ものづくり補助金の受給条件は?基本要件や対象者、注意点を解説

受給条件

ものづくり補助金の受給条件を調べているが、公募要領や公式サイトから条件を読み解くのが難しいと感じていませんか?

本記事では、ものづくり補助金の基本要件や対象者、注意点などを解説します。自社が条件に当てはまるかがわかり、ものづくり補助金を申請するか検討するための参考になりますのでぜひご覧ください。

※2024年3月時点の情報です。補助金の申請にあたっては最新の情報を調べてください。

目次
  1. 1. ものづくり補助金とは?主な条件(基本要件)
    1. 1-1. 付加価値額の増加
    2. 1-2. 給与支給総額の増加
    3. 1-3. 最低賃金の引き上げ
  2. 2. ものづくり補助金の対象者
    1. 2-1. 中小企業・小規模事業者等の要件を満たしている
    2. 2-2. 補助事業の実施場所を有している
  3. 3. ものづくり補助金の対象経費
    1. 3-1. 対象経費の一覧
    2. 3-2. 【注意】単価50万円(税抜)以上の設備投資が必要
  4. 4. 【枠別】ものづくり補助金の申請要件
    1. 4-1. 省力化(オーダーメイド)枠
    2. 4-2. 製品・サービス高付加価値化枠(通常類型)
    3. 4-3. 製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型)
    4. 4-4. グローバル枠
  5. 5. ものづくり補助金の申請で知っておきたい注意点
    1. 5-1. 基本要件未達の場合は返還義務がある
    2. 5-2. 3年間に2回以上交付決定を受けた事業者は対象外
    3. 5-3. 補助金は後払いである
    4. 5-4. 状況報告を5年間行う必要がある
  6. 6. 【まとめ】ものづくり補助金の条件を紹介しました

ものづくり補助金とは?主な条件(基本要件)

ものづくり補助金の受給条件は?基本要件や対象者、注意点を解説_2

ものづくり補助金には3つの基本要件があります。申請者は基本要件をすべて満たす3〜5年の事業計画を策定・実行する必要がありますので、内容を確認しておきましょう。

付加価値額の増加

1つ目の要件は、事業者全体の付加価値額を年平均成長率3%以上増加させることです。
付加価値額とは「営業利益」「人件費」「減価償却費」を足したものを指します。つまり、以下の式で求めることが可能です。

付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費

「営業利益」「人件費」「減価償却費」の各項目を増加させて、付加価値額を増加させる必要があります。

給与支給総額の増加

2つ目の要件は、給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加させることです。給与支給総額とは、非常勤を含む全従業員および役員に支払った給与等のことを指します。具体的には、給料や賃金、賞与、役員報酬等が含まれます。福利厚生費や法定福利費、退職金は含まれない点も押さえておきましょう。

なお、被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合(※)は、年平均成長率1%以上増加させることが要件となります。

※従業員規模 51 ~100 名の企業が短時間労働者を厚生年金に加入させること

最低賃金の引き上げ

3つ目の要件は、事業計画期間において事業場内最低賃金を、毎年地域別最低賃金+30円以上の水準とすることです。事業場内最低賃金とは、補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金のことを指します。たとえば地域別最低賃金が1,113円の場合、事業場内最低賃金を1,143円以上にする必要があるということです。地域別最低賃金は厚生労働省のホームぺージ「地域別最低賃金の全国一覧」から確認できます。

なお、賃金引上げ計画は申請時点で策定している必要があります。交付後に策定していないことが発覚した場合は、補助金の返還を求められるため注意が必要です。

ものづくり補助金の対象者

ものづくり補助金の受給条件は?基本要件や対象者、注意点を解説_1

続いて、ものづくり補助金の対象者となる条件を紹介します。

中小企業・小規模事業者等の要件を満たしている

ものづくり補助金の補助対象者は、要件を満たす中小企業者や小規模事業者等です。

中小企業者とは、資本金または常勤従業員数が下表の数字以下となる会社または個人と定義されています。

業種

資本金

常勤従業員数

製造業、建設業、運輸業、旅行業

3億円

300人

卸売業

1億円

100人

サービス業(※1)

5,000万円

100人

小売業

5,000万円

50人

ゴム製品製造業(※2)

3億円

900人

ソフトウェア業又は情報処理サービス業

3億円

300人

旅館業

5,000万円

200人

その他の業種(上記以外)

3億円

300人

出典元:「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版」をもとに作成

※1 ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く

※2 自動車または航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く

小規模事業者の定義は、常勤従業員数が下表の数字となる者です。

業種

常勤従業員数

製造業その他

20人以下の会社及び個人事業主

商業・サービス業

5人以下の会社及び個人事業主

サービス業のうち宿泊業・娯楽業

20人以下の会社及び個人事業主

出典元:「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版」をもとに作成

補助事業の実施場所を有している

工場や店舗など、補助事業の実施場所を有していることも条件です。補助事業の実施場所とは、補助対象経費となる機械装置等を設置する場所、または管理を行う場所を指します。
応募申請時点で建設中の場合や、土地のみを確保して建設予定である場合は対象外のため注意しましょう。

ものづくり補助金の対象経費

次に、ものづくり補助金の対象経費を確認しておきましょう。本記事では18次の公募要領をもとに対象経費を紹介します。

対象経費の一覧

ものづくり補助金の対象経費をまとめると、以下の通りです。

補助対象経費

詳細

機械装置・システム構築費

 

1.機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費

2.専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費

3.改良・修繕又は据付けに要する経費

運搬費

運搬料、宅配・郵送料等に要する経費

技術導入費

知的財産権等の導入に要する経費

知的財産権等関連経費

特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用等

外注費

新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の

一部を外注(請負、委託等)する場合の経費

専門家経費

本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費

クラウドサービス利用費

クラウドサービスの利用に関する経費

原材料費

試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費

出典元:「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 18次公募要領 概要版」をもとに作成

グローバル枠の海外市場開拓(輸出)に関する事業では、以下も補助対象となります。

補助対象経費

詳細

海外旅費

海外渡航及び宿泊等に要する経費

通訳・翻訳費

通訳及び翻訳を依頼する場合に支払われる経費

広告宣伝・販売促進費

海外展開に必要な広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び

媒体掲載、展示会出展等、ブランディング・プロモーションに係る経費

出典元:「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 18次公募要領 概要版」をもとに作成

補助対象経費の詳細区分は公募要領に記載されており、細かく定められているため注意が必要です。たとえば一口に「クラウドサービス利用費」といっても、専ら補助事業のために利用する費用のみが対象となり、自社の他事業と共有する場合は補助対象にはなりません。

また、補助対象経費の種類ごとに上限額が定められている点も押さえておきましょう。たとえば技術導入費は、補助対象経費総額(税抜)の1/3が上限額とされています。

「対象経費になると思っていたのに、対象にならなかった」と後で発覚するケースを防ぐためにも、事前に公募要領から詳細を確認しておきましょう。

【注意】単価50万円(税抜)以上の設備投資が必要

ものづくり補助金では、必ず1つ以上、単価50万円(税抜)以上の機械装置等の設備投資を行う必要があります。具体的には、以下の経費が該当します。

1.機械・装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費

2.専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費

3.改良・修繕又は据付けに要する経費

単価50万円(税抜)以上の設備投資を必要としない場合、ものづくり補助金を申請できないため注意しましょう。

【枠別】ものづくり補助金の申請要件

ものづくり補助金では、以下の申請枠が用意されています(18次締切分の内容をもとに紹介)。

枠・類型

概要

省力化(オーダーメイド)枠

人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した

専用設備の導入等により、革新的な生産プロセス・

サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに

必要な設備・システム投資等を支援する

製品・サービス高付加価値化枠

通常類型

革新的な製品・サービス開発の取組みに必要な設備・

システム投資等を支援する

製品・サービス高付加価値化枠

成長分野進出類型

今後成長が見込まれる分野に資する革新的な製品・

サービス開発の取組みに必要な設備・システム投資等

を支援する

グローバル枠

海外事業を実施し、国内の生産性を高める取組みに

必要な設備・システム投資等を支援する

出典元:「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 18次公募要領 概要版」をもとに作成

基本要件のほかに、枠ごとにも要件が定められているので確認しておきましょう。枠ごとの要件についても、18次の公募要領をもとに紹介します。

省力化(オーダーメイド)枠

省力化(オーダーメイド)枠では、基本要件に加えて以下の要件を満たす必要があります。

  • 3~5年の事業計画期間内に補助事業において設備投資前と比較して
    労働生産性が2倍以上となる事業計画を策定すること

  • 3~5年の事業計画期間内に投資回収可能な事業計画を策定すること
  • 外部SIerを活用する場合、3~5年の事業計画期間内における保守・メンテナンス
    契約を中小企業等とSIer間で締結し、SIerは必要な体制を整備すること

なお、 労働生産性の定義は「付加価値額(付加価値額の算出が困難な場合は生産量)/(労働人数×労働時間)」です。完全自動化の場合は「(労働人数×労働時間)」を0.1として計算します。また、投資回収年数は「投資額/(削減工数×人件費単価)」とします。

また、補助事業に係る資金について金融機関等からの調達を予定している場合は、金融機関等による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出する必要があります。

製品・サービス高付加価値化枠(通常類型)

製品・サービス高付加価値化枠(通常類型)では、基本要件に加えて以下の要件を満たすことが必要です。

  • 3~5年の事業計画期間内に、新製品・サービスの売上高の合計額が、
    企業全体の売上高の10%以上となる事業計画を策定すること

また、補助事業に係る資金について金融機関等からの調達を予定している場合は、金融機関等による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出する必要があります。

なお、新型コロナ回復加速化特例の要件として以下が定められています。

  • 常時使用する従業員がいること
  • 2022年10月から2023年8月までの間で、3か月以上地域別最低賃金+50円以内で
    雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること
  • 補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点で給与支給総額が1.5%以上増加目標を達成していること
  • 補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での事業場内最低賃金が地域別最低賃金+50円以上の水準を達成していること

製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型)

製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型)では、基本要件に加えて以下の要件を満たすことが必要です。

  • 3~5年の事業計画期間内に、新製品・サービスの売上高の合計額が、
    企業全体の売上高の10%以上となる事業計画を策定すること

また、以下いずれかを満たす必要があります。

  • DX:DXに資する革新的な製品・サービスの開発であること
  • GX:グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する革新的な製品・サービスの開発であること

「DXに資する革新的な製品・サービスの開発」とは、AIやIoTなどのデジタル技術等を活用した遠隔操作や自動制御等の機能を持っている製品・サービスの開発等のことです。また、グリーン成長戦略「実行計画」14分野とは、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において策定されている14分野のことを指します。経済産業省のホームページにも資料のリンクがあるので、参考にするといいでしょう。

補助事業に係る資金について金融機関等からの調達を予定している場合は、金融機関等による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出する必要があります。

グローバル枠

グローバル枠では、基本要件に加えて以下の要件を満たす必要があります。

  • 海外事業に関する実現可能性調査を実施していること
  • 社内に海外事業の専門人材を有すること又は海外事業に関する外部専門家と連携すること

 実現性調査とは、市場調査や現地規制調査、取引先の信用調査等、海外事業の実現可能性を判断するための調査のことです。

また、選択する事業における以下の要件を満たす必要があります。

事業

要件

海外への直接投資に関する事業

  • 国内に所在する本社を補助事業者とし、補助対象経費の
    2分の1以上が海外支店の補助対象経費となること、又は
    海外子会社の事業活動に対する外注費若しくは貸与する
    機械装置・システム構築費に充てられること
  • 国内事業所においても、海外事業と一体的な機械装置等
    (単価50万円(税抜)以上)を取得(設備投資)すること
  • 応募申請時に、海外子会社等の事業概要・財務諸表・
    株主構成が分かる資料を提出すること
  • 実績報告時に、海外子会社等との委託(貸与)契約書と
    その事業完了報告書を追加提出すること

海外市場開拓(輸出)に関する事業

  • 国内に補助事業実施場所を有し、製品等の最終販売先の
    2分の1以上が海外顧客となり、計画期間中の補助事業の
    売上累計額が補助額を上回る事業計画を有していること
  • 応募申請時に、事前のマーケティング調査に基づく、想定
    顧客が具体的に分かる海外市場調査報告書を提出すること
  • 実績報告時に、想定顧客による試作品等の性能評価報告書を
    提出すること

インバウンド対応に関する事業

  • 国内に補助事業実施場所を有し、製品・サービス等の販売
    先の2分の1以上が訪日外国人となり、計画期間中の補助事業
    の売上累計額が補助額を上回る事業計画を有していること
  • 応募申請時に、想定顧客が具体的に分かるインバウンド市場調査報告書を提出すること
  • 実績報告時にプロトタイプの仮説検証の報告書を提出すること

海外企業との共同で行う事業

  • 国内に補助事業実施場所を有し、外国法人と行う共同研究
    ・共同事業開発に伴う設備投資等があり、その成果物の権利
    の全部又は一部が補助事業者に帰属すること
    (外国法人の経費は、補助対象外)
  • 応募申請時に、共同研究契約書又は業務提携契約書
    (検討中の案を含む)を提出すること
  • 実績報告時に、当該契約の進捗が分かる実績成果報告書を
    提出すること

出典元:「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版」をもとに作成

ものづくり補助金の申請で知っておきたい注意点

ものづくり補助金の受給条件は?基本要件や対象者、注意点を解説_3

最後に、ものづくり補助金の申請において知っておきたい注意点を解説します。後から「知らなかった」と困らないためにも、確認しておきましょう。

基本要件未達の場合は返還義務がある

ものづくり補助金では、基本要件等が未達の場合に返還義務があります。具体的には、以下の場合に返還義務が生じる可能性があることを押さえておきましょう。

  • 給与支給総額の増加目標が未達の場合
  • 事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合
  • 申請の時点で賃金引上げ計画を策定していないことが発覚した場合

ただし、天災など事業者の責めに追わない理由がある場合など、特定の条件に当てはまる場合は返還を求められないケースもあります。詳細は公募要領を確認してください。

3年間に2回以上交付決定を受けた事業者は対象外

ものづくり補助金は複数回申請することは可能ですが、過去3年間に2回以上交付決定を受けた事業者は補助金の申請対象外となるため注意が必要です。また、過去3年間にものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業に当てはまる類似の補助金の交付決定を1回受けている場合は減点措置の対象となります。

補助金は後払いである

ものづくり補助金は事業の実績報告が確認され、精算払の請求を行った後に支払われます。
補助金を受け取るまでは、自費で取り組みを進める必要がある点には注意が必要です。
資金の借り入れを行う際には、交付のタイミングも踏まえて準備を行いましょう。

状況報告を5年間行う必要がある

補助事業の実施期間終了後は、5年間、事業化状況等報告書を提出・報告する必要があります。期限は毎会計年度終了後60日以内です。必要な報告を行わなかった場合は、補助金の返還を求められる場合があります。忘れずに報告しましょう。

【まとめ】ものづくり補助金の条件を紹介しました

ものづくり補助金の基本要件や対象者、注意点などを解説しました。

  • 基本要件は「付加価値額の増加」「給与支給総額の増加」「最低賃金の引き上げ」
  • 基本要件のほか、枠ごとにも要件が定められている
  • 対象者は要件を満たす中小企業者や小規模事業者等

本記事の内容を、ものづくり補助金を申請する際にお役立てください。