事業再構築補助金でシステム開発を行う注意点や申請方法等を徹底解説

事業再構築補助金でシステム開発を行う注意点や申請方法等を徹底解説

新規事業を検討するにあたり、事業再構築補助金の活用を検討している企業も多いのではないでしょうか。

本記事では、事業再構築補助金をシステム開発に活用する上での注意点や申請方法などについて詳しく解説していきます。事業再構築補助金の活用を検討している方は、ぜひご覧ください。

目次
  1. 1. 事業再構築補助金の概要
    1. 1-1. 事業再構築補助金の対象となる要件
    2. 1-2. 申請枠は7種類ある
    3. 1-3. 申請の上限回数
  2. 2. 事業再構築補助金を活用できるシステム開発の目的例
    1. 2-1. 新たなWebサービス用のシステム構築
    2. 2-2. 新商品販売のためのECシステム構築
  3. 3. 事業再構築補助金の申請の流れ
    1. 3-1. アカウントを取得する
    2. 3-2. 認定経営革新等支援機関に相談する
    3. 3-3. 書類を作成する
    4. 3-4. 専用サイトから申請する
    5. 3-5. 事務局から審査結果の通知を受け取る
    6. 3-6. 補助金の交付申請を行う
    7. 3-7. 事業計画に沿って補助事業を実施する
    8. 3-8. 補助金の利用に関するチェック
    9. 3-9. 事業計画のフォローアップ
  4. 4. 事業再構築補助金の必要書類
  5. 5. 事業再構築補助金を利用したシステム開発の注意点
    1. 5-1. 自社開発の人件費は補助対象にならない
    2. 5-2. 事業の大半を外注している場合、補助対象外となる可能性がある
    3. 5-3. 無形資産が対象経費の大半を占める場合、補助対象外となる可能性がある
  6. 6. 事業再構築補助金をシステム開発に活用した採択事例
    1. 6-1. 沖縄ツーリスト株式会社
    2. 6-2. 与力水産株式会社
    3. 6-3. 原田精機株式会社
  7. 7. 事業案についてコンサルティングを受けるメリット・デメリット
    1. 7-1. コンサルティングを受けるメリット
    2. 7-2. コンサルティングを受けるデメリット
  8. 8. 【まとめ】事業再構築補助金のシステム開発について紹介しました

事業再構築補助金の概要

事業再構築補助金とは、コロナウイルスを受け、新たな業種や業態に挑戦する事業者に向けた補助金です。日本国内に本社を構える企業や個人事業主などが活用することができ、最大1億5000万円までの支援を受けられるため、使い勝手の良い補助金といえます。

事業再構築補助金の対象となる要件

事業再構築補助金は全ての事業者が対象になるわけではなく、いくつかの要件を満たしている企業・個人事業主のみが対象となります。必須申請要件として定められている2つの項目について見ていきましょう。

認定経営革新等支援機関の確認を受けていること

事業者自身で作成した事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受ける必要があります。補助金額が3,000万円を超える場合は、銀行や信用金庫、ファンドといった金融機関の確認も受けなければなりません。

付加価値額を向上させること

申請枠によって具体的な数字は変わってきますが、以下のいずれかを満たさなければなりません。

  • 補助事業終了後3〜5年で付加価値額の年率平均3.0~5.0%以上増加させること
  • 従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0~5.0%以上増加させること

申請枠は7種類ある

事業再構築補助金の申請枠は7種類あり、申請枠ごとに補助率や最大補助額などが定められています。それぞれについて見ていきましょう。

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成長枠

概要

成長分野において大胆な事業再構築を目指す事業者を支援する

必要要件

1.取り組む事業が、過去〜今後のいずれか10年間で、

 市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること

2.事業終了後3〜5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

補助上限額

・従業員数20人以下:2,000万円

・従業員数21~50人:4,000万円

・従業員数51人〜100人:5,000万円

・従業員数100人以上:7,000万円

補助率

  • ・中小企業:1/2
  • ・中堅企業:1/3

グリーン成長枠

概要

グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を支援する

必要要件

エントリー:

1.グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の

 解決に資する取組として記載があるものに該当し

 その取組に関連する1年以上の研究開発・技術開発

 又は従業員の5%以上に対する年間20時間以上の人材育成をあわせて行うこと

2.事業終了後3〜5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

 

スタンダード:

1.グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の

 解決に資する取組として記載があるものに該当し、

 その取組に関連する2年以上の研究開発・技術開発

 又は従業員の10%以上に対する年間20時間以上の人材育成をあわせて行うこと

2.事業終了後3〜5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

補助上限額

エントリー:

・中小企業

  •  20人以下:4,000万円
  •  21〜50人:6,000万円
  •  51人以上:8,000万円

・中堅企業

  •  1億円

 

スタンダード:

・中小企業:1億円

・中堅企業:1.5億円

補助率

・中小企業:1/2

・中堅企業:1/3

卒業促進枠

概要

成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して

中小企業等から中堅企業等に成長する事業者を支援する

必要要件

1.成長枠又はグリーン成長枠に、同一の公募回で申請すること

2.成長枠又はグリーン成長枠の補助事業の終了後3〜5年で

 中小企業・特定事業者・中堅企業の規模から卒業すること

補助上限額

成長枠・グリーン成長枠に準ずる        

補助率

・中小企業:1/2

・中堅企業:1/3

大規模賃金引上促進枠

概要

成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、

大規模な賃上げに取り組む事業者を支援する

必要要件

1.成長枠又はグリーン成長枠に、同一の公募回で申請すること

2.成長枠又はグリーン成長枠の補助事業の終了後3〜5年の間に、

 事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引上げること

3.成長枠又はグリーン成長枠の補助事業の終了後3〜5年の間に、

 従業員数を年率平均1.5%以上増員させること

補助上限額

3,000万円

補助率

・中小企業:1/2

・中堅企業:1/3

産業構造転換枠

概要

国内市場の縮小等の産業構造の変化等により、

事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者を支援する

必要要件

1.過去〜今後のいずれか10年間で、

 市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属していること

2.地域における基幹大企業が撤退することにより、

 市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域に属しており、

 当該基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めること

補助上限額

・20人以下:2,000万円

・21〜50人:4,000万円

・51〜100人:5,000万円

・101人以上:7,000万円

補助率

・中小企業:2/3

・中堅企業:1/2

物価高騰対策・回復再生応援枠

概要

コロナや物価高等により依然として業況が厳しい事業者を支援する

必要要件

1.2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、

 2019〜2021年と比較しての同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること

2.中小企業活性化協議会等から支援を受け、再生計画等を策定していること

補助上限額

・5人以下:1,000万円

・6〜20人:1,500万円

・21〜50人:2,000万円

・51人以上:3,000万円

補助率

・中小企業:2/3〜

・中堅企業:1/2〜

最低賃金枠

概要

最低賃金の引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な

特に業況の厳しい中小企業等を支援する

必要要件

1.2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、

 2019~2021年と比較しての同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること

2.2022年10月から2023年8月までの間で、

 3か月以上最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること

補助上限額

・5人以下:500万円

・6〜20人:1,000万円

・21人以上:1,500万円

補助率

・中小企業:3/4

・中堅企業:2/3

出典:必須申請要件 | 事業再構築補助金

申請の上限回数

1事業者につき支援を受けられるのは1度のみと定められています。ただ、申請が不採択となった場合は再申請が可能で、再申請の上限はありません。グリーン成長枠に限り、過去に支援を受けたことのある事業者も申請可能となっています。

事業再構築補助金を活用できるシステム開発の目的例

詳しい注意点は後ほど紹介しますが、事業再構築補助金は全てのシステム開発に活用できるわけではありません。補助対象になる開発の目的例としては以下のようなものが挙げられます。

新たなWebサービス用のシステム構築

マッチングプラットフォームや売上管理を目的としたクラウドサービスといった新たなWebサービス用のシステム構築は補助対象です。ウェブサイトやアプリといった提供方法に関する定めはなく、過去にも多くの採択事例があります。

新商品販売のためのECシステム構築

飲食店が通販用の商品を開発し、販売のためのECサイトを構築するというような新商品販売のためのECシステム構築は補助対象となります。ただ、すでに販売している既存商品を販売するだけのECシステムは補助対象とはならないので注意が必要です。

事業再構築補助金の申請の流れ

続いて、事業再構築補助金の申請準備や申請、受け取りまでの一連の流れについて紹介していきます。

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アカウントを取得する

事業再構築補助金の申請は原則、電子申請のみとなっており、共通認証システム「GビズIDプライム」のアカウントを取得する必要があります。必要書類の作成と並行してアカウントを取得しておきましょう。

認定経営革新等支援機関に相談する

事業計画書の作成にあたり、認定経営革新等支援機関に相談しなければなりません。国の認定を受けた金融機関や商工会議所などが支援機関となっており、事業計画書の作成に関するサポートも受けられます。

書類を作成する

続いて事業計画書や賃上げ表明書といった必要書類の作成を行います。必要書類については後ほど紹介しますので、そちらもあわせてご確認ください。

専用サイトから申請する

必要書類が揃い次第、専用サイトから申請を行いましょう。

事務局から審査結果の通知を受け取る

申請から3ヶ月程度で採択結果が発表され、事業再構築補助金の公式ページにて採択者を確認できます。後日、採択決定通知書が届くので忘れずに受け取るようにしましょう。

補助金の交付申請を行う

採択決定後に行う必要があるのが、交付申請です。経費の内容が補助対象経費として適切かどうかを事務局にチェックされ、問題がなければ補助対象となります。内容によっては補助対象から外れる可能性もあるので注意が必要です。

事業計画に沿って補助事業を実施する

支援機関に相談の上作成した事業計画に沿って、事業を進めていきます。

補助金の利用に関するチェック

補助事業実施期間の終了後に、補助金の利用に関するチェックを受けなければなりません。適切な経費として認められれば補助金の金額が確定し、受け取ることができます。

事業計画のフォローアップ

事業再構築補助金の場合、補助事業実施期間の終了後5年間は事業計画のフォローアップが行われます。具体的には、経営状況について毎年報告を行わなければなりません。

事業再構築補助金の必要書類

必要書類の一覧は以下の通り。申請枠や補助金の使用用途によって必要書類は異なるため、事前に確認しておくのがおすすめです。

  • 補助対象経費理由書
  • 事業計画書表紙
  • 認定経営革新等支援機関による確認書
  • 金融機関による確認書
  • 新築の必要性に関する説明書
  • 市場拡大要件を満たすことの説明書
  • 賃金引上げ計画の誓約書
  • 大規模な賃上げに取り組むための計画書
  • 市場縮小要件を満たすことの説明書
  • 廃業計画書
  • 最低賃金確認書
  • 研究開発・技術開発計画書
  • 人材育成計画書
  • 再生事業者の確認書
  • 卒業計画書
  • 大規模賃上げおよび従業員増加計画書
  • 賃上げ表明書
  • 別事業要件及び能力評価要件の説明書
  • リース取引に係る誓約書
  • 連携の必要性を示す書類
  • 連携体各者の事業再構築要件についての説明書類
  • 組合特例に関する確認書
  • 設備投資の先進性誓約書
  • 自由診療に係る誓約書

事業再構築補助金を利用したシステム開発の注意点

事業再構築補助金を活用してシステム開発を行うにあたり、いくつかの注意点があるので押さえておきましょう。

自社開発の人件費は補助対象にならない

システム開発を外注した場合にのみ補助対象となり、自社で開発した場合の人件費は補助対象になりません。そのため、事業計画書を作成する段階から、システム開発を外注する前提で計画を立てるようにしましょう。

事業の大半を外注している場合、補助対象外となる可能性がある

システム開発を外注するほか、コンサルティングの依頼も補助対象になるものの、あくまで自社が主体となって事業を行わなければなりません。事業の大半を外注してしまうと補助対象外になってしまうため、注意が必要です。

無形資産が対象経費の大半を占める場合、補助対象外となる可能性がある

システム開発のような無形資産が補助経費の大半を占める場合、補助対象外になる可能性があるため、バランスよく有形資産も含めるのが重要です。

事業再構築補助金をシステム開発に活用した採択事例

続いて、事業再構築補助金を活用して行ったシステム開発の採択事例をいくつか紹介していきます。

沖縄ツーリスト株式会社

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画像引用:沖縄ツーリスト株式会社

沖縄発着の旅行業・観光事業を展開している沖縄ツーリスト株式会社の事例です。

コロナウイルスの影響もあって売上が8割減少し、事業の縮小を余儀なくされていました。そこで、事業再構築補助金を活用し、航空券や宿泊、レンタカーなどを利用者が自由に組みあわせて予約できるプラットフォームを開発することに。

補助事業としてシステム開発とサーバー構築への投資を行い、補助事業終了後5年目には新規事業が売上の10%を占める計画となっています。

与力水産株式会社

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画像引用:与力水産株式会社

鮮魚や加工食品を飲食店や海外向けに販売している与力水産株式会社の事例です。

コロナの影響で飲食店向けの売上が約半分まで落ち込んだこともあり、ICT技術を駆使したネット体験型定置網販売サービスを開始すると決意。スマートフォンやパソコンで寮の様子をリアルタイムで閲覧でき、ユーザーが欲しい魚と食べ方を選択すると、当日中に加工・発送される仕組みを構築するとのことです。

システム構築に投資を行い、補助事業終了後3年目時点には新規事業が売上の10%強を占める計画となっています。

原田精機株式会社

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画像引用:原田精機株式会社

自動車部品や大型衛星などの精密部品の設計・開発などを請け負っている原田精機株式会社の事例です。

コロナの影響で自動車・大型衛星に使われる部品の需要が落ち込み、売上が大きく減少。そこで、超小型衛星とその運用・関西システムを開発し、衛星の販売と利用サービスの提供を行うとのことです。

システム開発と通信設備へ投資を行い、補助事業終了後5年目時点には新規事業が売上の10%強を占める計画となっています。

事業案についてコンサルティングを受けるメリット・デメリット

事業再構築補助金の申請で必要となる事業案についてコンサルティングを受けるというのも1つの手段です。メリット・デメリットがあるため、それぞれについて見ていきましょう。

コンサルティングを受けるメリット

採択率の向上が期待できる

事業再構築補助金は必ず採択されるというものではなく、不採択になってしまうこともあります。その大きな判断材料になるのが事業案・事業計画書になるため、コンサルティングを受けることで採択率の向上が期待できるのは大きなメリットです。

事務作業の負担を軽減できる

補助金の申請に際しては様々な書類が必要となり、初めて取り組む方にとっては事務作業が大きな負担になってしまう場合があります。実務をサポートしてくれるコンサルタントに依頼すれば事務作業の負担を減らすことができ、事業に集中できるのも大きなメリットです。

事業自体のブラッシュアップに繋がる

事業計画に対して様々なアドバイスが受けられるため、よりブラッシュアップできるのも大きなメリットです。補助金に採択されることだけでなく、新規事業を成功させることが重要なため、プロの知見をもとにアドバイスしてもらえるのはメリットといえます。

コンサルティングを受けるデメリット

費用が発生する

コンサルティング会社に依頼する場合、着手金が10万円から30万円程度、成功報酬が補助金額の8%から15%程度かかるというのが相場。自社でやるよりも大きな費用が発生してしまうというのがデメリットです。

コミュニケーションの負担がかかる

様々なサポートが受けられる一方、頻繁にやりとりする必要があります。そのため、頻繁にコミュニケーションを取ることを負担に感じる方にとっては大きなデメリットになるでしょう。

【まとめ】事業再構築補助金のシステム開発について紹介しました

事業再構築補助金をシステム開発に活用する上での申請方法や注意点、採択事例などについて紹介しました。事業再構築補助金の申請には時間がかかるため、早め早めにアカウントの取得や書類作成などを進めるのがおすすめです。

システム開発に事業再構築補助金を活用しようとしている企業は、本記事を参考にしてみてください。