額は以下の通りです。

効果

・ITSS(ITスキル標準)レベル3、4以上の人材の育成が可能

・75%の助成率により、大幅にコストを抑えられる

助成額

・受講料:280,000円

・経費助成:210,000円

・賃金助成:28,800円

参照:政府広報オンライン

IT分野の未経験者に訓練を行った事例

IT分野が未経験の従業員に対して、プログラミング講座を受講させた中小企業の事例を紹介します。効果と助成額は以下の通りです。

効果

未経験者がSE(システムエンジニア)の即戦力に成長

・経験者を採用することなく、

 DX(デジタルトランスフォーメーション)人材を確保できる

助成額

・受講料:750,000円

・経費助成:450,000円

・賃金助成:608,000円

・実施助成:200,000円

参照:政府広報オンライン

従業員が自発的に訓練を受けた事例

スキルアップや資格取得のために自発的に学ぶ従業員に対して、受講費を2分の1以上負担した中小企業の事例を紹介します。効果と助成額は以下の通りです。

効果

従業員のモチベーションが向上する

・自社の生産性が向上する

助成額

・受講料:400,000円

・事業主負担:200,000円

・経費助成:90,000円

参照:政府広報オンライン

人材開発支援助成金を活用する際の注意点

人材開発支援助成金はいつからいつまでに申請すればいい?_3

人材開発支援助成金を活用する際の注意点を解説します。

助成金は研修・訓練後に支給される

助成金は後払いなので、制度の導入や訓練の実施に必要な経費は、自社で支払いをする必要があります。資金繰りが悪化してしまうと、本業に支障が生じるおそれがあるので、計画的に申請しましょう。一時的に資金が不足するようであれば、金融機関から借り入れを行うなどして対応する方法もあります。

申請要件を満たしているか確認する

助成金には審査があるので、必ず支給されるとは限りません。資料を読み込んで、支給要件や対象経費などを細かく確認した上で申請しましょう。また、助成金を申請する際は、支給申請書や経費の支払い明細、カリキュラム表などの様々な書類が必要です。提出書類が間違っていたり、抜け漏れがあると、支給されるまでに時間がかかってしまう可能性もあるので、入念にチェックしながら申請を進めましょう。

制度の内容が定期的に見直される

人材開発支援助成金は、世の中の求めに応じて、定期的に制度の内容が見直されています。先述した通り、2023年にもコースの統合や助成対象の変更などがありました。助成金を申請する際は、厚生労働省のホームページを確認し、最新の情報をもとに準備を進めましょう。

【まとめ】人材開発支援助成金はいつから申請できるのか解説しました

人材開発支援助成金を活用すれば、コストを抑えて人材育成を行えます。企業の競争力を強化できるので、積極的に検討するのがおすすめです。なお、人材開発支援助成金には7つのコースがあり、それぞれ申請要件や対象経費、申請期限などが異なります。資料を読み込み、資金繰りも考慮した上で計画的に申請しましょう。