事業再構築補助金の対象経費「機械装置」とは?概要や注意点等を解説

事業再構築補助金の対象経費「機械装置」とは?概要や注意点等を解説

事業再構築補助金を活用し、新たな機械装置を導入しようと検討している企業も多いのではないでしょうか。

本記事では、事業再構築補助金を機械装置に活用する上での注意点や採択事例などについて詳しく解説していきます。事業再構築補助金の活用を検討している方は、ぜひご覧ください。

目次
  1. 1. 事業再構築補助金の概要
    1. 1-1. 事業再構築補助金の対象となる要件
    2. 1-2. 申請枠は7種類ある
  2. 2. 事業再構築補助金の対象経費経費
    1. 2-1. 建物費
    2. 2-2. 機械装置・システム構築費
    3. 2-3. 技術導入費
    4. 2-4. 専門家経費
    5. 2-5. 運搬費
    6. 2-6. クラウドサービス利用費
    7. 2-7. 外注費
    8. 2-8. 知的財産権等関連経費
    9. 2-9. 広告宣伝・販売促進費
    10. 2-10. 研修費
    11. 2-11. 廃業費
  3. 3. 機械装置費を事業再構築補助金で賄った採択事例
    1. 3-1. 株式会社ナチュールプロビジョン
    2. 3-2. ベンダ工業株式会社
    3. 3-3. 株式会社モリタアンドカンパニー
    4. 3-4. 茶久染色株式会社
  4. 4. 対象経費かを見分ける方法とは
    1. 4-1. 事業再構築補助金の公募要領を確認する
    2. 4-2. 専門家に相談する
  5. 5. 活用する経費を決める際のポイント
    1. 5-1. 建物費や機械装置・システム構築費をメインとする
    2. 5-2. 外注費の割合を抑える
  6. 6. 機械装置費を活用する注意点
    1. 6-1. 他の事業と共用する機械装置は補助対象として認められない
    2. 6-2. リース・レンタル費用も対象となる
    3. 6-3. 記載した経費の全てが、対象経費になるわけではない
    4. 6-4. 可能な限り相見積をとることが求められる
    5. 6-5. 補助事業実施期間中にすべての手続を完了させる必要がある
  7. 7. 【まとめ】事業再構築補助金の対象経費経費「機械装置費」について紹介しました

事業再構築補助金の概要

事業再構築補助金とは、コロナウイルスを受け、新たな業種や業態に挑戦する事業者に向けた補助金のこと。日本国内に本社を構える企業や個人事業主などが活用でき、1億5000万円を上限とした手厚い支援を受けられるため、積極的に活用したい補助金といえます。

事業再構築補助金の対象となる要件

事業再構築補助金は全ての事業者が対象になるわけではなく、いくつかの要件を満たす必要があります。必須申請要件として定められている2つの項目について見ていきましょう。

認定経営革新等支援機関の確認を受けていること

事業者自身で作成した事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けなければなりません。補助金額が3,000万円を超える場合は、銀行や信用金庫、ファンドといった金融機関の確認も受ける必要があります。

付加価値額を向上させること

申請枠によって具体的な数字は変わってきますが、以下のいずれかを満たさなければなりません。

  • 補助事業終了後3〜5年で付加価値額の年率平均3.0~5.0%以上増加させること
  • 従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0~5.0%以上増加させること

申請枠は7種類ある

事業再構築補助金の申請枠は全7種類。申請枠ごとに補助率や最大補助額などが定められていますので、それぞれについて見ていきましょう。

事業再構築補助金の対象経費「機械装置」とは?概要や注意点等を解説        _7

成長枠

概要

成長分野において大胆な事業再構築を目指す事業者を支援する

必要要件

  1. 取り組む事業が、過去〜今後のいずれか10年間で、
  2. 市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること
  3. 事業終了後3〜5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

補助上限額

  • 従業員数20人以下:2,000万円
  • 従業員数21~50人:4,000万円
  • 従業員数51人〜100人:5,000万円
  • 従業員数100人以上:7,000万円

補助率

  • 中小企業:1/2
  • 中堅企業:1/3

グリーン成長枠

概要

グリーン分野での事業再構築を通じて高い成長を目指す事業者を支援する

必要要件

エントリー:

  1. グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する
  2. 取組として記載があるものに該当しその取組に関連する1年以上の
  3. 研究開発・技術開発又は従業員の5%以上に対する年間20時間以上の
  4. 人材育成をあわせて行うこと
  5. 事業終了後3〜5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

 

スタンダード:

  1. グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する
  2. 取組として記載があるものに該当し、その取組に関連する2年以上の
  3. 研究開発・技術開発又は従業員の10%以上に対する年間20時間以上の
  4. 人材育成をあわせて行うこと
  5. 事業終了後3〜5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

補助上限額

エントリー:

  • 中小企業
  • 20人以下:4,000万円
  • 21〜50人:6,000万円
  • 51人以上:8,000万円
  • 中堅企業
  • 1億円

 

スタンダード:

  • 中小企業:1億円
  • 中堅企業:1.5億円

補助率

  • 中小企業:1/2
  • 中堅企業:1/3

卒業促進枠

概要

成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して中小企業等から

中堅企業等に成長する事業者を支援する

必要要件

  1. 成長枠又はグリーン成長枠に、同一の公募回で申請すること
  2. 成長枠又はグリーン成長枠の補助事業の終了後3〜5年で中小企業・
  3. 特定事業者・中堅企業の規模から卒業すること

補助上限額

成長枠・グリーン成長枠に準ずる        

補助率

  • 中小企業:1/2
  • 中堅企業:1/3

大規模賃金引上促進枠

概要

成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、大規模な賃上げに

取り組む事業者を支援する

必要要件

  1. 成長枠又はグリーン成長枠に、同一の公募回で申請すること
  2. 成長枠又はグリーン成長枠の補助事業の終了後3〜5年の間に、
  3. 事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引上げること
  4. 成長枠又はグリーン成長枠の補助事業の終了後3〜5年の間に、
  5. 従業員数を年率平均1.5%以上増員させること

補助上限額

  • 3,000万円

補助率

  • 中小企業:1/2
  • 中堅企業:1/3

産業構造転換枠

概要

国内市場の縮小等の産業構造の変化等により、

事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者を支援する

必要要件

  1. 過去〜今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・
  2. 業態に属していること
  3. 地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の
  4. 10%以上が失われると見込まれる地域に属しており、
  5. 当該基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めること

補助上限額

  • 20人以下:2,000万円
  • 21〜50人:4,000万円
  • 51〜100人:5,000万円
  • 101人以上:7,000万円

補助率

  • 中小企業:2/3
  • 中堅企業:1/2

物価高騰対策・回復再生応援枠

概要

コロナや物価高等により依然として業況が厳しい事業者を支援する

必要要件

  1. 2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計
  2. 売上高が、2019〜2021年と比較しての同3か月の合計売上高と比較して
  3. 10%以上減少していること
  4. 中小企業活性化協議会等から支援を受け、再生計画等を策定している
  5. こと

補助上限額

  • 5人以下:1,000万円
  • 6〜20人:1,500万円
  • 21〜50人:2,000万円
  • 51人以上:3,000万円

補助率

  • 中小企業:2/3〜
  • 中堅企業:1/2〜

最低賃金枠

概要

最低賃金の引上げの影響を受け、その原資の確保が困難で特に

業況の厳しい中小企業等を支援する

必要要件

  1. 2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が
  2. 、2019~2021年と比較しての同3か月の合計売上高と比較して10%以上
  3. 減少していること
  4. 2022年10月から2023年8月までの間で、3か月以上最低賃金+50円以内
  5. で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること

補助上限額

  • 5人以下:500万円
  • 6〜20人:1,000万円
  • 21人以上:1,500万円

補助率

  • 中小企業:3/4
  • 中堅企業:2/3

出典:必須申請要件 | 事業再構築補助金

事業再構築補助金の対象経費経費

事業再構築補助金の対象経費は細かく定められており、全11項目があります。どういった経費が対象経費になるのかについて、詳しく見ていきましょう。

事業再構築補助金の対象経費「機械装置」とは?概要や注意点等を解説        _2

建物費

事務所や倉庫などの建設・改修などにかかる費用のこと。建設・改修の費用に加えて、撤去費用や原状回復費用、移転にかかる費用なども対象経費となります。

機械装置・システム構築費

機械装置やシステムの購入・構築などにかかる費用のこと。購入だけでなくリースの場合でも対象経費経費となりますが、リース会社と共同申請する必要がある点に注意しましょう。

技術導入費

主に知的財産権を導入する際に発生する費用のことで、特許権や著作権、商標権などが代表例です。

専門家経費

弁護士や大学教授、コンサルタントといった専門家に対して支払う費用のこと。1日あたりの謝礼金額や交通費の支給などに関する細かい規定が定められているため、注意が必要です。

運搬費

運搬や郵送を行う際に発生する費用のこと。機械装置を運搬する際の費用は運搬費に含まれず、機械装置・システム費に含まれるため注意が必要です。

クラウドサービス利用費

クラウドサービスを利用する際に発生する費用のことで、通信料やルーターの使用料なども含まれます。ただし、別事業と共有して利用するクラウドサービスは対象経費にはなりません。補助事業専用で使用するものだけが対象経費となるため、注意が必要です。

外注費

加工や設計、検査といった業務を外部に委託する際に発生する費用のこと。事前に外注先と書面による契約を締結しておくこと、そして、専門家経費・技術導入費に該当する費用と混同しないことが重要です。

知的財産権等関連経費

特許権や著作権といった知的財産権を取得する際に発生する費用のこと。弁理士による手続きの代行費用や外国特許を取得する際の翻訳料などが、知的財産権等関連経費に該当します。

広告宣伝・販売促進費

サービスの広告宣伝や販売促進においてかかる費用のこと。展示会の出展やPR動画の作成、マーケティングツールの導入などにかかるコストが対象経費となります。

研修費

教育訓練や講座を受講するための費用のことで、研修費は対象経費経費総額の3分の1までと、上限が定められています。

廃業費

事業の廃止に関わる費用のこと。リースを途中解約する際の違約金や事務所の移転にかかる費用、事業を廃止するために必要な手続きの代行費用などが該当します。

機械装置費を事業再構築補助金で賄った採択事例

続いて、事業再構築補助金を活用して機械装置を導入した採択事例を3つ紹介します。

株式会社ナチュールプロビジョン

事業再構築補助金の対象経費「機械装置」とは?概要や注意点等を解説        _6

画像引用:株式会社ナチュールプロビジョン

オリジナルプリンの製造・販売やカフェ経営などを展開している株式会社ナチュールプロビジョンの事例です。

オリジナルプリンの販売は順調に売り上げを伸ばしていたものの、コロナウイルスの蔓延によってカフェと土産店の売上が40%も減少。減少した売上を補填する新たな事業の柱を模索していたといいます。

そこで事業再構築補助金を活用し、レトルトパウチ瓶詰冷凍焼き菓子を中心としたOEM事業を展開することに。OEM生産用の機械装置に投資を行い、補助事業終了後4年目には新分野が売上の33%を占める計画となっています。

ベンダ工業株式会社

事業再構築補助金の対象経費「機械装置」とは?概要や注意点等を解説        _4

画像引用:ベンダ工業株式会社

国内外の大手自動車メーカー向けにエンジン始動用部品を販売し、世界トップシェアを確立しているベンダ工業株式会社の事例です。

電気自動車への移行が進む市場の流れがあり、主力商品のリンクギアの需要減少が確実と見られていました。そこに追い討ちをかけるようにコロナウイルスが蔓延し、自動車メーカー各社が生産調整を行ったことで売上が2割減少。40期ぶりの営業赤字になったといいます。

そこで、ハイブリット車向けの電動化技術部品を製造することにし、事業再構築補助金を活用して量産体制を構築。補助事業終了後5年目には新分野が売上の20%以上を占める計画となっています。

株式会社モリタアンドカンパニー

事業再構築補助金の対象経費「機械装置」とは?概要や注意点等を解説        _3

画像引用:株式会社モリタアンドカンパニー

自動車部品・鉄道車両メーカーなどの生産設備を個別に設計・製作するプラント事業を手がけている株式会社モリタアンドカンパニーの事例です。

以前から外部環境の動向に影響を受けやすいことが課題となっており、売上の安定化を模索していたとのこと。そんな中、コロナウイルスの蔓延により業績が悪化し、方針の転換を迫られていました。

そこで事業再構築補助金を活用し、新たに航空機エンジンとロケットエンジンの燃焼室部品を生産することに。機械装置の取得のために投資を行い、補助事業終了後5年目には新分野が売上の11%以上を占める計画となっています。

茶久染色株式会社

事業再構築補助金の対象経費「機械装置」とは?概要や注意点等を解説        _5

画像引用:茶久染色株式会社

高い染色技術を武器に、10年以上にわたって糸の染色を手がけている茶久染色株式会社の事例です。

以前から、海外生産のファストファッションの台頭により国内の繊維業界は厳しくなっていました。さらにコロナウイルスが蔓延したことで外出自粛が広がり、さらに市場全体が縮小したといいます。

そこで、手術用ガーゼ向けのRFIDタグを開発することに。事業再構築補助金を活用してRFIDタグの加工・量産設備を構築し、補助事業終了後5年目には新分野が売上の10%以上を占める計画となっています。

対象経費かを見分ける方法とは

多岐にわたる機械装置ですが、どこまでが対象経費に含まれるのかわからないという方が大半だと思います。そこで、対象経費かを見極める2つの方法をご紹介します。

事業再構築補助金の公募要領を確認する

まず、事業再構築補助金の公式ホームページに掲載されている公募要領を確認するのがおすすめです。機械装置・システム構築費を含めた全項目の細かい定義が書いてあるほか、注意点や手続きに関しても記載されているため、必ずチェックしましょう。

専門家に相談する

公募要領を確認する時間がないという方は、専門家に相談するのもおすすめです。対象経費なるかの意見をもらえるほか、事業再構築補助金の新たな活用方法に関する提案を受けられることもあります。

活用する経費を決める際のポイント

事業再構築補助金の限られた枠の中で、どのように経費を考えるべきか、2つのポイントをご紹介します。

建物費や機械装置・システム構築費をメインとする

事業を再構築する上で重要となる建物や機械装置、システム構築などにかかる費用を中心に対象経費にしましょう。その上で、広告宣伝・販売促進のように事業を広げるための費用を考えていくのがおすすめです。

外注費の割合を抑える

前提として、事業再構築補助金を用いて行う事業は自社が主体となって行わなければならず、大半を外注するようなスキームでの事業は認められていません。そのため、外注費が他の経費と比較して高すぎないかを必ず確認しましょう。

機械装置費を活用する注意点

最後に、機械装置費を活用するにあたって押さえておきたい5つの注意点についてご紹介します。

事業再構築補助金の対象経費「機械装置」とは?概要や注意点等を解説        _1

他の事業と共用する機械装置は補助対象として認められない

機械装置費では、補助事業でのみ使用する機械装置や工具などの導入費用が補助対象となります。そのため、他の事業と共用する機械装置は補助対象にならないため、注意が必要です。

リース・レンタル費用も対象となる

購入の場合だけでなく、リース・レンタルの場合も補助対象になります。ただ、補助事業実施期間中に要する経費だけが補助対象になるため、補助事業終了後の費用については自社で全て負担する必要があります。

記載した経費の全てが、対象経費になるわけではない

事業再構築補助金では、交付申請時に提出した書類をもとに事務局側から精査され、交付額が正式に決定します。そのため、事業計画書に記載した経費全てが必ず対象経費なるとは限らない点を頭に入れておきましょう。

可能な限り相見積をとることが求められる

基本的には相見積もりが必要になり、50万円(税抜)を超える契約では同一条件による相見積もりが必要になります。取得した相見積もりの中から、最低価格を提示した業者を選定するのが基本となり、別の業者を選定する場合は、妥当性を示す書類の提出が必要です。

補助事業実施期間中にすべての手続を完了させる必要がある

申請枠によって期間は異なりますが、交付決定日から最長14ヶ月以内に契約や納入、実績報告などの手続きを全て終わらせなければなりません。大規模な機械装置を導入する場合、予想外に納期が遅延してしまうと、期限をすぎてしまう可能性があるため、早めに準備を進めるのが重要です。

【まとめ】事業再構築補助金の対象経費経費「機械装置費」について紹介しました

事業再構築補助金を機械装置に活用する上での注意点や採択事例などについて紹介しました。機械装置は契約から納品まで時間がかかるケースが多いため、スピーディーにアカウントの取得や書類作成などを進めるのがおすすめです。

設備投資に事業再構築補助金を活用しようとしている企業は、本記事を参考にしてみてください。