卸売業の事業再構築補助金の採択傾向・事例・補助対象経費について解説!
卸売業でも事業再構築補助金は採択されるのか、どんな新規事業が採択されやすいのか、どんな経費が補助対象となるのか、知りたい方も多いでしょう。
本記事では、卸売業における事業再構築補助金の採択事例や傾向、補助対象経費のほか、使える他の補助金・助成金について解説します。新規事業計画の立案にお役立てください。
事業再構築補助金の卸売業の採択傾向
卸売業は事業再構築補助金に採択されやすい業種といえます。
「事業再構築補助金第10回公募の結果について」によると、事業再構築補助金の第10回公募の応募件数は10,821件、採択数は5,205件。採択率は48.1%です。採択件数の多い業種は卸売業・小売業(15.0%)、製造業(13.4%)、建設業(13.4%)の順で、全業種の中でも卸売業・小売業の採択割合が高いことがわかります。
卸売業で事業再構築補助金を申請し採択されるためには、以下の5つの類型に基づき申請する必要があります。
事業再構築の類型 |
概要 |
新市場進出 (新分野展開・業態転換) |
新たな商品・サービスを提供し、新たな市場へ進出する |
事業転換 |
メインの業種は変えず、新たな商品・サービスによりメインの事業を変える |
業種転換 |
新たな商品・サービスを提供し、メインの業種自体を変える |
事業再編 |
組織再編(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)を行い、 新市場進出、事業転換または業種転換を行う |
国内回帰 |
海外で製造する製品・サービスについて、 先進性のある国内生産拠点を整備する |
新規事業が5つの類型に当てはまるかどうか、申請前に確認しましょう。各類型のイメージが湧くよう、次の項で具体的な採択事例を紹介します。
事業再構築補助金における卸売業の採択事例
ここで卸売業事業者が実際に事業再構築補助金に採択された事例を、事業再構築の類型ごとに紹介します。
新分野展開の事例
メインの事業や業種を変えず、新製品などを新しい市場へ投入する「新分野展開」の具体例を見てみましょう。卸売業から小売業(toC販売)へ新分野展開を図った事例です。
北海道北見市の「株式会社イチキ大光」は、オホーツク海・サロマ湖で養殖された良質なホタテの卸売りを行ってきました。
しかしコロナで飲食店向けの販売が激減。売上は徐々に回復しているものの、オホーツク海の流氷をはじめとする自然環境に漁獲量が左右されたり、大量の廃棄ロスが生じたりする従来の課題も残されていました。
そこで同社は課題解決と新規顧客の獲得に向け、特殊冷凍技術を活用した「家庭用ホタテ玉冷(急速冷凍した貝柱)」を開発。家庭向けEC販売で事業の水平的多角化を図る事業計画を立て、補助金申請が採択されています。
業態転換の事例
続いて、メインの商品やサービスを変えず、提供・販売方法を変える「業態転換」の事例です。
「株式会社サンドリア」は、北海道札幌市を中心に、ダーツマシンやビリヤード台・アミューズメント機器のレンタルリース・販売・買取サービスを手がけている会社です。機器設置後のメンテナンスやダーツ・アミューズメントバーの開業支援も行うなど、周辺事業にも進出していました。
アミューズメント事業の集客力を活かしながら事業の収益力を高めるため、新たにイベント会場への移動フード店舗派遣を補助事業に加える事業計画を策定。事業再構築補助金を申請し、採択されました。
業態転換の例としては上記のほか、新規事業として製造方法を変更する場合も当てはまります。
業種転換の事例
新製品・新サービスを開発し、新事業の売上比率を上げる「業種転換」で採択された事例です。
北海道北広島市大曲に本社を置く「有限会社札幌食品機械」は、豆腐製造器具の製造および食品添加物の販売、洗浄機の卸売・修理を請け負っています。
既存事業が新型コロナウイルス感染拡大や原油価格・物価高騰の影響を受けたため、成長分野である食品加工機械の部品生産を検討。同社が持つ機械構造への強みを活かして新しい市場へ進出し、売上・利益および付加価値を向上させる事業計画を策定、採択されています。
業種転換による採択例としては上記のほか、商品製造の内製化や販売までの一貫化などが挙げられます。
事業転換の事例
続いて、メイン業種を変えず、別の事業へ転換する「事業転換」で採択された事例です。
札幌市白石区の「有限会社丸太千田商店」は、2015年に設立された酒類販売・卸会社です。
コロナ禍で小売店や飲食店からの発注数が激減したことを受け、既存事業から話題性のある事業への転換を検討。卸先への提案方法としても活用できる「飲める酒屋」として、店舗での角打ちサービスの提供を計画しました。角打ちスペース新設のためのリニューアル資金として補助金を申請し、採択されています。
酒類卸から関連領域である飲食業への事業転換を図った事例です。このほかの事業転換の事例としては、新規性のある商品や流通方法による販売事業への転換が挙げられます。
事業再編の事例
続いて、複数事業を整理する「事業再編」で採択された事例です。
仙台市太白区の「有限会社MKD」は音楽商材の卸売会社です。コロナ禍によるライブイベントの中止や減少により、音楽産業以外での活路を見いだすべく、地元仙台名物・牛タンの総菜加工品および他社ブランド商品の製造を請け負うことに。もともと独自の物流ネットワークを持ち、EC販売事業者とのつながりを持つ同社は、OEM商品※を独自のルートで流通させることが可能。牛タン製造卸売業への転換と事業再編計画で、補助金に採択されました。
既存のリソースを活かしながら、不足する人材やノウハウを事業統合し、再編した事例です。
※OEM:メーカーが他企業の依頼を受けて製品を代わりに製造すること、またはその業務を行う企業を指す言葉
国内回帰の事例
最後は、海外で製造される製品・サービスについて、先進性のある国内生産拠点を整備する「国内回帰」での採択事例です。
東京都荒川区の「モノ・インターナショナル株式会社」は、花材輸入卸業でプリザーブドフラワーを輸入販売している会社です。
昨今の円安により、花材輸入時の為替差損が膨らんだことを受け、国内に自社の生産拠点を持つ計画を立案。経費削減を図りながら、室内装飾商品の完成品を新市場へ投入し、付加価値向上を狙う計画です。新コンセプト商品でライフスタイルを提案する事業計画を策定し、補助金に採択されました。
上記のほか、海外に生産拠点を持つ卸売業者がサプライチェーン強化のために、国内で新しい付加価値をつけた製品を開発・製造することも「国内回帰」の一例です。
事業再構築補助金は第10回の公募より通常枠が成長枠に名称変更
画像引用:事業再構築補助金の概要(中小企業庁)
事業再構築補助金の「通常枠」は、2023年3月30日第10回公募から「成長枠」へ名称が変更されました。
変更の背景には、成長分野への大胆な事業再構築を支援する目的があります。「旧 通常枠」における「売上高が減少していること」という要件が撤廃されたため、売上増加傾向の事業者も申請対象となりました。一方で、補助対象の業種と業態が指定されたため、業種によっては申請できなくなっています。
成長枠の対象事業者の要件は以下のとおりです。
- 1. 取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること
- 2. 事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること
- 事業終了時点で、事業場内最低賃金+45円、給与支給総額+6%を達成すること
※ただし、事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させることができなかった場合、差額分(補助率1/6分)の返還を求める
引用:事業再構築補助金の概要
対象業種「過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態」とは、経済産業省「企業活動基本調査」を基準に定められた業種です。「〇〇年だけ市場規模が大きく増加」「〇〇年だけ容易に達成できた」といった一時的推移ではなく、継続的に上昇トレンドにあると認められる業種が指定されています。
前の要件を満たしていれば卸売業でも補助金申請が可能で、具体的には以下の卸売業が補助対象業種にあたります。
- 繊維品卸売業(衣服、身の回り品を除く)
- 農畜産物・水産物卸売業
- 食料・飲料卸売業
- 建築材料卸売業
- 化学製品卸売業
- 産業機械器具卸売業
- 自動車卸売業
- 電気機械器具卸売業
- その他の機械器具卸売業
- 家具・建具・じゅう器等卸売業
- 医薬品・化粧品等卸売業
- 他に分類されない卸売業
これから取り組む事業が成長枠の対象業種であるかどうか、申請前にご確認ください。
卸売業が事業再構築補助金で申請できる補助対象経費
事業再構築補助金を申請する際には、計上する経費が補助対象かどうかを確認してから申請する必要があります。補助対象経費は、新たに思い切った事業再構築をするために必要な項目だけに限定されるためです。
このあと具体的にどの項目が補助対象経費となり、どの項目が補助対象外となるのかを解説します。
補助対象経費になるもの
事業再構築補助金の補助対象経費と認められる項目は、新たに事業再構築として行う「補助事業」に使われる経費のみとなります。
対象経費の区分 |
詳細 |
建物費 |
専ら補助事業のための建物の建設・改修、撤去、 賃貸物件の原状復帰、一時移転の経費 |
機械装置・システム構築費 |
・専ら補助事業のための機械装置、 工具・器具(測定工具・検査工具など)、 専用ソフトウェア・情報システムの購入、製作、借用の経費 ・または機器の改良・修繕、据付け、運搬の経費 |
技術導入費 |
本事業遂行に必要な知的財産権などの導入 ※専門家経費、外注費との併用は不可 |
専門家経費 |
本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費 ※専門家の種別に応じた上限額あり ※旅費は事務局の定める基準に従う ※応募申請時の認定経営革新等支援機関に対する経費や、 事業計画作成の外部支援者に対する経費は対象外 |
運搬費 |
運搬料、宅配・郵送料など |
クラウドサービス利用費 |
専ら補助事業のたのクラウドサービスや Webプラットフォームなどの利用経費 ※サーバーの領域を借りる費用、サーバー上のサービスを利用する費用、 ルーター使用料、プロバイダ契約料、通信料など |
外注費 |
本事業遂行のために必要な加工や設計(デザイン)・検査などの 一部の外注(請負、委託)経費 |
知的財産権等関連経費 |
・新製品・サービスの開発成果の事業化に必要な、 特許権などの取得に要する弁理士の手続代行の経費 ・外国特許出願のための翻訳料など、知的財産権等取得に関連する経費 |
広告宣伝・販売促進費 |
本事業で開発・提供する製品・サービスの広告 (パンフレット、動画、写真など)の作成 および媒体掲載、国内外展示会出展、セミナー開催、 市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用などの経費 |
研修費 |
本事業の遂行に必要な教育訓練や講座受講の経費 |
上記項目のうち、交付決定を受けた日以降の契約・発注であり、補助事業実施期間内に支払いを終えた分のみが対象です。補助対象の経費は、事業を拡大するための事業資産(有形・無形)・投資との位置づけのため、補助事業の対象であると明確に区分・証明されることが必要です。
採択されたからといって、計上経費のすべてが補助対象になるとは限りません。申請時には対象経費の必要性・金額の妥当性を証明できるよう、証拠書類を整備しておきましょう。
補助対象外の経費になるもの
原則として、既存事業に転用可能な経費や補助事業の直接必要のない経費は、補助対象外です。その他の主な補助対象外経費は以下のとおりです(サプライチェーン強靭化枠以外)。
- 従業員の人件費、従業員の旅費
- 車両・運搬具の購入費
- 建物の単なる購入や賃貸、契約満了による原状回復
- パソコン・タブレット端末・スマートフォンなどの本体費用
- フランチャイズ加盟料、商品の原材料費、消耗品費、光熱水費、通信費
- 応募申請時の認定経営革新等支援機関の経費や事業計画作成時の外部支援者に対する経費
- 自社の他事業と共有するクラウドサービス費
- サーバー購入費・レンタル費
- 外注先の機械装置・システム購入費
- 事業の一部のみを閉めた場合の廃業費
- 過去公募回で採択された事業の廃業費
申請事業の経費が対象かどうか不明な場合は、上記公式サイトで確認しましょう。事業再構築補助金の対象経費・対象外経費については、下記記事でも詳細に解説していますのでご参照ください。
関連記事:事業再構築補助金の対象経費は?対象にならない経費や注意点も解説
卸売業で使える補助金と助成金
|
概要 |
申請枠 |
事業再構築 補助金
|
「新市場進出(新分野展開・事業転換)」 「業種転換」「業態転換」「事業再編」 「国内回帰」による中小企業の 思い切った事業再構築の挑戦を支援
|
・最低賃金枠 ・物価高騰対策・回復再生応援枠 ・産業構造転換枠 ・成長枠(旧 通常枠) ・グリーン成長枠 ・卒業促進枠 ・大規模賃金引上促進枠 ※第11回公募では サプライチェーン強靭化枠の 募集なし |
ものづくり補助金 (ものづくり・ 商業・ サービス 生産性向上 促進補助金) |
中小企業や小規模事業者が取り組む 革新的サービス開発・試作品開発・ 生産プロセス改善のための 設備投資を支援 |
・省力化(オーダーメイド)枠 ※代17回公募では 「製品・サービス高付加価値化枠」 「グローバル枠」の募集なし |
IT導入補助金 |
業務効率化やDX等に向けたITツール (ソフトウェア・サービス)の導入を支援 |
※2024年1月~ ・通常枠 ・セキュリティ対策推進枠 ・インボイス枠 ・複数社連携IT導入枠 |
小規模事業者 持続化補助金 |
中小企業や個人事業主などの販路開拓、 生産性の向上、持続的発展を支援 |
・通常枠 ・賃金引上げ枠 ・卒業枠 ・後継者支援枠 ・創業枠 |
業務改善助成金 |
生産性向上のための設備投資 (コンサルティング・人材育成などを含む) とともに、 事業場内最低賃金を 一定額以上引き上げた場合、 設備投資費用の一部を助成 |
・30円コース ・45円コース ・60円コース ・90円コース |
※2024年1月時点
卸売業で使える補助金・助成金には、事業再構築補助金以外にも「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」「業務改善助成金」があります。それぞれ概要と申請要件、補助対象経費を解説します。
事業再構築補助金
「事業再構築補助金」とは、中小企業の事業再構築の挑戦を支援するために設けられた補助金制度です。コロナ禍で打撃を受けた企業に、事業の思い切った方向転換を促し、日本経済の構造転換を図る目的で制定されました。
思い切った事業再構築とは、「新市場進出(新分野展開、業態転換)」「事業転換」「業種転換」「事業再編」「国内回帰」の5つの類型を指します。補助金に申請するためには、5つのいずれかの類型に該当する事業計画を、認定支援機関とともに策定することが必要で、5類型の要件は以下のとおりです。
申請類型 |
必要要件 |
新市場進出 (新分野展開、業態転換) |
1. 製品等の新規性 2. 市場の新規性 3. 新事業売上高10%等 |
事業転換 |
1. 製品等の新規性 2. 市場の新規性 4. 売上高構成比 |
業種転換 |
1. 製品等の新規性 2. 市場の新規性 4. 売上高構成比 |
事業再編 |
5. 組織再編 6. その他の事業再構築 |
国内回帰 |
7. 海外製造等 8. 導入設備の先進性 3. 新事業売上高10%等 |
要件1~8は、以下に示す内容です。
- 製品等の新規性要件:過去に製造などの実績がないこと、定量的に性能または効能が異なること
- 市場の新規性要件:既存事業と顧客層が異なること
- 新事業売上高10%等要件:3〜5年間の事業計画期間終了後に、新たな製品の売上高が総売上高の10%(または総付加価値額の15%)以上の計画を策定していること
- 売上高構成比率要件:新事業(業種)が売上高構成比の最も高い事業(業種)となること
- 組織再編要件:「合併」「会社分割」「株式交換」「株式移転」「事業譲渡」などを行うこと
- その他の事業再構築要件:「新市場進出(新分野展開、業態転換)」「事業転換」又は「業種転換」のいずれかを行うこと
- 海外製造等要件:海外から製造・調達している製品について、国内で生産拠点を整備すること
- 導入設備の先進性要件:事業による製品の製造方法が先進性を有するものであること
参考:事業再構築指針の手引き、事業再構築補助金とは | 事業再構築補助金
事業再構築補助金の補助上限額は、申請枠ごとに以下のように設定されています。
申請枠 |
補助上限額 |
成長枠 |
従業員数に応じ最大7,000万円 |
グリーン成長枠 |
(スタンダード)企業規模に応じ最大1.5億円 |
卒業促進枠 |
成長枠・グリーン成長枠に準ずる |
大規模賃金引上促進枠 |
3,000万円 |
産業構造転換枠 |
従業員数に応じ最大7,000万円 |
物価高騰対策・回復再生応援枠 |
従業員数に応じ最大3,000万円 |
卸売業者が事業再構築補助金に採択される事業の傾向として、以下のようにサプライチェーンの複数フェーズにかかわるケースが多いです。
- 食品卸売業者が新たにお弁当の製造・販売事業を展開
- 建材の卸売業者が中古建材の仕入れ・リサイクル事業との複合的事業へ進出
事業再構築補助金を申請するには「GビズID」へアカウント登録を行ったうえで、電子申請システム「jグランツ」から申請する必要があります。GビズID登録には時間がかかるため、余裕を持って手続きを行いましょう。
ものづくり補助金
画像引用:ものづくり補助金総合サイト・公募要領(17次締切分)
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)」は、中小企業・小規模事業者などが各種制度変革に対応できるよう設けられた制度です。中小企業・小規模事業者が革新的なサービス開発・試作品開発ができ、生産プロセスを改善できるよう、必要な設備投資を支援することを目的として設けられました。
申請枠は「省力化(オーダーメイド)枠」「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」の3つです。なお第17次公募(2024年2月13日~3月1日)では「省力化(オーダーメイド)枠」のみの募集となっているためご注意ください。
ものづくり補助金の対象は製造業だけではなく、卸売業でも以下のような事業で採択されています。
- ビニールハウス用ポリフィルム出荷の生産性向上・工数削減のために、新素材採用と自動化のための機器投入を実施。工程に割く人員が2分の1に、所要時間が3分の1になった。高品質で安価な製品は全国から注文を受けるまでになり、事業が大きく成長した。
- 生花卸業で、「鮮温保管システム」を構築したことにより、需要期に合わせた生花の仕入れや保管が可能に。花卉の鮮度を保ち付加価値を高めると同時に、従業員の就業時間短縮にもつながり、モチベーション向上と離職率低下の効果もみられた。
ものづくり補助金の補助対象経費は、以下の項目です。
- 機械装置・システム構築費
- 運搬費
- 技術導入費
- 知的財産権等関連経費
- 外注費
- 専門家経費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費
ものづくり補助金の補助金額は、従業員数に応じて以下のように定められています。
従業員数 |
補助金額 ※()内は大幅賃上げを行う場合 |
従業員数5人以下 |
100万円~750万円(+最大250万円) |
6~20人 |
100万円~1,500万円(+最大500万円) |
21~50人 |
100万円~3,000万円(+最大1,000万円) |
51~99人 |
100万円~5,000万円(+最大1,500万円) |
100人以上 |
100万円~8,000万円(+最大2,000万円) |
ものづくり補助金の申請は、電子申請システムのみの受け付けです。「GビズID(アカウント)」を取得し、電子申請システム「 jGrants」から申請を行います。GビズIDアカウントの発行には時間がかかるため、余裕を持って手続きしましょう。
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(17次締切分)省力化オーダーメイド
IT導入補助金
画像引用:IT導入補助金2024の精度概要について
「IT導入補助金」とは、中小企業・小規模事業者の業務効率化・DXを図る ITツール(ソフトウェア・サービス)導入を支援する補助金制度です。中小企業などがITツールを用いて、自社の置かれた環境や強み・弱みを分析し、経営課題の解決や売上アップを図ることを目的に制定されました。
卸売業で補助対象となる事業者とは「資本金または出資の総額が1億円以下」の会社、または「常時使用する従業員が100人以下」の会社および個人事業主です。
補助対象となる経費は以下のとおりで、他の補助金制度では対象とならないハードウェアも、IT導入補助金では補助対象となります。
- 会計・受発注・決済などの各種業務ソフト
- セキュリティソフト
- クラウド利用費
- PC・タブレット端末、レジ、券売機などのハードウェア
- 導入に関わるコンサルティングや設定、保守サポート費用
2023年10月開始のインボイス制度への対応を支援する枠として「インボイス枠」が」設けられました(旧デジタル化基盤導入枠)。2024年の公募分から、「通常枠」「インボイス枠(電子取引類型・インボイス対応類型)」「複数社連携IT導入枠」「セキュリティ対策推進枠」の4支援枠に改編されます。
申請するには、あらかじめ「gBizID」プライムから事業者登録を行い、さらに「みらデジ」の経営チェックを受ける必要があります。さらに交付申請要件として、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「SECURITY ACTION」への宣言も必要です。申請枠によって若干手順が異なるため、公式ホームページ「新規申請・手続きフロー(中小企業・小規模事業者等のみなさまの手続き)」でご確認ください。
※SECURITY ACTION:中小企業・小規模事業者が自ら情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度。「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」に従い2段階の取り組み目標(1つ星・2つ星)を宣言する。
IT導入補助金の詳細情報は、以下の記事からも収集が可能です。
関連記事:インボイスにも対応可能!IT導入補助金の概要や対象者について解説!
小規模事業者持続化補助金
「小規模事業者持続化補助金」とは、小規模事業者などが自ら計画を策定し、商工会などの支援のもと、販路拡大に取り組む経費の一部を補助する制度です。小規模事業者が数々の制度変更に対応しながら、地域の雇用・産業を支えることができるよう支援する目的で設置されました。
卸売業者でいう小規模事業者とは「常時使用する従業員の数が5人以下」で、申請枠は以下の5種類です。
|
通常枠 |
賃金引上げ枠 |
卒業枠 |
後継者支援枠 |
創業枠 |
補助率 |
2/3 |
2/3 ※赤字事業者は3/4 |
2/3 |
2/3 |
2/3 |
補助上限 |
50万円 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
インボイス 特例 |
要件を満たした場合に+50万円 |
出典:小規模事業者持続化補助金<一般型> 第 14 回公募 公募要領 (2023年9月)
補助対象経費としては、販路拡大のためのチラシやパンフレット、ホームページやWeb広告、店舗改装、展示会への出展、新商品の開発費用などがあります。「オンライン販売を展開するための保管設備」また「販路拡大につながる新サービスの開発・提供に必要な設備投資」といった採択事例もあるため、活用するとよいでしょう。
補助金の目的が「販路拡大」に特化されているため、単なる設備の老朽化による交換などは補助対象外です。
持続化補助金の申請は、地域の商工会議所や商工会が窓口になっており、「gBizID」プライムアカウントを取得後、電子申請システム「Jグランツ」から申請します。
小規模事業者持続化補助金の対象経費については、下記で詳細に解説しています。
関連記事:小規模事業者持続化補助金の対象経費を徹底解説!活用例もご紹介
業務改善助成金
「業務改善助成金」とは、生産性を向上するための設備投資(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行いながら、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合に、設備投資費用の一部を助成する制度です。
卸売業においては以下に該当する事業者が対象事業者です。
- 資本金(出資額)1億円以下、または常時使用する労働者が100人以下
- 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内
- 解雇、賃金引き下げなどの不交付事由がない
上記をすべて満たした場合に、「事業場ごとに」申請を行います。
ただし労働者(従業員)の最低賃金引き上げが目的であるため、従業員がいない事業者は助成の対象外です。
助成される金額は、生産性を向上させるための設備投資費用に、一定の助成率をかけた金額と、助成上限額のいずれか低い方の金額です。助成率は事業場の引き上げ前の事業場内最低賃金により異なります。
事業場内最低賃金額 |
900円未満 |
900円以上950円未満 |
950円以上 |
助成率 |
9/10 |
4/5(9/10) |
3/4(4/5) |
※()内は生産性要件を満たした場合
なお、以下の「特例事業者」に該当すれば、助成上限額の拡大・助成対象経費の拡大を受けられます。
- 事業場内最低賃金が950円未満
- 新型コロナウイルス感染症の影響により、直近3か月間の売上高(生産量)の月平均値が、前年、前々年または3年前同期に比べ15%以上減少
- 原材料費の高騰などの外的要因により、申請前3か月間のうち任意の1月の利益率(売上高総利益率または売上高営業利益率)が、前年同期に比べ、3%ポイント以上低い
補助対象経費は、生産性向上のための設備投資費用で、例えば以下の事例が該当します。
- 時短のための在庫管理システム導入
- 業務フロー改善のための経営コンサルティング費用
業務改善助成金の申請窓口は、各都道府県の労働局雇用環境・均等部室で、様式に沿った「交付申請書」「事業実施計画書」を作成・提出します。
【まとめ】卸売業で受けられる事業再構築補助金について紹介しました
卸売業で事業再構築補助金を申請する際は、下記5つの類型のいずれかに該当する事業計画の策定が必要です。
- 新市場進出(新分野展開・業態転換)
- 事業転換
- 業種転換
- 事業再編
- 国内回帰
事業再構築補助金で卸売業は比較的優遇されており、他の業種と比べて採択されやすい傾向にあります。紹介した事例を参考に、採択される事業計画を策定し、新規事業を成長に導きましょう。