助成金とは?返済しなければいけない事例や申請時の注意点を解説

助成金とは?返済しなければいけない事例や申請時の注意点を解説

助成金の申請を検討している方の中には「返済義務はあるのか」気になっている方も多いのではないでしょうか。原則、助成金は返済する必要はありませんが、不正に受給している場合は返済しなければなりません。本記事では、その事例や申請時の注意点などを解説します。

目次
  1. 1. 助成金とは
    1. 1-1. 補助金との違い
  2. 2. 助成金を申請する要件
    1. 2-1. 雇用保険適用事業所の事業主であること
    2. 2-2. 調査に協力すること
    3. 2-3. 労務管理を整備していること
  3. 3. 助成金が支給されないケース        
  4. 4. 助成金の返済義務
    1. 4-1. 返済義務が生じるケース
    2. 4-2. 不正受給のペナルティ
  5. 5. 助成金の返済義務が生じた実際の事例
    1. 5-1. 雇用調整助成金を不正受給した事例
    2. 5-2. 両立支援金を不正受給した事例
    3. 5-3. 緊急雇用安定助成金を不正受給した事例
  6. 6. 【助成金受給時】会計処理の方法
  7. 7. 助成金を申請する際に気をつけること
    1. 7-1. 申請期限に間に合うように手続きを進める
    2. 7-2. 制度が変更・廃止する可能性がある
    3. 7-3. 不正受給にならないように注意する
  8. 8. 中小企業におすすめの助成金7選
    1. 8-1. 雇用調整助成金
    2. 8-2. 人材確保等支援助成金
    3. 8-3. 働き方改革推進支援助成金
    4. 8-4. 産業保健関係助成金
    5. 8-5. キャリアアップ助成金
    6. 8-6. 労働移動支援助成金
    7. 8-7. 業務改善助成金
  9. 9. 【まとめ】返済不要の助成金を積極的に活用しよう

助成金とは

助成金とは、主に厚生労働省が主体となって実施するもので、企業による労働環境改善や雇用促進などの取り組みを支援するために支給されます。助成金は申請要件を満たしていれば、高い確率で受給することが可能です。

補助金との違い

補助金とは、主に経済産業省が主体となって実施するもので、国や地方公共団体の政策目標を達成させるための取り組みを行う企業を支援するために支給されます。補助金には厳格な審査があるため、通過しなければ受け取れないのが助成金との大きな違いです。

助成金を申請する要件

助成金とは?返済しなければいけない事例や申請時の注意点を解説_2

雇用保険適用事業所の事業主であること

助成金は雇用保険料を財源として支払われるため、受給するには雇用保険の加入が必須です。ただし、雇用保険の適用事業所だったとしても、保険料を滞納している場合は助成金を受給できない可能性があります。未払いの保険料がないように注意しましょう。

調査に協力すること

助成金を申請した場合、管轄の労働局によって調査が行われます。書類の提出のみで済む場合もあれば、現地調査が行われる場合もあります。以下のように、調査に協力できるような体制を整えておきましょう。

  • 調査に必要な書類を作成・保管している
  • 調査に必要な書類を提出する
  • 現地調査に対応する

労務管理を整備していること

「必要な届出を行っているか」「未払い賃金がないか」などの労務管理面も調査されます。適切に対応できていない場合、助成金が支給されないため注意が必要です。よくあるのが、残業代の計算方法を間違っていて、気づかないうちに未払い賃金が発生しているケース。必要に応じて、助成金の申請前に社会保険労務士といった専門家にチェックしてもらうとよいでしょう。

助成金が支給されないケース        

以下に該当する場合は助成金が支給されない可能性があります。

  • 不正受給による不支給決定や支給取り消しの措置を受けてから5年を経過していない
  • 雇用保険料の未払いがある
  • 支給申請日までの1年間で労働関係法令に違反したことがある
  • 性風俗関連営業や接待をともなう飲食店の営業を行っている
  • 事業主や役員が暴力団とかかわりがある

助成金の返済義務

原則、助成金には返済義務はありません。通常、日本政策金融公庫や銀行などから資金調達する場合は融資を受けます。利子を上乗せして返済する必要がありますが、助成金は返済不要の収入として扱うことが可能です。

返済義務が生じるケース

一方、申請する際に、以下のように事実と異なる報告を行った場合は助成金を返済しなければなりません。

  • 従業員を休業させていないにもかかわらず、休業手当を申請した
  • 申請時の事業計画とは関係のない設備や機械を購入した
  • 領収書を改ざんしたり、架空請求を行ったりして経費を水増しした
  • 出勤簿や賃金台帳の改ざんを行い虚偽の申告を行った
  • 実際には実施していない研修や訓練を行ったように報告した

不正受給のペナルティ

助成金の不正受給は、刑法第246条の詐欺罪に該当する可能性があります。また、不正受給のペナルティは、2019年4月1日より厳罰化されています。内容は以下の通りです。

  • 事業者名や代表者名、不正受給額、不正内容を都道府県労働局のホームページで公開
  • 不正受給を指南した社会保険労務士や代理人の情報の公開
  • 助成金の全額返還および取消
  • 不正受給額の20%相当額および延滞金の支払い
  • 5年間は助成金は不支給

都道府県労働局は、不正受給対応について警察と連携を図り、積極的に調査しています。悪質な場合は刑事告発も行われるので、絶対に不正支給は行わないように注意しましょう。

助成金の返済義務が生じた実際の事例

助成金とは?返済しなければいけない事例や申請時の注意点を解説_1

雇用調整助成金を不正受給した事例

雇用調整助成金とは、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業者が、 労働者を一時的に休業させて、雇用の維持を図った場合に支給される助成金です。以下のような不正受給の事例があります。

所在地

東京都

業種

小売業

助成金名

雇用調整助成金

不正受給額

4,290,000円

内容

助成金の不支給要件に該当しているにもかかわらず、

虚偽の申請書を提出し、助成金を不正受給した

両立支援金を不正受給した事例

両立支援金とは、労働者が仕事と家庭を両立できるような取り組みを行う事業者に支給される助成金です。以下のような不正受給の事例があります。

所在地

東京都

業種

社会保険労務士法人

助成金名

両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)

不正受給額

285,000円

内容

申請した事業主が、助成金の対象となる取り組みを実施していないにもかかわらず

実施したように偽り、事業主に無断で資料を作成・提出し助成金を不正に受給させた

緊急雇用安定助成金を不正受給した事例

緊急雇用安定助成金とは、新型コロナウイルス感染症の影響によって収益が減少した事業者が、労働者を一時的に休業させた場合に支給される助成金です。以下のような不正受給の事例があります。

所在地

東京都

業種

外食産業コンサルタント

助成金名

緊急雇用安定助成金

不正受給額

6,245,450円

内容

従業員を休業させていないにもかかわらず、休業したとする虚偽申請を行った。

また、雇用契約のある従業員なのか明確でないにもかかわらず、

雇用し休業させたとする虚偽申請を行い、助成金を不正受給した

【助成金受給時】会計処理の方法

助成金受給時は会計処理にも注意が必要です。計上漏れが発生していた場合、納税額が正しく算出されなくなります。申告した納税額が本来納付すべき額よりも少なかった場合、修正申告が必要です。税務調査を受けるまで修正申告を行わなければ、過少申告加算税として、不足分の納税額に10%を上乗せして支払わなければなりません。なお、助成金は以下のように雑収入として処理します。

助成金100万円が振り込まれた場合

借方

金額

貸方

金額

現金預金

1,000,000

雑収入

1,000,000

申請して受給するまでに決算日をまたぐ場合は一旦、未収入金として処理します

借方

金額

貸方

金額

未収入金

1,000,000

雑収入

1,000,000

会計年度が切り替わり、補助金が振り込まれた際に未収入金を相殺します

借方

金額

貸方

金額

現金預金

1,000,000

未収入金

1,000,000

助成金を申請する際に気をつけること

助成金とは?返済しなければいけない事例や申請時の注意点を解説_3

申請期限に間に合うように手続きを進める

助成金には申請期限が定められている場合もあります。例えば、雇用調整助成金は申請対象期間末日の翌日から起算して2か月以内に申請しなければなりません。また、申請には申請書に加えて、就業規則や賃金台帳、出勤簿のコピーなどの提出が求められます。必要書類の準備には時間がかかるので、余裕をもって申請手続きを進めましょう。

制度が変更・廃止する可能性がある

助成金の中には、申請期限が設けられているものもあります。変化する社会情勢に対応するために緊急措置として支給されるものがあるからです。例えば、緊急雇用安定助成金の申請期限は2023年5月31日までです。この助成金は、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、雇用保険被保険者とはならない労働者を休業させた際に支給されます。このように、助成金の受付が終了する可能性があることも覚えておきましょう。

不正受給にならないように注意する

申請要件を満たしていないにもかかわらず、申請書に虚偽を記載したり、書類を改ざんしたりすると、不正受給に該当します。さらに、実際に助成金を受け取っていなかったとしても、受給しようとしただけで不正受給に該当する可能性があるため注意が必要です。万が一、申請内容に誤りがあった場合、助成金の実施主体に連絡して対応策を確認しましょう。

中小企業におすすめの助成金7選

助成金とは?返済しなければいけない事例や申請時の注意点を解説_4

雇用調整助成金

雇用調整助成金とは、経済上の理由により、事業活動の継続が困難に陥った事業主に支給される助成金です。従業員を解雇せずに一時的に休業させて、雇用維持に取り組んだ場合、従業員に支払った休業手当などの一部または全額が支給されます。新型コロナウイルス感染症の影響により、申請する企業が増えた助成金です。

人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金とは、研修制度やメンター制度などを導入して、従業員が働きやすい労働環境を整備した場合に支給されます。助成金には以下のように9つのコースが設けられています。

  • 雇用管理制度助成コース
  • 介護福祉機器助成コース
  • 中小企業団体助成コース
  • 人事評価改善等助成コース
  • 建設キャリアアップシステム等普及促進コース
  • 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
  • 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
  • 外国人労働者就労環境整備助成コース
  • テレワークコース

働き方改革推進支援助成金

働き方改革推進支援助成金とは、労働環境の改善や有給休暇の取得を促進させるような働き方改革に取り組む場合に支給される助成金です。以下の5つのコースがあります。

  • 適用猶予業種等対応コース
  • 労働時間短縮・年休促進支援コース
  • 勤務間インターバル導入コース
  • 労働時間適正管理推進コース
  • 団体推進コース

産業保健関係助成金

産業保健関係助成金とは、従業員の健康維持に取り組んだ場合に支給される助成金です。
具体的には、以下の4つの助成金があります。

  • ストレスチェック助成金
  • 職場環境改善計画助成金
  • 心の健康づくり計画助成金
  • 小規模事業場産業医活動助成金

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、非正規または有期雇用の労働者を正規雇用に転換したり、労働者の処遇改善に取り組んだ場合に支給される助成金です。以下の6つのコースがあります。

  • 正社員化コース
  • 障害者正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 賞与・退職金制度導入コース
  • 短時間労働者労働時間延長コース

労働移動支援助成金

労働移動支援助成金とは、事業の縮小によって離職を余儀なくされる労働者の再就職支援を行ったり、離職後の求職者を早期に雇用したりした場合に支給される助成金です。以下の2つのコースがあります。

  • 再就職支援コース
  • 早期雇入れ支援コース

業務改善助成金

業務改善助成金とは、生産性向上につながる機械設備やコンサルティングの導入、人材育成などに取り組み、事業場内の最低賃金を引き上げた場合に支給される助成金です。助成額は最低賃金の引き上げ額によって異なり、以下のコースがあります。

  • 30円コース
  • 45円コース
  • 60円コース
  • 90円コース

【まとめ】返済不要の助成金を積極的に活用しよう

助成金の返済義務の有無や不正受給の事例、申請する際の注意点などを解説しました。助成金は補助金と違い、申請要件を満たしていれば高い確立で受給することが可能です。ただし、申請書類に事実と異なる記載をしていた場合は返還しなければならない場合もあるので注意が必要です。。返済不要というメリットを活かして、積極的に活用することで、労働環境の改善や生産性向上につなげましょう。