小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠とは?申請要件や手続きを紹介

企業の中には、販路開拓と事業場内の最低賃金の引き上げを行うために、小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠を利用したい方もいるのではないでしょうか。
本記事では、小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠について、申請要件や必要な手続きなどを紹介します。賃金引上げ枠の申請時に本記事をお役立てください。
小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠とは
小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠は、販路拡大に加え、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上である小規模事業者を支援する制度です。
なお、本見出しの内容は、以下の資料を参考にしています。
補助率や補助上限額
賃金引上げ枠の補助率や補助上限額は以下になります。
類型 |
賃金引上げ枠 |
補助率 |
経費の2/3 (赤字事業者は3/4) |
補助上限額 |
200万円 |
インボイス枠 |
上記の補助上限額に50万円上乗せ ※免税事業者から適格請求書発行事業者に転換する小規模事業者が対象 |
赤字事業者 |
直近1期または直近1年間の課税所得金額が0以下である事業者のこと
|
補助対象者
小規模事業者持続化補助金は、以下の要件を満たす法人・個人事業主・特定非営利活動法人が対象になります。
項目 |
内容 |
対象者 |
※常時使用する従業員には、会社役員や個人事業主本人、 一定条件を満たすパートタイム労働者は含まれない |
要件 |
以下全ての要件を満たすこと
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補助対象の経費
小規模事業者持続化補助金は以下のように、補助対象の経費が決められています。
補助対象の経費 |
活用例 |
1.機械装置等費 |
補助事業に必要な製造装置の購入 |
2.広報費 |
新サービス紹介のチラシ作成・配布、看板の設置 |
3.ウェブサイト関連費 |
WebサイトやECサイト等の開発、構築、更新、改修、 運用に係る経費 ※ウェブサイト関連費のみの申請はできない |
4.展示会等出展費 |
展示会・商談会の出展料 |
5.旅費 |
販路開拓(展示会等の会場との往復を含む)を行うための旅費 |
6.開発費 |
新商品の試作品開発に伴う経費 |
7.資料購入費 |
補助事業に関する資料・図書 |
8.雑役務費 |
補助事業のために臨時的に雇用したアルバイト・派遣社員費用 |
9.借料 |
機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの) |
10.設備処分費 |
新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分 |
11.委託・外注費 |
店舗改装など自社では実施困難な業務を 第三者に依頼した場合の費用(契約必須) |
基本的に、申請する補助事業でのみ利用できる経費が対象になります。たとえ補助事業で利用する経費でも、パソコンや自動車のように汎用性の高いものは補助対象外です。
小規模事業者持続化支援金・賃金引上げ枠の申請要件
小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠は、補助事業の終了時点において、事業場内最低賃金を申請時の地域別最低賃金より+30円以上にしなければなりません。
すでに事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上を達成している場合は、現在支給している事業場内最低賃金より+30円以上とする必要があります。
地域の最低賃金+30円以下の場合

東京都の最低賃金1,113円(時給)を例に解説していきます。東京都の場合、賃金引上げ枠で申請する際は、1,113円+30円=1,143円以上にすることが要件となります。
仮に現在の企業の最低賃金が1,123円なら、+20円にすると1,143円になるので、地域の最低賃金+30円の要件を満たします。
そのため賃金引上げ枠では、企業の最低賃金の+30円以上ではないことに注意が必要です。
参考:厚生労働省 東京労働局|東京都最低賃金を1,113円に引上げます
地域の最低賃金+30円以上の場合

こちらでは、企業の最低賃金が地域の最低賃金より+30円以上超過しているケースを解説します。東京都で考えると最低賃金は1,113円のため、仮に企業の最低賃金が1,213円とした場合、最低賃金を+30円の1,243円以上にすると賃金引上げ枠の要件を満たします。
小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠に必要な手続き
小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠を申請する際は、これから紹介する手続きを行いましょう。
申請時
賃金引上げ枠を申請する際は、以下の書類で該当する箇所にチェックを入れてください。
- 経営計画書(様式2):「賃金引上げ枠」欄
- 補助事業計画書(様式3):「Ⅱ.経費明細表」の「賃金引上げ枠」欄
【経営計画書】

出典:小規模事業者持続化補助金<一般型> 第13回公募 応募時提出資料・様式集
【補助事業計画】

出典:小規模事業者持続化補助金<一般型> 第13回公募 応募時提出資料・様式集
また、賃金引上げ枠の申請には、以下の書類の提出も必要です。
- 労働基準法に基づく、直近1ヶ月分の賃金台帳
- 賃金引上げ枠の申請に係る誓約書(様式7)
- 雇用条件(1日の所定労働時間、年間休日)が記載された書類(雇用契約書、労働条件通知書など)
全申請枠に必要な書類に加えて、追加で提出が必要な書類もあるので注意しましょう。
実績報告書の提出時
小規模事業者持続化補助金は、補助事業完了後に実績報告書の提出が必要になります。賃金引上げ枠を申請した場合、実績報告書提出時点の直近1ヶ月分の労働基準法に基づく賃金台帳と、雇用条件の記載がある書類の提出が必要です。
小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠を申請する際の注意点

トラブルなくスムーズに小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠を申請できるよう、注意点を把握しましょう。
各事業場で最低賃金を引き上げる必要がある
企業内で複数の事業所を持つ場合、各事業場ごとに最低賃金を引き上げる必要があります。特定の事業所で最低賃金を引き上げていない場合、申請しても採択されなくなるので注意しましょう。
商工会・商工会議所の支援を直接受けながら取り組む
小規模事業者持続化補助金は、商工会・商工会議所の支援を直接受けながら取り組む事業です。特に申請に必要な「事業支援計画書(様式4)」は、商工会・商工会議所で作成・発行してもらう必要があります。
商工会・商工会議所に事業支援計画書の交付依頼をする際は、社外の代理人のみで行えないので、企業の担当者も一緒に相談しましょう。地域ごとの商工会・商工会議所については、小規模事業者持続化補助金の公募要領をご確認ください。
小規模事業者持続化補助金の手続きの流れ
小規模事業者持続化補助金の申請における具体的な手続きの流れは以下のとおりです。
- 提出書類を準備する
- 郵送または電子システムで書類を提出する
- 交付決定後、補助事業を実施する
- 実績報告書を提出する
- 補助金を請求する
- 事業効果報告を提出する
電子システムで申請する際は、GビズIDプライムアカウントの取得が必要になります。GビズIDプライムとは、1つのID・パスワードで複数の行政サービスにログインできるサービスのことです。アカウント取得には数週間かかるので、GビズIDの公式サイトから登録を進めてください。
【まとめ】小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠を紹介しました
ここまで、小規模事業者持続化補助金の賃金引上げ枠について紹介しました。賃金引上げ枠は、事業場内の最低賃金を地域の最低賃金より+30円以上にする事業者が申請できます。補助上限額が200万円まで増加するので、補助上限額が50万円の通常枠よりも、事業に使える補助金が増えます。賃金引上げ枠の申請を考えている方は、本記事を参考にしてみてください。