事業再構築補助金の最低賃金枠とは?注意点や申請要件についても解説!
事業再構築補助金の最低賃金枠で申請を検討している方は多いのではないでしょうか。他の申請枠に比べて採択率が高い最低賃金枠ですが、必要な要件や注意点もあります。
本記事では、事業再構築補助金の最低賃金枠のメリットや申請要件、注意点などを解説。申請の要領を把握できるため、最低賃金枠で申請する際の参考にしてみてください。
事業再構築補助金の最低賃金枠とは
事業再構築補助金の最低賃金枠とは、最低賃金の引き上げの影響で厳しい業績にある中小企業を対象とした申請枠です。年々下がってはいるものの、過去の採択率は50〜80%と通常枠よりも高くなっています。
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応募件数 |
採択件数 |
採択率 |
第7回公募 |
162 |
131 |
80.8% |
第8回公募 |
165 |
117 |
70.9% |
第9回公募 |
106 |
68 |
64.1% |
第10回公募 |
249 |
133 |
53.4% |
最低賃金枠は全申請枠で共通の必須要件に加え、以下のいずれかに該当する事業者が対象となります。
- 2022年1月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の売上高の合計が2019年~2021年の任意の3ヶ月の売上高の合計と比較して10%以上減少していること。
- 2022年10月から2023年8月までの間で、3ヶ月以上にわたり最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全ての従業員の10%以上いること。
また、従業員規模や補助上限、補助率は以下の通りです。
従業員規模 |
補助上限 |
補助率 |
5人以下 |
500万円 |
中小企業:3/4 中堅企業:2/3 |
6~20人 |
1,000万円 |
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21人以上 |
1,500万円 |
「指定の要件を満たし、最低賃金枠に申請する」ことが加点項目に入っているため、成長枠と比較した場合、補助額は低いですが補助率は優遇されています。
事業再構築補助金の最低賃金枠が作られた理由
事業再構築補助金の最低賃金枠は、人件費の確保が困難になった企業が、最低賃金引き上げに対応できるよう支援するために設けられています。コロナ禍で業績が低迷する中で最低賃金の引き上げがあり、金銭的な負担が大きくなった企業があるためです。
原資の確保が困難で業績が低下した企業を対象に補助金を出すことで、経営悪化を防ぎます。
事業再構築補助金の最低賃金枠を申請するメリット
事業再構築補助金の最低賃金枠を申請して採択されると、支出が抑えられるメリットがあります。補助の対象となる補助事業の経費に対し、補助率が中小企業者等の場合で3/4、中堅企業等の場合で2/3と高いためです。
実際の支出に対して補助額が大きく、最大で1,500万円という比較的大きな金額を受け取ることができます。事業の要件が合致すれば、得する制度といえるでしょう。
最低賃金枠に申請するための要件
最低賃金枠を申請する際は、いくつかの要件が求められます。以下では、最低賃金枠に申請するための要件について解説します。
事業再構築要件
支援の対象となる事業再構築は、要件として以下のいずれかに該当する事業計画の策定が求められます。
- 新市場進出(新分野展開、業態転換)
- 事業転換
- 業種転換
- 事業再編
- 国内回帰
申請の際は、各類型ごとに定められる要件を満たす計画が必要です。
売上高等減少要件
最低賃金枠には、売上高等減少要件が定められています。2022年1月以降の連続する6ヶ月のうち任意3ヶ月の売上高の合計が、2019から2021年の任意3ヶ月の売上高と比較して、10%減少していることです。
上記の要件を満たさない場合は、2022年1月以降の連続する6ヶ月でも適用されます。任意3ヶ月の合計付加価値額が、 2019年から2021年の任意3ヶ月の合計付加価値額に対して15%以上減少していることが要件です。
最低賃金要件
最低賃金枠では、最低賃金要件を満たすことが必要です。2022年10月から2023年8月までの間で、3ヶ月以上最低賃金+50円以内で雇用している従業員が、全ての従業員数の 10%以上いることが定められています。
認定支援機関要件
認定支援機関要件では、事業計画が認定経営革新等支援機関の確認を受けていることが求められています。認定経営革新等支援機関とは、中小企業支援の専門知識や実務経験がある者として国に認められている支援機関です。以下の機関が一例として挙げられます。
- 金融機関
- 中小企業診断士
- 商工会議所
- 税理士
- 公認会計士
- コンサルティング企業
事業計画書は、以上の機関による確認を受けなければいけません。
付加価値額要件
付加価値額要件では、企業の生産活動によって新たに生み出して売り上げを向上させる事業計画を行うことが求められます。具体的には、補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上増加する見込みの事業計画を策定することが必要です。
事業再構築補助金の最低賃金枠の注意点
以下では、事業再構築補助金の最低賃金枠の注意点について解説します。
過去に採択された事業者は応募できない
過去に事業再構築補助金に採択された事業者は、対象外となります。成長枠や卒業促進枠などの別枠だとしても、一度でも採択された場合は応募できません。
最低賃金確認書を提出する
事業再構築補助金の最低賃金枠では、最低賃金確認書(事業者名)を提出する必要があります。フォーマットも決まっているため、最低賃金確認書は公式サイトからダウンロードできるため、入力ミスのないよう提出しましょう。
さらに最低賃金確認書と併せ、最低賃金要件の対象となる3ヶ月分、最低賃金+50円以内の従業員全てがわかる賃金台帳(又はそれに相当する書類)も提出が求められます。
事業再構築補助金の最低賃金枠の必要提出書類
以下では、事業再構築補助金の最低賃金枠の必要提出書類について解説します。
事業計画書
事業計画書は、事業の方向性や補助金を活用する目的や計画を作成するための書類です。公式サイトからdocxファイルとしてダウンロードできます。計画書の1ページ目には申請の概要や事業再構築の定義を満たすことを記載し、2ページ目以降は既存事業の強みや弱み、事業再構築の必要性を具体的に記載しましょう。
事業計画書は、事業内容が審査基準を満たしていることを示すための書類でもあるため、念入りに作成することが大切です。また、作成した事業計画書は認定支援機関に内容を確認してもらう必要があります。
認定支援機関による確認書
事業再構築補助金の申請には、認定支援機関により事業計画書の確認を受けたことを証明する確認書の提出が必要です。補助金額が3,000万円を超える事業計画を申請する場合は、金融機関による確認書も求められます。
事業計画書に不備がある場合や申請期限に間に合わない場合は、確認書を作成してもらえないこともあるため注意が必要です。
決算書
事業再構築補助金を申請する際は、直近2年間の貸借対照表や損益計算書など決算書の提出が必要です。2年間分の提出ができない場合は、1期分の決算書を提出しましょう。以下の書類が決算書に該当します。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 製造原価報告書
- 販売管理費明細
- 個別注記表
決算書の添付ができない中小企業等は、全体の事業計画書および収支予算書の添付が必要です。
また添付書類のデータがロックや破損で開けなかったり、決算報告書の内容と申請者が一致していなかったりすると、書類の不備とみなされ差し戻しにつながります。パスワードロックの解除やファイルの形式、決算報告書と事業者名・申請者が一致しているかは、提出前に必ず確認しましょう。
経済産業省ミラサポplus「ローカルベンチマーク」を利用する
事業再構築補助金に申請する際は、経済産業省ミラサポplus「ローカルベンチマーク」で事業財務情報を作成して提出が必要です。財務情報を入力し、 PDF 出力して添付します。ローカルベンチマークの利用を進めるためには、公式サイトからログインする必要があるため、「gBizID」を早めに取得しておくことがおすすめです。
従業員数を示す書類
従業員数を示す書類として、労働基準法に基づく労働者名簿の写しの添付が必要です。最低賃金枠に申請する場合で変更がある場合は、申請時点のものに加えて最低賃金要件の対象となる3ヶ月分の労働者名簿も提出が求められます。書類作成時は以下のポイントを押さえておくことが必要です。
- 表題が「労働者名簿」になっている
- 全従業員が分かる
- 通し番号を入れる
- 従業員の人数が申請画面と一致している(役員は人数に含まない)
あらかじめ雇用形態を確認した上で労働者名簿を作成しましょう。労働者名簿に該当する人がいない場合は、従業員がいない旨を記載した書類の添付が必要です。
収益事業をしていると説明できる書類
収益事業をしていることを説明する書類として確定申告書類を提出します。法人と個人事業主で提出する書類が異なります。
<法人の場合>
- 直近の確定申告書別表一の控え1枚(事業者名)
- 法人事業概況説明書の控え(事業者名)
<個人の場合>
- 直近の確定申告書第一表の控え(事業者名)
- 所得税青色申告決算書の控え(事業者名)
白色申告の場合は、収支内訳書の控え(事業者名)を提出します。
売上か付加価値額が2019~2021年に比べて減少したことを示す書類
売上高等減少要件を満たすため、売上高または付加価値額の減少を示す書類が必要です。法人と個人で必要な書類が異なります。
<法人の場合>
- 申請に提示する任意の3ヶ月の比較対象となる2019~2021年の同3ヶ月の売上が分かる年度の確定申告書別表一の控え(1枚)
- 1の確定申告書と同年度の法人事業概況説明書の控え(両面)
- e-Taxで申請している場合は受信通知(1枚)
- 申請時に提示する任意の3ヶ月の売上がわかる確定申告書別表一の控え(1枚)
- 4の確定申告書と同年度の法人事業概況説明書の控え(両面)
<個人の場合>
- 請に提示する任意の3ヶ月の比較対象となる2019~2021年の同3ヶ月の売上が分かる年度の確定申告書別表一の控え(1枚)
- 1の確定申告書と同年度の月別売上の記入のある所得税青色申告決算書の控えがある場合は、その控え(両面) (白色申告の場合は対象月の月間売上がわかる売上台帳、帳面その他の確定申告の基礎となる書類を提出)
- e-Taxで申請している場合は受信通知(1枚)
- 申請時に提示する任意の3ヶ月の売上がわかる確定申告書別表一の控え(1枚)
- 4の確定申告書と同年度の月別売上の記入のある所得税青色申告決算書の控えがある場合は、その控え(両面)(白色申告の方は対象月の月間売上がわかる売上台帳、帳面その他の確定申告の基礎となる書類を提出)
確定申告書別表一の控えまたは確定申告書第一表には、収受日付印の押印、または電子申告の日時・受付番号が記載されている必要があります。
【まとめ】事業再構築補助金の最低賃金枠について解説しました
事業再構築補助金の最低賃金枠は採択率が高く加点項目も優遇されているため、比較的申請しやすい枠といえるでしょう。申請には新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換、事業再編のうちいずれかに該当する事業計画を策定する必要があります。
提出書類はやや多く、金融機関を通さないと申請できない場合もあるため、慎重に行うことが大切です。本記事で紹介した内容を参照することで、必要書類や注意点を把握した上で申請を進めることができます。
事業再構築補助金の最低賃金枠で申請する場合は期間に余裕をもち、計画的に行いましょう。