DXリスキリング助成金とは?リスキリングの重要性や成功ポイントを解説

DXリスキリング助成金とは?リスキリングの重要性や成功ポイントを解説

変化の早い現代社会では、経営方針の変更や求める人材のスキルセットも変わります。しかし、従業員の能力を伸ばすには、資格取得やセミナー・講座への参加などが必要不可欠。

そこで利用しやすいのがDXリスキリング助成金です。本記事では、DXリスキリング助成金について、助成率や上限額、申請要件などを解説します。

目次
  1. 1. 「DXリスキリング助成金」とは
    1. 1-1. そもそも「リスキリング」とは
    2. 1-2. なぜリスキリングが注目されているのか
  2. 2. 「DXリスキリング助成金」の詳細
    1. 2-1. 助成率・上限額
    2. 2-2. 申請できる事業主
    3. 2-3. 申請要件
    4. 2-4. 助成対象訓練
    5. 2-5. 助成対象受講者
    6. 2-6. 助成対象経費
    7. 2-7. 申請の流れ
  3. 3. リスキリングの効果を高めるポイント
    1. 3-1. 1. 自社に必要なスキルセットを明確にする
    2. 3-2. 2. リスキリングの重要性を知ってもらう
    3. 3-3. 3. 学習環境を整える
    4. 3-4. 4. 習得したスキルを活かす場を作る
  4. 4. 国が主催する「リスキリング助成金」
  5. 5. 人材開発支援助成金
    1. 5-1. 教育訓練給付金
  6. 6. DX関連で利用できる補助金・助成金
    1. 6-1. IT導入補助金
    2. 6-2. 小規模事業者持続化補助金
    3. 6-3. ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
    4. 6-4. サイバーセキュリティ対策促進助成金
    5. 6-5. 躍進的な事業推進のための設備投資支援事業
  7. 7. 「DXリスキリング助成金」について解説しました

「DXリスキリング助成金」とは

「DXリスキリング助成金」とは、東京都内の中小企業または個人事業主を対象に、従業員のリスキリング(職業訓練)費用を助成する制度です。ただし、名前に「DX」とついているとおり、助成対象はDX(デジタルトランスフォーメーション)に関連するリスキリングに限られます。

たとえば、以下のようなリスキリングが助成対象です。

  • DX推進のためのマネジメント講座
  • リモートワークやクラウドの整備に伴う情報セキュリティ対策講座
  • 組織力、営業力向上のためのプレゼンテーションソフト活用講座
  • 業務効率化のためのExcelマクロVBA入門講座

そもそも「リスキリング」とは

「リスキリング」とは、英語の「Re-skilling」が語源の言葉で「学び直し」という意味を持ちます。経済産業省ではリスキリングを以下のように定義しています。

新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること

引用元:リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流

従業員は、リスキリングによって新しい技術や方法論を学び、現在の職業でのパフォーマンスを向上させたり、新しい職種への転向を可能にしたりします。

なぜリスキリングが注目されているのか

近年では、急速に変化する職業環境やテクノロジーの進展に対応するためにリスキリングが注目されるようになりました。2020年にはダボス会議にて「2030年までに10億人のリスキル」が提唱され、数多くの国や企業が賛同しています。

企業経営の観点では、人材育成に投資をしなくては、変化の激しい世の中に対応できずに取り残されてしまう危険性があります。そのため、国や地方自治体はリスキリングに関する助成制度で、次世代人材の育成に取り組んでいるのです。

「DXリスキリング助成金」の詳細

では、「DXリスキリング助成金」の詳細を見ていきます。

助成率・上限額

助成率

上限額

助成対象経費の3分の2

64万円/社・年度

申請できる事業主

都内に本社または事業所がある中小企業もしくは個人事業主が申請できます。中小企業もしくは個人事業主とは、以下の表に該当するものです。ただし、みなし大企業を除きます。

業種分類

資本金の額または出資の額

常時使用する従業員数

小売業・飲食店

5,000万円以下

50人以下

サービス業

5,000万円以下

100人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

上記以外の産業

3億円以下

300人以下

申請要件

本制度を申請できる事業主は以下の条件があります。

  • 都内に本社または事業所(支店・営業所等)の登記があること
  • 訓練に必要な経費を従業員に負担させていないこと
  • 助成を受けようとする訓練についてほかの助成を受けていないこと
  • 東京都政策連携団体、事業協力団体または東京都が設立した法人でないこと
  • 過去5年間に重大な法令違反等がないこと
  • 労働関係法令について、一定の条件を満たしていること
  • 都税の未納付がないこと
  • 風俗営業等の規制および業務の適正化に関する法律(風俗営業、性風俗関連特殊営業、接客業務受託営業など)に類するする事業を行っていないこと
  • 連鎖販売取引、ネガティブ・オプション(送り付け商法)、催眠商法、霊感商法などを行っていないこと
  • 暴力団員が所属していないこと
  • 交付申請日から過去5年間に、偽り不正手段による交付決定の取消しがないこと

助成対象訓練

  • 中小企業が自社内に外部講師を招いて実施する訓練であること
  • 民間の教育機関が提供する訓練であること(eラーニング、オンライン会議システムを使用した訓練も含む)
  • DXに関する専門的な知識・技能の習得と向上を目的とする訓練または資格の取得をするための訓練であること(受講料が公開されていて、1時間あたり10万円以内)
  • 自社に外部講師を招いて実施する訓練(オーダーメイド講座)の場合、訓練時間が6時間以上であること
  • 単講座の場合、訓練時間が20時間以上であること(複数講座の組み合わせも可)
  • 助成対象事業者が受講者の受講履歴等を確認できる訓練であること
  • 助成対象期間に実施する訓練であること

助成対象受講者

  • 中小企業が雇用する従業員
  • 常時勤務する事業所の所在地が都内である者(在宅勤務や自宅待機はどこでも可)
  • 訓練時間の8割以上を出席した者

助成対象経費

  • 受講料(消費税は対象外)
  • 教科書代、教材費
  • eラーニング実施に係るID 登録料、管理料等
  • 訓練に付随するヒアリング料等

申請の流れ

DXリスキリング助成金とは?リスキリングの重要性や成功ポイントを解説_1

リスキリングの効果を高めるポイント

DXリスキリング助成金とは?リスキリングの重要性や成功ポイントを解説_2

せっかくリスキリングをしても、効果が出ないのでは意味がありません。リスキリングを検討するのであれば、上記ポイントをおさえておきましょう。

1. 自社に必要なスキルセットを明確にする

効果的なリスキリングプログラムを実施するためには、まず自社の目標や方針に基づいて、どのような人材やスキルが必要かを明確にすることが重要です。リスキリングの取り組みが会社の全体的な経営戦略と同じベクトルを向いていなければ、効果は限定的になるでしょう。

そのため、必要なスキルの洗い出しと、従業員が現時点で持つスキルの把握がポイントになります。両者を比較して、不足しているスキルがリスキリング候補です。

2. リスキリングの重要性を知ってもらう

リスキリングは、企業による一方的な指示だけでなく、従業員の自発的な取り組みが重要な要素。従業員が自分のスキルを更新し、新たな知識や技術を学ぶ意欲を持つことが、リスキリングの成功には不可欠です。

そのため、企業は従業員に対し、なぜリスキリングが必要なのか、そしてそれが自社の経営戦略においてどのような役割を果たすのかを明確に伝える必要があります。

3. 学習環境を整える

従業員が学習に専念できる環境の整備をしないとリスキリングはうまくいきません。たとえば、従業員が就業時間内に学習に時間を割けるようにすることは有効な方法です。これにより、従業員はプライベートな時間の負担を軽減でき、学んだことを直接業務に活かせます。

また、長期的な学習計画を立てリスキリングを単発の取り組みに終わらせないことも重要です。継続的な学習が従業員のスキルアップにつながります。そのため、定期的に1対1でのミーティングを行い、学習状況をフォローアップしてあげるとよいでしょう。

4. 習得したスキルを活かす場を作る

せっかく従業員がスキルアップをしても、新たに習得した知識やスキルを実際の業務で活用できなければ意味がありません。学習と実践をセットにすることで、学びは真のスキルとなります。DXマネジメント管理を受講したのであれば、次のプロジェクトでリーダーに抜擢するなど企業と従業員が共にチャレンジする場を作りましょう。

国が主催する「リスキリング助成金」

東京都以外の企業であっても、国が主催する助成金であれば申請が可能です。ここでは「人材開発支援助成金」「教育訓練給付金」の2つを紹介します。

補助金・助成金

概要

補助額

IT導入補助金

会社が従業員に

特定の訓練をさせるための費用を助成する制度

最大1,000万円/年

小規模事業者持続化補助金

働く人たちが自分で能力開発やキャリア形成を

進めることを支援する制度

最大40万円/年

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、会社が従業員に特定の訓練をさせるための費用を助成する制度です。具体的には、会社が従業員に新しい技術やスキルを教えるための訓練をするとき、その訓練にかかるお金や、訓練している間の従業員の給料の一部をこの助成金でカバーできます。従業員が就業期間の中で必要なスキルを学び、成長できるように支援することが目的です。

関連記事:人材開発支援助成金の対象講座・コースや支給金額、申請方法を解説

教育訓練給付金

教育訓練給付制度は、働く人たちが自分で能力開発やキャリア形成を進めることを支援するための制度です。具体的には、厚生労働大臣が指定した教育訓練プログラムを修了した人に対して、受講費用の一部が給付される仕組みです。受講費用の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6か月ごとに支給されます。

下記サイトで、教育訓練給付制度の申請の流れや対象講座がわかりやすくまとめられています。参考にしてみてください。

DX関連で利用できる補助金・助成金

最後に、DX関連で利用できる補助金や助成金を紹介します。DXリスキリング助成金と組み合わせれば、戦略的な計画が立てられます。

補助金・助成金

概要

補助額

IT導入補助金

ITツールの導入費用を支援する制度

最大450万円

小規模事業者持続化補助金

販路開拓や業務効率化のための

経費の一部を補助する制度

最大50万円

ものづくり・商業・

サービス生産性向上

促進補助金

事業環境の変化に対応または

生産性の向上を補助する制度

最大8,000万円

サイバーセキュリティ対策

促進助成金

サイバーセキュリティを強化するための機器や

サービスの導入にかかる費用の一部を支援する制度

最大1,500万円

躍進的な事業推進のための

設備投資支援事業

新しい機械設備の導入費用の一部を補助する制度

最大1億円

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がITツールの導入費用を支援する制度。デジタル変革や会計システムの更新などに役立ちます。最大450万円の補助があり、補助率は1/2から4/5です。申請対象は中小企業や個人事業主で、5つの申請枠があります。生産性向上を目指す場合に活用すると良いでしょう。

関連記事:IT導入補助金とは?対象者や補助額、申請方法を解説【注意点も】

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や業務効率化のための経費の一部を補助する制度で、生産性向上と持続的発展を目的としています。補助額は最大200万円で、対象経費の2/3が助成されます。Webサイト関連費が補助対象経費になるため、DX関連で利用したいのであれば、一般枠がおすすめです。

関連記事:小規模事業者持続化補助金とは?種類や補助率、対象者について解説

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者、個人事業主向けの補助金。事業環境の変化に対応したり生産性を向上させるための事業、たとえば設備投資、IT化、販路開拓などへの資金面での支援を目的としています。

人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入等により、省力化(オーダーメイド枠)では、最大8,000万円の助成が受けられます。

関連記事:ものづくり補助金の内容を解説!対象となる事業者の要件と金額とは

サイバーセキュリティ対策促進助成金

東京都中小企業振興公社が提供するサイバーセキュリティ対策促進助成金は、中小企業や中小企業団体がサイバーセキュリティを強化するための機器やサービスの導入にかかる費用の一部を支援する制度です。サイバーセキュリティ対策の導入費用が高くなることが多いため、この助成金を利用することで、上限1,500万円の助成金を受け取れます。

関連記事:サイバーセキュリティ対策促進助成金とは|内容や申請の流れ・注意点

躍進的な事業推進のための設備投資支援事業

「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」は、同じく東京都中小企業振興公社が提供する制度です。変化や変革に対応し、先端技術を使って成長を目指す中小企業を支援するため、新しい機械設備の導入費用の一部を最大1億円まで助成します。

関連記事:東京都:「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」≪第6回≫ 【2023年10月30日〜2023年11月17日】

「DXリスキリング助成金」について解説しました

DXリスキリング助成金を活用すれば、コストを抑えながら既存の従業員のレベルを底上げすると共に、DXや事業転換にも対応しやすくなります。これからの時代は、デジタル分野に強い人材がいないとビジネススピードについていけない恐れがあります。ぜひ、本記事を参考にリスキリングや人材育成を検討してみてはいかがでしょうか。