小売業における事業再構築補助金の採択傾向・事例・補助対象経費を解説!

小売業における事業再構築補助金の採択傾向・事例・補助対象経費を解説!

小売業で事業再構築補助金の活用を考えているものの、申請の仕方や採択の基準、補助対象となる経費の範囲がわからず、不安に思う方も多いでしょう。

本記事では、小売業での事業再構築補助金の採択傾向や事例、補助対象経費および、小売業での補助金活用方法を解説します。採択される事業計画の策定にお役立てください。        

目次
  1. 1. 事業再構築補助金の小売業の採択傾向
  2. 2. 小売業における事業再構築補助金の対象となる会社
  3. 3. 事業再構築補助金の概要
    1. 3-1. 事業再構築補助金の申請要件
    2. 3-2. 事業再構築補助金の補助額と補助率
  4. 4. 小売業が事業再構築補助金で申請できる補助対象経費
    1. 4-1. 補助対象経費になる項目
    2. 4-2. 補助対象外になる項目
  5. 5. 小売業で事業再構築補助金を有効活用する方法
    1. 5-1. 建築費を活用する
    2. 5-2. システム関連費用を活用する
  6. 6. 事業再構築補助金における小売業の採択事例
    1. 6-1. 新分野展開の事例
    2. 6-2. 業態転換の事例
    3. 6-3. 業種転換の事例
    4. 6-4. 事業転換の事例
    5. 6-5. 事業再編の事例
  7. 7. 【まとめ】小売業で受けられる事業再構築補助金について紹介しました

事業再構築補助金の小売業の採択傾向

第10回公募の応募数と採択件数を参照すると、全産業の採択率は48.1%。採択件数ベースで卸売業・小売業は全産業で製造業(24.6%)に次いで2番目に多い採択件数(15.0%)です。

応募・採択件数から計算した採択率では、生活関連サービス業・娯楽業の採択率が39.9%、宿泊業・飲食サービス業が42.3%。対する卸売業・小売業の採択率が45.4%であることから、小売業が比較的採択されやすいことがわかります。

小売業で事業再構築補助金で採択されるためには、申請する新規事業が以下の5類型のいずれかに当てはまっていることが必要です。

事業再構築の類型

定義と要件

新市場進出

(新分野展開、業態転換)

  • 主たる業種・事業は変更せず
  • 新たな製品・サービスの提供により新たな市場へ進出
  • 「製品等の新規性要件」「市場の新規性要件」
  • 「売上高10%要件」を事業計画で満たしていること

事業転換

  • 新たな製品・サービスの提供により、
  • 主たる業種を変更せず主たる事業を変更
  • 「製品等の新規性要件」「市場の新規性要件」
  • 「売上高構成比要件」を事業計画で満たしていること

業種転換

  • 新たな製品・サービスの提供により、主たる業種を変更
  • 「製品等の新規性要件」「市場の新規性要件」
  • 「売上高構成比要件」を事業計画で満たしていること

事業再編

  • 会社法上の組織再編を交付決定後に行い、
  • 新たな事業形態で
  • 新市場進出(新分野展開、業態転換)
  • ・事業転換・業種転換のいずれかを行う
  • 「組織再編要件」「その他の事業再構築要件」
  • を事業計画で満たしていること

国内回帰

  • 海外で製造する製品について、
  • 先進性ある製造方法で国内生産拠点を整備
  • 「海外製造等要件」
  • 「導入設備の先進性要件」
  • 売上高10%要件」を事業計画で満たしていること

出典:事業再構築指針の手引き

申請が採択されるためには、自社と市場・競合・顧客を分析し、自社の置かれている環境を的確に踏まえ、類型に当てはまる事業計画を策定することが重要です。

小売業における事業再構築補助金の対象となる会社

事業再構築補助金制度での補助対象企業とは、新型コロナの影響で厳しい経営状況に置かれた中小企業・中堅企業・個人事業主・企業組合などのことです。中小企業・中堅企業の範囲は業種ごとに定められ、小売業における「中小企業」「中堅企業」は以下のとおりです。

  • 中小企業:資本金5千万円以下、または従業員数50人以下の会社
  • 中堅企業:中小企業以外の資本金10億円未満の会社

上記規定で中小企業であっても、直近3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える場合は、中堅企業として扱われます。また大企業の子会社などは「みなし大企業」として補助対象外となるためご注意ください。

事業再構築補助金の概要

小売業における事業再構築補助金の採択傾向・事例・補助対象経費を解説!_3

事業再構築補助金は、コロナ禍・コロナ後の経済社会の変化に中小企業などが対応できるよう、思い切った事業再構築への舵取りを支援するために設けられました。補助金設置の背景には、中小企業などへの支援を通じて、日本経済の構造転換を促進する目的があります。

ここでは事業再構築補助金の申請要件と補助額・補助率について解説します。

事業再構築補助金の申請要件

事業再構築補助金を申請するための必須要件は2つあります。

1つ目は、事業者自身で事業計画を作成し、「認定経営革新等支援機関」の確認を受けることです。補助金額が3,000万円を超える事業の申請は、金融機関(銀行・信金・ファンド)の確認もあわせて受ける必要があります。

2つ目は、補助事業終了後3~5年で、付加価値額※を年率平均3.0~5.0%以上増加、または従業員1人当たり付加価値額を年率平均3.0~5.0%以上増加させることです。求められる増加率は申請枠により異なります。

※付加価値額:営業利益・人件費・減価償却費を足したもの。

事業再構築補助金の補助額と補助率

事業再構築補助金には以下の申請枠があり、枠ごとに補助額と補助率が定められています。

  • 成長枠
  • グリーン成長枠
  • 卒業促進枠(成長枠・グリーン成長枠への上乗せ)
  • 大規模賃金引上促進枠(成長枠・グリーン成長枠への上乗せ)
  • 産業構造転換枠
  • サプライチェーン強靭化枠
  • 最低賃金枠
  • 物価高騰対策・回復再生応援枠

【成長枠】

「成長枠」では、付加価値額を年率平均4.0%以上増加させ、事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させることが必要です。成長枠では従業員数に応じて、補助上限額と補助率が以下のように定められています。

従業員数

補助上限額

補助率

20人以下

2,000万円

中小企業:補助対象経費総額の1/2 

※大規模な賃上げを行う場合2/3

中堅企業:補助対象経費総額の1/3

※大規模な賃上げを行う場合1/2

21~50人

4,000万円

51~100人

5,000万円

101人以上

7,000万円

出典:事業再構築補助金の概要

※大幅な賃上げとは、事業終了時点で「事業場内最低賃金+45円」「給与支給総額+6%以上」の両方を達成すること。ただし事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させられなかった場合に、差額分(補助率1/6分)の返還を求められる。

成長枠は「卒業促進枠」または「大規模賃金引上げ促進枠」との同時応募が可能で、要件を満たした場合に後者2枠の補助金が上乗せされます。

【グリーン成長枠(スタンダード)】

「グリーン成長枠」では、付加価値額を年率平均4.0%以上増加させる必要があります。さらにグリーン成長戦略「実行計画」14分野において、1年以上の研究開発・技術開発、または従業員の5%以上に年間20時間以上の外部研修かOJTが必要です。同時に、事業終了後3~5年で給与支給総額の年率平均2%以上の増加が求められます。

グリーン成長枠の補助上限額と補助率は以下のとおりです。

 

補助上限額

補助率

中小企業

1億円

中小企業:補助対象経費総額の1/2

※大規模な賃上げを行う場合2/3

中堅企業

1.5億円

中堅企業:補助対象経費総額の1/3

※大規模な賃上げを行う場合1/2

出典:事業再構築補助金の概要

成長枠と同様に「事業終了時点で事業場内最低賃金+45円」「給与支給総額+6%以上」の大幅な賃上げを行う場合は、補助率がアップします。ただし事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させられなかった際には、補助率1/6分の返還が必要です。

第10回から募集を開始した「エントリー」では、「スタンダード」よりも要件が緩和されたかわりに、補助上限額が中小企業で8,000万円、中堅企業で1億円となっています。

【卒業促進枠】

成長枠またはグリーン成長枠の補助事業を通じて、中小企業・特定事業者・中堅企業の規模から成長(卒業)することを目的に設けられた枠です。卒業促進枠は、成長枠またはグリーン成長枠と同一の公募回で申請し、要件を満たすと補助金が上乗せで支給されます。

補助事業の終了後3~5年で応募時点での企業規模から成長することが要件です。卒業促進枠の補助上限額と補助率は以下のとおりです。

従業員数に対する補助上限額

補助率

成長枠・グリーン成長枠に準じる

中小企業:補助対象経費総額の 1/2

中堅企業:補助対象経費総額の 1/3

出典:事業再構築補助金の概要

同一の費用を、成長枠・グリーン成長枠と上乗せの卒業促進枠との両方で対象経費にはできないためご注意ください。

【大規模賃金引上促進枠】

成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通じて、大規模な賃上げに取り組む事業者に補助金額を上乗せする申請枠です。成長枠またはグリーン成長枠と同一の公募回で申請する必要があり、先述の卒業促進枠との併用はできません。

要件は、成長枠・グリーン成長枠の補助事業終了後3~5年の間に「事業場内最低賃金を年額45円以上引上げ」「従業員数を年率平均1.5%以上増員」の両方を満たすことです。大規模賃金引上促進枠の補助金額と補助率は以下のとおりです。

補助金額

補助率

3,000万円

中小企業:補助対象経費総額の1/2

中堅企業:補助対象経費総額の1/3

出典:事業再構築補助金の概要

卒業促進枠と同様に、同一の費用を、成長枠・グリーン成長枠と大規模賃金引上促進枠との両方で対象経費にはできない点に注意が必要です。

【産業構造転換枠】

市場の産業構造の変化により、事業再構築を迫られる企業を支援するために設けられた枠です。

要件は付加価値額を年率平均3.0%以上増加させることに加え、以下のいずれかを満たすことです。

  • 主事業が過去もしくは今後10年間で市場規模が10%以上縮小する業種・業態で、今後別の業種・業態の新規事業を実施すること
  • 地域の基幹大企業が撤退し、同企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めること

産業構造転換枠の補助上限額と補助率は以下のとおりです。

従業員数

補助上限額

補助率

20人以下

2,000万円

中小企業:補助対象経費総額の2/3

中堅企業:補助対象経費総額の1/2

21~50人

4,000万円

51~100人

5,000万円

101人以上

7,000万円

※廃業をともなう場合には「廃業費」として最大2,000万円の上乗せあり

出典:事業再構築補助金の概要

【サプライチェーン強靭化枠】※第11回公募では公募なし

海外における部品製造などの国内回帰を促進し、国内サプライチェーンの強靱化と地域産業の活性化を図る目的で設けられた枠です。

  • 要件は、付加価値額を年率平均5.0%以上増加させること、「国内回帰」の類型に属する事業であることです。
  • 取引先から国内での生産要請があること
  • 経済産業省「DX推進指標」に基づいた自己診断結果を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に提出のほか、IPA「SECURITY ACTION 二つ星」を宣言すること
  • 新規事業場内最低賃金が地域別最低賃金よりも30円以上高いこと、かつ事業終了後3~5年の間に給与支給総額を年率平均2%以上増加させること
  • 「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトで宣言・公表していること

補助上限額と補助率は以下のとおりです。

補助上限額

補助率

5億円(建物費を含まなければ3億円)

中小企業:補助対象経費総額の1/2

中堅企業:補助対象経費総額の1/3

出典:事業再構築補助金の概要

【最低賃金枠】

最低賃金の引上げにより、賃金支払い原資の確保が困難になった中小企業などを支援するための申請枠です。要件は以下のいずれも満たすことです。

  • 付加価値額を年率平均3.0%以上増加させること
  • 2022年1月以降で連続する6ヵ月のうち任意の3ヵ月の合計売上高が、2019年~2021年の同3ヵ月の合計売上高よりも10%以上減少していること
  • 2022年10月から2023年8月までの間で、3ヵ月以上最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上であること

補助上限額と補助率は以下のとおりです。

従業員数

補助上限額

補助率

5人以下

500万円

中小企業:補助対象経費総額の3/4

中堅企業:補助対象経費総額の2/3

6~20人

1,000万円

21人以上

1,500万円

出典:事業再構築補助金の概要

最低賃金枠は、後述する物価高騰対策・回復再生応援枠よりも採択率で優遇されています。

【物価高騰対策・回復再生応援枠】

コロナや物価高の影響を受ける事業者に対する支援枠です。申請要件は以下のとおりです。

  • 付加価値額を年率平均3.0%以上増加させること
  • 2022年1月以降の連続する6ヵ月間のうち任意の3ヵ月の合計売上高が、2019年~2021年の同3ヵ月の合計売上高よりも10%以上減少していること
  • 中小企業活性化協議会の支援を受け「再生計画」を策定していること

補助金額(上限額)と補助率は、資本規模と従業員数により区分されています。

企業規模

従業員数

補助上限額

補助率※

 

 

中小企業

5人以下

1,000万円

400万円までは3/4

 

 

2/3

6~20人

1,500万円

600万円までは3/4

21~50人

2,000万円

800万円までは3/4

51人以上

3,000万円

1,200万円までは3/4

中堅企業

5人以下

1,000万円

400万円までは2/3

1/2

6~20人

1,500万円

600万円までは2/3

21~50人

2,000万円

800万円までは2/3

51人以上

3,000万円

1,200万円までは2/3

※補助率:補助対象経費総額に対し補助される割合

出典:事業再構築補助金の概要

小売業が事業再構築補助金で申請できる補助対象経費

小売業事業者が事業再構築補助金を申請する際には、申請する経費が補助対象なのか、対象外なのかを確認して行う必要があります。

事業再構築補助金の補助対象経費は、新たに事業を再構築するために必要な項目のみに限定されるため、既存事業と共用するための設備投資などは補助対象外です。

次項で具体的な補助対象経費と対象外経費について解説します。

補助対象経費になる項目

補助対象となる経費は、事業を拡大するための有形・無形事業資産への投資として、既存事業の経費と明確に区別できることが必要です。対象経費は必要性と金額の妥当性が、証拠書類で証明されていなければなりません。

以下で補助対象とされる具体的な経費の項目を紹介します。

経費区分

詳細

建物費

  • 補助事業の実施に欠かせない事務所、
  • 生産・加工・販売施設、倉庫などの建物の建設・改修の費用
  • 補助事業実施に必要な建物撤去や原状回復、一時移転の費用

機械装置・

システム構築費

  • 補助事業に専用で使用される
  • ソフトウェア・情報システムの購入・構築・リースの費用
  • 上記にともなう改良・修繕・据付けなどの費用

技術導入費

  • 補助事業遂行に必要な知的財産権の導入費用

専門家経費

  • 補助事業遂行のために依頼した専門家への支払い

運搬費

  • 運搬料、宅配・郵送料など

クラウド

サービス利用費

  • クラウドサービスの利用料金

外注費

  • 事業遂行に必要な加工・設計(デザイン)・検査などの外注費用
    ※事業者が行うべき手続きの代行費用は対象外

知的財産権等関連経費

  • 新製品・サービス事業化の特許権取得に
  • 必要な弁理士の手続代行費用や、
  • 外国特許出願の知的財産権取得に必要な費用

広告宣伝・

販売促進費

  • 補助事業で提供する製品・サービスの広告の作成や媒体掲載、
  • 展示会出展、セミナー開催、市場調査、
  • 営業代行利用、マーケティングツール活用の費用

研修費

  • 補助事業遂行に必要な教育訓練や講座受講の費用

廃業費

  • 既存事業の廃止に必要な行政手続を司法書士、行政書士に依頼する費用
  • 既存事業の廃止にともなう解体、
  • 原状回復、リース解約、移転・移設の費用

補助対象外になる項目

一方で補助対象外とされる主な経費は以下の項目です。

  • 既存事業に使用されるなど、補助事業専用といえない経費
  • 汎用性のある物品の購入費・レンタル費(事務用パソコン、プリンタ、文書作成ソフトウェア、モバイル・タブレット端末、デジタル複合機、家具など)
    ※補助事業のみに使用することが明確であれば補助対象
  • 人件費、旅費
  • 原材料費、予備品・消耗品代
  • 家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費
  • 諸経費、会社経費、雑費など詳細が確認できない経費
  • 価格設定の適正性を証明できない中古品の購入費
  • フランチャイズ加盟料
  • クラウドサービス利用費以外の通信費や電話代
  • 飲食・接待費
  • 不動産や構築物の購入費、株式の購入費
  • 税務申告や決算書作成などの税理士・公認会計士費用、訴訟の弁護士費用
  • 登記・登録・特許・許可など公的手続きの手数料、収入印紙
  • 振込手数料、両替手数料、借入金などの支払利息・遅延損害金
  • 消費税
  • 各種保険料
  • 補助金申請時の事業計画書・申請書・報告書などの書類作成・提出費用
  • 車両、船舶、航空機の購入費・修理費・車検費用
  • 再生可能エネルギーの発電設備

出展:事業再構築補助金 公募要領

仮に計上されている経費の多くが補助対象外の場合には、申請が不採択となるケースもあるため注意が必要です。

小売業で事業再構築補助金を有効活用する方法

小売業における事業再構築補助金の採択傾向・事例・補助対象経費を解説!_2

小売業で事業再構築補助金を有効に活用できる方法として、建築費とシステム関連費用が挙げられます。次項で詳しく解説します。

建築費を活用する

小売業で事業再構築補助金を有効に活用する方法の1つに、「建物費」として建築費を事業計画書に盛り込むことが挙げられます。

他の補助金制度では、補助金額が高くないか、高額でも建築費が補助対象となっていません。一方、事業再構築補助金では建築費・修繕費が補助対象となるため、建築をともなう設備投資に活用が可能です。

具体的には、以下の活用法が考えられます。

  • ECサイト出店のための倉庫を建設
  • 採算の取れない店舗を廃止し新規店舗を建設
  • 飲食業へ業種転換し店舗を建設

こうした目的がある場合は、他の補助金よりも事業再構築補助金を活用するとよいでしょう。

システム関連費用を活用する

事業再構築補助金ではシステム費用も補助対象経費のため、事業計画に盛り込むことが可能です。例えば、以下のような悩みを解決するために補助金を活用できます。

  • システムを導入したかったものの費用が高額なため導入できなかった
  • アナログ管理による作業の非効率を解消したい

事業再構築補助金ではシステム構築のための費用や、ITコーディネーター依頼費用、対象事業のためのクラウドサービス利用費が補助対象です。IT導入補助金などより高額な補助金を受けられる可能性もあるため、上手に活用しましょう。

事業再構築補助金における小売業の採択事例

小売業における事業再構築補助金の採択傾向・事例・補助対象経費を解説!_1

小売業で事業再構築補助金に採択される事業はどのような内容なのか、気になる方も多いでしょう。ここで事業計画立案の参考になるよう、各類型ごとの採択事例を紹介します。

新分野展開の事例

新製品や新サービスの開発により、新市場へ進出する「新分野展開」での採択事例です。

茨城県つくば市の「有限会社葡萄酒蔵ゆはら」は、イタリア・フランスワインやオーガニックワインのインターネット通販・レストラン卸に特化したワイン専門店です。これまで主に会員企業・事業者に向けたオーガニックワインなどの卸売りを主力事業としてきました。

しかしアフターコロナで多様化する消費行動を見据え、新たな収益源の獲得が必須課題となりました。そこで店舗の一角にオーガニックワインを楽しめるワインバーを増設。同時にテイクアウトショップ事業への進出も事業計画に盛り込み、事業再構築補助金に採択されています。

業態転換の事例

主となる商品・サービスはそのままに、販売・提供方法を転換する「業態転換」での採択事例です。

宮城県仙台市泉区の「AQUAN」は、着物やブランド品・時計・貴金属を中心に取り扱う、地元で親しまれるリサイクルショップです。

和装専門店「きもの館京や」を展開する同社は、買取事業で仕入れた3,000着以上の着物を活用し、結婚式や学校の卒業式などのニーズに応えるべくレンタル事業を開始。さらに着付けやヘアセットまでを、トータルでコーディネートするサービスも事業計画に盛り込みました。リデュース・リユーズ・リサイクルの3R事業化計画で、事業再構築補助金に採択されています。

業種転換の事例

新製品や新サービスの開発により、主となる業種自体を変更する「業種転換」での採択事例です。

群馬県館林市の「株式会社アオヤギ」は、パン小売業から製パン製造小売業へと転換を図り、既存事業の収益ダウンを補完しようと試みます。

さらに商品の目玉づくりと原価率の抑制を兼ねて、地元産の安い旬の食材を使った季節限定商品の開発を決定。売れ残ったパンは既存事業の店舗で販売し、食品ロスと機会損失の削減を図る事業計画を策定しました。地産地消と高付加価値化を実現するプランで、事業再構築補助金に採択されています。

事業転換の事例

主となる業種は変更せず、新たな商品やサービスの投入で主となる事業を変更する「事業転換」での採択事例です。

山形県寒河江市の「海山屋」は、水上オートバイ・船外機・スノーモービルなどのレジャー用品販売・修理および特殊小型船舶免許教習を手がける会社です。

本業であるレジャージャンルの業績が伸び悩んだことから、以前NPOで販売実績のあった冷凍シフォンケーキの製造販売事業を、自社に編入する大胆な事業計画を策定。ケーキ製造体制の強化と急速冷凍機器を導入し、EC販売での商圏拡大を図ります。不安定な収益構造からの脱却と収益拡大に挑戦する計画で、補助金に採択されました。

事業再編の事例

組織を再編し、新市場進出や事業転換、業種転換を行う「事業再編」での採択事例です。

東京都渋谷区の「albertkahn」は、ヴィンテージ古着の買取販売を行うショップです。オーナー自らが老舗古着屋のバイヤーと卸での経験を活かし、原宿と代々木上原で店舗を運営してきましたが、近年は業績が伸び悩んでいました。

そこで古着×カフェ×バリスタの「店舗複合型カフェ」を構築し、集客向上と地域の交流拠点創造を画策。現在のヴィンテージショップを改装し、本格的なコーヒーを味わえるカフェを開店する事業計画を策定しました。飲食店とアパレルが一体化したユニークなカフェ計画で、事業再構築補助金に採択されています。

【まとめ】小売業で受けられる事業再構築補助金について紹介しました

小売業は事業再構築補助金が比較的採択されやすい業種の1つです。

事業再構築補助金を小売業で申請する際には、建物の解体や改装、新築など、建築費(建物費)を中心とした事業計画の策定をおすすめします。また、予約管理システムやECサイトの構築費用など、システム導入費用も補助対象となるため、補助金を活用したシステム導入も検討が可能です。

要件を満たし、類型に当てはまる事業計画を立てて、事業再構築補助金に採択される可能性を高めましょう。