【2024年最新版】人材開発支援助成金のコースを徹底解説!

人材開発支援助成金のコースを徹底解説!

人材開発支援助成金の申請を検討しているものの、複数のコースがあるので手続き方法がよくわからない方という方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、人材開発支援助成金の7つのコースについて、対象となる訓練や助成額、手続きの流れなどを解説します。

目次
  1. 1. 人材開発支援助成金とは
    1. 1-1. キャリアアップ助成金との違い
  2. 2. 人材開発支援助成金のコースと概要
    1. 2-1. 人材育成支援コース
    2. 2-2. 教育訓練休暇等付与コース
    3. 2-3. 助成額・助成率
    4. 2-4. 人への投資促進コース
    5. 2-5. 事業展開等リスキリング支援コース
    6. 2-6. 建設労働者認定訓練コース
    7. 2-7. 建設労働者技能実習コース
    8. 2-8. 障害者職業能力開発コース
  3. 3. 人材開発支援助成金を活用するメリット
    1. 3-1. 人材育成のコストを削減できる
    2. 3-2. 人材育成のシステムを構築できる
    3. 3-3. 従業員のモチベーションを高められる
  4. 4. 人材開発支援助成金を申請する際の注意点
    1. 4-1. 助成金は訓練・研修後に支給される
    2. 4-2. 手続きに手間がかかる
    3. 4-3. 最新情報を確認してから申請を行う
  5. 5. 【まとめ】人材開発支援助成金のコースについてを解説しました

人材開発支援助成金とは

人材開発支援助成金とは、従業員の能力開発につながる職業訓練を実施した際に、経費や訓練期間中の賃金が助成される制度です。人材育成のコストを抑えられるメリットがあり、従業員のスキルが高まれば、生産性も向上し自社の成長につなげられます。

キャリアアップ助成金との違い

人材開発支援助成金と似ているのがキャリアアップ助成金です。人材育成を行う事業主に支給される助成金である点は共通していますが、2つの違いがあります。

1つは対象者の違いです。人材開発支援助成金では、正社員が対象ですが、キャリアアップ助成金では、パートやアルバイトなどの非正規社員を対象としています。もう1つの違いは目的です。人材開発支援助成金では、従業員の知識・スキルの向上を支援し、企業の競争力を強化させるのが目的です。一方、キャリアアップ助成金では、非正規社員を正社員に転換させたり、処遇を改善させたりすることを目的としています。

人材開発支援助成金のコースと概要

【2024年最新版】人材開発支援助成金のコースを徹底解説!_2

2024年2月時点では、人材開発支援助成金のコースは7つです。各コースについて、以下を解説します。

  • 助成対象となる訓練
  • 助成額・助成率
  • 手続きの流れ

人材育成支援コース

人材育成支援コースでは、従業員に対して、職務に関する知識・スキルを習得させる訓練を実施した場合に助成金が支給されます。

助成対象となる訓練

助成対象となる訓練は、計画に則って実施されるOFF-JTとOJTです。

  • OFF-JT(Off-The-Job Training):職場から一時的に離れて行われる、研修やセミナー、通信教育などのこと
  • OJT((On the Job Training):職場での業務を通じて職務に必要な知識・スキルを身につけさせる研修のこと

助成額・助成率

訓練ごとの助成額・助成率は以下の通りです。

対象の訓練

経費助成

賃金助成

(1人当たり)

OJT実施助成

(1人当たり)

人材育成

訓練

雇用保険被保険

(有期契約労働者等を除く。)

の場合

45%

(+15%)

760円/時間

(+200円/時間)

有期契約労働者

の場合

60%

(+15%)

有期契約労働者等を

正規雇用労働者等へ

転換した場合

70%

(+30%)

認定実習併用職業訓練

45%

(+15%)

 

 

有期実習

訓練

有期契約労働者

等の場合

60%

(+15%)

200,000円

(+50,000円)

有期契約労働者等を

正規雇用労働者等へ

転換等した場合

70%

(+30%)

100,000円

(+30,000円)

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」

※( )内は規定の要件を満たした場合に加算される

手続きの流れ

人材育成支援コースを申請する際は、以下の流れで手続きを行います。

  1. 訓練計画の提出:訓練の開始日から1か月前までに、計画届と必要書類を労働局へ提出する
  2. 訓練の実施:訓練を実施し、必要経費を支払う
  3. 支給申請書の提出:訓練が終了した日の翌日から2か月以内に、支給申請書と必要書類を労働局に提出する
  4. 助成金の支給・不支給:審査を経て助成金の支給・不支給が決定する

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」

教育訓練休暇等付与コース

教育訓練休暇等付与コースでは、職務に関する訓練を自発的に受けた従業員に対して、休暇制度を設けた事業者に助成金が支給されます。

助成対象となる制度

以下の制度が対象です。

  • 教育訓練休暇制度:自発的に訓練を受けさせるのに必要な休暇を従業員に付与する制度
  • 長期教育訓練休暇制度:自発的に訓練を受けさせるのに必要な長期休暇を付与する制度
  • 教育訓練短時間勤務等制度:自発的に訓練を受けさせるために、所定労働時間を短縮したり、所定外労働を免除したりする制度

助成額・助成率

制度ごとの助成額・助成率は以下の通りです。

支給対象の制度

賃金助成

(1人1日当たり)

経費助成

教育訓練休暇制度

300,000円(360,000円)

長期教育訓練休暇制度

6,000円(7,200円)

200,000円(240,000円)

教育訓練短時間勤務等制度

200,000円(240,000円)

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)のご案内」

※( )内は規定の要件を満たした場合に加算される

手続きの流れ

教育訓練休暇等付与コースを申請する際は、以下の流れで手続きを行います。

  1. 制度導入・適用計画の提出:適用計画期間の開始日から起算して、6か月前~1か月前までに制度導入・適用計画届と必要書類を労働局に提出する
  2. 制度の導入・周知:就業規則や労働協約に制度を明記し、労働者に周知した上で、労働基準監督署に届出を行う
  3. 制度の導入・訓練の実施:制度を導入し、訓練を実施する
  4. 支給申請書の提出:制度ごとに定められた期間内に、支給申請書を労働局に提出する
  5. 助成金の支給・不支給:審査を経て助成金の支給・不支給が決定する

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース)のご案内」

人への投資促進コース

人への投資促進コースでは、従業員のスキルアップを目的に、訓練を実施した場合に助成金が支給されます。期間が設けられており、2022〜2026年度の間でしか利用できません。

助成対象となる訓練

対象となる訓練は、以下のOFF-JTです。

  • 事業内訓練:自社従業員や外部講師による教育訓練
  • 事業外訓練:学校や職業訓練を実施する施設などで受ける教育訓練

助成額・助成率

訓練ごとの助成額・助成率は以下の通りです。

訓練メニュー

対象訓練

経費助成率

賃金助成額

OJT実施助成額

高度デジタル

人材訓練

高度デジタル訓練

75%

960円

成長分野等

人材訓練

海外も含む

大学院での訓練

75%

国内大学院の場合:

960円

情報技術分野

認定実習

併用職業訓練

OFF-JT+OJTの

組み合わせの訓練

(IT分野関連の訓練)

60%

(+15%)

760円

(+200円)

200,000円

(+50,000円)

定額制訓練

「定額制訓練」

(サブスクリプション型の

修サービス)

60%

(+15%)

自発的職業能力

開発訓練

労働者の

自発的な訓練費用

事業主が負担した訓練

45%

(+15%)

長期教育訓練

休暇等制度

長期教育訓練休暇制度

(30日以上の

連続休暇取得)

制度導入費

200,000円

(+40,000円)

6,000円/日

(+1,200円)

所定労働時間の短縮と

所定外労働時間の

免除制度

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のご案内」

※( )内は規定の要件を満たした場合に加算される

手続きの流れ

人への投資促進コースを申請する際は、以下の流れで手続きを行います。

  1. 職業訓練実施計画届の提出:訓練開始日から1か月前までに計画届を労働局に提出する
  2. 制度の導入:制度を導入し、内容によって就業規則に明記する
  3. 訓練の実施:提出した計画届にもとづいて、訓練を実施する
  4. 支給申請書の提出:訓練が終了した日の翌日から2か月以内に支給申請書と必要書類を労働局に提出する
  5. 助成金の支給・不支給:審査を経て助成金の支給・不支給が決定する

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(人への投資促進コース)のご案内」

事業展開等リスキリング支援コース

事業展開等リスキリング支援コースでは、従業員の職業能力を再開発するための訓練を実施した際に助成金が支給されます。申請できる期間が設けられており、2022〜2026年度の間でしか利用できません

助成対象となる訓練

対象となる訓練は、以下のOFF-JTです。

  • 事業内訓練:自社従業員や外部講師による教育訓練
  • 事業外訓練:受講料を支払って受けさせる社外の教育訓練

助成額・助成率

経費の助成率と賃金の助成額は以下の通りです。

経費助成

賃金助成

対象経費の75%

1時間あたり960円/人

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内」

手続きの流れ

事業展開等リスキリング支援コースを申請する際は、以下の流れで手続きを行います。

  1. 職業訓練実施計画届の提出:訓練が開始する日から1か月前までに、計画届と必要書類を労働局に提出する
  2. 訓練の実施:内部または外部講師による訓練を実施する
  3. 支給申請書の提出:訓練が終了した日から2か月以内に、支給申請書と必要書類を提出する
  4. 助成金の支給・不支給:審査を経て助成金の支給・不支給が決定する

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内」

建設労働者認定訓練コース

建設労働者認定訓練コースでは、従業員に建設関連の職業訓練を受けさせた際に助成金が支給されます。

助成対象となる訓練

対象となる訓練は以下の通りです。

  • 認定職業訓練:都道府県知事に認定された、建設関連の職業訓練
  • 認定指導員による訓練:認定を受けた指導員による、建設関連の職業訓練

助成額・助成率

経費の助成率と賃金の助成額は以下の通りです。

経費助成

賃金助成

対象経費の1/6

3,800円(+1,000円)/日

参照:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「建設事業主等に対する助成金のご案内」

※( )内は規定の要件を満たした場合に加算される

手続きの流れ

建設労働者認定訓練コースを申請する際は、以下の流れで手続きを行います。

  1. 賃金助成分の申請:訓練開始日から1か月前までに、支給申請書および必要書類を労働局へ提出する
  2. 賃金向上助成・資格等手当助成分の申請:毎月の賃金または資格等手当を支払った日の翌日から5か月以内に必要書類を労働局に提出する
  3. 助成金の支給・不支給:審査を経て助成金の支給・不支給が決定する

参照:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「建設事業主等に対する助成金のご案内」

建設労働者技能実習コース

建設労働者技能実習コースでは、従業員に建設関連の実習を受けさせた場合に助成金が支給されます。

助成対象となる訓練

以下のような技能実習が助成対象です。

  • 建設工事に直接関連する実習
  • 労働安全衛生法にもとづく教習や技能講習
  • 技能の継承に関連する指導方法向上のための講習

助成額・助成率

経費の助成率と賃金の助成額は以下の通りです。

 

経費助成

賃金助成

雇用保険被保険者数20人以下

対象費用の3/4

(+3/20)

8,550円/日

(+2,000円)

雇用保険被保険者数21人以上

35歳未満の労働者

対象費用の7/10

(+3/20)

7,600円/日

(+1,750円)

35歳以上の労働者

対象費用の9/20

(+3/20)

参照:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「建設事業主等に対する助成金のご案内」

※( )内は規定の要件を満たした場合に加算される

手続きの流れ

建設労働者技能実習コースを申請する際は、以下の流れで手続きを行います。

  1. 計画届の提出:技能実習を実施する日の3か月前から1週間前までに計画届を労働局に提出する
  2. 支給申請書(経費助成・賃金助成分)の提出:技能実習が終了した日の翌日から2か月以内に必要書類を労働局に提出する
  3. 支給申請書(賃金向上助成・資格等手当助成)の提出:毎月の賃金や資格手当を支払った日の翌日から5か月以内に必要書類を労働局に提出する
  4. 助成金の支給・不支給:審査を経て助成金の支給・不支給が決定する

参照:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「建設事業主等に対する助成金のご案内」

障害者職業能力開発コース

障害者職業能力開発コースでは、雇用促進や雇用維持を目的に、障害者に対して訓練を受けさせる措置を講じた場合に助成金が支給されます。

助成対象となる措置

助成対象となる措置は以下の通りです。

  • 障害者の職業能力を開発する訓練を行う施設や設備の設置・整備・更新を行う
  • 障害者に対して、職業能力を開発する訓練事業を行う

助成額・助成率

対象費用および助成率は以下の通りです。

対象費用

助成率

障害者職業能力開発訓練事業を行うために、

訓練科目ごとの施設・設備を設置・整備・更新にかかった費用

費用の3/4

重度障害者(重度身体障害者や重度知的障害者、

精神障害者など)を対象に、

障害者職業能力開発訓練を行う際の運営費

1人あたりの運営費の4/5

※重度障害者以外の場合は3/4

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金 障害者職業能力開発コース」

手続きの流れ

障害者職業能力開発コースを申請する際は、以下の流れで手続きを行います。

訓練の施設や設備の設置・整備・更新にかかる経費を申請する場合

  1. 受給資格認定の申請:訓練の施設や設備の設置・整備・更新に着手する前に労働局に申請を行い、認定を受ける

※申請期間は毎年7月16日~9月15日または1月16日~3月15日の間

  1. 支給申請書の提出:訓練の施設や設備の設置・整備・更新を完了した日の翌日から2か月以内に支給申請書と必要書類を労働局に提出する
  2. 助成金の支給・不支給:審査を経て助成金の支給・不支給が決定する

運営費を申請する場合

  1. 受給資格認定の申請:職業訓練の開始日から3か月前までに、労働局に申請を行い、認定を受ける
  2. 支給申請書の提出:支給対象期間が終了する日の翌日から2か月以内に、必要書類を労働局に提出する
  3. 助成金の支給・不支給:審査を経て助成金の支給・不支給が決定する

参照:厚生労働省「人材開発支援助成金 障害者職業能力開発コース」

人材開発支援助成金を活用するメリット

【2024年最新版】人材開発支援助成金のコースを徹底解説!_3

人材開発支援助成金を活用するメリットを3つ解説します。

人材育成のコストを削減できる

人材開発支援助成金では、対象経費の半分以上が助成されるコースも多く、人材の育成コストを大幅に削減することが可能です。従業員のスキルが向上すれば、自社の競争力強化にもつながるので、費用対効果が高いといえるでしょう。人材に投資する資金に余裕がない場合は、人材開発支援助成金の支給対象となる要件を調べて、該当する訓練を行うのがおすすめです。

人材育成のシステムを構築できる

人材開発支援助成金を申請する過程で、自社の社員研修や教育訓練のシステムを構築できます。助成金を申請する要件として、制度を設けて就業規則に記載しなければならないケースもあり、申請要件を満たすことで、自ずと各種制度を整えられるのです。従業員の教育システムを整理・構築したいものの、手つかずだった場合に1つのきっかけにできます。

従業員のモチベーションを高められる

従業員は、自らの成長につながる訓練を受けられるので仕事に対するモチベーションも高まります。職務に関する知識やスキルが向上すれば、活躍できる機会も多くなるでしょう。これまで対応できなかった業務ができるようになれば、達成感を感じられるはずです。モチベーションを維持しながら働ける環境を提供できれば、離職率の低減につなげることも可能です。

人材開発支援助成金を申請する際の注意点

【2024年最新版】人材開発支援助成金のコースを徹底解説!_1

人材開発支援助成金を申請する際の注意点を3つ解説します。

助成金は訓練・研修後に支給される

人材開発支援助成金は、訓練や研修が終了した後で申請手続きが受理されてから支給されます。訓練や研修にかかった経費や訓練期間中の賃金は自社で支払わなければなりません。申請前に助成金が支給される時期を確認し、資金計画を立てる必要があります。自社で工面するのが難しい場合は、取引先の銀行や信用金庫などの金融機関から借り入れを行うのも手です。

手続きに手間がかかる

人材開発支援助成金を申請する際は、様々な書類を準備・作成しなければならないため、手間がかかります。例えば、人材育成支援コースでは、以下のような書類が必要です。

  • 職業訓練実施計画届
  • 対象者一覧表
  • 事前確認書
  • 事業所確認票
  • 雇用契約書
  • 就業規則や労働協約書
  • 訓練の内容がわかる書類
  • 経費の領収書・振込明細
  • 賃金台帳
  • 出勤簿

申請期限も定められているので、間に合うように余裕をもって準備しましょう。

最新情報を確認してから申請を行う

人材開発支援助成金は、社会の情勢やニーズをもとに定期的に改正される傾向があるので、申請する際は必ず最新情報を確認しましょう。直近では、2023年4月に改正され、6月26日には、電子申請での受付が開始されています。「人への投資促進コース」と「事業展開等リスキリング支援コース」は2026年までの期間限定です。厚生労働省ホームページで「人材開発支援助成金」のページを見れば把握できます。

【まとめ】人材開発支援助成金のコースについてを解説しました

人材開発支援助成金を活用すれば、コストを抑えて従業員のキャリアアップを支援できます。従業員の知識・スキルが向上すれば、自社の競争力強化にもつなげることが可能です。なお、人材開発支援助成金には7つのコースがあり、助成額や助成率、手続きの流れはそれぞれ異なります。手続きに必要な書類も多く、手間がかかるので、申請する際は期限に間に合うように余裕をもって準備しましょう。