【事業再構築補助金】製造業の採択率や採択事例を解説

【事業再構築補助金】製造業の採択率や採択事例を解説

製造業者の中には、事業再構築補助金の申請を検討している方も多いのではないでしょうか。事実、製造業は事業再構築補助金において、最も応募件数と採択件数が多い業種です。

本記事では、製造業の採択率や事例、事業計画書の作成手順などを解説します。そのほかのおすすめの補助金も紹介するのでぜひお役立てください。

目次
  1. 1. 製造業で活用できる事業再構築助金とは
    1. 1-1. 類型・補助率・補助額
    2. 1-2. 補助対象経費
    3. 1-3. 必須申請要件
  2. 2. 製造業が事業再構築補助金を申請するメリット
  3. 3. 事業再構築補助金における製造業の採択率
    1. 3-1. 事業再構築補助金における建設業の採択率
  4. 4. 事業再構築補助金における製造業の採択事例
    1. 4-1. ベンダ工業株式会社(広島県)
    2. 4-2. 株式会社ナチュールプロビジョン(青森県)
    3. 4-3. 丹後織物工業組合(京都府)
    4. 4-4. 南海化学株式会社(大阪府)
    5. 4-5. DAISEN株式会社(岐阜県)
  5. 5. 事業計画書を作成する手順
    1. 5-1. 自社が目指す姿を考える
    2. 5-2. 事業テーマを選定する
    3. 5-3. 事業計画を具体化する
  6. 6. 事業再構築補助金の審査で重視されるポイント
    1. 6-1. 事業化点
    2. 6-2. 再構築点
    3. 6-3. 政策点
  7. 7. 事業再構築補助金以外でおすすめの補助金
    1. 7-1. ものづくり補助金
    2. 7-2. IT導入補助金
    3. 7-3. 小規模事業者持続化補助金
  8. 8. 【まとめ】事業再構築補助金を製造業で活用しよう

製造業で活用できる事業再構築助金とは

【事業再構築補助金】製造業の採択率や採択事例を解説_2

事業再構築補助金とは、中小企業や中堅企業、個人事業主などを対象に、思い切った事業再構築を支援し、日本経済を好転させることを目的とした補助金です。

類型・補助率・補助額

事業再構築補助金には、以下のような類型があります。各類型の対象となる事業者および補助上限額、補助率は以下の通りです。

類型

対象

補助上限額

補助率

成長枠

成長分野で大胆な

事業再構築に取り組む事業者

最大7,000万円

1/2

※大幅な

賃上げ達成で

2/3

グリーン成長枠

研究開発や技術開発、人材育成を行いながら、

グリーン成長戦略の「実行計画」における

14分野の課題解決に取り組む事業者

エントリー:

最大8,000万円

(中堅1億円)

 

スタンダード:

最大1億円

(中堅1.5億円)

1/2

※大幅な

賃上げ達成で

2/3

産業構造転換枠

国内市場が縮小するといった

構造的な課題を抱えている業種・業態の事業者

最大7,000万円

2/3

サプライチェーン

強靱化枠

海外で製造する製品の国内回帰を進め、

国内サプライチェーンの強靱化や

地域産業の活性化に取り組む事業者

最大5億円

1/2

物価高騰対策・

回復再生応援枠

  • 厳しい業況にある事業者や
  •  事業の再生に取り組む事業者
  • ・原油価格や物価高騰などの影響を
  •  受ける事業者

最大3,000万円

2/3

(一部3/4)

参照:中小企業庁「事業再構築補助金の概要」

※大幅な賃上げの要件:事業終了時点で、給与支給総額+ 6%以上、事業場内の最低賃金+45円

補助対象経費

事業再構築補助金の対象経費には以下のようなものがあります。

補助対象経費

詳細

建物費

建物の建設、改修、原状回復、移転などの経費

機械装置・システム構築費

機械装置やソフトウェア、システムの購入や製作、リースなどの経費

技術導入費

知的財産権の導入にかかる経費

専門家経費

専門家に支払うコンサルティング料や旅費などの経費

運搬費

運搬料や宅配・郵送料などの経費

クラウドサービス利用費

クラウドサービスの利用料

外注費

加工や設計、検査などを外注する際の経費

知的財産権等関連経費

特許権をはじめとする知的財産権の取得に関連する経費

広告宣伝・販売促進費

パンフレット作成や市場調査、営業代行の利用などの経費

研修費

教育訓練や講座受講などの研修にかかる経費

参照:事業再構築補助金公募要領(第11回)

対象経費は、請求書や振込明細などの証拠書類によって、必要性と金額の妥当性を明確に確認できるようにする必要があります。なお、対象経費は、交付決定日以降に契約を行い、事業の実施期間内に支払いを完了しなければなりません。交付決定前に契約して支払った経費は補助されないので注意しましょう。

必須申請要件

事業再構築補助金には以下の申請要件が必須とされています。

  1. 認定経営革新等支援機関確認から事業計画書の確認を受ける
  2. 補助事業終了後の3~5年で付加価値額を年率平均3~5%以上増加させる

認定支援機関とは、中小企業を支援している機関のうち、経済産業大臣の認定を受けた機関のことです。代表的な認定支援機関として、金融機関や中小企業診断士、税理士、コンサルティング会社などが挙げられ、全国で3万以上が登録されています。申請金額が3,000万円を超える場合は、銀行や信用金庫をはじめとする金融機関の確認も必要です。

付加価値額とは、営業利益と人件費、減価償却費を合計した額のことです。補助事業終了から3〜5年で、年率平均3〜5%以上増加させる。もしくは、従業員1人当たり付加価値額を年率平均3〜5%以上増加させるのが要件です。

製造業が事業再構築補助金を申請するメリット

事業再構築補助金の魅力は補助金額の高さと対象経費の幅広さです。製造業の場合、機械装置への投資額が大きくなる傾向がありますが、事業再構築補助金では、最大5億円の補助金を受けられます。

例えばサプライチェーン強靭枠の場合、補助率が1/2なので、2億5,000万円も投資額を低減することが可能です。投資金額を抑えて新規事業に取り組めるので、費用対効果もアップしやすくなります。

事業再構築補助金における製造業の採択率

事業再構築補助金における建設業の採択率

【事業再構築補助金】製造業の採択率や採択事例を解説_9

画像引用:「事業再構築補助金 第10回公募の結果について(令和5年9月)」

第10回公募の総応募数は10,821件で、採択件数は5,205件でした(採択率48.1%)。製造業は応募割合20.3%(約2,196件)、採択割合24.6%(約1,280件)だったので、採択率は約58.2%。全体平均より10.1%も採択率が高いです。

事業再構築補助金の過去10回の採択率は以下の通りです。

申請枠

申請件数

採択件数

採択率

第1回

22,231件

8,016件

36.0%

第2回

20,800件

9,336件

44.8%

第3回

20,307件

9,021件

44.4%

第4回

19,673件

8,810件

44.7%

第5回

21,035件

9,707件

46.1%

第6回

15,340件

7,669件

49.9%

第7回

15,132件

7,745件

51.1%

第8回

12,591件

6,456件

51.2%

第9回

9,369件

4,259件

45.4%

第10回

10,821件

5,205件

48.1%

事業再構築補助金の公式ホームページをもとに採択率を算出

※集計期間は2021年6月21日~2023年6月30日

第1回公募こそ採択率が30%台だったものの、以降は50%弱で推移しています。

事業再構築補助金における製造業の採択事例

【事業再構築補助金】製造業の採択率や採択事例を解説_3

ベンダ工業株式会社(広島県)

【事業再構築補助金】製造業の採択率や採択事例を解説_10

画像引用:ベンダ工業株式会社

広島県のベンダ興業株式会社は、エンジン始動用部品である「リングギア」の製造・販売を手掛ける企業です。自動車の市場がガソリン車から電気自動車に移行していることや新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに事業再構築を検討。

自社独自の材料加工技術を活かして、ハイブリッド車を対象とした部品の製造に進出し、補助事業終了から5年目で売上比率20.5%を計画しています。環境の変化に悲観することなく、チャンスと捉えて新規事業に取り組んでいます。

株式会社ナチュールプロビジョン(青森県)

【事業再構築補助金】製造業の採択率や採択事例を解説_8

画像引用:株式会社ナチュールプロビジョン

株式会社ナチュールプロビジョンは、青森県で食品製造業や飲食店の運営を行っている企業です。コロナ禍の長期化により、飲食店と土産店の売上が40%減少したため、売上回復を目指すべく、事業再構築補助金を活用した新規事業に取り組んでいます。新規事業では、既存事業で培った密閉製法の技術を活かして、レトルト食品事業へ進出。補助事業終了から4年目で売上を78.7%アップさせる計画を立てています。

丹後織物工業組合(京都府)

【事業再構築補助金】製造業の採択率や採択事例を解説_4

画像引用:丹後織物工業組合

丹後織物工業組合は、京都府にて「丹後ちりめん(絹織物)」を代表とする和装用の白生地を加工している組合です。加工和装の需要が減少し続け、生産量がピーク時の1割を切るなど、売上が減少していた背景や新型コロナウイルス感染症をきっかけに事業再構築を検討。

安全や健康志向のニーズに対応すべく、絹織物(シルク)に抗菌や抗ウイルス、撥水などの付加価値をつけられる加工設備を導入しました。補助事業終了から5年目で新規事業の売上比率11.1%を計画しています。

南海化学株式会社(大阪府)

【事業再構築補助金】製造業の採択率や採択事例を解説_11

画像引用:南海化学株式会社

南海化学株式会社は大阪府大阪市に本社を構える総合化学メーカーです。新型コロナウイルス感染症の流行によって、売上が減少しており、新規事業の必要性が高まっていました。そんな折に、大手セメントメーカーより、クリンカーパウダー(高塩素資源)から塩素を除去できないかという相談を受けたことをきっかけに事業再構築補助金を申請。セメント資源リサイクル分野に進出し、補助事業終了から5年で新規事業の売上比率10.2%を計画しています。

DAISEN株式会社(岐阜県)

【事業再構築補助金】製造業の採択率や採択事例を解説_7

画像引用:DAISEN株式会社

DAISEN株式会社は岐阜県でプラスチックの製造を手掛けている企業です。需要の減少に加えて、プラスチック使用量の削減といった環境変化の影響を受けて売上が減少していたことをきっかけに事業再構築補助金を申請しました。

補助金を活用して電気自動車向けバッテリーケースの製造事業に進出。新規事業では、自社の保有する成形加工や金型設計などのノウハウを駆使し量産化を実現させ、補助事業終了から5年で新規事業の売上比率16%を計画しています。

事業計画書を作成する手順

【事業再構築補助金】製造業の採択率や採択事例を解説_1

事業計画書を作成するための3ステップを解説します。

自社が目指す姿を考える

まずは5〜10年後に自社が目指す姿を明確にしましょう。どのような事業を実現したいのかを検討するとともに、顧客へ提供できる付加価値を言語化します。検討する際は、創業の動機やこれまでの経験などを振り返り、棚卸しするのがおすすめです。目指す姿と現状とのギャップを把握し、事業再構築が最適な手段なのか吟味しましょう。

事業テーマを選定する

事業テーマを選定する際は、まずトレンドや競合他社の動向、顧客ニーズを分析します。次に、自社の強みを明確にします。強みを活かして他者と差別化できる事業テーマの中で、最も期待値の高いものを選びましょう。

事業計画を具体化する

事業再構築に向けて取るべきアクションを、事業計画書に落し込める程度まで具体化します。市場分析の結果や自社の強み、目標となる付加価値額などを数値で明確にするだけでなく、事業のリスクや課題、解決方法も計画に盛り込むのがポイントです。

事業再構築補助金の審査で重視されるポイント

【事業再構築補助金】製造業の採択率や採択事例を解説_5

事業再構築補助金の審査で重視されるポイントは3つです。

事業化点

事業化点では、事業計画の妥当性が4つの項目で評価されます。

  1. 組織体制や財務状況などから、事業の遂行が期待できるか。資金の調達が見込めるか
  2. 市場調査の正確性は高いか。市場ニーズを明確に捉えられているか
  3. 事業の競争優位性が高いか。課題の解決方法が明確かつ妥当か
  4. 費用対効果や既存事業との相乗効果が高いか

再構築点

再構築点では、自己資金だけでは取り組むのが難しい事業なのか、必要性や緊要性が高いかが4つの項目で評価されます。

  1. 事業再構築の指針に沿っているか。リスクのある大胆な事業再構築か
  2. 売上の減少が著しく、事業再構築の必要性や緊要性が高いか
  3. 自社の強みや市場のニーズが考慮されており、リソースの最適化を図る取り組みか
  4. 地域のイノベーションに貢献しできる事業か

政策点

政策点では、国の経済成長を牽引できるか、経済効果があるかなどが評価され、ポイントは以下の6つです。

  1. 日本経済の構造転換の促進に資するか
  2. 日本経済の成長を牽引できるか
  3. 売上をV字回復するのにふさわしい投資内容か
  4. グローバル市場での活躍が期待できるか
  5. 地域の雇用創出や経済成長を促進できる事業か
  6. 複数の事業者が連携することで、生産性の向上が期待できるか

事業再構築補助金以外でおすすめの補助金

【事業再構築補助金】製造業の採択率や採択事例を解説_6

事業再構築補助金以外でおすすめの補助金を3つ紹介します。

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、革新的な製品・サービスの開発や生産プロセスの改善に取り組む事業者の支援を目的としています。

補助事業者

小規模事業者と中小企業が補助対象です。

【小規模事業者】

業種

従業員数

商業・サービス業

5人以下

サービス業(宿泊業・娯楽業)

20人以下

製造業・その他

20人以下

【中小企業】

業種

資本金または従業員数

製造業

資本3億円以下または従業員300人以下

卸売業

資本1億円以下または従業員100人以下

サービス業

資本5,000万円以下または従業員100人以下

小売業

資本5,000万円以下または従業員50人以下

ソフトウェア業

資本3億円以下または従業員300人以下

旅館業

資本5,000万円以下または従業員200人以下

その他の業種

資本3億円以下または従業員300人以下

補助上限額と補助率

補助上限額は100万~4,000万円、補助率は1/2〜2/3です。

申請枠

補助上限額

補助率

省力化(オーダーメイド)枠

8,000万円

(1億円)

1/2~2/3

製品・サービス高付加価値化枠

通常類型

1,250万円

(2,250万円)

1/2~2.3

成長分野進出類型

(DX・GX)

2,500万円

(3,500万円)

2/3

グローバル枠

3,000万円

(4,000万円)

1/2~2/3

※( )は大幅な賃上げを行う場合の補助上限額

IT導入補助金

IT導入補助金は、生産性向上や事業拡大に取り組む事業者の支援を目的としています。なお、申請できるITツールは、IT導入補助金事務局に登録されているものである必要があります。

対象事業者

小規模事業者と中小企業が補助対象です。

【小規模事業者】

業種

従業員数

商業・サービス業

5人以下

サービス業(宿泊業・娯楽業)

20人以下

製造業・その他

20人以下

【中小企業】

業種

資本金または従業員数

製造業

資本3億円以下または従業員300人以下

卸売業

資本1億円以下または従業員100人以下

サービス業

資本5,000万円以下または従業員100人以下

小売業

資本5,000万円以下または従業員50人以下

ソフトウェア業

資本3億円以下または従業員300人以下

旅館業

資本5,000万円以下または従業員200人以下

その他の業種

資本3億円以下または従業員300人以下

補助上限額と補助率

補助上限額は450万円で、補助率は1/2〜3/4です。

申請枠

補助額

補助率

通常枠(A類型)

150万円

1/2

通常枠(B類型)

450万円

1/2

セキュリティ対策推進枠

100万円

1/2

デジタル化基盤導入枠

50万円

3/4

350万円

2/3

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が取り組む業務効率化や販路開拓などに対する支援を目的としています。Webサイトの制作費や展示会の出展費など、様々な用途に補助金を利用できます。

補助事業者

小規模事業者が補助対象です。

【小規模事業者】

業種

従業員数

商業・サービス業

5人以下

サービス業(宿泊業・娯楽業)

20人以下

製造業・その他

20人以下

補助上限額と補助率

補助上限額は50〜200万円、補助率は2/3です。

申請枠

補助上限額

補助率

通常枠

50万円

2/3

賃金引上げ枠

200万円

2/3

卒業枠

200万円

2/3

後継者支援枠

200万円

2/3

創業枠

200万円

2/3

【まとめ】事業再構築補助金を製造業で活用しよう

機械装置に多額の投資金額が必要な製造業の場合、事業再構築補助金を活用すれば、費用を抑えて事業再構築に取り組むことが可能です。実際に、多くの製造業者が事業再構築補助金を活用しており、応募件数、採択件数ともに製造業が最も多いです。事業に必要な経費のほとんどが補助対象なので、ぜひ申請を検討してみてください。