個人事業主はIT導入補助金を申請できる?要件・補助額・申請手順を詳しく解説!
IT導入補助金は5つの枠がありますが、条件を満たしていれば個人事業主でも4つの枠で申請可能
です。
本記事では個人事業主が申請できるIT導入補助金の枠や対象ツール、申請の流れなどを解説します。IT導入補助金の申請に必要なIT導入支援事業者の選び方も解説するので、ぜひ参考にしてください。
IT導入補助金とは【個人事業主も申請可能】
IT導入補助金は、個人事業主でも要件を満たしていれば申請可能です。ここでは、IT導入補助金について、種類にかかわらず共通する概要と補助対象者について解説します。
関連記事:IT導入補助金とは?対象者や補助額、申請方法を解説【注意点も】
概要
IT導入補助金は中小企業と個人事業主をはじめとする小規模事業者を対象に、自社の課題やニーズにあわせたITツール導入を支援する補助金です。具体的には会計ソフトや決済ソフトなどが挙げられ
ます。
枠の種類は5種類に分かれており、補助対象となるツールや経費、補助額に違いがあります。なお、個人事業主が利用できるのは4種類です。
補助対象者
IT導入補助金は、中小企業と小規模事業者を対象にした補助金です。個人事業主の場合は小規模事業者に該当し、業種ごとに従業員数が以下の条件を満たしている場合に申請できます。
業種 |
常勤する従業員数 |
宿泊業・娯楽業を除く商業・サービス業 |
5人以下 |
宿泊業・娯楽業 |
20人以下 |
その他 |
20人以下 |
申請要件
IT導入補助金で枠にかかわらず、求められる要件は以下の通りです。
- gBizIDプライムアカウントの取得
- 「SECURITY ACTION」の宣言
- 「みらデジ経営チェック」の実施
- 労働生産性の伸び率の向上に係る数値目標の作成(具体的な目標は各枠ごとに異なる)
生産性の伸び率は、就業者1人当たりの就業時間の伸び率と時間当たり労働生産性の伸び率で計算される指標です。上記の詳細な内容は後の見出しで解説します。
IT導入補助金の種類別|補助額と対象ツール
IT導入補助金で個人事業主が利用できるものは、以下4つの枠が該当します。
枠ごとに補助額と対象ツールが変わるため、ニーズにあわせて選ぶことが大切です。ここでは、それぞれの枠の補助額と対象ツールについて解説します。
IT導入補助金 通常枠(A・B型)
IT導入補助金の通常枠はA型とB型に分けられます。B型の方がA型よりも補助額が高くなりますが、その分要件が厳しくなっています。
要件は以下の通りですが、A型は以下のうち1種類以上、B型は4種類以上の導入で申請可能です。
- 顧客対応・販売支援
- 決済・債権債務・資金回収管理
- 調達・供給・在庫・物流
- 総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情報システム
- 特定の業務固有のプロセス
- 生産性の向上に関わる上記以外のツール
ただしA型の場合、その他生産性の向上に関わるツールのみでは申請できません。生産性の向上についても、1年後の伸び率が3%以上、3年後の伸び率が9%以上であることが条件となっています。
補助額と対象となるツールは以下の通りです。
補助額 |
対象経費 |
|
A型 |
5万円~150万円未満 (補助率1/2以内) |
・ソフトウェア購入費、クラウド利用料 (最大2年分) ・機能拡張やデータ連携ツールの導入、 セキュリティ対策実施に係る費用 ・導入関連費 (ITツールに関する導入コンサルティング、 |
B型 |
150万円~450万円以下 (補助率1/2以内) |
参考:サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局|IT導入補助金2023公募要領通常枠(A・B 類型)
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)は、インボイス制度への対応を含めたデジタル化推進を行う事業者向けの補助金枠です。補助枠と対象ツールは以下の通りです。
対象ツールは以下の3種類に分けられ、それぞれで補助額が異なります。
- ITツール:ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)オプション(セキュリティソフト等)、役務費(導入支援費、保守費等)
- PC・タブレット等
- レジ・券売機等
対象ツール |
補助額 |
|
ITツール |
会計・受発注・決済・ECのうち、 2機能以上導入する場合 |
補助額50万円超350万円以下 補助率2/3以内 |
会計・受発注・決済・ECのうち、 1種類のみ導入する場合 |
50万円以下 補助率3/4以内 |
|
PC・タブレット等 |
10万円まで 補助率1/2以内 |
|
レジ・券売機等 |
20万円まで 補助率1/2以内 |
参考:中小企業庁|サービス等生産性向上IT導入支援事業『IT導入補助金2023』の概要
デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)
デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)は、複数社の中小・小規模事業者が連携し、ITツールやハードウェアを導入する際に利用できる枠です。事業に参加する中小企業・小規模事業者等は10者以上あることが条件で、具体的には商店街振興組合などの商工団体などが該当します。
補助対象経費は主に以下3種類に大別されます。
- 基盤導入経費
- ITツール:会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECサイト構築に限る (クラウド利用料は最大2年分)
- ハードウェア:PC・タブレット、レジ・券売機等
- 消費動向等分析経費
- ITツール:消費動向分析システム、経営分析システム、需要予測システム、電子地域通貨システム、キャッシュレスシステム、生体認証決済システム 等 (クラウド利用料は1年分)
- ハードウェア:AIカメラ、ビーコン、デジタルサイネージ 等
- 参画事業者のとりまとめに必要な事務費、専門家費
補助額の上限と補助率は以下の通りです。なお一事業あたりの補助上限額は3,000万円と設定されています。
対象ツール |
補助額・補助率 |
||
基盤導入経費 |
ITツール |
会計・受発注・決済・ECのうち、 2機能以上導入する場合 |
補助額50万円超 350万円以下 補助率2/3以内 |
会計・受発注・決済・ECのうち、 1種類のみ導入する場合 |
50万円以下 補助率3/4以内 |
||
PC・タブレット等 |
10万円まで (補助率1/2以内) |
||
レジ・券売機等 |
20万円まで (補助率1/2以内) |
||
消費動向等 分析経費 |
50万円まで× グループ構成員数 補助率2/3以内 |
||
事務費・ 専門家費 |
50万円まで× グループ構成員数 補助率2/3以内 (200万円までが上限) |
参考:中小企業庁|サービス等生産性向上IT導入支援事業『IT導入補助金2023』の概要
デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)
デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)は、インボイス制度に対応したITの受発注ツールを導入を支援する枠です。受注者である中小企業・小規模事業者等に対して無償でアカウントを供与して利用させる際に利用可能です。
対象経費以外の要件は共通の申請要件と同様で、補助額と対象経費は以下の通りです。
補助額 (中小企業・小規模事業者等の場合) |
対象経費 |
350万円まで:補助率2/3以内 |
ITツールの導入費用(クラウド利用料最大2年分) |
※大企業の補助額は350万円までで、補助率は1/2以内です。
参考:中小企業庁|サービス等生産性向上IT導入支援事業『IT導入補助金2023』の概要
IT導入補助金の申請スケジュール
IT導入補助金の申請スケジュールは以下の通りです(2023年5月16日時点)。
締切 |
|
通常枠 セキュリティ対策推進枠 |
1次締切 2023年4月25日(火)17:00 2次締切 2023年6月2日(金)17:00 3次締切 2023年7月10日(月)17:00 4次締切 2023年7月31日(月)17:00 |
デジタル化基盤導入枠 (デジタル化基盤導入類型) |
1次締切 2023年4月25日(火)17:00 2次締切 2023年5月16日(火)17:00 3次締切 2023年6月2日(金)17:00 4次締切 2023年6月20日(火) 5次締切 2023年7月10日(月) 6次締切 2023年7月31日(月) |
デジタル化基盤導入枠 (複数社連携IT導入類型) |
2023年5月31日(水)17:00 |
デジタル化基盤導入枠 (商流一括インボイス対応類型) |
6月下旬受付開始予定(締切不明) |
参考:IT導入補助金2023|スケジュール、デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)、
各申請はWeb上で行いますが、締切時間を過ぎるとアクセスできなくなり、申請できなくなります。特に締切直前はアクセスが集中し、アクセスできないリスクもあるため、余裕をもって申請しましょう。
IT導入補助金を申請する際の流れ
IT導入補助金を申請する際の流れは以下の通りです。
1.導入するツールの検討・決定
導入するツールを自社の課題にあわせて検討し、IT導入支援事業者と相談しながら、ツールを決定しましょう。
IT導入支援事業者とは、補助金の対象となる事業を実施する際に、ITツールの導入や補助金申請をサポートする事業者です。IT導入支援事業者として、登録されていない業者やツールでは、補助金の申請はできません。
IT導入支援事業者と相談しながら、導入するツールを決定しましょう。ツールを決定することで、どの補助枠が利用可能か明確になります。
ただし、補助金の交付決定までは契約や発注をしてはいけません。すでに発注、契約、購入などをしている場合、交付が受けられなくなりますので注意しましょう。
2.必要な準備を整える
IT導入補助金の申請では以下の準備が必要です。
- gBizIDプライムアカウントの取得
- SECURITY ACTIONの宣誓を実施する
- みらデジ経営チェックを実施する
GBizIDプライムアカウントは、補助金の申請で必要となるアカウント。GBizIDプライムアカウントはこちらから作成できます。
SECURITY ACTIONとは、情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する制度。目標となる指標は独立行政法人情報処理推進機構(IPA)で提示されており、補助金の枠によって一つ星か二つ星のいずれかを自己宣言します。
目標の詳細や、宣言方法はこちらからご確認ください。
みらデジ経営チェックとは、経済産業省中小企業庁が実施しており、自社の経営課題やデジタル化への取組状況を瞬時に診断できるツールです。
こちらのサイトから、みらデジ経営チェックの実施ができます。なお、みらデジ経営チェックを利用する際には、GBizIDプライムアカウントが必要です。
3.交付申請
IT導入支援事業者と相談しながら、交付申請で必要となる事業計画の策定を行い、申請を行います。大まかな流れは以下の通り。
- IT導入支援事業者から申請ページへの招待を受ける
- 交付申請に必要となる情報を入力し、書類を添付する
- IT導入支援事業者にて、導入するITツール情報、事業計画値を入力する
- 入力内容を確認し、申請に対する宣誓後に事務局へ提出する
IT導入支援事業者がやることと、申請者側でやることがあるため、相互に連携しながら進める必要があります。なお、より詳細な手続きの流れや記入する情報についてはこちらをご確認ください。
なお、提出後に情報を修正したくても、原則として交付決定までは修正できません。
4.交付決定後、IT支援事業者と契約
申請が完了すると、IT導入補助金の事務局と外部審査委員会にて審査が行われ、採択されたら、交付決定です。
交付決定後に、申請者はIT支援事業者と発注・契約・支払いなどを行います。
5.事業化状況報告の報告を行う
補助金の対象となる事業を実施後、ITツールの発注・契約・納品・支払いなどを実際に行ったことがわかる書類を提出しましょう。
書類の添付は以下の申請マイページからログインし、必要書類の添付と必要事項の入力を行います。
必要書類を添付したあとは、IT導入支援事業者が内容確認と、必要事項の入力を行います。その後、申請者側で最終確認し、事務局に事業実績報告を提出します。
6.交付手続き
事業実績報告が完了すると、IT導入補助金の事務局から、確定検査が行われ、補助金額が確定します。
確定検査では、申請内容通りに事業が実施され、経費が適切に支出されているかを精査するものです。申請内容と異なる費用は対象とならないケースがあるため、申請内容通りに事業が進められているか確認する必要があります。
確定検査が完了後、申請マイページにて、補助額を確認可能です。
7.実施効果の報告
事業実施効果報告は、補助金の対象事業が事業計画書に記載された目標を達成しているか、実際の効果を報告するものです。
実績報告にて、目標となる数字が達成できていない場合、補助金の全額または一部の返還を求められる可能性があります。
定められた期限内に補助事業者が申請マイページから、必要な情報を入力。IT導入支援事業者に確認してもらった後で、提出してください。
IT導入補助金の必要書類
IT導入補助金の必要書類の必要書類は、法人と個人事業主で異なります。個人事業主の場合は、以下の書類が必要です。
- 運転免許証または運転経歴証明書または住民票
- 所得税の納税証明書(その1またはその2)
- 確定申告書
なお、それぞれの書類で注意すべきことがあるため、詳細はこちらの資料のp22以降をご参照下さい。
IT導入支援事業者の選び方
IT導入支援事業者は事業者ごとに導入できるツールが変わるため、以下の手順でIT導入支援事業者を選ぶことがおすすめです。
1.自社の課題から考える
ITツールで解決できる課題は幅広く、解決したい課題は何か事前に考えておくことが大切です。例えばレジでの決済をスムーズにしたい、ECサイトを構築したいなどが挙げられます。
なおIT導入補助金の公式サイトでは、業種別で悩みが解決できるITツール機能を調べられるページがあるため、こちらを参考にするのもおすすめです。
飲食店であれば「スタッフ不足に悩んでいる」など、悩み別におすすめのツールを紹介しています。上記の悩みの場合、タブレットを使ったセルフオーダーシステムの導入などの解決案が挙げられています。
課題を決めておくことで、課題の解決につながるツールの方向性が定まり、条件に当てはまるツールや事業者をスムーズに探しやすくなるでしょう。
2.対象となる事業者を検索する
IT導入補助金の公式サイトにて、IT導入支援事業の対象となる会社とツールを検索できます。営業エリアや対応可能な枠、対応ツールに合わせて検索可能です。
IT導入補助金を利用するためには、事務局に登録されているIT導入支援事業者と協力しながら進めることが大切です。IT導入支援事業者以外の人では、申請の対象とならないため、事前に条件に当てはまっているか、検索しましょう。
個人事業主が利用できるIT導入補助金についてまとめました
本記事では個人事業主が利用できるIT導入補助金の枠や、申請方法などを説明しました。
IT導入補助金は要件を満たしていれば個人事業主でも申請できますが、導入するツールによって要件が変わることもあります。そのため、事前に要件を満たしているか確認した上で、IT導入支援事業者と申請を進めることが大切です。