ものづくり補助金の採択事例|採択率向上の参考にしたい成果事例を紹介!

採択事例

新規事業立ち上げのため、既存事業成長のため、ものづくり補助金を利用して設備投資したい。しかし、自社計画が採択される可能性はあるのか?申請前に過去の採択事例と比較してみたい。そんな方に向け、採択率向上の参考にしたい、ものづくり補助金の成果事例を紹介していきます。

目次
  1. 1. ものづくり補助金で重要な事業計画
    1. 1-1. ものづくり補助金の成果として求められる基本要件
    2. 1-2. 事業の目的に応じたものづくり補助金の申請枠
  2. 2. ものづくり補助金の成果事例:生産性向上
    1. 2-1. 林口工業株式会社
    2. 2-2. 堀田畳製作所
  3. 3. ものづくり補助金の成果事例:革新的な製品・サービスの開発
    1. 3-1. 株式会社オカベメンテ
    2. 3-2. ヤスダ自動車板金塗装
  4. 4. ものづくり補助金の成果事例:グローバル市場展開
    1. 4-1. 東洋興商株式会社
  5. 5. 【まとめ】ものづくり補助金の採択事例を紹介しました

ものづくり補助金で重要な事業計画

ものづくり補助金とは、革新的な製品・サービスの開発や生産性向上に取り組む中小企業 / 小規模事業者の「設備投資・システム投資」を支援する補助金制度のこと。助成金とは異なり、ものづくり補助金を受給するためには、設備投資に関する3〜5年の事業計画を策定 / 申請し、採択されなければなりません。

これまで、ものづくり補助金への申請は約5,600件あり、採択されたのは約2,700件。(注1)採択率は約48.8%となっていますが、逆にいえば事業計画の半数以上は不採択という結果に終わっています。採択率を高めるには、要件を満たした不備のない計画書を作成するのはもちろん、審査側を納得させる事業計画の中身が重要です。

そのためには、頻繁に改正・変更されるものづくり補助金の要件、申請枠ごとの目的・要件を理解することが大前提。その上で、過去の採択事例も参考にしながら、事業計画をブラッシュアップしていく必要があるでしょう。

ものづくり補助金の詳細については以下の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:ものづくり補助金の内容を解説!対象となる事業者の要件と金額とは

注1:2024/04/09 時点のデータ。参照元:ものづくり補助金総合サイト

ものづくり補助金の成果として求められる基本要件

ものづくり補助金の大きな目的は、省力化、デジタル化、革新的な製品・サービス開発による生産性 / 付加価値の向上、およびそれにともなう従業員の賃金引き上げです。そのため、ものづくり補助金では、成果として求められる以下の基本要件を事業計画に盛り込む必要があります。

基本要件

概要

要件詳細

給与支給額の増加

全従業員および役員に支払った給与等。
福利厚生費、法定福利費、退職金は除く

事業計画期間に給与支給総額を
年平均成長率1.5%以上増加させる

最低賃金の引き上げ

補助事業を実施する事業場内で
もっとも低い賃金

事業場内最低賃金を
毎年「地域別最低賃金 + 30円」以上の水準にする

付加価値額の増加

付加価値額
= 営業利益 + 人件費 + 減価償却費

事業計画期間に事業者全体の付加価値額を
年平均成長率3%以上増加させる

これらの基本要件は、ものづくり補助金申請時点で計画書に盛り込まれていなければなりません。たとえば、補助金受給後に賃金引き上げ計画が盛り込まれていないことが発覚すれば、補助金の返還を求められてしまいます。

事業の目的に応じたものづくり補助金の申請枠

また、ものづくり補助金には、設備投資をともなう事業計画の目的に応じ、3つの申請枠と2つの類型が用意されており、それぞれの追加要件もクリアしなければなりません。もちろん、事業計画に合致した申請枠 / 類型を選択しなければ、採択率を高めることも難しいでしょう。

ものづくり補助金の申請枠 / 類型

概要

省力化(オーダーメイド)枠

デジタル技術を活用したオーダーメイド設備の導入等で、
事業者の生産過程 / サービス提供方法の効率化・高度化を支援

製品・サービス高付加価値化枠

通常類型

革新的な製品・サービスを開発し、
顧客に新たな価値を提供する事業者の設備投資・システム投資を支援

成長分野進出類型
(DX・GX)

成長分野に特化した革新的製品・サービス開発を支援

グローバル枠

海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な
設備投資・システム投資を支援

なお上述したように、ものづくり補助金は公募ごとに申請枠 / 類型を含め、内容が変更されることも少なくありません。事業計画の採択率を高めるためにも、最新情報を確認しておくことも重要です。

参考サイト:ものづくり補助金総合サイト

ものづくり補助金の成果事例:生産性向上

ものづくり補助金の要件、申請枠 / 類型を含む概要を把握できたところで、過去の公募で採択された、ものづくり補助金の成果事例を目的別に紹介していきましょう。

まずは、生産性向上を目的にした、ものづくり補助金の成果事例です。2024年4月現在の要項では、省力化(オーダーメイド)枠に相当しますが、従来は「ものづくり技術」等の申請枠で機械設備導入も認められていました。

※ものづくり補助金ポータルで紹介されている採択事例は、令和元年度(2019年度)までのため、2024年4月現在と申請枠が異なります

林口工業株式会社

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画像出典:林口工業株式会社

林口工業株式会社は、三重県津市に本社を構える高機能ロールスクリーンメーカーです。オフィスビル、ホテル、商業 / 文化施設など、大小さまざまなロールスクリーンを手がける同社の製造工程は、オーダーメイドの多品種生産であることが特徴。手作業が多く、高精度な生地の裁断作業が求められるため、受注集中時にボトルネックが生じる課題がありました。

事業拡大のため、熟練工のみに頼らない生産性向上が必須の同社は、ものづくり補助金の活用を決意。服飾業界で使われている自動裁断機を導入することで、生地裁断作業の自動化 / 効率化と同時にコストカットも実現しました。

生地裁断の作業時間を5倍以上効率化できただけでなく、誤差を±1mm以下に抑えられるなど精度も向上。全体的な製造リードタイムも14日から11日短縮できたことに加え、QCDの向上にも効果を実感できたといいます。試作品の製作にも自動裁断機は寄与しており、顧客への提案力を高められたことも、ものづくり補助金の成果です。

堀田畳製作所

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画像出典:堀田畳製作所

堀田畳製作所は、国産にこだわった畳を製作する山梨県甲府市の畳店です。生活様式の変化などで市場が縮小するなか、国産というブランド価値を前面に攻めの営業で新規顧客の獲得に成功。しかし、ニーズに対応するための生産量増加、職人の経験に頼りがちな特殊畳の製作合理化が難しいという課題に直面していました。

そこで、ものづくり補助金を利用し、自動片框裁断用のマルチロボット機や、畳検寸器、部屋の寸法・図面 起こし畳割付計算ソフトを導入。単に機械設備を導入するにとどまらず、代表の経験とノウハウを反映させた特注機器を注文し、気温による畳の収縮に柔軟に対応できる生産体制を整えました。

これによって、1日の生産量を16枚に倍増できたほか、畳の寸法を含む加工精度も向上。
即納体制を構築するとともに特殊畳へのニーズにも対応できるようになりました。生産性向上によって作れた時間は、新たな市場の開拓、和室のトータルコーディネートなどの新規事業計画に活用しています。

ものづくり補助金の成果事例:革新的な製品・サービスの開発

続いて紹介するものづくり補助金の成果事例は、革新的な製品・サービス開発の分野です。現在の申請枠では「通常類型」「成長分野進出類型(DX・GX)」に該当。過去には「通常枠」「デジタル枠」「グリーン枠」とされていた申請枠です。

株式会社オカベメンテ

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画像出典:株式会社オカベメンテ

株式会社オカベメンテは、2015年に沖縄県那覇市で創業された3D総合建設コンサルタント会社です。建造物の3Dモデリング技術「CIM / BIM」のノウハウを有していた同社では、創業時から建設 / インフラ分野のDX推進を志向。そのため、ものづくり補助金の活用も社内から自然発生し、事業計画書も内部で策定・作成されたといいます。

創業翌年の2016年には、ものづくり補助金を利用した3D測量技術を整備するため、ドローンや関連する測量機器 / ソフトウェアを導入。2018年度のものづくり補助金では、ドローンで正確に測量できない地形をカバーするモバイル3Dスキャナも導入。施工シミュレーションを動画で提供できる環境も構築されています。

同社の推し進める建設 / インフラ分野のDX推進は、構造物の計測 / 解析だけでなく、自然災害時に発生した地形変化の測量など、災害復旧・復興にも有効。県内外からの問い合わせも増えており、今後はCIM / BIM分野でのトップランナーとしての地位を確立していく予定です。

ヤスダ自動車板金塗装

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画像出典:ヤスダ自動車板金塗装

ヤスダ自動車板金塗装は、鳥取県米子市の自動車板金塗装会社です。2011年に現在の代表に事業承継されたことをきっかけに、ハイブリッド車の普及で高度化する整備・修理・板金分野での高付加価値需要への対応を決意。2016年度のものづくり補助金を利用して導入したスポット溶接機を皮切りに、各種補助金を活用した設備投資を開始しました。

たとえば、職人に頼らない安定した塗装を実現するAI調色機。車のECUを解析して故障診断を実施するスキャンツール。車体形状を測定して板金塗装後の歪みをゼロに近づける3D計測器など。スポット溶接機とあわせ、ディーラー以上の板金塗装技術を提供できる環境を構築したのです。

これによって個人ユーザーばかりではなく、販売店などからの直接受注を含む新顧客の獲得に成功。案件のほとんどを占めていた下請けを4割程度まで減少させ、生産性とともに収益性も向上しました。

ものづくり補助金の成果事例:グローバル市場展開

最後に紹介するものづくり補助金の成果事例は、グローバル市場展開の分野です。何度か名称変更されていますが、現在では「グローバル枠」と呼ばれる申請枠に該当。海外進出だけでなく、インバウンドに関連する設備投資でも申請可能です。

東洋興商株式会社

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画像出典:東洋興商株式会社

東洋興商株式会社は、東京都中央区に本社を構える光触媒脱臭装置メーカーです。もともと海外進出に意欲のあった同社は、ジェトロの輸出支援サービスをきっかけに、脱臭に効果的な自社の光触媒技術で中国の飲食業界へ進出しようと考えました。しかし、現地機関のパートナー企業を目指す段階になって、脱臭装置を改良する必要性が出てきたのです。

そこで、ものづくり補助金を利用し、光触媒効果のさらなる効率化に着手。TiO2粉末のナノ微細硫化、フィルターユニット配置の最適化、紫外光のLED化などの研究に取り組みました。産学官の共同研究の結果、装置の小型化や光源の長寿命化にも成功。試作機の2台は、2023年度に北京市、深圳市に納入され、調査・評価が実施されています。

評価を経た光触媒脱臭装置の製造 / 販売だけではなく、2025年には脱臭装置を含む厨房機器のメンテナンスにも進出予定。IoTへの対応で臭気モニタリングや遠隔操作ができるよう、さらなる改良にも取り組んでいく予定です。

【まとめ】ものづくり補助金の採択事例を紹介しました

新規事業立ち上げのため、既存事業成長のため、ものづくり補助金を利用して設備投資したい。しかし、自社計画が採択される可能性はあるのか?申請前に過去の採択事例と比較してみたい。そんな方に向け、採択率向上の参考にしたい、ものづくり補助金の成果事例を紹介してきました。