補助金申請代行会社の選び方とは?依頼できる専門家や費用相場を解説
補助金の申請を検討している方の中には、採択率を高めるために申請代行会社に依頼したいと考えている方も多いのではないでしょうか。本記事では、申請代行の費用相場や代行会社の選び方、注意点などを解説します。主要な補助金の採択率も紹介するので、ぜひお役立てください。
補助金とは
補助金とは、生産性向上や事業拡大に取り組む個人事業主や中小企業を支援するため支給されるお金のことです。主に経済産業省や中小企業庁が主体となって制度の普及に務めており、以下のような特徴があります。
- 審査がある
- 返済義務がない
- 後払いで支払われる
補助金を受給するには、審査を通過して採択される必要があります。採択されれば、返済義務のない資金を獲得できるため、コストを抑えて新たな商品やサービスを購入することが可能です。また、後払いで支払われるのも特徴です。自社で経費を支払った後で補助金が振り込まれるため、資金繰りも考慮して申請計画を立てましょう。
主要な補助金の採択率
補助金の申請代行を検討するにあたって、まずは主要な補助金の採択率を把握しておきましょう。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金の採択率は以下の通りです。おおむね60%程度で推移しています。
申請枠 |
申請件数 |
採択件数 |
採択率 |
第1回 |
8,044件 |
7,308件 |
90.8% |
第2回 |
19,154件 |
12,478件 |
65.1% |
第3回 |
13,642件 |
7,040件 |
51.6% |
第4回 |
16,126件 |
7,128件 |
44.2% |
第5回 |
12,738件 |
6,869件 |
53.9% |
第6回 |
9,914件 |
6,846件 |
69.0% |
第7回 |
9,339件 |
6,517件 |
69.7% |
第8回 |
11,279件 |
7,098件 |
62.9% |
第9回 |
11,467件 |
7,344件 |
64.0% |
第10回 |
9,844件 |
6,248件 |
63.4% |
第11回 |
11,030件 |
6,498件 |
58.9% |
第12回 |
13,373件 |
7,438件 |
55.6% |
IT導入補助金
年度によって採択率にばらつきはありますが、以下のように他の補助金よりも採択率は比較的高めです。
申請枠 |
申請件数 |
採択件数 |
採択率 |
通常枠(A類型) |
10,499件 |
7,828 |
74.5% |
通常枠(B類型) |
260件 |
150件 |
57.6% |
セキュリティ対策推進枠 |
102件 |
89件 |
87.2% |
デジタル化基盤導入枠 |
25,881件 |
19,453件 |
75.1% |
※交付決定日2023年5月31日~9月12日の集計結果
事業再構築補助金
事業再構築補助金の審査通過率(採択率)は以下の通りです。40~50%程度を推移しています。
申請枠 |
申請件数 |
採択件数 |
採択率 |
第1回 |
22,231件 |
8,016件 |
36.0% |
第2回 |
20,800件 |
9,336件 |
44.8% |
第3回 |
20,307件 |
9,021件 |
44.4% |
第4回 |
19,673件 |
8,810件 |
44.7% |
第5回 |
21,035件 |
9,707件 |
46.1% |
第6回 |
15,340件 |
7,669件 |
49.9% |
第7回 |
15,132件 |
7,745件 |
51.1% |
第8回 |
12,591件 |
6,456件 |
51.2% |
第9回 |
9,369件 |
4,259件 |
45.4% |
第10回 |
10,821件 |
5,205件 |
48.1% |
ものづくり補助金
ものづくり補助金の審査通過率(採択率)は以下の通りです。50%程度を推移しています。
申請枠 |
申請件数 |
採択件数 |
採択率 |
1次 |
2,287件 |
1,429件 |
62.4% |
2次 |
5,721件 |
3,267件 |
57.1% |
3次 |
6,923件 |
2,637件 |
38.0% |
4次 |
10,312件 |
3,178件 |
30.8% |
5次 |
5,299件 |
2,337件 |
44.1% |
6次 |
4,980件 |
2,362件 |
47.4% |
7次 |
5,507件 |
2,768件 |
50.2% |
8次 |
4,653件 |
2,780件 |
59.7% |
9次 |
3,613件 |
2,247件 |
62.1% |
10次 |
4,294件 |
2,612件 |
60.8% |
11次 |
4,744件 |
2,817件 |
59.3% |
12次 |
3,256件 |
1,907件 |
58.5% |
13次 |
3,322件 |
1,927件 |
58.0% |
14次 |
4,865件 |
2,470件 |
50.7% |
15次 |
5,694件 |
2,861件 |
50.2% |
補助金の申請代行とは
補助金の申請代行とは、申請手続きを専門家に代行してもらうサービスです。申請代行には採択を左右する申請書の作成も含まれています。そのほか、事業計画策定やコンサルティングなども依頼することが可能です。また、申請する補助金が決まっていない状態でも、自社に適した補助金選定から相談できます。
補助金の申請代行費用
申請代行費用には、着手金と成功報酬が設定されているケースが多いです。着手金とは、申請代行を依頼した段階で発生する費用です。成功報酬は、補助金が採択された場合に支払います。申請代行の費用相場は以下の通りです。
補助金名 |
着手金 |
成功報酬 |
IT導入補助金 |
5万~10万円 |
受給額の10~15% |
小規模事業者持続化補助金 |
5万円 |
受給額5~15% |
事業再構築補助金 |
10万~20万円 |
受給額の10~20% |
ものづくり補助金 |
5万~10万円 |
受給額の10~20% |
代行会社によっては「着手金なし、成功報酬のみ」の場合もあります。
補助金の申請代行を行っている専門家
中小企業診断士
中小企業診断士とは、中小企業の経営支援を行う専門家であり、国家資格です。中小企業の経営課題を分析し、助言を行います。補助金を申請する際は、事業計画を策定する必要があるため、申請代行を行う専門家には中小企業診断士が多いのが特徴です。
税理士
税理士とは、税務や会計業務を行う専門家であり、国家資格です。経営コンサルティング業務を行っている税理士もいますが、補助金を専門としていない税理士もいます。中小企業には、業務委託契約で顧問税理士と取引している場合が多いので、補助金の申請代行を依頼できるか確認してみるとよいでしょう。
行政書士
行政書士とは、法律業務や行政手続きを行う法律の専門家であり、国家資格です。行政省庁に提出する書類作成を得意としているため、多くの行政書士が補助金の申請代行を手掛けています。
金融機関
補助金業務に力を入れている金融機関は多いです。なぜなら、補助金で事業を実施する際は、先に自社で経費を支払わなければならないため、一時的に金融機関から融資を受けるケースが多いからです。しかしながら、金融機関が補助金の申請代行を行うケースはほとんどなく、専門家の紹介までにとどまります。
民間のコンサルティング会社
中小企業診断士や税理士、行政書士などの国家資格を保有していない民間のコンサルティング会社が、補助金の申請代行を行っているケースもあります。優秀なコンサルタントもいる一方で、悪質な業者もいるとされています。申請代行を依頼をする際は、慎重に判断しなければなりません。
補助金の申請代行を依頼するメリット
書類作成の手間を省ける
補助金の申請業務を委託できるため、多くの時間を要する書類作成の手間が省けます。自社のリソースで補助金を申請する場合、数十ページに及ぶ公募要領の読み込みから始まります。社内の人員で行う必要があるため、知識や経験がない場合、多くの時間と手間がかかるでしょう。専門家に依頼すれば、通常業務に支障をきたすことなく本業に集中することが可能です。
補助金の採択率を高められる
補助金のプロに申請を依頼することで、採択率を高められます。特に、補助金を申請したことがない場合や採択されたことがない場合、自社にノウハウがないため採択されるのが難しい可能性があります。申請代行会社は採択されやすい申請書の作成方法や注意点などを熟知しているため、自社で申請して採択されるのが難しいと判断した場合は積極的に活用しましょう。
自社に適した補助金を選定してもらえる
申請代行会社は様々な補助金に精通しているため、自社に適した補助金を提案してくれます。補助金を活用したいものの、どれが自社に適しているかわからないような場合にも相談することが可能です。「どの補助金が自社の取り組みに合致しているのか」「どの補助金が採択されやすそうか」なども考慮した上で、提案してくれるのが魅力です。
資金繰りの相談もできる
申請手続きを任せられるだけでなく、補助金を活用して事業を実施する際の資金繰りも相談できます。補助金は後払いのため、事業経費は一旦自社で全額を支払わなければならないため、資金繰りも考慮する必要があります。「投資資金がない場合、どのように調達するのか」「補助金が振り込まれるまでの資金はどうするか」なども含めて支援してもらうことが可能です。
補助金の申請代行を依頼するデメリット
費用がかかる
補助金の申請代行を活用する場合、着手金や成功報酬などの費用がかかります。成功報酬は補助金の受給額の5~20%程度なので、実質的に受け取れる額が減少するのがデメリットです。しかしながら、採択されなければ1円も受け取れないことを考慮すると、費用をかけて申請代行を依頼した方がよいという考えもあります。
申請までしか支援してもらえない場合がある
申請代行のサポート範囲が申請完了までの場合があります。一方、申請以降も交付申請手続きや事業実施報告などが求められるため、補助金に関するあらゆる業務を委託できない場合があるのがデメリットです。補助金の選定から入金されるまでのプロセスをすべてサポートしてくれる申請代行会社もあるので、サポートの範囲を確認しておく必要があります。
補助金申請代行会社の選び方
資格はあるか
資格の有無で申請代行会社を選ぶとよいでしょう。申請代行を行っているコンサルタントの中には、中小企業診断士や税理士、行政書士といった国家資格者もいれば、資格をもっていないコンサルタントもいます。
また、申請代行会社の中には認定経営革新等支援機関に認定された代行会社もあります。認定経営革新等支援機関とは、中小企業支援に関して、専門的な知識や実務経験が一定水準以上あるとして国から認定された支援機関のこと。コンサルティング能力の裏付けにもなるため「国家資格はあるか」「支援機関として認定されているか」は重要な判断材料です。
実績はあるか
実績のある代行会社を選びましょう。実績はコンサルティング能力の裏付けになるからです。ホームページで採択率や補助金の獲得額を公表している代行会社もあります。公開されていない場合は、問い合わせてヒアリングしてみることをおすすめします。「自社が申請を検討している補助金の採択率は高いか」を比較して代行会社を選ぶとよいでしょう。
費用は適正か
採択された場合と不採択になった場合の費用を試算した上で、費用が妥当な代行会社を選ぶとよいでしょう。いくら採択率が高かったとしても、費用が高すぎる場合、実際に使える補助金が少なくなってしまいます。また、費用が安すぎる場合は、理由をヒアリングするなども必要です。無料相談を活用して総合的に判断しなければなりません。
補助金に精通しているか
補助金全般に精通している代行会社を選びましょう。代行会社ごとに得意としている補助金は異なります。例えば、IT導入補助金で実績があったとしても、ものづくり補助金では採択率が低いといったケースもあるでしょう。また、あらゆる補助金に知見がある代行会社は、自社に適した補助金や採択されやすい補助金を選定できます。補助金を活用したいものの、どれがふさわしいかわからない場合は特に重要な判断材料といえます。
補助金の申請代行業者を選ぶ際の注意点
丸投げはできない
申請代行を依頼したからといって、自社は何もしなくてよいわけではありません。「補助金を活用してどのような取り組みを行いたいのか」のように、自社でなければ記入できない項目が数多くあります。例えば、IT導入補助金の場合、申請書に自社の強みや弱みを記入する項目があります。一言一句を自社で考える必要はありませんが、代行会社と協力して手続きを進めなければなりません。
費用を明確にしておく
サポート範囲と費用を明確にしておきましょう。代行会社によっては、採択後の交付申請や事業実績報告や進捗報告などの業務に対して追加料金を設けているケースもあります。トラブルにならないように、契約書で明記しておくことをおすすめします。
スケジュールに余裕をもって依頼する
補助金には申請期限が設けられているため、代行会社には余裕をもって依頼しましょう。締め切り直前に依頼した場合、対応してくれないケースもあります。また、申請書類の取得や準備にも時間を要します。IT導入補助金や事業再構築補助金、ものづくり補助金を申請する際は、gBizIDプライムアカウントが必要です。gBizIDプライムアカウントとは、行政手続きで使えるアカウントのことで、申請から取得までに2~3週間程度かかります。
悪質な代行業者もいる
悪質な申請代行会社もいるので注意しましょう。悪質な代行会社に依頼した場合、高額な追加費用を請求されるケースもあります。また、採択されるために虚偽の申請を行うケースもあるため、依頼する前に実績や費用、誠実さなどの観点から総合的に判断しましょう。
【まとめ】補助金申請代行会社の選び方を紹介しました
補助金の申請代行を依頼する際の費用相場は、着手金が5~20万円、成功報酬が5~20%程度です。サポートの範囲は代行会社によって異なるため、契約書に明記しておくとトラブルを避けられます。申請代行会社を選ぶ際は、実績や費用、資格の有無などの観点から多角的に判断するとよいでしょう。